「五月病・六月病」に代表されるメンタルヘルスの問題に対するDHA・EPAの可能性
[14/06/02]
提供元:共同通信PRワイヤー
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2014/5/30
DHA・EPA協議会
「五月病・六月病」に代表されるメンタルヘルスの問題に対する
DHA・EPAの可能性
−「六月病」も話題に!メンタルヘルス問題は増加中−
新年度が4月にスタートし、新入生や新社会人、転居や異動などで環境が変わった人のなかには、理想と現実の違いに直面し、思い悩む人がいるのではないでしょうか。このような症状は「五月病」と言われていますが、近年では入社後の新人研修を終えて、実務をはじめたばかりの新社会人に同じような症状が見られることから、「六月病」とも呼ばれ話題になっています。これら「五月病・六月病」は病名ではありませんが、無気力や気持ちが沈んだ状態を指し、うつ病の一歩手前の状態とされています。この症状が悪化すると医療的な処置が必要になることもあります。
日本では近年、うつ病をはじめとするメンタルヘルスの問題は増加傾向を示しています。厚生労働省の「患者調査」によると1996年には43万人だったうつ病等の気分障害の患者数は、2011年には95万人となり、約2倍に増加しています[図1参照]1)。この背景には、仕事や職業生活に関する強いストレスを持つ人が6割もいることが関連していると考えられており、なかでも30〜40代で強いストレスを感じている人が多く、この世代は特に注意が必要です[図2参照]2)。
その一方、若年層を中心にいわゆる「新型うつ」と呼ばれる症状が増加しているといわれています。仕事や学業上の困難をきっかけに発症し、仕事では抑うつ的になる半面、余暇は楽しく過ごせる点が、これまで知られていているうつ病と異なることで注目を集めています。さらに若年層にとっては、近年急速に広がったSNSが、新たなストレスの原因になっているという指摘も見られます。
うつ病などメンタルヘルスの問題で会社を休職した社員の42.3%が、休職制度の利用中や復帰後に退職していることが、労働政策研究・研修機構より報告されています3)。このように社会的な損失が大きいメンタルヘルスに関連する問題の改善に向けて、厚生労働省はうつ病を5大疾病の一つとして、早期発見の重要性について周知を図っているほか、企業の間にも積極的な取り組みが広がっています。
1)厚生労働省:http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/10-20.html
2)厚生労働省:http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/h24-46-50.html
3)労働政策研究・研修機構:http://www.jil.go.jp/institute/research/2013/112.htm
−東日本大震災の被災地に派遣された医療チームのストレス障害が、DHA・EPAの摂取で緩和−
メンタルヘルスの観点から現在問題とされているのが、うつ病に代表される「気分障害」と、動悸や緊張などが生じる「不安障害」です。この不安障害のなかでも、災害や事件、事故など生命の危険にかかわる経験と、それに対するストレスがきっかけとなる「心的外傷後ストレス障害(PTSD)」は、阪神・淡路大震災と地下鉄サリン事件をきっかけに、瞬く間に知られるようになりました。最近では東日本大震災発生後に福島県から避難されている人々の多くが、PTSDを罹患している可能性が指摘されていますが、災害の被災者はもちろん、その救援者もPTSDの発症リスクが高いことが知られています。そこで国立病院機構災害医療センターの松岡豊博士は、東日本大震災発生直後に被災地に派遣された医療チーム(DMAT)の協力を得て、災害時の救援者を対象としたDHA・EPAのPTSDの症状軽減効果について検証を行いました。
