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世界最強の永久磁石開発の功績により、日本人科学者が2024年度欧州発明家賞を受賞




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- 佐川眞人博士が新しい元素の配合と独自の焼結技術で開発した世界最強の永久磁石は、医療、携帯電話、セキュリティシステム、コンピューターのハードディスクドライブ、グリーンエネルギー発電機まで、幅広い分野で使用されています。
- この功績により、佐川氏はEPO 加盟国以外のすべての発明者を対象とした2024年度欧州発明家賞非ヨーロッパ諸国部門において最優秀賞を受賞しました。


2024年7月10日(ミュンヘン発)

欧州特許庁(EPO)は、このたび佐川眞人氏が2024年度欧州発明家賞の非ヨーロッパ諸国部門最優秀賞を受賞したことを発表しました。佐川氏は1982年に世界最強の永久磁石を開発し、コンピューター、医療技術、グリーンエネルギーなど様々な分野の変革を牽引したことが評価されました。本部門では、スクリーン用のメガネを使わずに本物の3D画像の作成を可能とした米国系フランス人のデビッド・ファタル氏や、二酸化炭素排出量と騒音が削減されたジェット機を発明したブラジルのフェルナンド・カタラーノ氏、ミカエル・カルモ氏らのチームも候補に挙がっていました。

受賞にあたり佐川眞人氏は「新しい永久磁石材料とその製造方法に関する発明が欧州発明家賞に認められたことを大変光栄に思います。今回の受賞が、材料科学や技術の研究開発がよりよい社会を作るために役立つことを実感してもらい、材料科学者を目指す若い方々の励みとなることを願っています。」と話しています。

佐川氏は、当時の磁石に広く使われていたコバルトに比べ、鉄は入手しやすく安価であることに着想を得て、鉄と希土類元素の合金に様々な元素を配合する研究に着手しました。鉄原子間の距離を広げるためにホウ素を混ぜたところ、鉄原子の磁化が増大し、永久磁石に不可欠な特性が大幅に向上することを発見しました。最終的に現在のネオジム、鉄、ホウ素の組み合わせの合金(Nd-Fe-B)となりました。佐川氏が開発した磁石を真に際立たせているのは、製造に使用された複数の特許を持つ焼結技術です。この技術により開発から40年以上経った現在でも、世界で最も強力な磁石を生み出しています。

世界最強の永久磁石の作り方
開発当初、佐川博士は、研究者が適職か疑問に感じていたが、粘り強い努力と独自の視点を持つことで成功につながったと述べています。

「私はずっと科学者、研究者になりたかったのですが、自分の研究が優れているとは思えませんでした。教授になりたかったのですが、そのポストは与えられず、ある企業の研究チームに入りました。そこで、磁石の研究をするように言われたのです。それまで磁石を研究したことがなかったので、本当に大変でしたが、ある意味ではそれが助けになりました。なぜなら、何が達成できるか、何が達成できないかについての先入観を持たずに、新鮮な目で対象を見ることができたからです。」

Nd-Fe-B磁石のおかげで、コンピューターメーカーはハードディスクドライブのサイズを劇的に小さくすることができ、パーソナル・コンピューティング革命の原動力となりました。現在、永久磁石の約60%はNd-Fe-B磁石です。これらは、電子機器、玩具、パッケージング、ハードウェア機械、電気自動車、航空宇宙などの多様な分野で見つけることができ、新しい技術の進歩で発明者によって使用され続けています。

80歳の佐川氏は、世界中で過去60件以上の特許を取得しており、今なお磁石の組成と製造技術を改良し続けています。現在は、希少なジスプロシウムの必要量を減らす方法を模索しています。

2024 年欧州発明家賞の全受賞者は、マルタでのハイブリッド式典で発表されました。授賞式の模様はオンラインでご覧いただけます。

この発明と技術について詳しくはこちらをご覧ください。

2025年若手発明家賞はアイスランドで開催
マルタで開催された授賞式で、欧州特許庁(EPO)は、2025年からの同賞の新しいコンセプトを発表しました。来年以降、同賞は2年ごとに開催され、次回は、国連の持続可能な開発目標(SDGs)に取り組む30歳未満の若手イノベーターに焦点が当てられます。次世代を担う発明家たちの革新的な精神と功績を称えるため、元ファイナリストで構成される独立した審査委員会が応募作品を評価し、公正で見識ある選考プロセスを確保します。2025年はアイスランドで開催され、2年に1度開催されるこの新しい賞の第1回目となります。すべての技術分野のノミネート期間は、本日から9月末までです。

2026年からは、EPOが従来の「産業」、「研究」、「中小企業」、「非 EPO 加盟国」、「生涯功労」、「ポピュラー賞」のカテゴリーを持つ欧州発明家賞の本来のコンセプトに戻り、交互に開催される予定です。


佐川眞人氏 経歴
1943年8月3日、徳島県生まれ。世界最強の永久磁石、焼結ネオジム磁石の発明者として知られています。東北大学で金属材料工学の博士号を取得後、1972年に富士通研究所に入社。その後、退職して住友特殊金属株式会社に入社し、焼結ネオジム磁石を発明し、特許を取得しました。

1983年にピッツバーグで開催された磁気・磁性材料学会でこの画期的な発明を発表し、1988年にはネオジム磁石の進歩に特化した研究開発会社インターメタリックスを設立。 現在、東北大学特別招聘教授、名城大学カーボンニュートラル研究推進機構シニアフェローを務め、現在もNd-Fe-B磁石のさらなる特性向上完成に向けて研究を続けています。

欧州発明家賞について
欧州発明家賞は、欧州で最も権威あるイノベーション賞のひとつです。2006年にEPOによって創設されたこの賞は、現代における最も大きな課題の解決策を考え出した個人やチームを表彰するものです。ファイナリストと受賞者は、同賞の元ファイナリストで構成される独立審査員によって選出されます。審査員は、技術的進歩、社会的・持続可能な発展、経済的繁栄に貢献する提案を審査します。すべての発明家は、その発明に対して欧州特許を取得している必要があります。各カテゴリー、賞、選考基準、7月9日にマルタで開催されるライブストリーミング授賞式の詳細はこちらをご覧ください。

欧州特許庁(EPO)について
欧州特許庁(EPO)は、6,300人のスタッフを擁する欧州最大級の公的機関です。ミュンヘンに本部を置き、ベルリン、ブリュッセル、ハーグ、ウィーンに事務所を構えるEPOは、欧州における特許協力の強化を目的として設立されました。EPOの集中化された特許付与手続きにより、発明者は最大45カ国で質の高い特許保護を受けることができ、約7億人の市場をカバーしています。EPOはまた、特許情報と特許検索の世界的権威でもあります。
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