求められる人間力! 広がりを見せる小中一貫教育のメリットとは? 〜子どもの教育と環境に関する意識調査を実施〜
[12/11/14]
提供元:PRTIMES
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この度、子どもが育つ街研究会(※)ではつくば市が2012年4月より公立小中学校の一貫教育を開始したことから「子どもの学び・教育及び環境」に焦点をあて、公立の小中学校に通う子どもを持つ保護者500人(茨城県・つくば市、埼玉県・川口市、千葉県・船橋市、東京都・品川区、神奈川県・横浜市 各エリア100人)を対象に調査を2012年10月に実施しました。
エリア選択に関しては
・小中一貫教育導入エリア:茨城県・つくば市、東京都・品川区、神奈川県・横浜市
・従来型教育エリア:埼玉県・川口市、千葉県・船橋市 (※15歳未満の人口が過去10年で最も増加した5万人以上の都市)の5都市を抽出しています。
(※)「子どもが育つ街研究会」とは住環境や教育、家族力それぞれの専門家からなる研究会で“子どもが育つ街”としての魅力的な「つくばスタイル(都市、自然、知がバランスよく融合し、調和した茨城県内のつくばエクスプレス沿線地域ならではの魅力あるライフスタイル)」の情報発信を目的として2011年11月に発足されました。
1. 意外と知られていない “中一ギャップ”
中一ギャップとは?
小学校から中学校に進学したときに、学習内容や生活リズムの変化になじむことができず、目標を失ったり不登校になったりいじめが増加したりする現象
中一ギャップの言葉への認知は低いながらも、中一ギャップ問題への関心度は認知度の約4倍!!(図表1)
中一ギャップの不安要素は 環境の変化に伴う “人間関係”
中一ギャップの不安要素に関しては、同級生・先輩との関係、いじめ問題などに代表される人間関係と多くの保護者が答える中、反対に“安心できる要素”に関して問う質問には「小学校で仲の良い友達が同じ中学に進学すること」が全体の40%以上を占めるなど、やはり人間関係が中一ギャップ問題の核となっていることが読み解けます。(図表2)
2. 「中一ギャップ」解消への糸口。小中一貫教育とは!?
小中一貫教育は現在多くの地域で先進的な教育システムとして注目されています。義務教育9年間を一体的にとらえ、児童生徒一人一人にさらなる確かな学力や豊かな心、健やかな体を育むとともに、いじめや学校への不適応等を解消し、より充実した学校生活を送ることができるように様々な工夫がされています。各自治体で実施されている小中一貫教育の目的で共通している点は、前述の「中一ギャップ問題」の解消です。今回の調査では、小中一貫校に通わせて良かった点として「小学生と中学生が日常的に交流する機会があること(歳の離れた人と交流する機会があること)」(32.1%)、「小学生のうちに、中学校生活の体験機会(体験授業など)があること」(27.2%)、「小中の9年間を一貫した教育方針で子どもが学べること」(23.3%)などが保護者から挙げられました。
3. 保護者が学校教育に求めること 「コミュニケーション力」が学力を上回る
保護者が学校教育に求める項目を問う質問では第1位が“コミュニケーション力”、第2位が知力。この2項目が期待される教育として7割を超え学力を上回る結果が出ました。(図表3)
調査結果から推測すると、これからの学校教育に求められる要素としては、従来の学力一辺倒というより、個人の“人間力”(次世代で活躍するスキル)といったことを習得させたいと捉えることができます。
4. 高い評価の小中一貫教育!その理由は各自治体の独自カリキュラムにあり!
