電波の途切れにくい新しい周波数でドローンの制御飛行に初めて成功 〜169MHz帯の活用に向けて〜
[17/07/31]
提供元:共同通信PRワイヤー
提供元:共同通信PRワイヤー
2017年7月31日
国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)
国立研究開発法人産業技術総合研究所
国立研究開発法人科学技術振興機構
内閣府政策統括官(科学技術・イノベーション担当)
電波の途切れにくい新しい周波数でドローンの制御飛行に初めて成功
〜ロボット・ドローン用に新しく開放された周波数169MHz帯の活用に向けて〜
【ポイント】
■ 平成28年8月に総務省が新たに制度化した周波数帯の一つ、169MHz帯を使ったドローンの遠隔制御飛行に成功
■ 他のドローンを中継した遠隔制御飛行も実証、直接電波が届かない環境での運用も可能に
■ 飛行中に遠隔から他の周波数帯(920MHz帯)と切り替える機能を確認、ドローンの制御用無線がより高信頼に
内閣府 総合科学技術・イノベーション会議が主導する革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)タフ・ロボティクス・チャレンジ(プログラム・マネージャー: 田所 諭)の一環として、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT、理事長: 徳田 英幸)および国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研、理事長: 中鉢 良治)のグループは、平成28年8月に総務省が新たに制度化したロボット・ドローン用の周波数の一つである169MHz帯を使ったドローンの遠隔制御飛行に初めて成功しました。
これまでのドローンのほとんどは2.4GHz帯をその制御や状態把握に用いていますが、無線LANなど他からの干渉を受けやすいだけでなく、構造物や樹木、地形などにより、電波が途切れやすく、物流や災害対応などで想定されているような、操縦者から1km程度以上離れた場所でのドローンの安定した運用は困難でした。
実験では、これまで使われている周波数よりも建物等の障害物を回り込んで比較的遠くに届きやすい特性を持つ169MHz帯電波を用いて、地上の操縦者からドローンまで直接無線をつないだ制御のほか、上空に滞空する他のドローンを経由して、目的のドローンの制御と状態把握を行うマルチホップ中継制御にも成功しました。また、ドローン飛行中に、これまでその制御用に開発してきた920MHz帯の周波数との切替えが遠隔から可能であることも確認しました。今回の開発により、異なる電波の伝わり方を持つ複数周波数にまたがる運用が可能となり、ドローンの飛行に必要な電波をこれまでよりも格段に高信頼化できる見通しが得られました。
本成果は、以下の事業・研究プロジェクトによって得られました。
内閣府 革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)
http://www.jst.go.jp/impact/
プログラム・マネージャー: 田所 諭
研究開発プログラム: タフ・ロボティクス・チャレンジ
研究開発課題: タフ・ロボティクスのためのタフ・ワイヤレス技術の研究開発
研究開発責任者: 三浦 龍(国立研究開発法人情報通信研究機構)
研究期間: 平成27年度〜平成30年度
本研究開発課題では、電波の伝わりにくい環境下においても途切れにくいタフなロボット制御用無線通信技術の研究開発に取り組んでいます。
【田所 諭 プログラム・マネージャーのコメント】
ImPACTタフ・ロボティクス・チャレンジは、災害の予防・緊急対応・復旧、人命救助、人道貢献のためのロボットに必要不可欠な、「タフで、へこたれない」さまざまな技術を創りだし、防災における社会的イノベーションとともに、新事業創出による産業的イノベーションを興すことを目的とし、プロジェクト研究開発を推進しています。
災害現場でドローンやロボットなどの先端技術を活用するためには、無線通信が不可欠です。ところが、現在ロボットで広く使われている無線LANや携帯電話回線は、ドローンが必要とされる災害被災地域や山間部では安定した通信が不可能です。これまで、無線の問題のためにロボットが使用できなかった、あるいは、有視界外にあるロボットの状態をモニタリングし続けることができなかったケースが、数多くありました。
