ニュートリノの「変?」が左右する星の最期と超新星爆発
[26/05/25]
提供元:共同通信PRワイヤー
提供元:共同通信PRワイヤー
〜スパコン「富岳」を?いたマルチアングル輸送計算により解明〜
2026年5月25日
早稲田大学
ニュートリノの「変?」が左右する星の最期と超新星爆発
〜スパコン「富岳」を?いたマルチアングル輸送計算により解明〜
発表のポイント
●ニュートリノがその性質を「変?」させるニュートリノ振動※1が、星の??の最期に起きる超新星爆発へどう影響を及ぼすかを初めて明らかにしました。
●超新星爆発内部で起きる特異な種類のニュートリノ集団振動、特に「?速フレーバー変換」を正確に取り扱うために、運動量空間を解くマルチアングル輸送シミュレーションをスーパーコンピュータ(スパコン)「富岳」※2において実?し、フレーバー変換の効果を初めて考慮しました。
●軽い星ではニュートリノ振動が爆発を促進し、重い星ではその逆となることがわかりました。
●宇宙進化に重要な役割を果たす超新星爆発のメカニズムにはまだ謎が多いですが、その解明に?歩近づきました。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202605229548-O4-Y9Z81B1w】
図1:比エントロピー(衝撃波を膨張させる勢いの指標)の分布を、フレーバー変換なし(左)とフレーバー変換あり(右)で比較したもの。赤い領域がフレーバー変換発生領域で、そこを通ったニュートリノの平均エネルギーが高まり、ニュートリノ加熱率が上昇したことで衝撃波が広がっている。
早稲田大学理工学術院総合研究所の赤穗 龍一郎(あかほ りゅういちろう)次席研究員、理工学術院の山田 章一(やまだ しょういち)教授、国立天文台の長倉 洋樹(ながくら ひろき)特任助教らの研究グループは、素粒?であるニュートリノがその性質を「変?」させるニュートリノ集団振動という現象が、宇宙最?の?爆発である超新星爆発にどう影響するかを、スパコン「富岳」によるシミュレーションで明らかにしました。超新星はニュートリノがエネルギーを運ぶことで爆発を引き起こすと考えられています。そして超新星内部では、ニュートリノ同?の相互作?によってニュートリノ集団振動という現象が起きると理論的に予想されていますが、その影響はわかっていませんでした。本研究では、集団振動の種類の中で最も卓越的である?速フレーバー変換の効果を、それを正しく取り扱うためのマルチアングル輸送シミュレーションに初めて組み込み、超新星爆発ダイナミクスに及ぼす影響を明らかにしました。
本研究成果は2026年5月 1 1日(月)にアメリカ物理学会の「Physical Review Letters」にて公開され、同誌のFeatured in Physics Viewpointとして選出されました。Physics Viewpointは、Physical Review の中から特に注目される論文が選出されます。
(1)これまでの研究で分かっていたこと
重い星が??の最期に起こす超新星爆発は宇宙最?規模の?爆発です。多彩な元素が超新星で合成され、宇宙に拡散されることで多様な物質が?まれ、我々のような?命が誕?したと考えられています。また、その後中?部にはブラックホールや中性?星などの天体が形成され、それらは他の?エネルギー突発天体現象を引き起こします。よって超新星爆発は宇宙の新陳代謝にとって中?的イベントであると?えます。
超新星爆発は、ニュートリノが内部の熱を外に運び周囲の物質に受け渡す、ニュートリノ加熱メカニズムによって爆発が引き起こされると考えられています。ニュートリノは特殊な素粒?で、?本のスーパーカミオカンデ※3が発?したニュートリノ振動という現象によって、その性質を「変?」させます。近年の理論研究では、超新星内部のような超?密度環境において、ニュートリノ同?の相互作?による「集団振動」が起こることが指摘されるようになりました。ニュートリノ振動が発?すると、ニュートリノの3つあるフレーバー(電?型、ミュー型、タウ型)が?れ替わります。加熱メカニズムに貢献するのは主に電?型のみなので、集団振動によるフレーバー組成が変化するとニュートリノから周囲の物質へのエネルギーの受け渡され方が変化し、超新星のダイナミクスそのものを左右すると考えられています。現在、この集団振動が爆発に与える影響に、世界的な注?が集まっています。