小中一貫校の保護者に、子どもが通う学校の満足度と、未就学児の保護者に薦めたいか、について質問したところ、図表4の通り、全体的に高い評価が確認できます。また、同じ小中一貫教育実施エリアの中でもつくば市が特に高い結果となっています。つくば市の保護者からは「小学校と中学校が同じ敷地内に有り、生徒どうしの交流もある事。また、小学生の英語教育やその他の授業についても、中学校の先生から指導を受けることが出来る。」「小学校に中学生がよく来てくれて、勉強を見てくれる。」などの声が挙げられました。
小中一貫校の中には、通常の教科などの時間を削って独自の教科を設置している例があります。高校では既に各学校の判断で科目・教科を設けることが学習指導要領で認められてますが、小中学校では一部地域のみで実施されています。
特に評価が高いつくば市での取り組みについて、次に紹介します。
つくば市が提案するつくば次世代型スキルの育成 〜つくばスタイル科〜
つくば市では2008年度からの準備期間を経て、2012年度より全校が小中一貫体制となり、あわせて独自のカリキュラム「つくばスタイル科」を新設しました。「つくばスタイル科」とは、「国際理解、環境、科学技術、歴史・文化、キャリア、福祉、豊かな心」という7つの内容と外国語活動(小学校第1学年〜第6学年)から構成されます。具体的には職場体験学習、市内在住外国人や研究機関との交流などを通して子どもたちに「次世代型スキル」を身に付けさせ、「知と心の調和とグローバルな視点とを兼ね備えた」つくば市民を育成することを目的としています。
「つくば次世代型スキル」とは世界の教育科学者や国際教育機関によって構成されるATC21s(Assessment and Teaching of 21st Century Skills)によって提唱された、21世紀の国際社会で必要な能力とされる21世紀型スキルを基盤にし、さらにつくば市独自の教育指針及び教育資源(自然・地域素材、大学・研究所、先進的ICT等)を加えたつくば市の“次世代型スキル”を指します。
発信型のプロジェクト学習※を通して、つくばの未来を担い、国際社会で活躍するためのスキルを育てるとともに、グローバルな視点をもって、自らの力で問題を解決していこうとする態度を育て、変化する社会の中で、よりよく生きることができる力を育てることが「つくばスタイル科」の目標となっています。
※発信型のプロジェクト学習:「国際理解、環境、科学技術、歴史・文化、キャリア、福祉、豊かな心」の7つの学習テーマについて、知識を得る学習に留まることがないよう、“課題を見つける” “情報を集める” “何ができるか考え、発信する” という3つの学びのステップで構成された発信型の学習。(図表5)
5. 子どもに受けさせたい教育の “理想” と “現実”
子どもに受けさせたい教育は「今までにない、新しい体験や学びが出来る教育」と挙げる保護者が大多数を占める結果になりましたが、「実際に子どもが受けている教育とは?」の質問に対しては「日本中の多くの子が現在受けている教育」と答える保護者が6割を超えるなど、理想と現実に開きがあることが分かります。(図表6)
「現在受けている教育」が「今までにない、新しい体験や学びが出来る教育」と答えた保護者をエリア別に比較してみるとつくば市で理想と現実が合致している結果になりました。
6. 子どもの教育環境 × 街づくり
教育環境に求められること。『自治体×地域資源』 のバランスがキーワード!
一方、子どもを育てる環境としてどのような環境が望ましいかを質問してみると、“安心して遊べる公園や運動場”
“地元企業・機関との交流” “文化的な施設における知的好奇心の刺激” などの答えが多いことから、地域資源の活用を求められていることが分かります。
また、「現在住んでいる自治体において実際に当てはまる環境は?」との質問に対してエリア別に回答を見てみると
ほとんどの項目において、つくば市在住の保護者が高い満足度を感じていることが読み解け、子どもを育てる環境として保護者たちも満足しているバランスの良い街だということがうかがえます。(図表7)
佐藤将之(さとうまさゆき)
「子どもが育つ街研究会」委員 (早稲田大学人間科学学術院 准教授)
今後、小中一貫教育を行ったり、小中学校を一体的に作る自治体は増えることが予想されますが、つくば市は、これらの資料からも分かるように、子どものための環境として小中学校に着目しています。小中一貫は、地域での小学生と中学生との交流を促したり、学校がひとつとなることで地域の交流拠点としての機能を持つようになります。この様な多様な出会いや育ちあいは、子育てのみならず、街づくりや地域社会のシステムにまで広く影響を及ぼすものとなり、つくばエリア全体が質の高い街となることにつながっていくでしょう。
子どもが育つ街研究会facebookページ :https://www.facebook.com/tsukuba.kodomo