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執務空間の知的生産性向上に効果的な温度刺激の与え方を実証

2018年7月25日

ダイキン工業株式会社・日本電気株式会社

知的生産性を高める空気・空間の実現に向けた共同研究で
執務空間の知的生産性向上に効果的な温度刺激の与え方を実証

ダイキン工業株式会社(本社:大阪市北区、代表取締役社長 兼 CEO:十河政則、以下 ダイキン工業)と日本電気株式会社(本社:東京都港区、代表取締役 執行役員社長 兼CEO:新野 隆、以下 NEC)は、2016年より取り組んでいる知的生産性を高める空気・空間を実現するための共同研究において、オフィスなどの執務空間での知的生産性向上には空調による温度刺激が特に効果的であることを実証しました。さらに、眠気の兆しが見えた早期の段階で刺激を与えることが、覚醒度を保つのに効果的であることも明らかにしました。

■実証について
知的生産性を高めるには、眠気をおさえて覚醒度を適切に保つことが重要だと言われています。今回、覚醒度を適切に
保つにはどのような方法・タイミングの刺激がよいかを確かめるため、定期的に被験者の覚醒度を測りながら、空調(温度)・照明(照度)・アロマ(芳香)それぞれの刺激を与え、覚醒度の変化を検証しました。 

1)検証方法
環境条件を所定のタイミングで変化させた際の、被験者の覚醒度変化を確認する実証実験を行いました。被験者には、眠くなりやすいタスク(2桁の加算暗算)を与え、5分毎に眠気を5段階で申告してもらうとともにカメラにより眠気を推定しました。

環境条件として以下の4つを設定しました。
・条件1:室温設定27℃一定、芳香なし、照度700lx
  (環境変化は与えない)
・条件2:室温設定27℃→24℃→27℃、芳香なし、照度700lx
  (室温を第2セット開始時と第5セット開始時に変更)
・条件3:室温設定27℃一定、芳香なし、照度150lx→1500lx→150lx
(照度を第2セット開始時と第5セット開始時に変更)
・条件4:室温設定27℃一定、芳香なし→あり→なし、照度700lx
(アロマを第2セット開始時〜第5セット開始前の30分間噴霧)

2)検証結果
空調による温度刺激では、環境変化を与えない場合と比較して平均の覚醒度が5段階中、最大で約2段階分上昇し、さらに45分以上眠気を抑制し続けることがわかりました。また、照明やアロマによる刺激では、環境変化を与えない場合と比較して、覚醒度が最大0.5段階分上昇することを確認しています。

試験開始時間からの経過時間
さらに既に眠い状態になってからではなく、眠気の兆しを検出した時に刺激を与えることで覚醒効果が大きくなり、その効果は温度・照度・芳香刺激など、刺激の与え方や組み合わせで、高められることがわかりました。

■今後のフィールド実証にむけて
本検証をもとに、まぶたの開度から眠気の兆しを検知して、空調・照明を組み合わせた刺激を与えるプロトタイプの制御システムを構築しました。今月よりダイキン工業(40平米)・NEC(200平米)の検証用オフィスにて、執務中の覚醒度データを取得して空調・照明の環境制御を行うフィールド実験を開始しています。

ダイキン工業とNECは、空気・空間に関する技術とAI・IoT技術を活用し、オフィスなどの執務空間での「知的生産性を高める空気・空間」という新しい価値を提供するソリューションの実現をめざして、2016年10月から共同研究を行なっています。今後、両社は実証のためのパートナーを拡大し、共にフィールド実証を進め、新たな価値創造に向けて取り組んでいきます。

■実証実験で活用した新技術
1) 温度刺激による覚醒度の制御技術(ダイキン工業)
 従来、人の感覚として「快適すぎると眠たくなる」「外の涼しい空気に当たると眠気が解消する」と言われてきましたが、そのメカニズムは明らかでなく、快適性を保ちながら効果的に眠気を解消する方法は明らかになっていませんでした。
 今回、体温調節に関わっている自律神経機能(交感神経と副交換神経)が、人の覚醒と眠気に関わっていることに注目し、温度刺激の与え方で覚醒度をコントロールできることを検証しました。体温調節のメカニズムとして、温熱的に中立な状態から涼しい状態になると体温低下を防ぐために血管が収縮し、交感神経が刺激され、覚醒度が高くなることが分かっています。そこで、快適性を損なわずに覚醒度を高めることを課題として、環境制御アルゴリズムの検討と検証をしました。この結果、眠気の兆しが見えた早期の段階で、少し涼しい状態を作ると眠気が改善し、また、その状態を短時間で元に戻すことにより、快適性と両立できることを見出しました。さらに、温度刺激は照明やアロマによる刺激に比べて覚醒状態を長く持続させることも確認しました。

2)覚醒度推定技術(NEC)
従来、覚醒度の推定は、顔を撮影した映像からまぶたの動きを抽出し、眼を閉じている時間やまばたきの回数から行っていました。これは覚醒度を高精度に推定できますが、一回数100ミリ秒と動きの速いまばたきをリアルタイムに捉えるためには、毎秒15フレーム以上の高速な画像処理を行う高価なPCが必要でした。
今回、覚醒度低下の兆候として、より低速な”まぶたの重さに耐える”動き(まぶたの揺らぎ)に着目し、低フレームレートの顔映像データからでも精度よく覚醒度を推定することが可能かを検証しました。従来の1/3に相当する毎秒5フレームの映像から、2種類のまぶたの揺らぎ(時間揺らぎ、左右差)を覚醒度低下の兆候として捉えて、覚醒度の低下レベルを従来と同じ精度で推定できることを確認しました。これにより、処理能力が低い安価な超小型コンピュータでも高精度に覚醒度の低下レベルを推定できます。

なおダイキン工業とNECは実証実験の成果に関して、東北大学にて開催される「2018年度日本建築学会大会」(9/4(火)〜6(木)、http://taikai.aij.or.jp/2018/)において、共同で発表を行います。
また、NECは覚醒度推定技術について、米国ホノルルにて開催された医工学分野のフラグシップ国際会議「IEEE The 40th International Engineering in Medicine and Biology Conference」(7/17(火)〜21(土)、https://embc.embs.org/2018/)において発表を行いました。

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