ニュートリノ集団振動、そしてその中でも成?率の?い?速フレーバー変換が超新星にどう影響を及ぼすかを明らかにするには、位置に関するニュートリノ分布だけでなく、どの?向にどのくらいの量が?んでいるのか、運動量空間分布を解く「マルチアングル輸送」が必要です。しかし先?研究では運動量空間に近似が課されており、集団振動を原理的に取り扱えませんでした。結果、?速フレーバー変換の影響を調べた先?研究はその発?場所を?動のパラメータとして取り扱っていました。しかしそのパラメータによって?きく結果が変わるため、そのような先?研究からは決定的な結論が出されていませんでした。
(2)今回の新たに実現しようとしたこと、明らかになったこと、そのために新しく開発した?法
研究グループは世界で唯?、完全な運動量空間分布を解くマルチアングル輸送である、ボルツマン輸送シミュレーションを空間多次元にて推進してきました。本研究ではそのシミュレーションコードに?速フレーバー変換(FFC)の影響を実装することで、世界で初めて超新星爆発ダイナミクスへの影響を明らかにしました。特に、FFC が発?する数学的条件である ELN-XLN ?度クロッシング※4を??無撞着的に判定し、その後の分布も量?運動論的処?※5によって与える?法を組み込みました。
その結果、軽くて爆発が成功する星では FFC によりさらに爆発が促進されること、そして重くて爆発が失敗する星では FFC がさらに爆発を抑制する、と影響が?極化することが発?されました(図2)。その理由は、軽い星と重い星での、電?型と重レプトン型(ミュー・タウ)ニュートリノの放射のされ?の違いにあります。軽い星は質量降着率※6が低く、それによって駆動される電?型ニュートリノの放出が弱く(光度・平均エネルギーが低く)なります。このような状態で FFC が起きると、重レプトン型ニュートリノから電?型ニュートリノへの変換が卓越します。重レプトン型の?が電子型よりも平均エネルギーが?いため、FFC が起きると電?型の平均エネルギーがつられて上がり、ニュートリノ加熱率※7が増加して爆発が促進されます(図1)。??で重い星は質量降着率が?く、元々の電?型ニュートリノの放出が強い状態です。よって FFCが発?すると、電?型ニュートリノから重レプトン型ニュートリノへの変換が卓越します。その結果軽い星とは逆で、ニュートリノ加熱率が減少して爆発が抑制されるのです。
また、論?ではさらに、先?研究で?いられていた近似的取り扱いの妥当性の評価を?いました。その先?研究では、低次のモーメントから?為的に再現した運動量空間分布に基づき FFC の影響を調べていました。本研究ではその?法と、直接運動量空間分布から求めた結果を?較しました。その結果、先?研究の近似的?法では FFC が出現する場所の?部分を?逃してしまうこと、そして分布によっては FFCが本来発?しない場所で偽判定してしまうことがわかりました。よって FFC の影響を調べるには本研究のようなボルツマン輸送シミュレーションが必要であるということも?されました。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202605229548-O5-bs8XNsub】
図2. 平均衝撃波半径の?較。9~20 の初期質量(太陽質量)の結果。 VM、χEFT、DBHF それぞれは異なる状態?程式。 フレーバー変換を考慮した計算は破線で表されている。
(3)研究の波及効果や社会的影響
超新星爆発は宇宙がどう進化してきたか解明する鍵を握る重要な現象です。また、地球上で実現できない超?エネルギー現象であるため、現在の素粒?・原?核理論の検証を行うことができる重要な実験場でもあります。本研究では超新星爆発理論の中でも?きな不定性であるニュートリノ集団振動の影響を明らかにし、超新星爆発の解明に?歩近づきました。
(4)課題、今後の展望
