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抗血小板剤Effient(R)(プラスグレル)に関するTRILOGY ACS試験結果について

2012年8月26日

会社名  第一三共株式会社
代表者  代表取締役社長 中山 讓治
(コード番号 4568 東証・大証・名証各第1部)
問合せ先 執行役員コーポレートコミュニケーション部長 石田 憲昭
TEL  報道関係者の皆様 03-6225-1126
    株式市場関係者の皆様 03-6225-1125

Effient(R)(プラスグレル)に関する血行再建術を予定しない不安定狭心症/
非ST上昇型心筋梗塞患者を対象としたTRILOGY ACS試験結果について

〜今回の試験対象患者群において、主要評価項目でのプラスグレルの
クロピドグレルに対する優越性は認められなかった〜



第一三共株式会社(本社:東京都中央区、以下、「第一三共」)とイーライリリー・アンド・カンパニー(本社:米国インディアナ州、以下、「イーライリリー」)は、血行再建術を予定しない不安定狭心症(UA)と非ST上昇型心筋梗塞(NSTEMI)の急性冠症候群(ACS)患者を対象とし、アスピリン併用時のプラスグレルとクロピドグレルを比較した薬物のみによる保存的療法に関する第3相臨床試験TRILOGY ACSの結果についてお知らせします。

30ヶ月経過時において、主要評価項目である75歳未満の患者における心臓発作、脳卒中、心血管死の発現は、プラスグレル投与群13.9%、クロピドグレル投与群16.0%(HR=0.91, 95% CI, 0.79-1.05, P=0.21)*1となり統計学的な有意差はありませんでした。TRILOGY ACS (TaRgeted platelet Inhibition to cLarify the Optimal strateGy to medicallY manage Acute Coronary Syndromes) 試験は、血行再建術(経皮的冠動脈形成術(PCI)または冠動脈バイパス術(CABG))を予定しないUA/NSTEMI患者だけを対象とした初めての大規模臨床試験です*2。本試験結果につきましては、New England Journal of Medicineに掲載されるとともに、ドイツのミュンヘンで開催中の欧州心臓病学会 2012(European Society of Cardiology, ESC)において発表されます。

安全性に関しては、TIMI 分類での大出血(生命を脅かす、もしくは、致死性の出血を含む)の割合は、75歳未満の患者群と75歳以上を含むすべての患者群の両方において、アスピリン併用時のプラスグレル投与群とクロピドグレル投与群の間で統計学的な有意差はありませんでした*1。75歳未満の患者におけるTIMI 分類での大出血の発現頻度は、プラスグレル投与群で2.1%、クロピドグレル投与群で1.5%でした (HR=1.31, 95% CI: 0.83-2.11, P=0.27)*1。一方、大出血に小出血を加えた発現頻度は、プラスグレル投与群で高くなりました (プラスグレル投与群:3.3%、クロピドグレル投与群:2.1%、HR=1.54, 95% CI: 1.06-2.23, P=0.02)*1。

TRILOGY ACS 試験の統括医師でデューク・クリニカル・リサーチ・インスティチュート (Duke Clinical Research Institute, 以下「DCRI」)のE.マグナス オーマン博士は、「TRILOGY ACS試験は、血行再建術を予定しないUA/NSTEMI患者を対象とした経口抗血小板剤併用治療の保存的療法を評価する臨床試験です。今回の評価対象患者において、プラスグレルは、クロピドグレルに対して優越性を示しませんでしたが、TRILOGY ACS試験は、今まで主たる解析対象となっていなかった患者群において、幾つかの新たな知見を示しました。本試験では、今まで実施した臨床試験では確認できなかった投与開始後12ヶ月以上の長期投与での治療効果が確認されています。」と述べております。

その他の解析では、プラスグレル投与群の75歳未満の患者において、試験期間中の虚血性イベントの再発を抑制する効果が示されました (HR=0.85, 95% CI: 0.72-1.00, P=0.044)*1。

