日本が「対話があった」かのように報道する日中外相の通りすがり接触(1)【中国問題グローバル研究所】
[26/07/28]
提供元:株式会社フィスコ
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GRICI
*16:24JST 日本が「対話があった」かのように報道する日中外相の通りすがり接触(1)【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページでも配信している(※1)遠藤 誉所長の考察を2回に渡ってお届けする。
フィリピンのマニラで開催されていたASEAN会議の会場で、7月22日、日本の茂木外相と中国の王毅外相がすれ違った。通りすがりで一瞬挨拶を交わしただけなのに、日本ではあたかも「対話」があったかのような期待を寄せる報道がなされたため、中国政府は「対話は一切なかった」と全面否定。すると日本のネットでは今度は「中国が負け惜しみを言っている」かのようなコメントが湧いて出た。
そのため中国のネットではこれを「■瓷(当たり屋)外交」(※石へんに並)という言葉で嘲笑している。
日本が「通りすがりの知人同士の一瞬の挨拶」を「ついに中国側が折れた会談」であるかのように報じる裏には、もちろん「高市発言」によって悪化した日中関係の雪解けを期待する思いがあるだろうが、それ以上にルビオ米国務長官の「日中関係悪化を嘆く声」があったのを見逃すことができない。
それを気にしたためか、茂木外相の記者会見での、まるで「ペテン師」のような回答の仕方が決定的だったように思う。
◆通りすがりの挨拶を「会談か」と期待した日本のメディア
出現順番から言うと、たとえば2026年7月23日午後8:20、FNNプライムオンラインの<茂木外務大臣が中国・王毅外相と会話 関係悪化以降初めて>(※2)を始め、数多くの情報があるが、大きいのはやはり明確に「期待」という言葉を出したNHKニュースだろう。7月24日5:52、<日中外相が接触 中国側の出方を慎重に見極めへ 日本政府 | NHKニュース|日中関係、高市内閣>(※3)とタイトルは慎重ながら、記事の内容では「日中関係が悪化して以降初めて」と書き、「日本政府内では関係改善のきっかけになるのではないかと期待する声がある」としている。さらに「政府内では前向きな動きだとして関係改善のきっかけになるのではないかと期待する声が出ています」と、「期待」の連続だ。
7月25日になると日本の共同通信が<王毅外相「茂木氏と会話せず」 中国国営メディアが投稿>(※4)と発信しているのに、7月26日になってもなお、時事ドットコムは<日中改善、道険しく 約9カ月ぶり外相対話>(※5)と、「昨年11月の高市早苗首相による台湾有事発言で日中関係が悪化してからは初めて」を強調している。さらに「それだけに日本政府内からは『短時間でもやりとりできたのは有意義だ』(関係者)との好意的な見方が広がった」と「期待感」を滲ませているのである。
◆茂木外相の臨時会見から見える実情と「期待」を抱かせた「犯人」
実際はどうだったのかを、茂木外相本人が7月23日に臨時会見をし、その模様を日本の外務省が文字化(※6)しているので、その頁から解読してみよう。以下Q&Aを略記して要点だけを列挙する。注目点に筆者が番号を付けた。
記者:日中外相間で「やり取り」があったのか?あったとすれば何を話したか?
茂木:会場内におきまして、王毅外交部長と短時間ですね、挨拶を任(ママ)す機会がありました。(1)二国間関係についてですね、話をしたところであります。これ以上については外交上のやり取りがありますから、コメントは差し控えたいと思います。
記者:やり取りの時間は何分か?
茂木:時間は短時間でありました。
記者:対話が実現したことについての受け止めと、今後の展望は?
