なぜ長文化?ICOホワイトペーパーの謎【フィスコ・仮想通貨コラム】
[18/12/06]
提供元:株式会社フィスコ
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仮想通貨コラム
仮想通貨市場の低迷で、ブロックチェーンのスタートアップにとって、資金調達がむずかしい時期が続いている。今年に入り、ICO(イニシャル・コイン・オファリング、仮想通貨技術を使った資金調達)は減少の一途をたどっている。
ところが、ICOにあたり、資金の使途など事業構想を説明する「ホワイトペーパー」は分厚くなる一方だ。約1600件のブロックチェーン・ホワイトペーパーに目を通した結果、LongHashが発見したトレンドの一部を紹介しよう。
政策文書から事業計画書へ
もともと「ホワイトペーパー(白書)」とは、政府機関が社会や経済の実態を国民に知らせるために作成される文書だった。そこに商業的な意図はなく、一般市民の生活に直接影響を与えるものではなかった。
やがて企業が、ビジネス環境や経営方針を説明する文書に「ホワイトペーパー(白書)」という言葉を使い始めた。そして2008年、初の分散化された仮想通貨「ビットコイン」の発行にあたり、サトシ・ナカモトという謎の人物がホワイトペーパーを発表した。
現在、ホワイトペーパーはブロックチェーン技術を使った資金調達の基礎をなすようになった。この中で各ICOプロジェクトの使用技術や事業構想、チーム、ロードマップが説明される。仮想通貨のホワイトペーパーは、論文的要素は乏しくなり、事業計画書に近くなった。
長くなるホワイトペーパー
ビットコインのホワイトペーパーは、わずか9ページ、全3219ワードのコンパクトなものだった。ところが2014年までに、ICOのホワイトペーパーははるかに長くなった。たとえば、イーサリアムのホワイトペーパーは1万3866ワードだった。
ビットコインのホワイトペーパーは仮想通貨の原型を示したが、イーサリアムのホワイトペーパーはデジタル通貨の歴史を延々語っている。さらにビットコインシステムの長所と短所と、イーサリアムの強みを説明し、Dapps(分散型アプリケーション)の未来も説いている。
2017年にICOを果たしたEOS(イオス)のホワイトペーパーは7530ワードで、イーサリアムのホワイトペーパーよりずっと短かった(それでもビットコインの約2倍)。構成はイーサリアムと似ていて、過去のICOプロジェクトの長所と短所を分析したうえで、EOSが目指すブロックチェーンの基本システム(OS)とインフラ、合意形成メカニズムを説明している。
ただ、全体としてホワイトペーパーは長くなる傾向にある。仮想通貨コミュニティー「ザ・ブロック(The Block)」も、11月初旬に似たような結論に達している。
LongHashの分析によれば、2016年第1四半期(1〜3月)と第2四半期(4〜6月)のホワイトペーパーは、平均ワード数が3000ワードを下回っていた。ところが同年第4四半期(10〜12月)になると、1万ワードを突破。それでも当時はまだ、比較的ワード数が少ないプロジェクトが存在した。ICOは2017年から爆発的に増えた。
平均的なホワイトペーパーの長さは、全体としてこのトレンドを反映している。2017年第1四半期は平均6000ワード以下だったが、着々と増えて、2018年第3四半期(7〜9月)には9000ワード近くになっている。
なぜ、ホワイトペーパーは長くなってきたのか。考えられる理由をいくつか示そう。
背景情報の増加
ビットコインは極めてオリジナルだったため、そのホワイトペーパーには大量の参考文献が含まれていない。だが業界が成熟するにつれて、ブロックチェーン技術や合意形成メカニズムの説明、業界全体の背景情報や問題点の説明といった記載が増えていった。
テクニカルな説明の増加
量と質は必ずしも一致するわけではない。なかには、一般的な読者を「おおっ」とうならせるために、テクニカルな内容を大量に詰め込んだホワイトペーパーもある。つまりその長文化は、ブランディングやマーケティングにおける「盛りすぎ」のトレンドを反映しているだけで、プロジェクトの質とはあまり関係がない可能性もある。
ライバルの増加
似たような仮想通貨が次々と登場するにしたがい、ライバルの長所と短所を詳述するホワイトペーパーが増えている。初期の仮想通貨はライバルが少ないか、明確な差別化要因を持っていたため、この部分が長くなることはなかった。だが今は、さまざまなニッチ分野で複数のブロックチェーン・プロジェクトが激しい競争を展開しており、自分たちのユニークなセールスポイントを明確にするためにも、より直接的な比較が必要とされている。
免責条項
各国政府がICOの規制に乗り出すなか、ホワイトペーパーに免責条項を含める必要性を感じるスタートアップが増えている。
おそらくこうした理由すべてが少しずつ重なって、ホワイトペーパーが長くなってきたのは間違いないだろう。では、現在の市場低迷は、ホワイトペーパーの内容に何らかの影響を与えるのか。その答えは、2019年に計画されているICOプロジェクトのホワイトペーパーを分析して、改めて考えていきたい。
