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【プレスリリース】インドがEUとのFTA交渉で医薬品の供給を脅かす条項の除外を発表

2011年6月24日

国境なき医師団(MSF)

インドがEUとのFTA交渉で医薬品の供給を脅かす条項の除外を発表
―EUとのFTA交渉の焦点は他の有害な条項に移行

インドと欧州連合(EU)が交渉中の自由貿易協定(FTA)にインド製ジェネリック医薬品の供給を制限する条項が含まれている問題で、インド政府はジェネリック薬の登録を妨げる「新薬データ保護期間」の導入をFTAの条項から除外することを、6月の国連HIV/エイズ・ハイレベル会合にて正式に発表した。インド政府のこの発表は、FTAによって医薬品の供給が制限されることに反対する世界的な動きにおける重要な勝利である。一方で、国境なき医師団(MSF)は、供給を制限する他の条項がFTA交渉の議題に複数残っていることを指摘し、それらの削除を求めている。

新薬データ保護期間は、新しいジェネリック薬の登録に必要な薬の安全性を示す治験データの開示を一定期間保護する義務を規定するため、最大で10年間新しいジェネリック薬の登録を遅らせることが可能になり、製薬会社に事実上の市場独占権を与えるものである。この条項は、過去10年間でエイズ治療薬の価格を99%引き下げることを可能にしたインドでのジェネリック医薬品の価格競争を制限する恐れがあり、世界エイズ・結核・マラリア対策基金(世界基金)、世界保健機関(WHO)、国連合同エイズ計画(UNAIDS)、国際医薬品購入ファシリティ(UNITAID)から批判を受けていた。

今回のインド政府の発表は、インドとEUが、新薬データ保護期間をFTAの条項から除外することに正式に合意に至ったことを意味する。MSFはさらにEUに対し、FTAから医薬品の普及を妨げる以下の条項を削除するよう求めている。

EUはインドとのFTAにおいて、知的所有権のより厳格な保護規定を要求している。FTA草案の「海外投資に関する条項」には、インドで海外投資を行う企業の商業利益の保護が規定され、これには知的所有権の保護も含むとしている。これにより、欧州の製薬会社が自社の特許権あるいは商標権がインド政府の施行する政策によって侵害されると判断した場合、FTAの海外投資の保護規定に基づき、インド政府を提訴することが可能になる。この場合、欧州の製薬会社は商業利益よりも公衆衛生の保護を優先すると規定するインドの特許法による裁きを受けずにインドを直接提訴することが可能になる。この種の提訴は秘密裏に行われ、インド政府に数百万ドル規模の損害をもたらす恐れがある。

さらに、FTAには知的所有権侵害の疑いがある物品に対する厳格な処罰が規定されており、知的所有権の侵害と混同されたジェネリック薬の税関での差止めや廃棄、製造差止めを可能にする規定が含まれている。この条項は、MSFなどの治療提供者を訴訟に巻き込む懸念や、インド製のジェネリック薬が税関で押収される恐れがある。

MSFの必須医薬品キャンペーンの政策責任者、ミシェル・チャイルズは語る。「先の国連HIV/エイズ・ハイレベル会合で、欧州首脳は、2015年までに1500万人にHIV/エイズ治療を提供すると宣言しました。その一方で、EUは人びとが命をつなぐのに必要な安価なジェネリック薬の供給を妨げる政策を推進しています。これは容認できるものではありません。EUは公衆衛生を脅かす条項の取り下げをしなければなりません」

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MSFは途上国で17万人を対象に行うHIV/エイズ治療プログラムで使用する薬の80%以上を、インド製のジェネリック薬でまかなっている。MSFは2010年、EUとインド間のFTAに含まれる、インド製ジェネリック薬の供給を脅かす条項の取り下げをEUに求めるキャンペーン「Hands off our medicine!私たちの薬を奪わないで!」を開始した。国際社会にオンライン署名を求めるほか、2011年3月には、ニューデリーでアジア各国のHIV陽性者約4000人が、FTAによって安価な薬の入手が脅かされることに抗議するデモ行進を行った。
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