ニュートリノ集団振動の成?モードは複数種類あると考えられており、本研究では最も成?率が?く、卓越的である?速フレーバー変換の影響を調べました。今後は衝突フレーバー変換など他の成?モードについても調べていきたいと考えています。また、超新星理論にはニュートリノ集団振動以外にも他の不定性も残されており、?つ?つ解決していく必要があります。
近年、電磁波・ニュートリノ・重?波観測を組み合わせたマルチメッセンジャー観測の機運が?まっており、近傍で超新星爆発が起きれば全ての種類のシグナルが観測できると考えられています。特に今回の主題であるニュートリノの検出に関しては、建設中のハイパーカミオカンデをはじめとして複数の国際プロジェクトが始動中です。本研究のような精密なモデル作りは、将来の観測結果を解釈する上での重要な基盤となります。
(5)研究者のコメント
本研究で?われたボルツマン輸送計算は他の研究グループの近似計算と?べて計算コストが?く、スパコン「富岳」をはじめとした世界最?規模の計算機によって初めて可能となるものです。本研究は?規模シミュレーション・計算科学を活?して基礎科学を解明する?例となります。
(6)用語解説
※1 ニュートリノ振動:
ニュートリノは今のところ 3 種類あると考えられており、それぞれ周りの物質と異なる相互作?をする。ニュートリノ振動とは、ニュートリノが?んでいく間にその型が変化する現象である。これはスーパーカミオカンデ※3で確認されたもので、この発?によって梶?隆章?がノーベル賞を受賞した。そして超新星爆発のような、特にニュートリノ数密度が?い現象ではニュートリノ同?の前?散乱による「集団振動」が発?すると考えられている。
※2 スーパーコンピュータ「富岳」:
スーパーコンピュータ「京」の後継機として理化学研究所が設置し、2021年3月から共用を開始した計算機。 スーパーコンピュータの主要な世界ランキングの一つであるGraph500で11期(〜2025年6月)連続1位を獲得し、以降も世界トップレベルの性能を有している。
※3 スーパーカミオカンデ:
岐阜県の神岡鉱山跡地に設置された、水チェレンコフ検出器と呼ばれる種類のニュートリノ観測装置。同種の検出器としては世界最大で、超新星から放出されたニュートリノを観測するには最適。前身のカミオカンデII検出器が超新星SN1987Aからのニュートリノを検出し、アップデート後のスーパーカミオカンデが太陽ニュートリノを使ってニュートリノ振動を発見したことで、2度のノーベル賞受賞に関わっている。
※4 ELN-XLN ?度クロッシング:
電?型ニュートリノレプトン数(ELN)と重レプトン型ニュートリノレプトン数(XLN)の差で定義される、ELN-XLN という物理量の運動量空間?度分布が、正と負両?の値をとる(0 の値をクロスする)こと。?速フレーバー変換発?の必要?分条件であることが数学的に証明されている。
※5 量?運動論的処?:
ニュートリノ集団振動を??無撞着的に扱った量?運動論シミュレーションの知?を?い、?速フレ
ーバー変換の影響を有効的に取り?れる?法。?速フレーバー変換が発?した後は、その発?条件であ
る ELN-XLN ?度クロッシングを消すような分布に?るということが知られている。本研究では、分布
から ELN-XLN ?度クロッシングが取り除かれた漸近分布を解析的表式で与え、その分布へ向けた時間
緩和法によって有効的にフレーバー変換の影響を考慮した。
※6 質量降着率:
超新星爆発は、外へ伝播しようとする衝撃波と、降り積もってくる物質との競合であり、後者を特徴づける量が質量降着率である。質量降着は爆発の進行を妨げる一方、その重力エネルギーの解放を通じて原始中性子星表面を加熱し、(主に電子型の)ニュートリノ放出を増大させる効果も持つ。より重い星は一般に大きく膨らんでおり、高い質量降着率が維持される。
※7 ニュートリノ加熱率:
ニュートリノが単位時間に衝撃波後?物質に与えるエネルギー。ニュートリノ加熱率が上昇すると衝撃波の外側への伝播を促進する。ニュートリノ加熱は主に電?型ニュートリノが担う。
(7)論文情報
雑誌名:Physical Review Letters
