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ISIDと東京大学、人工市場のシミュレーション環境をクラウド上に構築

TOKYO, Nov 14, 2019 - (JCN Newswire) - 株式会社電通国際情報サービス(本社:東京都港区、代表取締役社長:名和 亮一、以下ISID)と、東京大学大学院工学系研究科和泉研究室(以下和泉研究室)はこのほど、エージェント・ベース・モデル※1(以下ABM)を用いた人工市場※2のシミュレーション環境(以下本システム)を、日本マイクロソフト株式会社、Cloudera, Inc. 、Simudyne Ltd.の協力を得て、クラウド上に構築しました。大規模な並列分散処理環境が不可欠なABMによるシミュレーションを、オープンなクラウド環境で実行可能とする画期的な試みです。両者は今後、本システムを活用し、市場リスク分析など金融分野へのABMの応用に向けた共同研究を進めてまいります。

銀行間の関係性をネットワーク図で示した画面

シミュレーション結果のグラフ表示画面

■背景とねらい■
デジタライゼーションの急速な進展に伴い、市場環境や消費行動はますます複雑化・多様化しています。特に金融分野においては、国際情勢の急激な変化や暗号資産の登場などにより、市場に影響を及ぼす新たな要因や市場参加者が次々と生まれ、従来の統計的手法だけでは、将来起こりうる変化を的確に予測することが難しくなっています。

ABMは、複数の自律的なエージェント(プログラム)の行動と相互作用が全体に与える影響をシミュレーションするコンピューターモデルの一つで、世界の複雑な現象を再現・予測する手法として学術研究が進められてきた概念です。これを用いて金融市場や経済現象を仮想的にシミュレーションする環境、すなわち人工市場を形成することにより、確度の高い予測が可能になると期待されており、欧米を中心に活用が進み始めています。しかしながら、ABMによるシミュレーションには膨大なコンピューターリソースが必要となるため、国内では実用に至っていません。

このような状況の下、今回両者は、オープンなクラウド基盤上にABMのシミュレーション環境を構築する、画期的な試みを実現しました。具体的には、高い拡張性を持つエンタープライズグレードクラウドのMicrosoft Azure上に、Clouderaの並列分散処理技術であるCloudera CDHとABMのシミュレーションツールであるSimudyneを実装し、さらに和泉研究室が開発した銀行間ネットワーク・モデル※3を組み込んだもので、金融分野へのABMの応用を大きく前進させる取り組みです。

■両者の役割と今後の展望■
ISIDは、アルゴリズムトレードやリスク管理シミュレーションなど、金融領域の大規模システム構築実績を数多く有し、先進クラウドテクノロジーを活用したシステム構築も多数手掛けています。本件においては、Microsoft AzureとCloudera CDHを活用した基盤の構築からSimudyneの導入、銀行間ネットワーク・モデルのポーティングまで、システム環境構築をトータルで実施しました。今後は、本システムの実用化に向けた技術検証とサービスモデルの開発に取り組んでいく計画です。

和泉研究室は、実社会で相互作用する複数の人間の行動データから、集団としての人間行動モデルを構築する基盤技術の研究開発に取り組み、社会経済シミュレーションや人工市場シミュレーションへの応用を進めています。本件においては、独自に開発した銀行間ネットワーク・モデルを提供しています。今後は本システムを活用して「銀行間ネットワークにおける連鎖破綻」などをテーマとするシミュレーションを実施し、金融分野におけるABM活用の有効性を検証するとともに、研究論文等を通じてその成果を公表していく計画です。

■両者および協力各社のエンドースメント■
株式会社電通国際情報サービス執行役員金融ソリューション事業部長の平島剛は次のように述べています。「ISIDは、和泉研究室が挑戦する金融領域におけるエージェント・ベース・モデルの活用に期待いたします。特に市場系領域への展開においてはISIDの強みの一つである業務ノウハウを生かすことができます。和泉研究室と共同でテクノロジーによる可能性を広げることで、金融市場全体の発展に寄与できるよう取り組んでまいります」

