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本命の相手は〇〇?いつか訪れる未来【Book】

実日ブックレビュー
人間はいつだって他人と自分を比べる。
「となりの芝生は青い」「となりの花は赤い」「となりの牡丹は大きくみえる」
となりの庭の芝が青くたって大きな牡丹がどんなに赤くたって正直どうでもいいが、「となりの奴はセックスがうまい」はどうだろうか。

あなたは交際相手や結婚相手が風俗に行っていたら、許す? 許さない?
多く人の回答は「許せない」だろうが、女性にこの質問をすると、度々「男にはつきあいがあるから」「相手も商売だし」なんていう人がいる。
男性に冒頭の質問をすると、「許せない」という回答が圧倒的だろう。「男は愛がなくても肌を重ねることができるけど、女はそこに気持ちが伴うから」なんてよく聞く言葉だ。
なぜ男だ女だなんてわけるのだろう。
男も女も性欲はあるし、肌を重ねたらその一時だけでもそれなりの情が湧く。おそらく、その事実を認めたくないのだ。女は自分が劣っていると認めることになるし、男は都合のいい免罪符がなくなる。

ジェラシーほど人を惑わすものはない。
私の好みのタイプはずっとかわらない。筋肉があるか、女性に慣れていないひと。筋肉があってもイケイケなタイプは苦手なので、どちらかというと女性に慣れていないということの方が優先かもしれない。
これはなぜだろう、と一度真面目に考えたことがあるが、ジェラシーだと気が付いた。
私は、“誰か”と比べられたくなかったのだ。過去に付き合っていた女性と比べられたくなくて、女性に慣れていない男性を好んでいたのだ。それぐらい、自分に自信がなかった。比べられていると思い込んで彼の過去に嫉妬するのも嫌だった。そんなことだからもちろん私は交際相手が風俗を利用するのは許せない。

「嫉妬ほど恐ろしく、愛しいものはない。」官能小説界で人気を誇る草凪優さんが著した『ジェラシー』の帯に書いてあるその言葉は、深くうなずけるものがある。この本を読んでからはなおさらだ。人は嫉妬で我を失う。だが、嫉妬によって自分を保っている。もっとも人間らしい部分と言えるだろう。では、人間に限りなく近く、見た目も性技も人間より優れている高性能なセックスアンドロイドは人間の嫉妬の対象となりえるだろうか?

今、セックスアンドロイドというものは私が知る限りこの世の中には無いが、いちばん近いのはラブドールだろう。調べてみると、技術が進んでいるのを感じる。人間とは程遠いものを想像していたが、最近のラブドールはまるで人間のようだ。各社が胸の柔らかさを競い合い、リアルな肌触りを求め、より良い素材でラブドールを作っている。レビューを見ると、「本当に胸の手触りが人間と同じです」「自分好みにカスタマイズできるのでありがたいです」と、喜びの声が多い。ラブドールの顔も、芸能人の誰かに似ているけれど誰と似ているかはわからない顔がたくさん用意されていて、なんだか本当に人間のようだ。自分好みの顔と体と肌の色と乳輪の色、陰毛の量まで選べる。そこまで自分好みにカスタマイズできてしまうと生身の人間はいらないのではないか…?と思ってしまう。女性向けに男性を模したラブドールもいる。ここまでくると大人のおもちゃなんて言っていられなくなり、少し怖くなる。

自分好みにカスタマイズできて人間にも劣らない高性能なセックスアンドロイド。その存在は決して遠くなく、近未来なのだ。風俗店にも人はいなくなり、アンドロイドが立ち並ぶ、そんな未来。あなたは自分のパートナーがセックスアンドロイドとセックスをしていたら、しかもそれにはまってしまったら、それでも「そこに愛はないから」なんて言えるだろうか?最近では無機物を愛する人もいる。愛と性は多様化しているのだ。それに、最高のエクスタシーを感じたとき、情を抱かずにいられるのだろうか。いられないだろう。
大人のおもちゃにジェラシーを感じる生身の人間。なんだか最高に人間らしく、愛おしい。

「となりのアンドロイドはセックスがうまい」
こんなことわざが当たり前になるのは、もうすぐそこの未来かもしれない。

(実業之日本社 コンテンツ・ライツ本部 鎌倉 楓)

『ジェラシー』 草凪優 著 1600円+税 実業之日本社




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