茂木:昨日たまたまですね、ちょうど一連の会合、(2)日ASEANの前が中ASEANの会合をやっていまして、そこですれ違うという形でですね、接触の機会、これがあったということであります。日本としては(3)これまでもですね、あらゆるレベルの対応についてはオープンである、(4)こういったことを申し上げてきました。同時に、地域の平和にとってですね、日本、中国は大きな役割を負っているわけでありまして、(5)しっかりこれからも対話を続けていくということは極めて重要だと、このように考えです。
(外務省HPからの略記引用は以上)
この茂木氏の発言の仕方が曲者(くせもの)だ。
まず(1)をご覧いただきたい。「二国間関係について話をしたところであります」という表現だ。(2)にあるように異なる会議場から出てきた際に、会議場の出入り口がある会場ロビー辺りで「すれ違った」だけだ。これまで何度も会っていた仲だから、目が合えば「やあ、こんにちは」くらいは言うだろう。もちろん声を掛けたのは茂木氏の方。王毅はその前に別の会場で日本の「新型軍国主義」に関する批判演説をしているので、声を掛けられたくはなかっただろうが、声を掛けられたからには「ああ、どうも」くらいの返事はするだろう。そこで茂木氏は、たとえば「日中、うまくやりましょうや」くらいのことは挨拶として「ひとこと」言ったかもしれない。王毅はそれに対して「はぁ」くらいの程度で応じて立ち去って行ったということもあり得る。それを茂木氏は(1)で「二国間関係について話をしたところであります」と表現した。これはほぼ「ペテン」に近い表現だ。だから(1)の後半で「これ以上については外交上のやり取りがありますから、コメントは差し控えたいと思います」と逃げている。
(3)と(4)に注目していただくと「これまでも〜と申し上げてきた」と、過去の話をしているだけなのに、よほど注意深く聞いてないと、あたかも「王毅外相に〜と申し上げた」かのごとく聞こえてしまう。汚いやり口だ。
同様に(5)は、今後の希望に関して述べているだけなのに、まるで「すれ違いざまの挨拶」に含まれているかのような錯覚を与える。日本のメディアに「勘違いさせた犯人」はわが国の茂木外務大臣と言えなくはない。
こうした「まやかし」のような表現を駆使してまで、なぜ茂木氏は「あたかも王毅外相と日中問題に関して会話をした」かのようにアピールしなければならなかったのだろうか?
◆前日にルビオ米国務長官が「日中関係の悪化を懸念している」と表明
最も大きな原因の一つは、茂木氏が23日に臨時会見を行う前の日の22日夕刻に、ルビオ米国務長官が記者会見で「日中関係が良くないことを懸念する」という趣旨のことを「ひとこと」言ってしまった、ということにあるのではないだろうか。
7月22日夕刻、ルビオは王毅と長時間にわたって会談したことに関する記者会見を行なった。それは米国国務省のウェブサイト(※7)に詳細に掲載されている。記者会見の主たる目的は米中外相会談の内容に関してで、ルビオは「習近平国家主席を9月に米国に迎えるための基礎固めである」と明言している。つまり習近平訪米の赤絨毯を敷くための事前会談であったわけだ。ただ、その記者会見の中で「日中関係の悪化に関してどう見ているか?」という質問も出た。
そこでルビオが日米外相会談にも触れ、「日中関係の悪化を懸念している」と述べたわけだ。7月21日には日米外相会談も行なわれているが、日本の外務省のウェブサイト(※8)を見る限り、日中問題に関しては何も書かれていない。
茂木氏の臨時会見での発言は、ルビオの記者会見での懸念を拭おうとするあまり、まるで「ペテン師」まがいの表現になったのではないかと推測される。
「中国では「■瓷(当たり屋)」と嘲笑 日本が「対話があった」かのように報道する日中外相の通りすがり接触(2)【中国問題グローバル研究所】」に続く。
2020年委訪日した時の王毅外相と茂木外相(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)
(※1)https://grici.or.jp/
(※2)https://www.fnn.jp/articles/-/1080811
(※3)https://news.web.nhk/newsweb/na/na-k10015184421000
(※4)https://news.yahoo.co.jp/articles/0ae6e251b272cd62329676de12ad4b09902d3ced
