(株)ヘルスケアコンサルティングと神戸低侵襲がん医療センター、小細胞肺がん治療における免疫チェックポイント阻害薬の費用対効果分析に関する研究を2024 ASCO Annual Meetingで発表
[24/06/01]
提供元:PRTIMES
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神戸低侵襲がん医療センターを中心とする8医療機関の電子カルテデータ及びレセプトデータを統合
電子カルテデータから全生存期間(OS)を始めとする有効性・安全性などの治療成績に関するデータ、レセプトデータから治療期間中に要した医療費のデータを取得し、患者ベースで一意に紐づけしたデータセットを構築
有効性と経済性の観点から免疫チェックポイント阻害薬であるアテゾリズマブとデュルバルマブの費用対効果を検証
全生存期間(OS)の観点でレジメン間の有効性には差が見られないものの、医療費の観点でアテゾリズマブの方が経済性に優れるとの結果
本研究結果を2024年6月開催の2024 ASCO Annual Meetingでポスター発表
株式会社ケアネットのグループ会社で医療ビッグデータの分析により健康・医療に関わる課題解決に取り組む株式会社ヘルスケアコンサルティング(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:小久保 欣哉、以下HCC)と神戸低侵襲がん医療センター 治験・臨床研究支援センター(所在地:兵庫県神戸市、センター長:秦 明登、以下KMCC)を中心とする8施設の研究チームは、小細胞肺がんの患者の電子カルテデータとレセプトデータを患者ベースで一意に紐づけたデータセットを構築し、費用対効果分析を推進しています。
この度、その成果として免疫チェックポイント阻害薬(以下、ICI)を含むレジメンの費用対効果を分析した研究結果を2024年5月31日〜6月4日に開催される2024 ASCO※1 Annual Meeting においてポスター発表いたします。
■ 学会発表について
タイトル:
Cost-effectiveness study of atezolizumab (ATZ) vs. durvalumab (DUR) in extensive disease small-cell lung cancer (ED-SCLC) patients (pts): Real-world data (RWD) on first-line chemotherapy combined with immune-checkpoint inhibitors (Chemo-ICIs)
著者名:
Katsuya Hirano; Akito Hata; Yuta Yamanaka; Toshiyuki Sumi; Motohiro Tamiya; Yuki Sato; Yuko Oya; Kosuke Hamai; Nobuyuki Katakami; Katsuhiko Iwasaki; Tatsuhiro Uenishi; Kinya Kokubo; Ataru Igarashi
学会名:
2024 ASCO Annual Meeting
開催期間(場所):
2024年5月31日〜6月4日(アメリカ合衆国シカゴ及びOnline)
■ 研究の背景・意義
日本は、少子高齢化社会を迎え、年々医療費が高まっており、医療費の高騰は大きな社会問題の1つに位置づけられます。40歳代から80歳代の死亡要因として、悪性新生物が最上位に挙がっており1)、治療効果である有効性と、その有効性を得るために要する費用との間にある効率性(すなわち、費用対効果)は、医療費高騰という社会問題の重要な論点の1つであると考えられます。
肺癌診療ガイドライン2022年度版では進展型小細胞肺がん治療(PS0-1※2)においてはプラチナ製剤+エトポシド+PD-L1阻害薬の併用治療を行うよう推奨されています2)。2023年4月の時点において、進展型小細胞肺がんで保険収載されているレジメンとしては、アテゾリズマブ併用療法(CBDCA+ETP+アテゾリズマブ)※3, ※4とデュルバルマブ併用療法(CDDP/CBDCA+ETP+デュルバルマブ)※5があり、いずれも従来の化学療法のみの治療と比較して全生存期間(OS)の有意な延長を認めています3-6)。本研究の開始時点で、アテゾリズマブ併用療法とデュルバルマブ併用療法の治療効果を直接比較した試験は存在しませんが、ともに化学療法にICIを加えた療法であることを鑑みると、両者の治療効果は概ね同等であることが推察されます。一方で、両者の薬価は、令和6年度薬価改定に伴い差が以前に比べて小さくなったものの依然として大きく異なり7)、アテゾリズマブは1回投与分1200mgあたり563,917円、デュルバルマブは1回投与分1500mgあたり930,462円です。投与間隔を始めとするその他の条件を考慮しても、経済性については両者で差が生じると推察されます。このような背景から、進展型小細肺胞がん治療において、有効性と経済性からなる費用対効果に関するエビデンスを創出することは、今後さらに高騰すると予想される我が国の医療費を考える上で重要です。