(記事提供:LONGHASH)
<SI>
ところが、ICOにあたり、資金の使途など事業構想を説明する「ホワイトペーパー」は分厚くなる一方だ。約1600件のブロックチェーン・ホワイトペーパーに目を通した結果、LongHashが発見したトレンドの一部を紹介しよう。
政策文書から事業計画書へ
もともと「ホワイトペーパー(白書)」とは、政府機関が社会や経済の実態を国民に知らせるために作成される文書だった。そこに商業的な意図はなく、一般市民の生活に直接影響を与えるものではなかった。
やがて企業が、ビジネス環境や経営方針を説明する文書に「ホワイトペーパー(白書)」という言葉を使い始めた。そして2008年、初の分散化された仮想通貨「ビットコイン」の発行にあたり、サトシ・ナカモトという謎の人物がホワイトペーパーを発表した。
現在、ホワイトペーパーはブロックチェーン技術を使った資金調達の基礎をなすようになった。この中で各ICOプロジェクトの使用技術や事業構想、チーム、ロードマップが説明される。仮想通貨のホワイトペーパーは、論文的要素は乏しくなり、事業計画書に近くなった。
長くなるホワイトペーパー
ビットコインのホワイトペーパーは、わずか9ページ、全3219ワードのコンパクトなものだった。ところが2014年までに、ICOのホワイトペーパーははるかに長くなった。たとえば、イーサリアムのホワイトペーパーは1万3866ワードだった。
ビットコインのホワイトペーパーは仮想通貨の原型を示したが、イーサリアムのホワイトペーパーはデジタル通貨の歴史を延々語っている。さらにビットコインシステムの長所と短所と、イーサリアムの強みを説明し、Dapps(分散型アプリケーション)の未来も説いている。
2017年にICOを果たしたEOS(イオス)のホワイトペーパーは7530ワードで、イーサリアムのホワイトペーパーよりずっと短かった(それでもビットコインの約2倍)。構成はイーサリアムと似ていて、過去のICOプロジェクトの長所と短所を分析したうえで、EOSが目指すブロックチェーンの基本システム(OS)とインフラ、合意形成メカニズムを説明している。
ただ、全体としてホワイトペーパーは長くなる傾向にある。仮想通貨コミュニティー「ザ・ブロック(The Block)」も、11月初旬に似たような結論に達している。
LongHashの分析によれば、2016年第1四半期(1〜3月)と第2四半期(4〜6月)のホワイトペーパーは、平均ワード数が3000ワードを下回っていた。ところが同年第4四半期(10〜12月)になると、1万ワードを突破。それでも当時はまだ、比較的ワード数が少ないプロジェクトが存在した。ICOは2017年から爆発的に増えた。
平均的なホワイトペーパーの長さは、全体としてこのトレンドを反映している。2017年第1四半期は平均6000ワード以下だったが、着々と増えて、2018年第3四半期(7〜9月)には9000ワード近くになっている。
なぜ、ホワイトペーパーは長くなってきたのか。考えられる理由をいくつか示そう。
背景情報の増加
ビットコインは極めてオリジナルだったため、そのホワイトペーパーには大量の参考文献が含まれていない。だが業界が成熟するにつれて、ブロックチェーン技術や合意形成メカニズムの説明、業界全体の背景情報や問題点の説明といった記載が増えていった。
テクニカルな説明の増加
量と質は必ずしも一致するわけではない。なかには、一般的な読者を「おおっ」とうならせるために、テクニカルな内容を大量に詰め込んだホワイトペーパーもある。つまりその長文化は、ブランディングやマーケティングにおける「盛りすぎ」のトレンドを反映しているだけで、プロジェクトの質とはあまり関係がない可能性もある。
ライバルの増加
似たような仮想通貨が次々と登場するにしたがい、ライバルの長所と短所を詳述するホワイトペーパーが増えている。初期の仮想通貨はライバルが少ないか、明確な差別化要因を持っていたため、この部分が長くなることはなかった。だが今は、さまざまなニッチ分野で複数のブロックチェーン・プロジェクトが激しい競争を展開しており、自分たちのユニークなセールスポイントを明確にするためにも、より直接的な比較が必要とされている。
免責条項
各国政府がICOの規制に乗り出すなか、ホワイトペーパーに免責条項を含める必要性を感じるスタートアップが増えている。
おそらくこうした理由すべてが少しずつ重なって、ホワイトペーパーが長くなってきたのは間違いないだろう。では、現在の市場低迷は、ホワイトペーパーの内容に何らかの影響を与えるのか。その答えは、2019年に計画されているICOプロジェクトのホワイトペーパーを分析して、改めて考えていきたい。
(記事提供:LONGHASH)
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