富士通研究所、ブロックチェーンのトランザクション処理を高速化する技術を開発
[17/07/31]
TOKYO, Jul 31, 2017 - (JCN Newswire) - 株式会社富士通研究所(注1)(以下、富士通研究所)は、The Linux Foundationが主催するHyperledgerにおけるブロックチェーンフレームワークの一つであるHyperledger Fabricにおいて、トランザクション処理を高速化する技術を開発しました。
ブロックチェーンは、中央集権的な管理者を持たずに、高い透明性と信頼性を担保しつつ、耐改ざん性に優れたシステムを実現する技術として、金融分野をはじめとする様々な分野での利用が期待されています。
今回、これまでボトルネックとなっていたアプリケーションとブロックチェーン基盤との間の通信処理を効率化することにより、トランザクション処理を高速化する技術を開発しました。本技術を「Hyperledger Fabric v0.6.1(注2)」に実装して測定したところ、取引性能において従来方式と比べ約2.7倍の高速化を実現しました。
本技術により、高い性能が要求されるオンライン取引システムへのブロックチェーン技術の適用が可能になります。
本技術の詳細については、7月20日から7月21日に英国ロンドンで開催されたブロックチェーンに関する国際会議「P2P Financial Systems 2017」にて発表しました。
開発の背景
ブロックチェーンは、参加する当事者同士が互いに取引データの正当性を検証してチェーン状に繋げて保持することで、透明性や信頼性が高く、改ざんが極めて困難な共有台帳システムを、中央集権的な管理者を持つことなく実現します。
なかでも富士通株式会社がプレミアメンバーとして参画するHyperledgerにおける、オープンなブロックチェーンフレームワークの一つであるHyperledger Fabricは、堅牢な商取引プラットフォームを構築するブロックチェーンとして注目されています。Hyperledger Fabricは、コンソーシアム型(注3)と呼ばれる特定の複数の参加者を対象としたもので、金融分野をはじめ、製造業におけるサプライチェーン管理、不動産契約、ライセンス管理、エネルギー取引といった様々な分野での利用が試みられています。
課題
ブロックチェーンでは、参加者数に応じたノード群がネットワークを形成し、取引処理の実行や取引の正当性の検証といった一連の処理がネットワークを介して連携して進みます。そのため、従来の集中管理型のシステムに比べて、ネットワークを介した通信の影響により単位時間あたりに実行できる取引の数が制限され、大量の取引処理を即時に行うなどの高い性能が要求される、オンライン取引システムへの適用が課題となっていました。
開発した技術
ブロックチェーンでは、参加ノード間で合意をとりながら、アプリケーションがデータを共有台帳に読み書きする形で取引処理を実現し、それら取引データをチェーン状に連結して管理することで安全性を確保しています。
今回、富士通研究所独自の解析技術により、日本国内の複数拠点でコンソーシアム型ブロックチェーンを運用するケースなど64ms程度以下の応答時間が必要となるネットワーク状況下においては、取引処理におけるアプリケーションとブロックチェーン基盤との間の通信が主要なボトルネック要因であることがわかりました。
これをもとに富士通研究所は、アプリケーションとブロックチェーン基盤との間の通信回数を削減することでトランザクション処理を高速化する以下の二つの技術を開発しました。開発した技術の特長は以下のとおりです。
1.データの差分更新(DUS: Differential Update State)機能
ブロックチェーンの取引処理においては、特定のデータを取得してアプリケーション上で演算処理を行ないブロックチェーン基盤に書き戻すという処理が多く用いられます。そこで、今回、指示したデータに対する差分演算のみをブロックチェーン基盤上で一回の処理で実行し、通信回数に直結する演算数を削減する機能を開発しました。
2.一括更新(CR: Compound Request)機能
ブロックチェーン基盤に対して複数の処理をまとめて送付して一括実行する機能を開発しました。本機能は、複数処理をまとめることによりブロックチェーン基盤上での処理を効率化するとともに通信回数を削減し、まとめた処理に部分的なエラーが発生した場合には、一括実行した起点に巻き戻し、再処理を行うことで精度を保ちます。
効果
本技術を、安定版である「Hyperledger Fabric v0.6.1」に実装し、4台のサーバから構成されるブロックチェーン基盤にて取引性能の測定を行いました。従来方式では毎秒約500取引のところを、開発した技術を用いることで従来比約2.7倍となる毎秒約1,350取引を実現しました。
今後
今回開発した技術により、金融機関のように毎秒1,000取引を超えるような高い性能が要求されるオンライン取引システムに対し、性能面でHyperledger Fabricフレームワークの適用が可能になります。
富士通研究所では、Hyperledger Fabricフレームワークの最新版に対応しながら、さらなる高速化技術の開発を進めるとともに、本技術の業務適用を想定した検証を進め、2017年度中に富士通株式会社での製品化を計画中です。
本リリースの詳細は下記URLをご参照ください。
http://pr.fujitsu.com/jp/news/2017/07/31.html
注釈
注1 株式会社富士通研究所:本社 神奈川県川崎市、代表取締役社長 佐々木繁。
注2 Hyperledger Fabric v0.6.1:2017年7月5日現在におけるHyperledger Fabricフレームワークの安定版。
注3 コンソーシアム型:ブロックチェーンはパブリック型、コンソーシアム型、プライベート型の3種類に大別され、このうち、金融機関などにはコンソーシアム型の適用が有力視されている。