費用対効果を検証する際には、有効性・安全性等の治療成績と医療費の両側面を考慮する必要があります。前者は電子カルテなどの診療記録から抽出可能である一方、後者は電子カルテとは通常切り離されて管理されるレセプトデータなどの請求記録から抽出が可能です。診療記録と請求記録が紐づいた状態で保存されたデータは限られており、これまでの費用対効果分析の多くが、それぞれ異なる情報源から治療成績と経済性を独立に求める形で行われています。それぞれ異なるデータソースとして切り離されているこれらの情報を患者単位で紐づけてシングルソース化することができれば、医療資源の利用とそれによって生じる治療成績の関係性の一貫性を担保した状態での費用対効果の分析が可能となります。
■ 研究の概要
目的:
本研究は、進展型小細胞肺がんのICIを含むレジメンでの治療において、治療効果である有効性と、その有効性を得るために要する費用の費用対効果について検証することを目的に実施しました。
方法:
本研究は、神戸低侵襲がん医療センター及び試験参加機関(大阪国際がんセンター、函館五稜郭病院、宝塚市立病院、神戸市立医療センター中央市民病院、関西医科大学病院、JA尾道病院、藤田医科大学病院)の合計8施設から得られる実臨床のリアルワールドデータを解析する後ろ向き研究です。
小細胞肺がんと診断された患者のうち、2022年12月末までにPD-L1阻害薬併用化学療法(CDBCA+ETP+アテゾリズマブ、あるいは、CDDP/CBDCA+ETP+デュルバルマブ)を開始された症例を解析の対象としました。
有効性の指標として、全生存期間(OS)などを評価しました。また、経済性の指標として、ICIの治療期間における1か月あたりの医療費を評価しました。
患者背景、及び、有効性や安全性などの治療成績に関するデータは各施設の電子カルテデータより取得しました。また、医療費に関するデータは各施設のレセプトデータより取得しました。これらを患者単位で一意に紐づけたデータセットを作成し解析に用いました。
アテゾリズマブ併用療法群(ATZ-G)とデュルバルマブ併用療法群(DUR-G)の2群に分け、治療開始前の情報に基づき傾向スコアマッチングを実行し、両群の背景を同等とした集団を再抽出し、比較を行いました。
結果:
2018年8月から2022年12月までに8施設から274例(ATZ-G / DUR-G = 176 / 98)が抽出されました。傾向スコアのマッチングで背景が同等となった患者集団として128例(ATZ-G / DUR-G = 64 / 64)が抽出されました。
ICI治療期間中の1か月あたりの総医療費(平均値±標準偏差)は、ATZ-Gでは1,003,922±310,192円、DUR-Gでは1,596,511±371,405円でした(Wilcoxon順位和検定: P<0.001)。
[画像1: https://prtimes.jp/i/96320/6/resize/d96320-6-72880191a75908cd93ca-4.png ]
ATZ-G対DUR-GのOS中央値は、それぞれ13.9か月(95%信頼区間[CI]: 11.7-17.5)対13.6か月(95%CI: 11.0-20.0)でした(P=0.919)。COX比例ハザードモデルでは、PSの低下(ハザード比[HR]: 5.5、P<0.001)と骨転移(HR: 1.8、P=0.029)がOS短縮の重要な要因として特定されましたが、ATZとDURのICIの違いは要因として特定されませんでした。
[画像2: https://prtimes.jp/i/96320/6/resize/d96320-6-856d760e7af420541c13-2.png ]
ATZ-Gは、DUR-Gよりもグレード2以上の免疫関連有害事象(irAE)(10.9%対31.3%、正確検定: P=0.009)、及び、間質性肺疾患(ILD)(3.1%対20.3%、正確検定: P=0.004)の発生率が低いという結果となりました。ATZ-Gの入院数(中央値=1回、範囲=0〜6回)は、DUR-Gの入院数(中央値=2回、範囲=0〜7回)よりも低いという結果となりました(Wilcoxon順位和検定: P=0.005)。
結論:
本研究では、DURよりもATZの費用対効果が優れていることを明らかにしました。有効性はどちらのICIも総じて同等でしたが、irAE及びILDなどの安全性はアテゾリズマブの方が良好でした。
■ 今後の展開
HCCとKMCCは、本研究結果を2024 ASCO Annual Meetingで発表の後、論文化を予定しております。また、本研究結果は、全体集団による主解析の結果となりますが、今後、高齢者集団での解析、また、転移の有無を始めとする特定の患者背景に着目した部分集団解析も実施し公表していく予定です。これらの研究活動を通して、小細胞肺がんにおける患者に応じた適切な治療選択に貢献して参ります。
