東南アジア諸国でのICO/STO及び仮想通貨法規制の最新状況 金融部会レポート【フィスコ・仮想通貨コラム】
[19/03/28]
提供元:株式会社フィスコ
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仮想通貨コラム
第19回金融部会ではシンガポール/東南アジア諸国でのICO/STO及び仮想通貨法規制の最新状況と題してシンガポールでICO案件を多く手掛けた弁護士の森 和孝氏が講演を行った。講演では東南アジア各国の仮想通貨に関する動向がテーマとなった。
先ずは、東南アジア各国の仮想通貨に対する法規制についてだが、日本も含めた世界各国と同様に法規制が未熟な状態で、各国の対応については今後変わっていく可能性も大いにあると言える。
森弁護士によると、シンガポールではICOが盛んで、それに伴いSTOへの関心も高まっているという。また、外資企業を呼び込む手段として、シンガポールを始め、マレーシア、フィリピン、タイなど、各国は仮想通貨に高い関心を寄せていると考えられる。
その一方で、ベトナムやミャンマーなどは仮想通貨取引の全般を禁止しており、取引所の開設やICOの実施が事実上、禁止されている。特にベトナムは仮想通貨に関する大きな詐欺事件が発生した経緯があり、消費者保護の観点から慎重になっているとのことだ。
各国の大まかな仮想通貨交換業への規制に関しては以下のようになる。
ライセンス制をとっている国
シンガポール、マレーシア、タイ、カンボジア、ラオス、フィリピン(ライセンス制に移行)
前述の通り、ベトナムとミャンマーに関しては仮想通貨取引所は事実上禁止状態となっている。また森氏によると、ミャンマーではタイに出稼ぎに行く人が多いことから、本国への送金需要が高いため、今後政府が何らかの形で対応をしていく可能性があるとのことだ。また、インドネシアは仮想通貨に関する明確な規定がない状況となっている。
シンガポールでは決済サービス新法が成立し、2019年度中に施行予定となっている。新法では、デジタルペイメントトークンサービス事業を行う場合、ライセンスの取得が義務付けられる。
フィリピンは取引所の登録制度はあるものの、その後の規制強化の影響で仮想通貨と法定通貨との交換が禁止された。現在、カガヤン経済特区(CEZA)内では、海外向けの取引所の設立が許可されており、他の経済特区にも同様の動きが広がっている。
東南アジア各国のICO規制の現状
ICO/STOに関しても、各国の仮想通貨交換業への対応内容と、基本的な方向性は一致していると言える。東南アジア各国のICO規制の現状は以下のようになる。
許可制
タイ、マレーシア、フィリピン、ラオス、カンボジア
事実上禁止
ベトナム、ミャンマー
許可不要
シンガポール(ユーティリティトークンのみ許可不要)
インドネシアは仮想通貨交換業への規制と同様に、明確な規定がない状況となっている。
また、森氏によると、セキュリティトークンかユーティリティトークンなのかといった法的な論点も存在するという。例えば、マレーシアでは、全てのトークンがセキュリティトークンとして扱われるが、一方で、シンガポールではセキュリティトークンは許可を必要とするのに対し、ユーティリティトークンである場合、許可が必要無いため、ビジネスを行う際に重要なポイントとなる。
STOかそれともICOか
森氏によると、公益的な目的の実現にはICOは親和性があり、トークンにする意味については議論の余地があるものの、純粋な資金調達はSTOという流れがあるという。また、株式や社債といった他の資金調達方法と併せてICOを行うといった事例も増えているという。
また、シンガポールでも、現状ではIPOと同等のコストがかかるため、STOのパブリックセールは難しく、シンガポールで行われたSTOは少数私募で行われている場合がほとんどであるという。
また、STOに関する国際的な規制の枠組みの必要性についても言及した。
「証券法は日本を含め、各国に規制があるので全部の国の規制を通らないと世界中で売ることは当然できない。STOが普通のIPOと違うのは、流通の問題において、世界中で誰でも売買できる点だ。
ボーダレスを実現するというのが一つあるが、それが規制で現れない。売買するには各国のライセンスが必要だからだ。(中略)各国の規制を統一する方法を模索する流れが生まれつつある。条約とかそういうものが必要になってくる。ただSTOに対する考えは各国バラバラなので統一した枠組みをつくるには難しい状況にある。」
期待度は依然として高い
東南アジア各国では、新しい技術である仮想通貨や、ICO/STOなどに期待が寄せられている一方で、法律面を含めて、様々な課題が存在している状況だ。
ICOに関しては、経験者も増え、実施するコストは下がってきているが、STOに関しては依然としてコストがかかる。また、それぞれの仮想通貨の開発者数の違いなどから、どの仮想通貨を利用するかによっても、コストが大きく変わってくる。
森氏によると、プロジェクトには成功例もある一方で、最近では撤退例も多くみられるという。
「成功例と撤退例はいっぱいみてきたんですけど、最近は撤退する事例が多い。スキャムや詐欺というわけではないが、沢山資金を調達したがその後、うまくいかなかった。これは仕方ない。でも資金調達だけを仮想通貨でやろうという人はまだまだ多く、話題集め程度に考えている人たちはいる。
成功例は、プロジェクトの中心メンバーがその国に移住して就労ビザをとって本気でやる場合で、そうでないと資金が集まらない。(中略)仮想通貨を利用する意義というのを突き詰めていないと、お金が集まったとしてもその後成功しないだろう。」
