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オフィスワーカーを対象にした疫学調査「Osaka Study」 ドライアイがもたらす労働生産性の低下

2014年3月25日

ドライアイ研究会
参天製薬株式会社

オフィスワーカーを対象とした疫学調査「Osaka Study」により判明
ドライアイは労働生産性の低下やQOLへの影響をもたらし
涙液や運動量の減少など「メタボ」との関連も

●そもそもドライアイとは 〜オフィスワーカーへの影響を懸念〜
「ドライアイ」とは、涙の量や成分の異常により、目の表面(角膜や結膜)に傷がついてしまう疾患です。ドライアイの症状としては、目の乾き以外にも、目の疲れや不快感、物がかすんで見えるなど、さまざまな症状があらわれます。
涙の異常といってもドライアイの原因はさまざまです。一般的な原因としては、環境因子によるものが多く、パソコンやスマートフォンなどデジタル機器の画面を見続ける現代人特有の生活スタイルが大きく影響しています。特にオフィスワーカーでは、ビジネスシーンにおいて目を酷使する時間が長くなり、これらデジタル機器を注視することでまばたきの回数が減り、目が疲れる、乾燥しやすくなるなど、ドライアイをはじめとした目への影響が懸念されています。

●ドライアイにより労働生産性が低下することを立証
そこで、オフィスワーカーにおけるドライアイの実態を調べるために、ドライアイ研究会(世話人代表 坪田 一男医師)と参天製薬株式会社(本社:大阪市、代表取締役社長 兼CEO 黒川 明 以下:参天製薬)は、共同研究にて大規模な疫学調査「Osaka Study」を2011年に実施しました。その調査データを様々な角度から分析、解析を行った結果、「オフィスワーカーの約6割がドライアイ(確定または疑い)である」ことや「ドライアイが労働生産性を低下させる」、「睡眠の質や幸福度に影響を及ぼす」、「メタボリックシンドロームと関連する」という新しい知見が得られ、昨秋より「Osaka Study」の研究成果が権威ある世界の医学誌に順次発表されています。(掲載論文一覧は参考資料をご参照)

●「ドライアイマネジメント」という新提案
ドライアイは単なる目の乾き、疲れ目の原因だと思われてきましたが、今回の研究により仕事や日々のQOL(Quality of Life)への影響が大きい疾患であることが明らかになりました。本研究で算出されたドライアイによる労働生産性の低下率を、日本人1人当たりの平均勤務時間に換算してみると、約3日間/年欠勤しているのと同様の損失時間が認められました。なお、参考までに対象企業における1人当たりの年間売上金額に換算すると年間生産性低下額は約48万7千円、1人当たりの年間所得低下額では約9万3千円に換算されました。
デジタル機器とのつきあい方だけでなく、オフィス環境、働き方まで含めた「ドライアイマネジメント」という概念は、企業と個人双方が健康かつ効率的に仕事をするために重要なアプローチとなるはずです。

「Osaka Study」とは
ドライアイ研究会と参天製薬の共同研究として、オフィスワーカーを対象に行った大規模なドライアイの疫学研究です。ドライアイの有病率だけでなく、様々な生活関連のアンケートを実施し、ドライアイの危険因子などを調査しました。また、これらの研究は、ドライアイの専門医のみによって行われました。調査の実施場所である参天製薬の所在地(本社)より、本疫学調査を「Osaka Study」と命名いたしました。

●調査期間: 2011年8月29日〜9月1日(4日間)
●対象: 672名(参天製薬本社勤務者)
●調査参加者: 561名
●検査内容: ドライアイ専門医による細隙灯顕微鏡検査(眼表面、涙の精密検査)
●アンケート項目:・生活習慣
         ・ドライアイ関連症状の有無12項目
         ・ドライアイ診断既往歴の有無
         ・VDT作業時間
         ・全身疾患 (高血圧・糖尿病)、内服薬服用有無
         ・喫煙の有無
         ・コンタクトレンズ使用の有無
         ・主観的幸福度
         ・ピッツバーグ睡眠質問票
         ・国際標準化身体活動質問票
         ・労働生産性の定量化質問票