論文名:Bifurcated impact of neutrino fast flavor conversion on core-collapse supernovae informed by multiangle neutrino radiation hydrodynamics
執筆者名(所属機関名)??穗??郎 (早稲??: 筆頭著者)、?倉洋樹(国?天?台)、岩上わかな(早稲??)、古澤峻(関東学院?)、原?了(茨城?専)、?川博督(?森?)、松古栄夫(?エネ研)、住吉光介(沼津?専)、??章?(早稲??*: 責任著者)
掲載日時:2026年5月1 1日(月)
DOI:https://doi.org/10.1103/fksy-1jtw
掲載URL:https://journals.aps.org/prl/abstract/10.1103/fksy-1jtw
(8)研究助成
研究費名:科研費 若手研究
研究課題名:量子多体系として解明する重力崩壊型超新星爆発(JP26K17158)
研究代表者名(所属機関名):赤穗龍一郎(早稲??学)
研究費名:科研費 基盤(B)
研究課題名:古典的ボルツマンソルバーを?いたニュートリノ集団振動の超新星爆発への影響の研究 (JP25K01006)
研究代表者名(所属機関名):??章?(早稲??学)
研究費名:科研費 基盤(C)
研究課題名:ニュートリノ輻射流体計算を?いた超新星爆発及び連星中性?合体の包括的研究 (JP24K00632)
研究代表者名(所属機関名):?倉洋樹(国?天?台)
研究費名:科研費 基盤(B)
研究課題名:?般相対論的第?原理計算で探る星の最期と原?核物理 (JP23K03468)
研究代表者名(所属機関名):住吉光介(沼津?専)
本研究は、以下の「富岳」を中核とする HPCI システム利?研究課題を通じて、スーパーコンピュータ「富岳」(理化学研究所 R-CCS)、及び Wisteria(東京?学)の計算資源の提供を受け、実施しました。
課題番号:hp240041, hp240079, hp240264, hp250166, hp250006, hp250326, hp250191。
2026年5月25日
早稲田大学
ニュートリノの「変?」が左右する星の最期と超新星爆発
〜スパコン「富岳」を?いたマルチアングル輸送計算により解明〜
発表のポイント
●ニュートリノがその性質を「変?」させるニュートリノ振動※1が、星の??の最期に起きる超新星爆発へどう影響を及ぼすかを初めて明らかにしました。
●超新星爆発内部で起きる特異な種類のニュートリノ集団振動、特に「?速フレーバー変換」を正確に取り扱うために、運動量空間を解くマルチアングル輸送シミュレーションをスーパーコンピュータ(スパコン)「富岳」※2において実?し、フレーバー変換の効果を初めて考慮しました。
●軽い星ではニュートリノ振動が爆発を促進し、重い星ではその逆となることがわかりました。
●宇宙進化に重要な役割を果たす超新星爆発のメカニズムにはまだ謎が多いですが、その解明に?歩近づきました。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202605229548-O4-Y9Z81B1w】
図1:比エントロピー(衝撃波を膨張させる勢いの指標)の分布を、フレーバー変換なし(左)とフレーバー変換あり(右)で比較したもの。赤い領域がフレーバー変換発生領域で、そこを通ったニュートリノの平均エネルギーが高まり、ニュートリノ加熱率が上昇したことで衝撃波が広がっている。
早稲田大学理工学術院総合研究所の赤穗 龍一郎(あかほ りゅういちろう)次席研究員、理工学術院の山田 章一(やまだ しょういち)教授、国立天文台の長倉 洋樹(ながくら ひろき)特任助教らの研究グループは、素粒?であるニュートリノがその性質を「変?」させるニュートリノ集団振動という現象が、宇宙最?の?爆発である超新星爆発にどう影響するかを、スパコン「富岳」によるシミュレーションで明らかにしました。超新星はニュートリノがエネルギーを運ぶことで爆発を引き起こすと考えられています。そして超新星内部では、ニュートリノ同?の相互作?によってニュートリノ集団振動という現象が起きると理論的に予想されていますが、その影響はわかっていませんでした。本研究では、集団振動の種類の中で最も卓越的である?速フレーバー変換の効果を、それを正しく取り扱うためのマルチアングル輸送シミュレーションに初めて組み込み、超新星爆発ダイナミクスに及ぼす影響を明らかにしました。