2011年3月11日から22日の間に被災地で医療支援活動に従事した隊員172名を、心理教育のみと、心理教育に加えてDHA・EPAを摂取するグループ(DHA1.568g+EPA0.157g/日)に分け、支援活動終了後に12週間の介入を行い、その前後のPTSD症状の検査(IES-R)の得点を比較しました。
その結果、グループ間に有意差は認められなかったものの、女性だけを比較したときに、DHA・EPAを摂取したグループに有意な低下が認められました[図3参照]。この結果から、DHA・EPAには災害時のメンタルヘルス増進を促す可能性が示唆されました4)。
この研究はDHA・EPAのPTSDに対する効果を検討した世界初のランダム化比較試験であり、その成果は貴重なものと考えられています。
4)Psychother Psychosom 2012;81:315-317
- Interview -
<プロフィール>松岡 豊 先生 国立精神・神経医療研究センターTMC情報管理・解析部長
東京慈恵会医科大学卒業後、国立東京第二病院、広島大学医学部附属病院、国立呉病院、東京都多摩老人医療センター、国立がんセンターを経て、2003年4月国立精神・神経センター精神保健研究所・室長。2008年10月からリサーチマインドを持った臨床家の臨床研究に関する教育指導ならびにe-learningプログラム作成に従事。2012年1月より現職。国立病院機構災害医療センター非常勤医師、慶應義塾大学医学部非常勤講師、岡山大学医学部非常勤講師。
−災害派遣医療チームの協力のもとに進められたDHA・EPA研究−
東日本大震災が発生した2011年3月11日、私は出張で米国テキサス州のサンアントニオにいました。翌日、日本に戻る予定でしたが、欠航が相次いだため、サンアントニオに4日間延泊しました。その間、遠く離れた日本の状況を部屋のテレビで見て、何かしなければいけないという気持ちになり、帰国後に同僚の西を伴って以前から交流がある災害派遣医療チーム(DMAT)事務局を訪れました。DMATはすでに被災地に隊員を派遣していましたが、事務局長の小井土雄一先生は隊員のストレスを大変心配されていました。そこで私は隊員のストレスの調査をお引き受けしました。PTSDを予防する可能性があるDHA・EPAを活用することを提案したところ、今後のためにDHA・EPAの効果について科学的な検証を行おうということになりました。ただし震災直後だったためプラセボの調達に時間がかかることがわかりました。また倫理委員会も被災地で懸命に活動した隊員に、効果が期待できないプラセボを提供することに難色を示したため、プラセボを用いない単盲検ランダム化比較試験として実施しました。
この試験の結果、女性においてDHA・EPAを摂取したグループに有意な差が認められました。今後さらなる研究が必要ですが、PTSDの危険性が高い救援者の予防に、DHA・EPAが寄与できる可能性があると考えています。
−交通事故による重傷者の約25%が発症するPTSDは治療が困難−
メンタルヘルスの代表的な問題として、うつ病をはじめとする「気分障害」と、 PTSDが含まれる「不安障害」があります。気分障害は気持ちが落ち込み、何をするにも億劫になり、症状が悪化すると寝たきりになることもあります。それに対して、不安障害は“漠然とした不安”に苛まれるというもので、逃げるに逃げられない場所や状況で不安を感じる「広場恐怖」、公衆の前で話したりすることに恐怖を感じる「社会恐怖」、突然強い不安感に襲われる「パニック障害」などがあります。このなかでもPTSDは「心的トラウマ」と呼ばれる生命にかかわる体験がきっかけとなることが特徴で、私は交通事故による外傷患者のおよそ4人に1人でPTSDの症状が生じることを確認しました。