本研究では、総務省が新たに割り当てた169MHzの周波数帯を用いて、ドローンに動作コマンドを与えながらの遠隔制御飛行、および、従来の周波数帯と切り替えながらの安定飛行に成功しました。また、この周波数を使って、複数台のドローン間で無線通信を中継しながら遠隔操作することにも成功しました。
169MHz帯は遠距離や障害物がある通信に適していることから、この成果は、災害現場、特に有視界外飛行でのドローンの実用性と安全性を飛躍的に高めることは間違いありません。今後、制度化や商品化を進めることによって、災害時のロボット活用推進のための重要な基盤となると期待されます。
【研究の背景と経緯】
これまでのドローンのほとんどは2.4GHz帯をその制御や状態把握、また一部、画像伝送にも用いていますが、無線LANなど他からの干渉を受けやすいだけでなく、構造物や樹木、地形などにより、電波が途切れやすく、物流や災害対応などで想定されているような、操縦者から1km程度以上離れた場所でのドローンの安定な運用は困難でした。
総務省は、平成28年8月、来るべきロボット社会到来への期待やドローンの長距離を隔てた運用や画像伝送のニーズに応えるため、新たに「無人移動体画像伝送システム」を制度化し、無線局免許の下で運用できるようになりました。169MHz帯はその周波数帯の一つであり、2.4GHz帯等の従来の周波数に比べて、障害物を回り込み、周囲の構造物等を反射して遠方に届きやすい特性を持っています。また、新たな制度によると、上空では10mW、地上では1Wまでの出力で運用でき、条件が良ければ10?以上の距離で遠隔制御できる可能性を秘めています。一方、169MHz帯は、周波数の幅が合計で約400kHz程度と比較的狭く、多くのロボットやドローンが同時に使用することは困難であるとともに、データの伝送速度も遅くなります。このため、通常使用する920MHz 帯から5GHz帯等の他の周波数帯が利用できなかったり干渉を受けたりした場合のバックアップ用としての使い方が想定されていますが、これまで、実際に、この周波数を使ってロボットを制御したり、ドローンを飛行させて評価した例はなく、その通信品質に関するデータもありませんでした。
【研究の内容】
本研究では、これまで通常時のドローン・ロボット制御用の無線方式として開発してきた920MHz帯の無線装置に、新たに制度化された周波数帯である169MHz帯の無線装置とそのアンテナを追加し、同じケースに収めることで、920MHz帯と169MHz帯の間で手動又は自動による遠隔切替えが可能なハイブリッド無線装置を実現しました(図1)。そして、制度化後としては全国で初めて169MHz帯によるドローン・ロボット制御システムの評価を行うための実験試験局免許を取得し、地上の操縦者からドローンまで169MHz帯にて直接電波をつないで遠隔制御を行い、安定に飛行させることに成功しました。
開発に当たっては、できるだけ、これまで920MHz帯で開発してきた技術である、“応答遅延時間を一定に保ちながら、制御情報(コマンド)や機体の状態情報(テレメトリ)を途中の他の中継用ドローン等を経由してマルチホップ中継する機能”を変えずに、周波数とその送信出力のみ、169MHz帯の規格に切り替えられるよう設計を行いました。しかし、169MHz帯は遠くに届く特性を持つ反面、920MHz帯に比べ、同じ通信方式の場合、データ伝送速度がおよそ半分以下と小さくなるため、遠隔制御の安定性が維持できるか、また、ドローンからのテレメトリが失われることなく送られてくるか、が焦点となっていました。また、ドローンの飛行中、920MHz帯と169MHz帯の間で周波数を切り替えるときにドローンの飛行状態が不安定にならないかという不安材料もありました。
実験では、初めに920MHz帯で操縦者端末とドローン側の間で通信を確立し、そのまま離陸上昇させ、上空高度30mほどになったところで周波数を169MHz帯に切り替え、ドローンの飛行状態への影響を調べました。その結果、操縦者が制御コマンドを送信してからドローンに届くまでの遅延時間は、920MHz帯では60ミリ秒ほどであったところ、169MHz帯では2秒ほどかかりました。また、テレメトリの伝送速度が、920MHz帯に比べて約半分になるという課題も見つかりました。しかし、ドローンの飛行に支障はなく、安定に飛行が可能であり、地上側でも多少データの更新頻度が落ちるものの、ほぼリアルタイムでテレメトリが得られることが確認できました。
