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MSCI:アジア太平洋地域の商業用不動産投資 第2四半期も引き続き低調、取引額は前年から減少

MSCIが作成した「Asia Pacific Capital Trends」レポート最新版によると、アジア太平洋地域における商業用不動産投資は、低調だった昨年からさらに地域全体の取引額が減少し、2024年第2四半期も引き続き精彩を欠く結果となりました。その一方で、主要市場別のトレンドには顕著な違いが見られました。

レポートによると、第2四半期の完了取引の総額は前年比17%減の324億ドルでした。その結果、2024年1〜6月期の不動産売却活動は、2023年上期から7%減少し、704億ドルにとどまりました。

MSCIの実物資産調査担当アジア責任者Benjamin Chow(ベンジャミン・チョウ)は、「日本の投資モメンタムは、マクロ経済への懸念から2024年半ばに低下し始めています。投資家は日銀による利上げの可能性を以前から警戒してきました。取引が最も活発な資産クラスであるホテルが、低インフレ環境からインフレ環境への移行や為替変動に直面した際に最も強いリターンを生み出せるセクターでもあることは注目に値します」とコメントしました。

【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202408205120-O4-NGNiJqk5

APAC全体に共通する傾向として、市場内の資本による投資がグローバル資本よりもはるかに安定していた点が挙げられます。また、停滞期間中のAPACの主要市場と北米および欧州では価格調整に明らかな違いが見られました。欧米市場におけるバリュエーションの急落が、グローバル投資家がAPACから撤退する動きと同じタイミングで発生しました。市場レベルでは、金利政策が最大の分岐点となり、第2四半期は金利の低い中国と日本で取引活動が減少しました。この2カ国以外では、域内の活動は金額ベースで横ばいだった一方で、取引件数は2四半期連続で増加しています。これらの市場に大きな打撃を与えてきた高金利環境から、利下げ見通しという形でようやく明るい兆しが見え始めました。オーストラリア、韓国、インド、台湾の取引額はいずれも昨年上期を上回っています。

取引額の対前年比推移

【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202408205120-O1-91i6cgR2
取引額上位市場

【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202408205120-O2-808c1N04

2024年上期は複数セクターが伸び悩み

主要セクターのうちホテルのみ、第2四半期および通年でAPAC全体の総取引額が増加しました。オフィス投資の取引額は8四半期連続で前年を下回っていますが、2024年第1〜2四半期の減少率が1桁にとどまったことは、この下落傾向が終わりに近づいている可能性を示唆しています。工業用セクターの取引活動は、主に日本と中国の2大市場のパフォーマンスが後退要因となり、30%を超える大幅な減少を記録しました。また、第2四半期の販売額が65億ドル、通年の販売額が145億ドルのリテールセクターでは、複数の大型ショッピングセンターが売却されました。リビングセクターは、比較の基準が高かったこともあり第2四半期の取引額は縮小しています。

物件タイプ別買収額

【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202408205120-O3-gDmEBZ92

2024年第2四半期「Asia Pacific Capital Trends」レポート 中国ハイライト:
・国内の投資額は、主に工業用セクターにおけるテナントの需要と投資家の関心の大幅な落ち込みにより、前年比19%減の82億ドルでした
・ 第2四半期の工業用不動産の買収額は、四半期ベースで2019年以降最低の113億人民元(16億ドル)強に急減しました
・ 上海が中国を代表する投資ハブとして浮上し、前年からは10%減少したものの、上期中に50億9000万ドル相当の取引が行われました
・ オフィス投資は低調が続いており、企業が入居目的で購入する取引が大半を占めました
・ マルチファミリー市場は、上海で国際的な投資家による複数の大型取引が行われるなど、2024年上期も好調を維持しています
・ 中国ではディストレスト投資の割合が引き続き高く、取引総額の20%近くを占めています