PTSDの治療には「持続エクスポージャー療法」という心理療法が有効ですが、この療法に習熟している専門家が少なく、治療が難しいのが現状です。そこで私は、事故や災害の直後に予防策を講じることで、PTSDの症状を抑えることを目指し、その予防策の検討を行ってきました。
−PTSD予防策としてのDHA・EPAの可能性−
私がDHA・EPAに着目した理由は近年、次の2つのことがわかってきたためです。1つめは記憶の中枢とされる脳の「海馬」の神経細胞の新生が低下すると、恐怖を感じた出来事の記憶(恐怖記憶)の、海馬に依存する期間が長くなることです。この状態はPTSDの発症に強く関与すると考えられています。そして2つめがDHA・EPAを摂取すると、海馬の神経細胞の新生が活性化されるということが確認されたことです。このため“DHA・EPAの摂取により、海馬の神経細胞の新生を活性化し、恐怖記憶を海馬から早く消失させ、PTSDを予防する”という仮説を立て、研究を進めてきました[図4参照]。
私たちが2010年に報告した研究では、交通事故による重傷者にDHA・EPAを摂取してもらった結果、12週間後のPTSD症状が改善していることがわかりました。そして前述のDMATに協力いただいた研究では、救援者のPTSD予防策として寄与できる可能性があることが示唆されました。さらに私たちは現在、DHA・EPAの可能性を明らかにするために、交通事故による重傷者110名を対象にした二重盲検ランダム化試験を進めています。
そして、このことに関連することとして近年、必須脂肪酸の摂取バランスにおいて、DHA・EPAなどのオメガ3系脂肪酸の割合が高いと、恐怖記憶が早期に弱まることがわかってきました。これはオメガ3系脂肪酸が、感情の中枢とされる脳の「扁桃体」の過剰な活動を抑制するためと考えられています。扁桃体の過剰な活動は、うつ病でも確認されている状態です。DHA・EPAがうつ病を改善することは、すでに複数の研究結果から確認されていますが、この作用も影響している可能性があります。
DHA・EPAは脳の栄養の代表例として世界的に広く知られ、近年では精神疾患の予防や改善効果について数多くの研究が進められています。今後メンタルヘルスを増進・維持する鍵として、DHA・EPAはさらに注目されることになるでしょう。
【浜内千波先生のDHA・EPAが豊富な旬のお魚レシピ】
<プロフィール>
『家庭料理をちゃんと伝えたい』……という思いで、料理教室を主宰。『料理は、もっともっと夢のある楽しいもの』をモットーに、テレビ番組や料理ビデオの出演、講演会、雑誌や書籍の執筆活動、各種料理講習会への参画を積極的に行い、その発想のユニークさやクリエイティブな仕事には定評があります。
最近の主な著書は、『「おいしいね」って言われるレシピ』(KADOKAWA)、『お腹が凹むオリーブオイル・レシピ』 (PHP研究所)、『免疫力を上げるまいたけ健康レシピ』 (マイナビ)、など多数。
◎ウナギ玉丼[ 1人分581kcal/調理時間10分]
酢をいれることで、ウナギ特有のくさみを押さえることができます。
<材料:4人分>
ウナギのかば焼き 2尾
卵 4個
玉葱 1個
添付たれ 2袋
水 3〜4カップ
酢 小さじ2
胡麻 小さじ4
万能ねぎ 適宜
ご飯 600g
<作り方>
(1)ウナギは一口大に切り、玉ねぎは薄切りにする。
(2)フライパンに(1)、添付たれ、酢、水を入れ、一煮立ちするまで煮る。
(3)さっと溶いた溶き卵を加え、蓋をして火を止め1分蒸らす。
(4)ご飯の上に、(3)、万能ねぎの小口切り、胡麻を散らす。
◎アジの開きいり冷汁[ 1人分207kcal/調理時間10分]
調理道具を使わず、ボウル一つでできる簡単な冷汁です。ご飯やそうめんにかけても合います。
<材料:4人分>
アジの開き 2枚(正味160g)
木綿豆腐 1丁
胡麻 大さじ2
きゅうり 1本
味噌 大さじ4
水 3カップ
<作り方>
(1)アジの開きをこんがり焼き、身をほぐす。きゅうりは薄切りにする。
(2)ボウルに味噌、ひねりごま(胡麻をつまんで指先でギュッとひねりつぶしたもの)、水を入れ、よく混ぜる。