また、心臓発作、脳卒中、心血管死の主要評価項目について、投与期間12ヶ月未満、12ヶ月以上でプラスグレル投与群とクロピドグレル投与群の効果を事後解析しました。その結果、12ヶ月未満の場合はHR=0.99(0.84-1.16)であったのに対し、12ヶ月以上の場合はHR=0.72(0.54-0.97)でイベント抑制傾向が見られました (interaction P=0.07)*1。

イーライリリーのプラスグレル開発責任者であるJ.アンソニー ウェア博士は、「TRILOGY ACS試験のような大規模試験を通じて、医療関係者に多くの情報を提供できることは重要です。今後、主要学会で、血小板機能、高齢者、遺伝子多型などに関するサブ解析結果を公表していく予定です。」と述べております。

第一三共の専務執行役員研究開発本部長であるグレン ゴームリー博士は、「本試験結果は、私たちが想定した内容ではありませんでしたが、薬物のみによる保存的療法を施されているACS患者に関する知見の基盤づくりに貢献できると信じています。なお、TRILOGY ACS試験の対象患者は、以前実施したTRITON-TIMI38試験における経皮的冠動脈形成術(PCI)を行ったACS患者とは異なります。」と述べております。

日本においては、現在、第一三共は、ACSのみならず、安定狭心症を含めたPCI患者を対象とした第3相臨床試験を実施し、適応症取得を目指しています。さらに日本で発症率の高い虚血性脳血管障害患者を対象とした第3相臨床試験も実施しています。いずれにおいても日本の患者に適した用量を設定し、現在実施している試験においては海外とは異なる日本独自の用量により、取り組んでいます。


以 上



■TRILOGY ACS試験について
TRILOGY ACS (TaRgeted platelet Inhibition to cLarify the Optimal strateGy to medicallY manage Acute Coronary Syndromes)試験は、DCRIと連携し、第一三共とイーライリリーが実施した試験です。

本試験は2008年6月より開始し、52ヶ国、900以上の医療機関から9,326例の患者が登録されました*2。多施設共同、二重盲検法、無作為の臨床試験でUA/NSTEMI患者を対象に血行再建術(PCIまたは冠動脈バイパス術(CABG))を予定しない薬物のみによる保存的療法により、アスピリン併用時のプラスグレルとクロピドグレルの安全性と有効性を評価しました。主要評価項目は、心血管死、心臓発作、脳卒中の発現率です。本試験は、最大30ヶ月間の投与期間でプラスグレル投与群は、クロピドグレル投与群より相対リスクを22%軽減する前提で設計しました。

本試験はUA/NSTEMI患者のうち、60歳以上、心筋梗塞の既往歴、糖尿病、過去にPCIもしくはCABGの施行歴のいずれかのハイリスク因子がある患者が対象です。なお、PCIもしくはCABGが予定されている患者、ST上昇型心筋梗塞(STEMI)の患者、およびイベント発症後72時間以内にクロピドグレルの投与が行われず、それまでに薬物療法が決定されなかった患者は含んでおりません。

本試験におけるプラスグレルの初回用量および維持用量は、患者背景により調整され、既に承認されている適応症 (ACS-PCI)の用量とは異なります*2。75歳未満または体重60kg以上の患者は、維持用量として10mgのプラスグレルが投与されました。75歳以上または体重60kg未満の患者は、5mgの用量に減量されました。一過性脳虚血発作や脳卒中の既往のある患者は除外されております*2。

既に承認されているACS-PCIのプラスグレルの初回用量は60mg、維持用量は1日1回10mgです*3。ただし、体重が60Kg未満の患者の維持用量は1日1回5mgです*3。
安全性の評価項目は、GUSTO分類およびTIMI分類による出血と腫瘍発現です。腫瘍発現については癌の専門家による判定委員会で評価されております*2。

本試験では、虚血性心疾患の二次予防のガイドラインに従い、無作為化以前に90%以上の患者でクロピドグレルが投与されていました*1。また、本試験では、すべての患者が薬物のみで治療されることになっていましたが、試験期間中に75歳未満患者の7.9%が血行再建術を受けました*1。

本試験の詳細な情報とデザインについては下記をご参照ください。
http://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT00699998.