東京大学大学院工学系研究科教授の和泉潔は次のように述べています。「金融市場の制度設計にABMを活用する研究は、まだ初期段階ですが金融実務者からもとても期待されている分野です。今までシミュレーション・プログラム作成の困難さが課題でしたが、今回の試みのような応用事例が増えて、そのハードルが下がりプログラムの標準化や再利用が進めば、ABMによる制度設計の実用性が大いに高まると期待できます」

日本マイクロソフト株式会社パートナー事業本部パートナービジネス統括本部統括本部長の安藤浩氏は次のように述べています。「日本マイクロソフトは、ISIDと東京大学和泉研究室による金融分野へのエージェント・ベース・モデルの応用を目的とした共同研究開始を心より歓迎いたします。高負荷なシミュレーション実行環境を、Azure上で柔軟かつセキュアに構築できるよう支援してまいります」

Cloudera, Inc. 金融サービス担当ディレクターのRichard L. Harmon氏は次のように述べています。「Clouderaは、東京大学和泉研究室が行った変革的な研究は、ABMシミュレーションの理論的な進歩と、グローバルをはじめ日本の金融システムが直面する重大な変化に対処する能力を提供すると信じています。また、この度の研究によりクラウドコンピューティングが、これまで非常に高価なスーパーコンピューティングへの投資が不可欠だったリスク、経済、社会的課題に対処するための新しいアプローチの採用を加速させる大きな可能性を示しています。Clouderaは、ISIDと緊密に協力し、和泉教授のチームが、グローバルな金融システムが直面する複数の基本課題に対処するために新たな洞察をもたらすことを期待しています」

Simudyne Ltd. CEO のJustin Lyon 氏は次のように述べています。「ISIDと東京大学が画期的な取り組みであるエージェント・ベース・シミュレーションを活用していることを嬉しく思います。この取り組みは、現実環境で相互作用する金融市場参加者の創発する行動を理解する上で有効です。この取り組みによって、日本がこれまでの伝統的な方法や仮定を超えて、金融市場の理解を促進することを期待しています」

<ご参考資料>
Microsoft Azureについて
Microsoft Azureは、マイクロソフトが提供する、オープンで柔軟でセキュアな、エンタープライズレベルのクラウドコンピューティング・プラットフォームです。IaaS及びPaaSをサポートし、AIやIoTなど最新のクラウドサービスを包含します。

Cloudera CDHについて
米Cloudera, Inc.が提供する、Apache Hadoopや主要なオープンソースプロジェクトを含む、Clouderaのオープンソース・ソフトウェアディストリビューションです。

Simudyneについて
英Barclays社からの出資を受け、2016年にロンドンで設立されたスタートアップ企業Simudyne Ltd.が開発した、エージェント・ベース・モデルを用いたシミュレーションツールです。

※1 エージェント・ベース・モデル:コンピューターモデルの一つで、複数のエージェント(プログラム)が同時に活動し、相互作用する状況をシミュレートすることによって、複雑な現象を再現し、膨大な数のシナリオを予測することを実現する。
※2 人工市場:コンピューター上に仮想的に作られた金融市場を指す。現実の経済現象の分析や、経済理論の検証などを行うことができ、また人工市場から得られたシミュレーション結果を、実際の金融市場の現場における意思決定支援などに用いることができると考えられている。
※3 銀行間ネットワーク・モデル:銀行間取引による貸借関係を明らかにするため、ネットワーク構造を用いて複数の銀行間の関係を表したモデルのこと。

【共同研究に関するお問い合わせ先】
株式会社電通国際情報サービス
金融ソリューション事業部 ソリューション営業2部 南、中島
E-Mail: g-DXmarketing@group.isid.co.jp

【本リリースに関するお問い合わせ先】
株式会社電通国際情報サービス
コーポレートコミュニケーション部 李
TEL: 03-6713-6100
E-Mail: g-pr@isid.co.jp


銀行間の関係性をネットワーク図で示した画面

シミュレーション結果のグラフ表示画面


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