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小売店舗の未来

リテール分野におけるAI・ロボットの活用

2016年12月、東京発 
ローランド・ベルガーは、小売業界に関する最新スタディ「小売店舗の未来 -リテール分野におけるAI・ロボットの活用-」を発表いたしました。本スタディでは、小売店舗におけるAI・ロボットの活用状況と動向を分析したうえで、小売店舗においてAI・ロボットを効果的に活用するための要件と小売店舗の今後のあり方について、示唆を抽出しています。


リテールにおけるAI・ロボット活用の現在
EC化率の上昇に伴うリアル店舗の位置付けの変化、AIやIOTにはじまるテクノロジーの進化、消費者のロボットに対する意識の変化に伴い、今日小売業向けのロボットの市場は2015年時点で190億ドルに達し、2025年には520億ドルに達すると予測されている。そのような中、小売店舗におけるAI・ロボットの活用は、1.「商品・在庫管理」2.「店頭での対人サービス」3.「オペレーションの自動化」4.「カスタマージャーニーの創出」の4つに分けられる。
1.「商品・在庫管理」は、所謂棚卸し業務や在庫管理業務(監視も含む)をロボットが行うというものである。比較的導入効果が見えやすい分野であり、在庫管理コストの削減や管理ミスの撲滅に繋がるため、欧米の大規模小売チェーンを中心に導入が進んでいる。
2.「店頭での対人サービス」は、店頭にてロボットが挨拶・おもてなし、翻訳、受付、デモンストレーションなど販売促進に繋がるサービスをロボットが行うというものである。ソフトバンクが開発したPepperはその代表例である。この分野の特徴は、ロボットの開発・利用において、日本が世界をリードしているという点である。
3.「オペレーションの自動化」は、店内での商品回収・補充やレジ業務といったオペレーションをロボットが代行するという分野である。この分野は、対人サービス分野とは対照的に、欧米が先行している分野である。その背景には、ロボット導入による人員削減が行いやすい事やロボットが作業するスペースを店舗内に設けることが容易といった要因がある。この分野の代表例は、Hointer(米国)やAmazon(米国)がある。
4.「カスタマージャーニーの創出」は、AR(拡張現実)やVR(仮想現実)の活用や、ビックデータの活用による顧客の店舗体験やマーケティングの進化に分けられる。後者では、来店者カウント、導線分析、購買率分析、行動・表情分析といった領域が、近年の画像認識のAIやディープラーニングの進展に伴い急速に発展をしている。この分野はアメリカが先行しており、代表例はRetail Next(米国)がある。

ロボット導入の店舗要件
我々は店舗業務の補助を行うロボットが適合しやすい5つの要件を導出した。即ち、I店舗サイズ、IIサービス特性、III商品の複雑性、IV商品の価格帯、Vカスタマイズの必要性の5つの要件に対する対象店舗の当てはまり度合いを見極めなくてはならない。
それでは、上記の要件に最も当てはまりの良い小売業態はどのような業態であろうか。
5つの要件に完全に当てはまる業態は、ホームセンター、DIY用品店、IKEAのような大型家具量販店である。ただし、5つの要件全てを満たしていなくとも、AI・ロボットの進化と共に、今後幅広い小売業態でAI・ロボットを戦略的に活用する機会は増えるだろう。
例えば、スーパーやショッピングセンター等、売り場面積が広く且つセルフサービスが中心の業態は、自動レジや在庫補充を初めとしたオペレーション自動化のためのロボット導入は確実に増えていく。また、インバウンド需要の大きい店舗では、Q&A対応や翻訳など店頭サービスの強化を目的としたロボット活用が進むだろう。百貨店やラグジュアリー店舗においては、AR・VRの活用や顧客導線分析などカスタマージャーニーの創出を目的としたAI・ロボットの活用が進むだろう。このように各業態の店舗特性とデジタル技術の特性を踏まえたうえで、何を目的としてどのような業務にAI・ロボットを活用するのかを見極めることが今後は肝要となる。

今後の小売店舗のキーワード: ローカルとデジタル
アップルが販売拠点の名称からストアという言葉を削除したように、今後リアル拠点の位置付けは、販売からローカルとの接点の場へと変わりつつある。そのような社会では、AI・ロボットに代表されるデジタル活用も、ローカル特性を活かしていくことが求められる。元来リテールビジネスは、人々の日常生活に根付いているためローカル色が強いビジネスである。西友がウォルマート型の店舗運営を取り入れ失敗したケースや日本の百貨店が外商という独自のビジネスモデルを発展させたケースを上げるまでもなく、リテールビジネスはローカルの特性を踏まえて発展していく。
今後はAI・ロボットをはじめとするデジタル活用においても、ローカルの顧客・文化特性を踏まえた使い方を考え抜くことが肝要だ。ハウステンボスの「変なホテル」「変なレストラン」のロボット接客や東芝の地平アイこに代表されるアンドロイド型ロボットの活用は、独自のロボット文化を発展させてきた日本というローカルが生み出した事例だ。また、スマートフォンアプリで自分だけのラテをカスタマイズ注文・決済し、店では受け取るだけの買い方を提案するStarbucksや、店舗ではヨセミテ公園でのアウトドアを疑似体験させオンラインで販売を伸ばすNorth Faceが提案する新しいカスタマージャーニーも、テクノロジーサイドに注目が集まりがちだが、アメリカ西海岸のローカル特性やライフスタイルを起点としてデジタルでリミックスしたものだ。
ローカルとデジタル、双方の特徴・良さを取り入れたカスタマージャーニーの設計、最高の顧客体験の追及が、今後のリテール企業の生き残りの鍵である。その変化に乗り遅れた企業は、伝統的な大企業であっても確実に市場から退場を迫られる。団塊の世代が市場から消え、ミレニアル世代が消費の中心となる2025年以降はそれが顕著となるであろう。小売業界には今こそ「枠にとらわれない発想」が必要であり、世代交代を推し進める機会である。


ローランド・ベルガーについて
ローランド・ベルガーは、1967年にドイツ・ミュンヘンで創設、現在世界で36カ国50オフィスに
約 2,400名のプロフェッショナルスタッフを擁する欧州系最大の経営コンサルティング会社。
日本では1991年の設立以来、実効性を備えた戦略策定により目に見える結果を出すコンサルティングサービスを提供しています。
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