■プラスグレルについて
プラスグレルは、第一三共と宇部興産株式会社が発見し、第一三共とイーライリリーが共同開発した経口抗血小板剤です。プラスグレルは、血小板の凝集を抑制することにより、動脈の狭窄・閉塞を防ぎます。2009年欧州委員会がPCIを施行したACS患者のアテローム血栓性イベント抑制を適応として承認して以来、世界65ヶ国以上で承認されております。
Effient(R)は、イーライリリーの登録商標です。


■急性冠症候群(ACS)について
急性冠症候群とは、心筋梗塞(MI)や不安定狭心症のことです。
心筋梗塞は、冠動脈疾患(CHD)の重篤な病態であり、コレステロールや蓄積した脂肪によって動脈が閉塞することで発症します。プラークが破裂することで血栓が生じ、部分的にあるいは完全に心臓への血液の供給を妨げることもあり、ACSを発症します*4。心筋梗塞には主として、NSTEMIとSTEMIの2種類があります。STEMIは、動脈が完全に閉塞するため、より重症であるとされております。

CHDは、欧州連合における単独の死因としては第一位となっており、毎年741,000人以上が死亡しています*5。ACSは、米国では毎年100万人以上の人に影響を与えているとされます*6。

多くのACS患者では、動脈を再開するために主にステント留置によるPCIが施行されます。PCIなどの血行再建術を施行しないUAやNSTEMIのACSの過去数年の割合は、32%-60%とされております*7,*8。ACS患者の中には、複雑な冠動脈の構造、合併症や他のハイリスク因子等のために外科的処置を施せないができない患者さんが多くいます*8。

一方、本邦においてはACS患者の大部分はPCIが施行されるため、血行再建術を施行しない患者は限定的(9%)です*9。


*1)Roe MT, Armstrong PW, Fox KAA, et al. Prasugrel versus Clopidogrel for Acute Coronary Syndromes without Revascularization. N Engl J Med. Published online August 26, 2012. DOI:10.1056/NEJMoa1205512.
*2)Chin CT, Row MT, Fox KAA, et al. Study design and rationale of a comparison of prasugrel and clopidogrel in medically managed patients with unstable angina/non-ST-segment elevation myocardial infarction: The TaRgeted platelet Inhibition to cLarify the Optimal strateGy to medicallY manage Acute Coronary Syndromes (TRILOGY ACS) trial. Am Heart J. 2010:160:16-22.
*3)European Medicines Agency. Efient Summary of Product Characteristics. Electronic Medicines Compendium website. Available at: www.ema.europa.eu/docs/en_GB/document_library/EPAR_-_Product_Information/human/000984/WC500021971.pdf. Accessed August 2012.
*4)WebMD Medical Reference in Collaboration with the Cleveland Clinic. Heart Disease: Coronary Artery Disease. Available at: www.webmd.com/heart-disease/guide/heart-disease-coronary-artery-disease. Accessed May 2012.
*5)British Heart Foundation Health Promotion Research Group. European Cardiovascular Disease Statistics 2008. Available at: www.bhf.org.uk/research/statistics.aspx. Accessed May 2012.
*6)Roger VL, Go AS, Lloyd-Jones DM, et al. for the American Heart Association Statistics Committee and Stroke Statistics Subcommittee. Heart disease and stroke statistics; 2012 update. Circulation. 2012;125:e2-e220.
*7)Fox KAA, Steg PG, Eagle KA, et al. Decline in rates of death and heart failure in acute coronary syndromes, 1999-2006. J Am Med Assoc. 2007;297:1892-1900.
*8)Chan MY, Mahaffey KW, Sun LJ, et al. Prevalence, predictors, and impact of conservative medical management for patients with non-ST-segment elevation acute coronary syndromes who have angiographically documented significant coronary disease. J Am Coll Cardiol. 2008;1:369-378.
*9)Yoshiki Yui, MD, et al.Unstable Angina and Non-ST Elevation Acute Coronary Syndrome Epidemiology and Current Management in Japan (Japan Multicenter Investigation for Cardiovascular Disease-D (JMIC-D) Committee). Circ J 2007; 71: 1335-1347
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