本研究成果は2026年5月 1 1日(月)にアメリカ物理学会の「Physical Review Letters」にて公開され、同誌のFeatured in Physics Viewpointとして選出されました。Physics Viewpointは、Physical Review の中から特に注目される論文が選出されます。
(1)これまでの研究で分かっていたこと
重い星が??の最期に起こす超新星爆発は宇宙最?規模の?爆発です。多彩な元素が超新星で合成され、宇宙に拡散されることで多様な物質が?まれ、我々のような?命が誕?したと考えられています。また、その後中?部にはブラックホールや中性?星などの天体が形成され、それらは他の?エネルギー突発天体現象を引き起こします。よって超新星爆発は宇宙の新陳代謝にとって中?的イベントであると?えます。
超新星爆発は、ニュートリノが内部の熱を外に運び周囲の物質に受け渡す、ニュートリノ加熱メカニズムによって爆発が引き起こされると考えられています。ニュートリノは特殊な素粒?で、?本のスーパーカミオカンデ※3が発?したニュートリノ振動という現象によって、その性質を「変?」させます。近年の理論研究では、超新星内部のような超?密度環境において、ニュートリノ同?の相互作?による「集団振動」が起こることが指摘されるようになりました。ニュートリノ振動が発?すると、ニュートリノの3つあるフレーバー(電?型、ミュー型、タウ型)が?れ替わります。加熱メカニズムに貢献するのは主に電?型のみなので、集団振動によるフレーバー組成が変化するとニュートリノから周囲の物質へのエネルギーの受け渡され方が変化し、超新星のダイナミクスそのものを左右すると考えられています。現在、この集団振動が爆発に与える影響に、世界的な注?が集まっています。
ニュートリノ集団振動、そしてその中でも成?率の?い?速フレーバー変換が超新星にどう影響を及ぼすかを明らかにするには、位置に関するニュートリノ分布だけでなく、どの?向にどのくらいの量が?んでいるのか、運動量空間分布を解く「マルチアングル輸送」が必要です。しかし先?研究では運動量空間に近似が課されており、集団振動を原理的に取り扱えませんでした。結果、?速フレーバー変換の影響を調べた先?研究はその発?場所を?動のパラメータとして取り扱っていました。しかしそのパラメータによって?きく結果が変わるため、そのような先?研究からは決定的な結論が出されていませんでした。
(2)今回の新たに実現しようとしたこと、明らかになったこと、そのために新しく開発した?法
研究グループは世界で唯?、完全な運動量空間分布を解くマルチアングル輸送である、ボルツマン輸送シミュレーションを空間多次元にて推進してきました。本研究ではそのシミュレーションコードに?速フレーバー変換(FFC)の影響を実装することで、世界で初めて超新星爆発ダイナミクスへの影響を明らかにしました。特に、FFC が発?する数学的条件である ELN-XLN ?度クロッシング※4を??無撞着的に判定し、その後の分布も量?運動論的処?※5によって与える?法を組み込みました。
その結果、軽くて爆発が成功する星では FFC によりさらに爆発が促進されること、そして重くて爆発が失敗する星では FFC がさらに爆発を抑制する、と影響が?極化することが発?されました(図2)。その理由は、軽い星と重い星での、電?型と重レプトン型(ミュー・タウ)ニュートリノの放射のされ?の違いにあります。軽い星は質量降着率※6が低く、それによって駆動される電?型ニュートリノの放出が弱く(光度・平均エネルギーが低く)なります。このような状態で FFC が起きると、重レプトン型ニュートリノから電?型ニュートリノへの変換が卓越します。重レプトン型の?が電子型よりも平均エネルギーが?いため、FFC が起きると電?型の平均エネルギーがつられて上がり、ニュートリノ加熱率※7が増加して爆発が促進されます(図1)。??で重い星は質量降着率が?く、元々の電?型ニュートリノの放出が強い状態です。よって FFCが発?すると、電?型ニュートリノから重レプトン型ニュートリノへの変換が卓越します。その結果軽い星とは逆で、ニュートリノ加熱率が減少して爆発が抑制されるのです。