周波数の切替えについては、920MHz帯から169MHz帯に切り替わるまでの時間は約20秒かかりましたが、飛行自体は安全に維持されたままであることが確認できました。今後は、これを更に高速化する検討を行う予定です。一方、169MHz帯から920MHz帯に戻すときは、全く問題なく、瞬時に切り替わることを確認しています。これは、169MHz帯に切り替わった後も、920MHz帯の信号を完全には切断していないことによるものです。今回の開発により、異なる電波の伝わり方をする複数の周波数にまたがるハイブリッド型の運用が可能となり、ドローンの飛行に必要な無線通信の電波をこれまでよりも格段に途切れにくくする見通しが得られました。
さらに、169MHz帯の実験で、図2に示すように、直接電波が届かない見通し外でのドローン運用を想定し、途中に中継局を搭載した別のドローンをもう1機飛行させ、いったんこれを経由して目的のドローンを制御するマルチホップ中継制御による飛行も行ったところ、遅延時間とデータ伝送速度は直接通信の場合とほとんど変わらず、やはり安定に飛行できることが確認できました(図3)。
国の新たな規格に準拠した169MHz帯電波を使った上記一連の実験の成功は、まだ他には例がなく、通常使用している電波が弱くなったり干渉を受けたりした場合の緊急通信手段として使えることが示され、ドローンやロボットにとってこれまでよりも更にタフな無線の実現につながる基盤技術が確立できました。また、国が2020年頃までの実現を目指している目視外での安全なドローン運航にも寄与できるものと期待されます。
【今後の課題と展望】
今回の実験では、直接目視できる範囲の数10m程度の距離での基本評価を行いましたが、次のステップとして、より長距離を隔てた通信実験を行い、169MHz帯利用の最大の特長について評価するとともに、画像伝送の可能性についても試行する予定です。また、920MHz帯と169MHz帯の間の切替え時間の短縮と、通常使う電波が弱くなったり途切れたりした場合の自動切替えについても、動作検証を行っていく予定です。
国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)
国立研究開発法人産業技術総合研究所
国立研究開発法人科学技術振興機構
内閣府政策統括官(科学技術・イノベーション担当)
電波の途切れにくい新しい周波数でドローンの制御飛行に初めて成功
〜ロボット・ドローン用に新しく開放された周波数169MHz帯の活用に向けて〜
【ポイント】
■ 平成28年8月に総務省が新たに制度化した周波数帯の一つ、169MHz帯を使ったドローンの遠隔制御飛行に成功
■ 他のドローンを中継した遠隔制御飛行も実証、直接電波が届かない環境での運用も可能に
■ 飛行中に遠隔から他の周波数帯(920MHz帯)と切り替える機能を確認、ドローンの制御用無線がより高信頼に
内閣府 総合科学技術・イノベーション会議が主導する革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)タフ・ロボティクス・チャレンジ(プログラム・マネージャー: 田所 諭)の一環として、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT、理事長: 徳田 英幸)および国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研、理事長: 中鉢 良治)のグループは、平成28年8月に総務省が新たに制度化したロボット・ドローン用の周波数の一つである169MHz帯を使ったドローンの遠隔制御飛行に初めて成功しました。
これまでのドローンのほとんどは2.4GHz帯をその制御や状態把握に用いていますが、無線LANなど他からの干渉を受けやすいだけでなく、構造物や樹木、地形などにより、電波が途切れやすく、物流や災害対応などで想定されているような、操縦者から1km程度以上離れた場所でのドローンの安定した運用は困難でした。