概要:富士通株式会社
詳細は http://jp.fujitsu.com/ をご覧ください。
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ブロックチェーンは、中央集権的な管理者を持たずに、高い透明性と信頼性を担保しつつ、耐改ざん性に優れたシステムを実現する技術として、金融分野をはじめとする様々な分野での利用が期待されています。
今回、これまでボトルネックとなっていたアプリケーションとブロックチェーン基盤との間の通信処理を効率化することにより、トランザクション処理を高速化する技術を開発しました。本技術を「Hyperledger Fabric v0.6.1(注2)」に実装して測定したところ、取引性能において従来方式と比べ約2.7倍の高速化を実現しました。
本技術により、高い性能が要求されるオンライン取引システムへのブロックチェーン技術の適用が可能になります。
本技術の詳細については、7月20日から7月21日に英国ロンドンで開催されたブロックチェーンに関する国際会議「P2P Financial Systems 2017」にて発表しました。
開発の背景
ブロックチェーンは、参加する当事者同士が互いに取引データの正当性を検証してチェーン状に繋げて保持することで、透明性や信頼性が高く、改ざんが極めて困難な共有台帳システムを、中央集権的な管理者を持つことなく実現します。
なかでも富士通株式会社がプレミアメンバーとして参画するHyperledgerにおける、オープンなブロックチェーンフレームワークの一つであるHyperledger Fabricは、堅牢な商取引プラットフォームを構築するブロックチェーンとして注目されています。Hyperledger Fabricは、コンソーシアム型(注3)と呼ばれる特定の複数の参加者を対象としたもので、金融分野をはじめ、製造業におけるサプライチェーン管理、不動産契約、ライセンス管理、エネルギー取引といった様々な分野での利用が試みられています。
課題
ブロックチェーンでは、参加者数に応じたノード群がネットワークを形成し、取引処理の実行や取引の正当性の検証といった一連の処理がネットワークを介して連携して進みます。そのため、従来の集中管理型のシステムに比べて、ネットワークを介した通信の影響により単位時間あたりに実行できる取引の数が制限され、大量の取引処理を即時に行うなどの高い性能が要求される、オンライン取引システムへの適用が課題となっていました。
開発した技術
ブロックチェーンでは、参加ノード間で合意をとりながら、アプリケーションがデータを共有台帳に読み書きする形で取引処理を実現し、それら取引データをチェーン状に連結して管理することで安全性を確保しています。
今回、富士通研究所独自の解析技術により、日本国内の複数拠点でコンソーシアム型ブロックチェーンを運用するケースなど64ms程度以下の応答時間が必要となるネットワーク状況下においては、取引処理におけるアプリケーションとブロックチェーン基盤との間の通信が主要なボトルネック要因であることがわかりました。
これをもとに富士通研究所は、アプリケーションとブロックチェーン基盤との間の通信回数を削減することでトランザクション処理を高速化する以下の二つの技術を開発しました。開発した技術の特長は以下のとおりです。
1.データの差分更新(DUS: Differential Update State)機能
ブロックチェーンの取引処理においては、特定のデータを取得してアプリケーション上で演算処理を行ないブロックチェーン基盤に書き戻すという処理が多く用いられます。そこで、今回、指示したデータに対する差分演算のみをブロックチェーン基盤上で一回の処理で実行し、通信回数に直結する演算数を削減する機能を開発しました。
2.一括更新(CR: Compound Request)機能
ブロックチェーン基盤に対して複数の処理をまとめて送付して一括実行する機能を開発しました。本機能は、複数処理をまとめることによりブロックチェーン基盤上での処理を効率化するとともに通信回数を削減し、まとめた処理に部分的なエラーが発生した場合には、一括実行した起点に巻き戻し、再処理を行うことで精度を保ちます。
効果
本技術を、安定版である「Hyperledger Fabric v0.6.1」に実装し、4台のサーバから構成されるブロックチェーン基盤にて取引性能の測定を行いました。従来方式では毎秒約500取引のところを、開発した技術を用いることで従来比約2.7倍となる毎秒約1,350取引を実現しました。
今後
今回開発した技術により、金融機関のように毎秒1,000取引を超えるような高い性能が要求されるオンライン取引システムに対し、性能面でHyperledger Fabricフレームワークの適用が可能になります。
富士通研究所では、Hyperledger Fabricフレームワークの最新版に対応しながら、さらなる高速化技術の開発を進めるとともに、本技術の業務適用を想定した検証を進め、2017年度中に富士通株式会社での製品化を計画中です。
本リリースの詳細は下記URLをご参照ください。
http://pr.fujitsu.com/jp/news/2017/07/31.html
注釈
注1 株式会社富士通研究所:本社 神奈川県川崎市、代表取締役社長 佐々木繁。
注2 Hyperledger Fabric v0.6.1:2017年7月5日現在におけるHyperledger Fabricフレームワークの安定版。
注3 コンソーシアム型:ブロックチェーンはパブリック型、コンソーシアム型、プライベート型の3種類に大別され、このうち、金融機関などにはコンソーシアム型の適用が有力視されている。
概要:富士通株式会社
詳細は http://jp.fujitsu.com/ をご覧ください。
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