(3)(2)に(1)と木綿豆腐を手でちぎったものを加える。
★5月・6月が旬の魚
アジ、イサキ、カレイ
DHA・EPA協議会
「五月病・六月病」に代表されるメンタルヘルスの問題に対する
DHA・EPAの可能性
−「六月病」も話題に!メンタルヘルス問題は増加中−
新年度が4月にスタートし、新入生や新社会人、転居や異動などで環境が変わった人のなかには、理想と現実の違いに直面し、思い悩む人がいるのではないでしょうか。このような症状は「五月病」と言われていますが、近年では入社後の新人研修を終えて、実務をはじめたばかりの新社会人に同じような症状が見られることから、「六月病」とも呼ばれ話題になっています。これら「五月病・六月病」は病名ではありませんが、無気力や気持ちが沈んだ状態を指し、うつ病の一歩手前の状態とされています。この症状が悪化すると医療的な処置が必要になることもあります。
日本では近年、うつ病をはじめとするメンタルヘルスの問題は増加傾向を示しています。厚生労働省の「患者調査」によると1996年には43万人だったうつ病等の気分障害の患者数は、2011年には95万人となり、約2倍に増加しています[図1参照]1)。この背景には、仕事や職業生活に関する強いストレスを持つ人が6割もいることが関連していると考えられており、なかでも30〜40代で強いストレスを感じている人が多く、この世代は特に注意が必要です[図2参照]2)。
その一方、若年層を中心にいわゆる「新型うつ」と呼ばれる症状が増加しているといわれています。仕事や学業上の困難をきっかけに発症し、仕事では抑うつ的になる半面、余暇は楽しく過ごせる点が、これまで知られていているうつ病と異なることで注目を集めています。さらに若年層にとっては、近年急速に広がったSNSが、新たなストレスの原因になっているという指摘も見られます。
うつ病などメンタルヘルスの問題で会社を休職した社員の42.3%が、休職制度の利用中や復帰後に退職していることが、労働政策研究・研修機構より報告されています3)。このように社会的な損失が大きいメンタルヘルスに関連する問題の改善に向けて、厚生労働省はうつ病を5大疾病の一つとして、早期発見の重要性について周知を図っているほか、企業の間にも積極的な取り組みが広がっています。
1)厚生労働省:http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/10-20.html
2)厚生労働省:http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/h24-46-50.html
3)労働政策研究・研修機構:http://www.jil.go.jp/institute/research/2013/112.htm
−東日本大震災の被災地に派遣された医療チームのストレス障害が、DHA・EPAの摂取で緩和−
メンタルヘルスの観点から現在問題とされているのが、うつ病に代表される「気分障害」と、動悸や緊張などが生じる「不安障害」です。この不安障害のなかでも、災害や事件、事故など生命の危険にかかわる経験と、それに対するストレスがきっかけとなる「心的外傷後ストレス障害(PTSD)」は、阪神・淡路大震災と地下鉄サリン事件をきっかけに、瞬く間に知られるようになりました。最近では東日本大震災発生後に福島県から避難されている人々の多くが、PTSDを罹患している可能性が指摘されていますが、災害の被災者はもちろん、その救援者もPTSDの発症リスクが高いことが知られています。そこで国立病院機構災害医療センターの松岡豊博士は、東日本大震災発生直後に被災地に派遣された医療チーム(DMAT)の協力を得て、災害時の救援者を対象としたDHA・EPAのPTSDの症状軽減効果について検証を行いました。