また、論?ではさらに、先?研究で?いられていた近似的取り扱いの妥当性の評価を?いました。その先?研究では、低次のモーメントから?為的に再現した運動量空間分布に基づき FFC の影響を調べていました。本研究ではその?法と、直接運動量空間分布から求めた結果を?較しました。その結果、先?研究の近似的?法では FFC が出現する場所の?部分を?逃してしまうこと、そして分布によっては FFCが本来発?しない場所で偽判定してしまうことがわかりました。よって FFC の影響を調べるには本研究のようなボルツマン輸送シミュレーションが必要であるということも?されました。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202605229548-O5-bs8XNsub】
図2. 平均衝撃波半径の?較。9~20 の初期質量(太陽質量)の結果。 VM、χEFT、DBHF それぞれは異なる状態?程式。 フレーバー変換を考慮した計算は破線で表されている。
(3)研究の波及効果や社会的影響
超新星爆発は宇宙がどう進化してきたか解明する鍵を握る重要な現象です。また、地球上で実現できない超?エネルギー現象であるため、現在の素粒?・原?核理論の検証を行うことができる重要な実験場でもあります。本研究では超新星爆発理論の中でも?きな不定性であるニュートリノ集団振動の影響を明らかにし、超新星爆発の解明に?歩近づきました。
(4)課題、今後の展望
ニュートリノ集団振動の成?モードは複数種類あると考えられており、本研究では最も成?率が?く、卓越的である?速フレーバー変換の影響を調べました。今後は衝突フレーバー変換など他の成?モードについても調べていきたいと考えています。また、超新星理論にはニュートリノ集団振動以外にも他の不定性も残されており、?つ?つ解決していく必要があります。
近年、電磁波・ニュートリノ・重?波観測を組み合わせたマルチメッセンジャー観測の機運が?まっており、近傍で超新星爆発が起きれば全ての種類のシグナルが観測できると考えられています。特に今回の主題であるニュートリノの検出に関しては、建設中のハイパーカミオカンデをはじめとして複数の国際プロジェクトが始動中です。本研究のような精密なモデル作りは、将来の観測結果を解釈する上での重要な基盤となります。
(5)研究者のコメント
本研究で?われたボルツマン輸送計算は他の研究グループの近似計算と?べて計算コストが?く、スパコン「富岳」をはじめとした世界最?規模の計算機によって初めて可能となるものです。本研究は?規模シミュレーション・計算科学を活?して基礎科学を解明する?例となります。
(6)用語解説
※1 ニュートリノ振動:
ニュートリノは今のところ 3 種類あると考えられており、それぞれ周りの物質と異なる相互作?をする。ニュートリノ振動とは、ニュートリノが?んでいく間にその型が変化する現象である。これはスーパーカミオカンデ※3で確認されたもので、この発?によって梶?隆章?がノーベル賞を受賞した。そして超新星爆発のような、特にニュートリノ数密度が?い現象ではニュートリノ同?の前?散乱による「集団振動」が発?すると考えられている。
※2 スーパーコンピュータ「富岳」:
スーパーコンピュータ「京」の後継機として理化学研究所が設置し、2021年3月から共用を開始した計算機。 スーパーコンピュータの主要な世界ランキングの一つであるGraph500で11期(〜2025年6月)連続1位を獲得し、以降も世界トップレベルの性能を有している。
※3 スーパーカミオカンデ:
岐阜県の神岡鉱山跡地に設置された、水チェレンコフ検出器と呼ばれる種類のニュートリノ観測装置。同種の検出器としては世界最大で、超新星から放出されたニュートリノを観測するには最適。前身のカミオカンデII検出器が超新星SN1987Aからのニュートリノを検出し、アップデート後のスーパーカミオカンデが太陽ニュートリノを使ってニュートリノ振動を発見したことで、2度のノーベル賞受賞に関わっている。