実験では、これまで使われている周波数よりも建物等の障害物を回り込んで比較的遠くに届きやすい特性を持つ169MHz帯電波を用いて、地上の操縦者からドローンまで直接無線をつないだ制御のほか、上空に滞空する他のドローンを経由して、目的のドローンの制御と状態把握を行うマルチホップ中継制御にも成功しました。また、ドローン飛行中に、これまでその制御用に開発してきた920MHz帯の周波数との切替えが遠隔から可能であることも確認しました。今回の開発により、異なる電波の伝わり方を持つ複数周波数にまたがる運用が可能となり、ドローンの飛行に必要な電波をこれまでよりも格段に高信頼化できる見通しが得られました。
本成果は、以下の事業・研究プロジェクトによって得られました。
内閣府 革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)
http://www.jst.go.jp/impact/
プログラム・マネージャー: 田所 諭
研究開発プログラム: タフ・ロボティクス・チャレンジ
研究開発課題: タフ・ロボティクスのためのタフ・ワイヤレス技術の研究開発
研究開発責任者: 三浦 龍(国立研究開発法人情報通信研究機構)
研究期間: 平成27年度〜平成30年度
本研究開発課題では、電波の伝わりにくい環境下においても途切れにくいタフなロボット制御用無線通信技術の研究開発に取り組んでいます。
【田所 諭 プログラム・マネージャーのコメント】
ImPACTタフ・ロボティクス・チャレンジは、災害の予防・緊急対応・復旧、人命救助、人道貢献のためのロボットに必要不可欠な、「タフで、へこたれない」さまざまな技術を創りだし、防災における社会的イノベーションとともに、新事業創出による産業的イノベーションを興すことを目的とし、プロジェクト研究開発を推進しています。
災害現場でドローンやロボットなどの先端技術を活用するためには、無線通信が不可欠です。ところが、現在ロボットで広く使われている無線LANや携帯電話回線は、ドローンが必要とされる災害被災地域や山間部では安定した通信が不可能です。これまで、無線の問題のためにロボットが使用できなかった、あるいは、有視界外にあるロボットの状態をモニタリングし続けることができなかったケースが、数多くありました。
本研究では、総務省が新たに割り当てた169MHzの周波数帯を用いて、ドローンに動作コマンドを与えながらの遠隔制御飛行、および、従来の周波数帯と切り替えながらの安定飛行に成功しました。また、この周波数を使って、複数台のドローン間で無線通信を中継しながら遠隔操作することにも成功しました。
169MHz帯は遠距離や障害物がある通信に適していることから、この成果は、災害現場、特に有視界外飛行でのドローンの実用性と安全性を飛躍的に高めることは間違いありません。今後、制度化や商品化を進めることによって、災害時のロボット活用推進のための重要な基盤となると期待されます。
【研究の背景と経緯】
これまでのドローンのほとんどは2.4GHz帯をその制御や状態把握、また一部、画像伝送にも用いていますが、無線LANなど他からの干渉を受けやすいだけでなく、構造物や樹木、地形などにより、電波が途切れやすく、物流や災害対応などで想定されているような、操縦者から1km程度以上離れた場所でのドローンの安定な運用は困難でした。
総務省は、平成28年8月、来るべきロボット社会到来への期待やドローンの長距離を隔てた運用や画像伝送のニーズに応えるため、新たに「無人移動体画像伝送システム」を制度化し、無線局免許の下で運用できるようになりました。169MHz帯はその周波数帯の一つであり、2.4GHz帯等の従来の周波数に比べて、障害物を回り込み、周囲の構造物等を反射して遠方に届きやすい特性を持っています。また、新たな制度によると、上空では10mW、地上では1Wまでの出力で運用でき、条件が良ければ10?以上の距離で遠隔制御できる可能性を秘めています。一方、169MHz帯は、周波数の幅が合計で約400kHz程度と比較的狭く、多くのロボットやドローンが同時に使用することは困難であるとともに、データの伝送速度も遅くなります。このため、通常使用する920MHz 帯から5GHz帯等の他の周波数帯が利用できなかったり干渉を受けたりした場合のバックアップ用としての使い方が想定されていますが、これまで、実際に、この周波数を使ってロボットを制御したり、ドローンを飛行させて評価した例はなく、その通信品質に関するデータもありませんでした。