<参考資料>
■主な疫学調査の結果
1.オフィスワーカーのうち、約65%がドライアイ確定またはドライアイ疑い
対象は参天製薬の本社に勤務するオフィスワーカー672名で、このうちの561名が調査に参加しました。
眼科学的検査により、ドライアイ確定またはドライアイ疑いであると診断されたオフィスワーカーは368名で、その率は65%に達しました。

2.ドライアイは労働生産性を下げる!
今回の調査では、生産性の低下を定量化する質問票を用いて労働生産性への影響を測定しました。その結果、ドライアイ確定は非ドライアイに比べて有意に労働生産性を悪化させることがわかりました。
これらの生産性低下率を日本人1人当たりの平均勤務時間に換算してみると、約3日間/年欠勤しているのと同様の損失時間が認められました。
参考までに、対象企業における1人当たりの年間売上金額に換算すると年間生産性低下額は約48万7千円、1人当たりの年間所得低下額では約9万3千円に換算されました。
出勤できる程度の健康状態であっても、うつ病や花粉症などのアレルギー性疾患では労働生産性が低下することが知られています。同様にドライアイによる労働生産性の低下を他疾患と比較したところ、偏頭痛とほぼ同程度の影響があることもわかりました。

3.ドライアイ罹患者は、幸福度、睡眠の質が低い
国際的指標である主観的幸福度4項目について評価したところ、ドライアイ症状が、重くなるほど幸福度が低下し、主観的幸福度がドライアイの症状と有意に逆相関することが明らかになりました。
また、国際的に使用されている睡眠の質問票(ピッツバーグ睡眠質問票日本語版)を用いて測定したところ、ドライアイ罹患者は睡眠の質が低下していることがわかりました。

4.メタボと涙の量にも相関があった
40歳以上の人を対象に、メタボリックシンドロームと涙液分泌量の相関を調べた調査では、メタボリックシンドロームではない人と比べて、メタボリックシンドロームの人の方が、有意に涙が少ないことがわかりました。
メタボリックシンドロームは、糖尿病や高血圧など生活習慣病を併発しやすくなり、労働生産性とも大きく関わることから、自治体や企業によりメタボリックシンドローム改善に向けた様々な取り組みが行われています。
また、ドライアイ罹患者は、運動量が有意に少ないことが分かっており、こうした傾向からもメタボリックシンドロームとの関連がうかがえます。

5.<結論>ドライアイはQOLへの影響が大きい
オフィスワーカーの半数以上が罹患しているドライアイは、労働生産性の低下をはじめ、メタボリックシンドロームと関連した全身の健康や睡眠の質、幸福度にも影響を及ぼすことが判明しました。これらの結果より、オフィスにおける積極的な「ドライアイマネジメント」の必要性がわかりました。

■「Osaka Study」の研究成果を発表した論文一覧
雑誌:American Journal of Ophthalmology. 2013 Oct;156(4):759-66.
タイトル:Prevalence of Dry Eye Disease and its Risk Factors in Visual Display Terminal Users:
The Osaka Study
著者:Uchino M, Yokoi N, Uchino Y, Dogru M, Kawashima M, Komuro A, Sonomura Y, Kato H, Kinoshita S, Schaumberg DA, Tsubota K

雑誌:American Journal of Ophthalmology. 2014 Feb;157(2):294-300
タイトル:Dry Eye Disease and Work Productivity Loss in Visual Display Users: The Osaka Study
著者:Uchino M, Uchino Y, Dogru M, Kawashima M, Yokoi N, Komuro A, Sonomura Y, Kato H, Kinoshita S, Schaumberg DA, Tsubota K

雑誌:British Journal of Ophthalmology. 2014 Mar;98(3):418-20.
タイトル:Decreased Tear Volume in Patients with Metabolic Syndrome: The Osaka Study
著者:Kawashima M, Uchino M, Yokoi N, Dogru M, Uchino Y, Komuro A, Sonomura Y, Kato H, Kinoshita S, Tsubota K

雑誌:JAMA Ophthalmology(in press)
タイトル:Alteration of Tear MUC5AC in Office Workers Using Visual Display Terminals: The Osaka
Study
著者:Uchino Y, Uchino M, Yokoi N, Dogru M, Kawashima M, Okada N, Inaba T, Tamaki S,   Komuro A, Sonomura Y, Kato H, Argueso P, Kinoshita S, Tsubota K

※その他、海外の医学誌に「Osaka Study」の研究結果に関する論文5報を現在投稿中です。
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