(※5)https://www.jiji.com/jc/article?k=2026072500369&g=pol
(※6)https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/kaiken/kaikenit_000001_00141.html#topic1
(※7)https://www.state.gov/releases/office-of-the-spokesperson/2026/07/secretary-of-state-marco-rubio-remarks-to-the-press-14
(※8)https://www.mofa.go.jp/mofaj/na/na1/us/pageit_000001_03083.html
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◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページでも配信している(※1)遠藤 誉所長の考察を2回に渡ってお届けする。
フィリピンのマニラで開催されていたASEAN会議の会場で、7月22日、日本の茂木外相と中国の王毅外相がすれ違った。通りすがりで一瞬挨拶を交わしただけなのに、日本ではあたかも「対話」があったかのような期待を寄せる報道がなされたため、中国政府は「対話は一切なかった」と全面否定。すると日本のネットでは今度は「中国が負け惜しみを言っている」かのようなコメントが湧いて出た。
そのため中国のネットではこれを「■瓷(当たり屋)外交」(※石へんに並)という言葉で嘲笑している。
日本が「通りすがりの知人同士の一瞬の挨拶」を「ついに中国側が折れた会談」であるかのように報じる裏には、もちろん「高市発言」によって悪化した日中関係の雪解けを期待する思いがあるだろうが、それ以上にルビオ米国務長官の「日中関係悪化を嘆く声」があったのを見逃すことができない。
それを気にしたためか、茂木外相の記者会見での、まるで「ペテン師」のような回答の仕方が決定的だったように思う。
◆通りすがりの挨拶を「会談か」と期待した日本のメディア
出現順番から言うと、たとえば2026年7月23日午後8:20、FNNプライムオンラインの<茂木外務大臣が中国・王毅外相と会話 関係悪化以降初めて>(※2)を始め、数多くの情報があるが、大きいのはやはり明確に「期待」という言葉を出したNHKニュースだろう。7月24日5:52、<日中外相が接触 中国側の出方を慎重に見極めへ 日本政府 | NHKニュース|日中関係、高市内閣>(※3)とタイトルは慎重ながら、記事の内容では「日中関係が悪化して以降初めて」と書き、「日本政府内では関係改善のきっかけになるのではないかと期待する声がある」としている。さらに「政府内では前向きな動きだとして関係改善のきっかけになるのではないかと期待する声が出ています」と、「期待」の連続だ。
7月25日になると日本の共同通信が<王毅外相「茂木氏と会話せず」 中国国営メディアが投稿>(※4)と発信しているのに、7月26日になってもなお、時事ドットコムは<日中改善、道険しく 約9カ月ぶり外相対話>(※5)と、「昨年11月の高市早苗首相による台湾有事発言で日中関係が悪化してからは初めて」を強調している。さらに「それだけに日本政府内からは『短時間でもやりとりできたのは有意義だ』(関係者)との好意的な見方が広がった」と「期待感」を滲ませているのである。
◆茂木外相の臨時会見から見える実情と「期待」を抱かせた「犯人」
実際はどうだったのかを、茂木外相本人が7月23日に臨時会見をし、その模様を日本の外務省が文字化(※6)しているので、その頁から解読してみよう。以下Q&Aを略記して要点だけを列挙する。注目点に筆者が番号を付けた。
記者:日中外相間で「やり取り」があったのか?あったとすれば何を話したか?
茂木:会場内におきまして、王毅外交部長と短時間ですね、挨拶を任(ママ)す機会がありました。(1)二国間関係についてですね、話をしたところであります。これ以上については外交上のやり取りがありますから、コメントは差し控えたいと思います。
記者:やり取りの時間は何分か?
茂木:時間は短時間でありました。
記者:対話が実現したことについての受け止めと、今後の展望は?
