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EY調査、各国政府は再生可能エネルギー開発の取り組みを強化

エネルギー安全保障上の懸念が強まる

・新たな技術とグリーン燃料が、世界的な天然ガスへの依存を低減させる鍵となる
・再生可能エネルギーの新たな供給源に対する需要増加に伴い、浮体式の風力・太陽光発電が主流となる可能性がある
・中南米が注目すべきグリーンエネルギー市場になるには、成長に対する障壁の克服が重要となる

EYは、再生可能エネルギーに関する最新の調査EY再生可能エネルギー国別魅力指数(RECAI)第59号(以下、RECAI 59号)を発表しました。日本を含めた40カ国を対象にした本調査によると、地政学的に不安定な情勢と天然ガス価格の高騰を背景に、エネルギー安全保障が政府の優先課題リストの最上位となっています。また、各国政府はこのような状況を受け、輸入エネルギーへの依存度を低下させるため、再生可能エネルギーの取り組みを加速させ、その範囲を拡大しようとしています。

RECAI 59号では、再生可能エネルギー技術とグリーン燃料が発電における天然ガスの使用割合を大きく低下させ、代替エネルギー供給源に対する投資環境が向上する可能性について考察しています。例えば欧州では、液化天然ガス(LNG)の輸入増加に向けた動きが活発化していますが、同様にグリーン天然ガスの生産や他の代替燃料開発の取り組みも強化しています。本調査では、ロシアへの天然ガス依存を、一夜にして他の調達先に変更することは難しいとしても、依存削減に向けた気運が大きく高まっていることが明らかになりました。

EY Global Renewables Leader(再生可能エネルギーセクター責任者)のArnaud de Giovanniのコメント:
「再生可能エネルギー技術の多くが、最近まで新奇で、リスクが高いと考えられてきましたが、今後主流になる可能性が急速に浮上し、投資家の関心を集めています。当面、エネルギー価格の動きは不安定な状況が続くとみられるなか、エネルギー分野のリーダーの目前には、技術のイノベーションを活用し、サステナブルで再生可能な成長の実現に向けて投資に踏み出す未曾有の機会が開けています」

浮体式技術の利点 :                                     
また、本調査では、浮体式技術がもたらす機会についても検討しています。洋上風力発電については、2030年までに発電コストが1メガワット時当たり70米ドル以下に下がると予測されており、引き続き、大規模投資の可能性があります。既に操業している浮体式洋上風力発電プロジェクト11件に加え、建設中、資金調達もしくは規制認可取得済み、または計画初期段階のプロジェクトの総計は100件超に上ります(総発電容量は2万6,300メガワット)。  

また、太陽光発電(PV)パネル価格の急落に伴い、浮体式太陽光発電にもさらに大きな関心が集まっています。2021年までの5年間で、全世界の浮体式太陽光発電による発電容量は100倍超に増加しました。これまで浮体式発電プロジェクトは、比較的対応しやすい環境下の淡水域の人口構造物上で実施されてきました。しかし、外洋の広大な領域を活用するため、プロジェクトをさらに沖合で実施する計画も検討されています。

EY グローバル電力・ガス・コーポレート・ファイナンスリーダー RECAI編集長のBen Warrenのコメント:
「各国政府が脱天然ガスを模索するなか、再生可能エネルギーミックスの多様化につながる再生可能エネルギー技術の開発に弾みがついています。このため、投資環境には基調として大きなドミノ効果が生じています。再生可能エネルギー建設の重要度が再び増したことにより、魅力的な投資環境が形成され、投下資金が増加しています。今回のRECAIでは、浮体式技術、グリーン水素、グリーン天然ガスを含め、従来のものと革新的なものの双方の代替エネルギーについて、成長性と投資可能性を考察しています」

指数のハイライト:
米国と中国が引き続き、再生可能エネルギー投資の魅力度の点で、上位2カ国を占めています。一方、上位10カ国の顔ぶれは若干変化しています。英国(3位)は順位を2つ上げ、ドイツ(4位)は3つ、スペイン(9位)とオランダ(10位)は1つずつ上げました。

今回注目すべき進展があったのは、デンマーク(順位4つ上昇。2030年までに年間6ギガワットを水力で発電するという新たな目標を設定)、ポーランド(順位3つ上昇。新規洋上風力発電プロジェクト3件の入札を開始)、フィンランド(順位7つ上昇。洋上風力発電所建設のため公有水域リース権の競売モデルの導入を承認)、オーストリア(順位7つ上昇。再生可能エネルギー開発に向け、政府が2億5,000万ユーロ(2億6,400万米ドル)の資金供与を決定)、ギリシャ(順位3つ上昇。2030年までに再生可能エネルギーによる発電容量を倍増させ、約19ギガワットを目指す)、ドイツ(順位3つ上昇。100%グリーン発電目標を15年前倒しし、2035年の達成を目指す)です。

EY Japanストラテジー・アンド・トランザクション電力・ユーティリティセクターリーダー 岡本 卓也(おかもと たくや)のコメント:
「洋上風力発電開発に係る政策が各国の再生可能エネルギー投資の魅力度に影響を与えています。日本では公募における事業者選定の評価に対する考え方の見直しが議論されていますが、低コストかつ迅速な洋上風力発電の開発の実現には海外からの資金・技術・ノウハウの導入・活用は有用と考えられ、海外からの投資の魅力度を損なわないよう官・民の建設的な議論が望まれます。また、本調査ではコーポレートPPA指数で日本が初めて30位以内にランクインしました。いまだ最終需要家への電力の直接販売には規制が残るものの、脱炭素化の流れに加え不安定な電力卸売市場価格を背景として、日本においても長期かつ安定的な契約に基づくコーポレートPPA市場の拡大が見込まれます」

注目すべき地域:中南米
また、RECAI 59号では、中南米における動向と課題に特に注目しています。この地域には再生可能エネルギーに関して広範な可能性が存在しています。政情不安や新たな規制枠組みの必要性、資金調達の難しさなどの障壁が克服できれば、同地域のグリーンエネルギー分野は大きな成長を遂げる可能性があります。なかでも、世界で最も低価格のグリーン水素の生産を目指しているチリは、特に注目すべき国です。同国政府が用いている研究*1では、2030年までに1キログラム当たり1.05米ドルでグリーン水素が生産できると予測しています。

日本の視点:
エネルギー自給率が低い日本では、これまでにも増してエネルギー安全保障の重視と脱炭素化への動きの両方のトレンドを踏まえた取り組みが求められています。新たな技術の中では浮体式技術の洋上風力発電への活用が期待されます。これにより海底地形が急しゅんな日本でも、北海道や東北だけでなく北陸や中国、九州で洋上風力発電開発のポテンシャルが大きく広がるでしょう。日本のエネルギープレーヤーにとって、欧州での浮体式技術への投資加速の動きは、技術・ノウハウを獲得し、日本市場に導入するチャンスが広がることになると考えられます。

魅力度ランキング上位40カ国の完全版リストおよび世界各国における再生可能エネルギーの最新状況は、ey.com/recaiでご覧いただけます。
*1 https://energia.gob.cl/sites/default/files/documentos/green_h2_strategy_chile.pdf

※本ニュースリリースは、2022年5月24日(現地時間)にEYが発表したニュースリリースを翻訳したものです。英語の原文と翻訳内容に相違がある場合には原文が優先します。

英語版ニュースリリース:Energy security concerns reinforce government focus on renewable energy programs

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