講演の中で、フィリピンの経済特区の関係者が森氏の所属する弁護士事務所に売り込みにきたという話があったが、この話からも分かる通り、仮想通貨及びICOに商機を見出す動きは依然として活発にあると考えられる。
(記事提供:コインポスト)
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先ずは、東南アジア各国の仮想通貨に対する法規制についてだが、日本も含めた世界各国と同様に法規制が未熟な状態で、各国の対応については今後変わっていく可能性も大いにあると言える。
森弁護士によると、シンガポールではICOが盛んで、それに伴いSTOへの関心も高まっているという。また、外資企業を呼び込む手段として、シンガポールを始め、マレーシア、フィリピン、タイなど、各国は仮想通貨に高い関心を寄せていると考えられる。
その一方で、ベトナムやミャンマーなどは仮想通貨取引の全般を禁止しており、取引所の開設やICOの実施が事実上、禁止されている。特にベトナムは仮想通貨に関する大きな詐欺事件が発生した経緯があり、消費者保護の観点から慎重になっているとのことだ。
各国の大まかな仮想通貨交換業への規制に関しては以下のようになる。
ライセンス制をとっている国
シンガポール、マレーシア、タイ、カンボジア、ラオス、フィリピン(ライセンス制に移行)
前述の通り、ベトナムとミャンマーに関しては仮想通貨取引所は事実上禁止状態となっている。また森氏によると、ミャンマーではタイに出稼ぎに行く人が多いことから、本国への送金需要が高いため、今後政府が何らかの形で対応をしていく可能性があるとのことだ。また、インドネシアは仮想通貨に関する明確な規定がない状況となっている。
シンガポールでは決済サービス新法が成立し、2019年度中に施行予定となっている。新法では、デジタルペイメントトークンサービス事業を行う場合、ライセンスの取得が義務付けられる。
フィリピンは取引所の登録制度はあるものの、その後の規制強化の影響で仮想通貨と法定通貨との交換が禁止された。現在、カガヤン経済特区(CEZA)内では、海外向けの取引所の設立が許可されており、他の経済特区にも同様の動きが広がっている。
東南アジア各国のICO規制の現状
ICO/STOに関しても、各国の仮想通貨交換業への対応内容と、基本的な方向性は一致していると言える。東南アジア各国のICO規制の現状は以下のようになる。
許可制
タイ、マレーシア、フィリピン、ラオス、カンボジア
事実上禁止
ベトナム、ミャンマー
許可不要
シンガポール(ユーティリティトークンのみ許可不要)
インドネシアは仮想通貨交換業への規制と同様に、明確な規定がない状況となっている。
また、森氏によると、セキュリティトークンかユーティリティトークンなのかといった法的な論点も存在するという。例えば、マレーシアでは、全てのトークンがセキュリティトークンとして扱われるが、一方で、シンガポールではセキュリティトークンは許可を必要とするのに対し、ユーティリティトークンである場合、許可が必要無いため、ビジネスを行う際に重要なポイントとなる。
STOかそれともICOか
森氏によると、公益的な目的の実現にはICOは親和性があり、トークンにする意味については議論の余地があるものの、純粋な資金調達はSTOという流れがあるという。また、株式や社債といった他の資金調達方法と併せてICOを行うといった事例も増えているという。
また、シンガポールでも、現状ではIPOと同等のコストがかかるため、STOのパブリックセールは難しく、シンガポールで行われたSTOは少数私募で行われている場合がほとんどであるという。
また、STOに関する国際的な規制の枠組みの必要性についても言及した。
「証券法は日本を含め、各国に規制があるので全部の国の規制を通らないと世界中で売ることは当然できない。STOが普通のIPOと違うのは、流通の問題において、世界中で誰でも売買できる点だ。
ボーダレスを実現するというのが一つあるが、それが規制で現れない。売買するには各国のライセンスが必要だからだ。(中略)各国の規制を統一する方法を模索する流れが生まれつつある。条約とかそういうものが必要になってくる。ただSTOに対する考えは各国バラバラなので統一した枠組みをつくるには難しい状況にある。」
期待度は依然として高い
東南アジア各国では、新しい技術である仮想通貨や、ICO/STOなどに期待が寄せられている一方で、法律面を含めて、様々な課題が存在している状況だ。
ICOに関しては、経験者も増え、実施するコストは下がってきているが、STOに関しては依然としてコストがかかる。また、それぞれの仮想通貨の開発者数の違いなどから、どの仮想通貨を利用するかによっても、コストが大きく変わってくる。
森氏によると、プロジェクトには成功例もある一方で、最近では撤退例も多くみられるという。
「成功例と撤退例はいっぱいみてきたんですけど、最近は撤退する事例が多い。スキャムや詐欺というわけではないが、沢山資金を調達したがその後、うまくいかなかった。これは仕方ない。でも資金調達だけを仮想通貨でやろうという人はまだまだ多く、話題集め程度に考えている人たちはいる。
成功例は、プロジェクトの中心メンバーがその国に移住して就労ビザをとって本気でやる場合で、そうでないと資金が集まらない。(中略)仮想通貨を利用する意義というのを突き詰めていないと、お金が集まったとしてもその後成功しないだろう。」
講演の中で、フィリピンの経済特区の関係者が森氏の所属する弁護士事務所に売り込みにきたという話があったが、この話からも分かる通り、仮想通貨及びICOに商機を見出す動きは依然として活発にあると考えられる。
(記事提供:コインポスト)
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