【研究の内容】
本研究では、これまで通常時のドローン・ロボット制御用の無線方式として開発してきた920MHz帯の無線装置に、新たに制度化された周波数帯である169MHz帯の無線装置とそのアンテナを追加し、同じケースに収めることで、920MHz帯と169MHz帯の間で手動又は自動による遠隔切替えが可能なハイブリッド無線装置を実現しました(図1)。そして、制度化後としては全国で初めて169MHz帯によるドローン・ロボット制御システムの評価を行うための実験試験局免許を取得し、地上の操縦者からドローンまで169MHz帯にて直接電波をつないで遠隔制御を行い、安定に飛行させることに成功しました。
開発に当たっては、できるだけ、これまで920MHz帯で開発してきた技術である、“応答遅延時間を一定に保ちながら、制御情報(コマンド)や機体の状態情報(テレメトリ)を途中の他の中継用ドローン等を経由してマルチホップ中継する機能”を変えずに、周波数とその送信出力のみ、169MHz帯の規格に切り替えられるよう設計を行いました。しかし、169MHz帯は遠くに届く特性を持つ反面、920MHz帯に比べ、同じ通信方式の場合、データ伝送速度がおよそ半分以下と小さくなるため、遠隔制御の安定性が維持できるか、また、ドローンからのテレメトリが失われることなく送られてくるか、が焦点となっていました。また、ドローンの飛行中、920MHz帯と169MHz帯の間で周波数を切り替えるときにドローンの飛行状態が不安定にならないかという不安材料もありました。
実験では、初めに920MHz帯で操縦者端末とドローン側の間で通信を確立し、そのまま離陸上昇させ、上空高度30mほどになったところで周波数を169MHz帯に切り替え、ドローンの飛行状態への影響を調べました。その結果、操縦者が制御コマンドを送信してからドローンに届くまでの遅延時間は、920MHz帯では60ミリ秒ほどであったところ、169MHz帯では2秒ほどかかりました。また、テレメトリの伝送速度が、920MHz帯に比べて約半分になるという課題も見つかりました。しかし、ドローンの飛行に支障はなく、安定に飛行が可能であり、地上側でも多少データの更新頻度が落ちるものの、ほぼリアルタイムでテレメトリが得られることが確認できました。
周波数の切替えについては、920MHz帯から169MHz帯に切り替わるまでの時間は約20秒かかりましたが、飛行自体は安全に維持されたままであることが確認できました。今後は、これを更に高速化する検討を行う予定です。一方、169MHz帯から920MHz帯に戻すときは、全く問題なく、瞬時に切り替わることを確認しています。これは、169MHz帯に切り替わった後も、920MHz帯の信号を完全には切断していないことによるものです。今回の開発により、異なる電波の伝わり方をする複数の周波数にまたがるハイブリッド型の運用が可能となり、ドローンの飛行に必要な無線通信の電波をこれまでよりも格段に途切れにくくする見通しが得られました。
さらに、169MHz帯の実験で、図2に示すように、直接電波が届かない見通し外でのドローン運用を想定し、途中に中継局を搭載した別のドローンをもう1機飛行させ、いったんこれを経由して目的のドローンを制御するマルチホップ中継制御による飛行も行ったところ、遅延時間とデータ伝送速度は直接通信の場合とほとんど変わらず、やはり安定に飛行できることが確認できました(図3)。
国の新たな規格に準拠した169MHz帯電波を使った上記一連の実験の成功は、まだ他には例がなく、通常使用している電波が弱くなったり干渉を受けたりした場合の緊急通信手段として使えることが示され、ドローンやロボットにとってこれまでよりも更にタフな無線の実現につながる基盤技術が確立できました。また、国が2020年頃までの実現を目指している目視外での安全なドローン運航にも寄与できるものと期待されます。
【今後の課題と展望】
今回の実験では、直接目視できる範囲の数10m程度の距離での基本評価を行いましたが、次のステップとして、より長距離を隔てた通信実験を行い、169MHz帯利用の最大の特長について評価するとともに、画像伝送の可能性についても試行する予定です。また、920MHz帯と169MHz帯の間の切替え時間の短縮と、通常使う電波が弱くなったり途切れたりした場合の自動切替えについても、動作検証を行っていく予定です。