2024年第2四半期「Asia Pacific Capital Trends」レポート 日本ハイライト:
・ 2024年第1四半期の販売額は、2007年の統計開始以来四半期ベースで最高の2兆円(134億ドル)となるなど、前年度は高水準を記録しました
・ 7月に実施された利上げへの期待が、伝統的な不動産セクターに対する投資家の期待を和らげたと考えられます
・ 例外的なパフォーマンスを示したホテルセクターは、オフィスを抜いて当四半期に最も取引された資産クラスとなりました
・ 東京の2024年上期の取引額は、主に第1四半期のオフィス取引が堅調だったことを主因に101億ドルを記録し、アジア太平洋地域で取引が最も活発な都市の首位を維持しています。東京のマルチファミリーセクターでは、国内取引と国際取引がいずれも好調に推移し、第2四半期だけで10億ドル弱を記録しました
・ 大阪はホテルセクターが主な推進要因となり、APACの上位10都市の中で唯一、2024年に過去最高の取引活動を記録しており、取引額は暦年で既に過去最高の15億ドルに達しています
・ 日本のマルチファミリー市場への投資は2022年のピークから緩やかに冷え込んでおり、日銀の政策変更を受けても利回りは拡大していません

2024年第2四半期「Asia Pacific Capital Trends」レポート 香港ハイライト:
・ FRBの7月の会合後、米10年物国債が35〜40bps下落したことが香港市場に大きな影響を与えましたが、現在市場が直面している課題は借入コストの高さだけではないように思われます
・ 商業用不動産価格は値下がりが続いており、リテールおよび工業用不動産が直近のピークから約40%下落した一方で、オフィスの価格調整は25%にとどまりました
・ 賃貸住宅は現在唯一活発に取引が行われているセクターです。複数のホテルがコ・リビングや学生寮へのコンバージョン目的で買収され、そのうちの1軒は地元の大学が購入しました

2024年第2四半期「Asia Pacific Capital Trends」レポート シンガポールハイライト:
・ 第2四半期のシンガポールは年半ばにかけて取引が低調で、数値は過去の長期的な平均値を大幅に下回りました
・ 低迷期を通じて価格がほとんど変わらなかったオフィスセクターは、低調な取引活動によって大きく後退しました
・ しかし、現在保留中の都心一等地にあるビルの売却は、利回りが3.8%と他の同等地域のビルよりも30〜50ベーシスポイント高く、オフィスセクターに転機をもたらす可能性があります

2024年第2四半期「Asia Pacific Capital Trends」レポート 韓国ハイライト:
・ 機関投資家が投資している主要セクターの活動は、2024年上期中にパンデミック前の水準に戻っています
・ リテールセクターのみ低迷したものの、オフィス、工業用、ホテルの各セクターの取引活動は、2023年上期と比較して高い水準を記録しました
・ 第2 四半期の取引は金額ベースでわずかに減少したものの、取引件数は四半期ベースで      2022 年第 3 四半期以来の高水準に達し、回復が順調に進んでいることが示されました
・ ソウルのオフィスセクターは、昨年上海に順位を譲ったものの再び2位に浮上しました。年内に成立した単独で10億ドルを超える資産オフィスのグローバル案件を含め、第 2 四半期中に1 億ドル超のオフィス物件の取引が7 件行われました
・ ソウルのホテルセクターでも、コンラッド・ソウルが3億ドル弱で買収されるという、APACで最大級の取引が行われました
・ 韓国のマルチファミリー市場も活気を取り戻し始めており、今年に入って複数の投資会社が同セクターに参入しました

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Asia Pacific Capital Trendsのデータは、特に記載のない限り1,000万ドル以上のオフィス、工業、リテール、共同住宅(アパートメント)、ホテル、高齢者向け住宅の物件およびポートフォリオに基づきます。正確と考えられるデータを使用していますが、その正確性を保証するものではありません。

本レポートおよびデータの出所は必ずMSCIと明記してください。

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