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青春のバイブルは出先で捨てるべし【Book】

実日ブックレビュー
団体で行動していると、気が付きたくないことに気が付くことがしばしばある。
それは、目配せや、持ち物、着ている服など、日常の些細なことだ。例えば、誰かと誰かが浮気しているだとか、今日はあの人デートだろうなとか、この人いま嘘ついたなとか。それは自分に関係するものもあれば、まったく関係ないこともあるのだから、そういったことは、きっとまさしく本当に「発見」なのだ。何も気にしていなくても、何も考えていなくても察してしまう。

私は、ゴミを出すとき、できるだけ個人情報がばれないように注意をする。くだらないことしか書いていないメモ用紙でもなるべく細かくしてから捨て、外から見ても何が書いてあるか見られないようにする。明確な理由はないが、なんだかそれを見られるだけで自分のプライベートを覗かれているような気がするのだ。特にゴミは、自分が世の中に出している最大のプライベートだと思う。ストーカーはゴミをあさったりすることがあるというが、確かにその人を知るのには一番手っ取り早いような気がする。だってその人が今日食べたものから、下着のサイズ、服用している薬までわかってしまう。
私も、一大決心で捨てた青春のバイブルが母に見つかって手元に戻ってきた時のなんとも言えない気持ちは今でも覚えている。

オフィスで起こる様々な事件を、オフィスの清掃員として働くキリコが解決する『天使はモップを持って』は、まさにゴミから事件を読み解いていく。
年齢も若く、恰好も清掃員にはみえないが、清掃員という仕事にとても誇りをもって働いているキリコは、なんとなく社内の異変や状況がゴミから読み取れてしまう。

人は、知らない方がいいこともある。知ることによってその話の登場人物になってしまう気がするし、面倒なことも増える。また、知ることによって他人のプライベートな部分をのぞき見している気分になってあまり良い気分ではない。
だが、キリコはその持ち前の洞察力でオフィス内での事件や悩みを次々と解決し、オフィスだけではなく、オフィスにいる人たちの心まできれいにしていく。

こんな素敵な清掃員がいるオフィスなら私もゴミを安心して捨てられるかもしれない。
けれどもやはり、過去の教訓を未来につなげるために言いたい。
エロ本捨てるときは最大限用心して。

(実業之日本社 コンテンツ・ライツ本部 鎌倉 楓)
『天使はモップを持って』 近藤史恵 著 667円+税 実業之日本社




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