茂木:昨日たまたまですね、ちょうど一連の会合、(2)日ASEANの前が中ASEANの会合をやっていまして、そこですれ違うという形でですね、接触の機会、これがあったということであります。日本としては(3)これまでもですね、あらゆるレベルの対応についてはオープンである、(4)こういったことを申し上げてきました。同時に、地域の平和にとってですね、日本、中国は大きな役割を負っているわけでありまして、(5)しっかりこれからも対話を続けていくということは極めて重要だと、このように考えです。
(外務省HPからの略記引用は以上)
この茂木氏の発言の仕方が曲者(くせもの)だ。
まず(1)をご覧いただきたい。「二国間関係について話をしたところであります」という表現だ。(2)にあるように異なる会議場から出てきた際に、会議場の出入り口がある会場ロビー辺りで「すれ違った」だけだ。これまで何度も会っていた仲だから、目が合えば「やあ、こんにちは」くらいは言うだろう。もちろん声を掛けたのは茂木氏の方。王毅はその前に別の会場で日本の「新型軍国主義」に関する批判演説をしているので、声を掛けられたくはなかっただろうが、声を掛けられたからには「ああ、どうも」くらいの返事はするだろう。そこで茂木氏は、たとえば「日中、うまくやりましょうや」くらいのことは挨拶として「ひとこと」言ったかもしれない。王毅はそれに対して「はぁ」くらいの程度で応じて立ち去って行ったということもあり得る。それを茂木氏は(1)で「二国間関係について話をしたところであります」と表現した。これはほぼ「ペテン」に近い表現だ。だから(1)の後半で「これ以上については外交上のやり取りがありますから、コメントは差し控えたいと思います」と逃げている。
(3)と(4)に注目していただくと「これまでも〜と申し上げてきた」と、過去の話をしているだけなのに、よほど注意深く聞いてないと、あたかも「王毅外相に〜と申し上げた」かのごとく聞こえてしまう。汚いやり口だ。
同様に(5)は、今後の希望に関して述べているだけなのに、まるで「すれ違いざまの挨拶」に含まれているかのような錯覚を与える。日本のメディアに「勘違いさせた犯人」はわが国の茂木外務大臣と言えなくはない。
こうした「まやかし」のような表現を駆使してまで、なぜ茂木氏は「あたかも王毅外相と日中問題に関して会話をした」かのようにアピールしなければならなかったのだろうか?
◆前日にルビオ米国務長官が「日中関係の悪化を懸念している」と表明
最も大きな原因の一つは、茂木氏が23日に臨時会見を行う前の日の22日夕刻に、ルビオ米国務長官が記者会見で「日中関係が良くないことを懸念する」という趣旨のことを「ひとこと」言ってしまった、ということにあるのではないだろうか。
7月22日夕刻、ルビオは王毅と長時間にわたって会談したことに関する記者会見を行なった。それは米国国務省のウェブサイト(※7)に詳細に掲載されている。記者会見の主たる目的は米中外相会談の内容に関してで、ルビオは「習近平国家主席を9月に米国に迎えるための基礎固めである」と明言している。つまり習近平訪米の赤絨毯を敷くための事前会談であったわけだ。ただ、その記者会見の中で「日中関係の悪化に関してどう見ているか?」という質問も出た。
そこでルビオが日米外相会談にも触れ、「日中関係の悪化を懸念している」と述べたわけだ。7月21日には日米外相会談も行なわれているが、日本の外務省のウェブサイト(※8)を見る限り、日中問題に関しては何も書かれていない。
茂木氏の臨時会見での発言は、ルビオの記者会見での懸念を拭おうとするあまり、まるで「ペテン師」まがいの表現になったのではないかと推測される。
「中国では「■瓷(当たり屋)」と嘲笑 日本が「対話があった」かのように報道する日中外相の通りすがり接触(2)【中国問題グローバル研究所】」に続く。
2020年委訪日した時の王毅外相と茂木外相(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)
(※1)https://grici.or.jp/
(※2)https://www.fnn.jp/articles/-/1080811
(※3)https://news.web.nhk/newsweb/na/na-k10015184421000
(※4)https://news.yahoo.co.jp/articles/0ae6e251b272cd62329676de12ad4b09902d3ced
(※5)https://www.jiji.com/jc/article?k=2026072500369&g=pol
(※6)https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/kaiken/kaikenit_000001_00141.html#topic1
(※7)https://www.state.gov/releases/office-of-the-spokesperson/2026/07/secretary-of-state-marco-rubio-remarks-to-the-press-14
(※8)https://www.mofa.go.jp/mofaj/na/na1/us/pageit_000001_03083.html
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