※4 ELN-XLN ?度クロッシング:
電?型ニュートリノレプトン数(ELN)と重レプトン型ニュートリノレプトン数(XLN)の差で定義される、ELN-XLN という物理量の運動量空間?度分布が、正と負両?の値をとる(0 の値をクロスする)こと。?速フレーバー変換発?の必要?分条件であることが数学的に証明されている。
※5 量?運動論的処?:
ニュートリノ集団振動を??無撞着的に扱った量?運動論シミュレーションの知?を?い、?速フレ
ーバー変換の影響を有効的に取り?れる?法。?速フレーバー変換が発?した後は、その発?条件であ
る ELN-XLN ?度クロッシングを消すような分布に?るということが知られている。本研究では、分布
から ELN-XLN ?度クロッシングが取り除かれた漸近分布を解析的表式で与え、その分布へ向けた時間
緩和法によって有効的にフレーバー変換の影響を考慮した。
※6 質量降着率:
超新星爆発は、外へ伝播しようとする衝撃波と、降り積もってくる物質との競合であり、後者を特徴づける量が質量降着率である。質量降着は爆発の進行を妨げる一方、その重力エネルギーの解放を通じて原始中性子星表面を加熱し、(主に電子型の)ニュートリノ放出を増大させる効果も持つ。より重い星は一般に大きく膨らんでおり、高い質量降着率が維持される。
※7 ニュートリノ加熱率:
ニュートリノが単位時間に衝撃波後?物質に与えるエネルギー。ニュートリノ加熱率が上昇すると衝撃波の外側への伝播を促進する。ニュートリノ加熱は主に電?型ニュートリノが担う。
(7)論文情報
雑誌名:Physical Review Letters
論文名:Bifurcated impact of neutrino fast flavor conversion on core-collapse supernovae informed by multiangle neutrino radiation hydrodynamics
執筆者名(所属機関名)??穗??郎 (早稲??: 筆頭著者)、?倉洋樹(国?天?台)、岩上わかな(早稲??)、古澤峻(関東学院?)、原?了(茨城?専)、?川博督(?森?)、松古栄夫(?エネ研)、住吉光介(沼津?専)、??章?(早稲??*: 責任著者)
掲載日時:2026年5月1 1日(月)
DOI:https://doi.org/10.1103/fksy-1jtw
掲載URL:https://journals.aps.org/prl/abstract/10.1103/fksy-1jtw
(8)研究助成
研究費名:科研費 若手研究
研究課題名:量子多体系として解明する重力崩壊型超新星爆発(JP26K17158)
研究代表者名(所属機関名):赤穗龍一郎(早稲??学)
研究費名:科研費 基盤(B)
研究課題名:古典的ボルツマンソルバーを?いたニュートリノ集団振動の超新星爆発への影響の研究 (JP25K01006)
研究代表者名(所属機関名):??章?(早稲??学)
研究費名:科研費 基盤(C)
研究課題名:ニュートリノ輻射流体計算を?いた超新星爆発及び連星中性?合体の包括的研究 (JP24K00632)
研究代表者名(所属機関名):?倉洋樹(国?天?台)
研究費名:科研費 基盤(B)
研究課題名:?般相対論的第?原理計算で探る星の最期と原?核物理 (JP23K03468)
研究代表者名(所属機関名):住吉光介(沼津?専)
本研究は、以下の「富岳」を中核とする HPCI システム利?研究課題を通じて、スーパーコンピュータ「富岳」(理化学研究所 R-CCS)、及び Wisteria(東京?学)の計算資源の提供を受け、実施しました。
課題番号:hp240041, hp240079, hp240264, hp250166, hp250006, hp250326, hp250191。









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