2011年3月11日から22日の間に被災地で医療支援活動に従事した隊員172名を、心理教育のみと、心理教育に加えてDHA・EPAを摂取するグループ(DHA1.568g+EPA0.157g/日)に分け、支援活動終了後に12週間の介入を行い、その前後のPTSD症状の検査(IES-R)の得点を比較しました。
その結果、グループ間に有意差は認められなかったものの、女性だけを比較したときに、DHA・EPAを摂取したグループに有意な低下が認められました[図3参照]。この結果から、DHA・EPAには災害時のメンタルヘルス増進を促す可能性が示唆されました4)。
この研究はDHA・EPAのPTSDに対する効果を検討した世界初のランダム化比較試験であり、その成果は貴重なものと考えられています。
4)Psychother Psychosom 2012;81:315-317
- Interview -
<プロフィール>松岡 豊 先生 国立精神・神経医療研究センターTMC情報管理・解析部長
東京慈恵会医科大学卒業後、国立東京第二病院、広島大学医学部附属病院、国立呉病院、東京都多摩老人医療センター、国立がんセンターを経て、2003年4月国立精神・神経センター精神保健研究所・室長。2008年10月からリサーチマインドを持った臨床家の臨床研究に関する教育指導ならびにe-learningプログラム作成に従事。2012年1月より現職。国立病院機構災害医療センター非常勤医師、慶應義塾大学医学部非常勤講師、岡山大学医学部非常勤講師。
−災害派遣医療チームの協力のもとに進められたDHA・EPA研究−
東日本大震災が発生した2011年3月11日、私は出張で米国テキサス州のサンアントニオにいました。翌日、日本に戻る予定でしたが、欠航が相次いだため、サンアントニオに4日間延泊しました。その間、遠く離れた日本の状況を部屋のテレビで見て、何かしなければいけないという気持ちになり、帰国後に同僚の西を伴って以前から交流がある災害派遣医療チーム(DMAT)事務局を訪れました。DMATはすでに被災地に隊員を派遣していましたが、事務局長の小井土雄一先生は隊員のストレスを大変心配されていました。そこで私は隊員のストレスの調査をお引き受けしました。PTSDを予防する可能性があるDHA・EPAを活用することを提案したところ、今後のためにDHA・EPAの効果について科学的な検証を行おうということになりました。ただし震災直後だったためプラセボの調達に時間がかかることがわかりました。また倫理委員会も被災地で懸命に活動した隊員に、効果が期待できないプラセボを提供することに難色を示したため、プラセボを用いない単盲検ランダム化比較試験として実施しました。
この試験の結果、女性においてDHA・EPAを摂取したグループに有意な差が認められました。今後さらなる研究が必要ですが、PTSDの危険性が高い救援者の予防に、DHA・EPAが寄与できる可能性があると考えています。
−交通事故による重傷者の約25%が発症するPTSDは治療が困難−
メンタルヘルスの代表的な問題として、うつ病をはじめとする「気分障害」と、 PTSDが含まれる「不安障害」があります。気分障害は気持ちが落ち込み、何をするにも億劫になり、症状が悪化すると寝たきりになることもあります。それに対して、不安障害は“漠然とした不安”に苛まれるというもので、逃げるに逃げられない場所や状況で不安を感じる「広場恐怖」、公衆の前で話したりすることに恐怖を感じる「社会恐怖」、突然強い不安感に襲われる「パニック障害」などがあります。このなかでもPTSDは「心的トラウマ」と呼ばれる生命にかかわる体験がきっかけとなることが特徴で、私は交通事故による外傷患者のおよそ4人に1人でPTSDの症状が生じることを確認しました。
PTSDの治療には「持続エクスポージャー療法」という心理療法が有効ですが、この療法に習熟している専門家が少なく、治療が難しいのが現状です。そこで私は、事故や災害の直後に予防策を講じることで、PTSDの症状を抑えることを目指し、その予防策の検討を行ってきました。
−PTSD予防策としてのDHA・EPAの可能性−
私がDHA・EPAに着目した理由は近年、次の2つのことがわかってきたためです。1つめは記憶の中枢とされる脳の「海馬」の神経細胞の新生が低下すると、恐怖を感じた出来事の記憶(恐怖記憶)の、海馬に依存する期間が長くなることです。この状態はPTSDの発症に強く関与すると考えられています。そして2つめがDHA・EPAを摂取すると、海馬の神経細胞の新生が活性化されるということが確認されたことです。このため“DHA・EPAの摂取により、海馬の神経細胞の新生を活性化し、恐怖記憶を海馬から早く消失させ、PTSDを予防する”という仮説を立て、研究を進めてきました[図4参照]。
私たちが2010年に報告した研究では、交通事故による重傷者にDHA・EPAを摂取してもらった結果、12週間後のPTSD症状が改善していることがわかりました。そして前述のDMATに協力いただいた研究では、救援者のPTSD予防策として寄与できる可能性があることが示唆されました。さらに私たちは現在、DHA・EPAの可能性を明らかにするために、交通事故による重傷者110名を対象にした二重盲検ランダム化試験を進めています。
そして、このことに関連することとして近年、必須脂肪酸の摂取バランスにおいて、DHA・EPAなどのオメガ3系脂肪酸の割合が高いと、恐怖記憶が早期に弱まることがわかってきました。これはオメガ3系脂肪酸が、感情の中枢とされる脳の「扁桃体」の過剰な活動を抑制するためと考えられています。扁桃体の過剰な活動は、うつ病でも確認されている状態です。DHA・EPAがうつ病を改善することは、すでに複数の研究結果から確認されていますが、この作用も影響している可能性があります。
DHA・EPAは脳の栄養の代表例として世界的に広く知られ、近年では精神疾患の予防や改善効果について数多くの研究が進められています。今後メンタルヘルスを増進・維持する鍵として、DHA・EPAはさらに注目されることになるでしょう。
【浜内千波先生のDHA・EPAが豊富な旬のお魚レシピ】
<プロフィール>
『家庭料理をちゃんと伝えたい』……という思いで、料理教室を主宰。『料理は、もっともっと夢のある楽しいもの』をモットーに、テレビ番組や料理ビデオの出演、講演会、雑誌や書籍の執筆活動、各種料理講習会への参画を積極的に行い、その発想のユニークさやクリエイティブな仕事には定評があります。
最近の主な著書は、『「おいしいね」って言われるレシピ』(KADOKAWA)、『お腹が凹むオリーブオイル・レシピ』 (PHP研究所)、『免疫力を上げるまいたけ健康レシピ』 (マイナビ)、など多数。
◎ウナギ玉丼[ 1人分581kcal/調理時間10分]
酢をいれることで、ウナギ特有のくさみを押さえることができます。
<材料:4人分>
ウナギのかば焼き 2尾
卵 4個
玉葱 1個
添付たれ 2袋
水 3〜4カップ
酢 小さじ2
胡麻 小さじ4
万能ねぎ 適宜
ご飯 600g
<作り方>
(1)ウナギは一口大に切り、玉ねぎは薄切りにする。
(2)フライパンに(1)、添付たれ、酢、水を入れ、一煮立ちするまで煮る。
(3)さっと溶いた溶き卵を加え、蓋をして火を止め1分蒸らす。
(4)ご飯の上に、(3)、万能ねぎの小口切り、胡麻を散らす。
◎アジの開きいり冷汁[ 1人分207kcal/調理時間10分]
調理道具を使わず、ボウル一つでできる簡単な冷汁です。ご飯やそうめんにかけても合います。
<材料:4人分>
アジの開き 2枚(正味160g)
木綿豆腐 1丁
胡麻 大さじ2
きゅうり 1本
味噌 大さじ4
水 3カップ
<作り方>
(1)アジの開きをこんがり焼き、身をほぐす。きゅうりは薄切りにする。
(2)ボウルに味噌、ひねりごま(胡麻をつまんで指先でギュッとひねりつぶしたもの)、水を入れ、よく混ぜる。
(3)(2)に(1)と木綿豆腐を手でちぎったものを加える。
★5月・6月が旬の魚
アジ、イサキ、カレイ