本研究では、電子カルテデータとレセプトデータを患者単位で一意に紐づけ、有効性と経済性の両面から小細胞肺がんの治療における費用対効果を検証しました。HCCでは、本研究の手法をモデルケースとして、非小細胞肺がんを始めとする他のがん種や、さらにはがん以外の疾患での検証も目指し、様々な医療機関との連携を目指していきたいと考えております。これまで多種多様なデータを解析し、エビデンス創出に取り組んできた経験を活かし、健康寿命の延伸と持続可能な社会の実現に貢献して参ります。
■ 株式会社ヘルスケアコンサルティングについて
本社: 東京都千代田区富士見一丁目8番19号住友不動産千代田富士見ビル
事業開始: 2021年11月
代表取締役: 小久保 欣哉
事業概要: ヘルスケア領域のコンサルティング、医療関連情報のデータサイエンス、エビデンスによるマーケティングとROI検証等
公式ホームページ: https://www.hc-c.co.jp/
■ 用語解説
※1 ASCO: American Society of Clinical Oncology アメリカ臨床腫瘍学会
※2 PS: Performance status
※3 CDDP: シスプラチン
※4 ETP: エトポシド
※5 CBDCA: カルボプラチン
■ 引用文献
1) 厚生労働省 人口動態統計年報 主要統計表 第8表 死因順位
2) 肺癌診療ガイドライン―悪性胸膜中皮腫・胸腺腫瘍含む― 2022年版(第7版)日本肺癌学会編.金原出版2022年12月
3) Horn L,Manfield AS, Szczęsna A, et al. First-line atezolizumab plus chemotherapy in extensive-stage small-cell lung cancer. N Engl J Med. 2018;379(23):2220-9.
4) Liu SV, Reck M, Mansfield AS, et al. Updated overall survival and PD-L1 subgroup analysis of patients with extensive-stage small-cell lung cancer treated with atezolizumab, carboplatin, and etoposide (IMpower133). J Clin Oncol.2021;39(6):619-30.
5) Paz-Ares L, Dvorkin M, Chen Y, et al. Durvalumab plus platinum-etoposide versus platinum-etoposide in first-line treatment of extensive-stage small-cell lung cancer(CASPIAN): a randomised,controlled,open-label,phase3 trial. Lancet. 2019:394(10212):1929-39.
6) Goldman JW, Dvorkin M, Chen Y, et al. Durvalumab with or without tremeli- mumab plus platinum-etoposide versus platinum-etoposide alone in first-line treatment of extensive-stage small-cell lung cancer (CASPIAN): updated results from a randomized, controlled open-labeled phase 3 trial. Lancet Oncol.2021;22(1):51-65
7) 厚生労働省ホームページ 薬価基準収載品目リスト及び後発医薬品に関する情報について(令和6年5月22日適用)(https://www.mhlw.go.jp/topics/2024/04/tp20240401-01.html)
以上
電子カルテデータから全生存期間(OS)を始めとする有効性・安全性などの治療成績に関するデータ、レセプトデータから治療期間中に要した医療費のデータを取得し、患者ベースで一意に紐づけしたデータセットを構築
有効性と経済性の観点から免疫チェックポイント阻害薬であるアテゾリズマブとデュルバルマブの費用対効果を検証
全生存期間(OS)の観点でレジメン間の有効性には差が見られないものの、医療費の観点でアテゾリズマブの方が経済性に優れるとの結果
本研究結果を2024年6月開催の2024 ASCO Annual Meetingでポスター発表
株式会社ケアネットのグループ会社で医療ビッグデータの分析により健康・医療に関わる課題解決に取り組む株式会社ヘルスケアコンサルティング(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:小久保 欣哉、以下HCC)と神戸低侵襲がん医療センター 治験・臨床研究支援センター(所在地:兵庫県神戸市、センター長:秦 明登、以下KMCC)を中心とする8施設の研究チームは、小細胞肺がんの患者の電子カルテデータとレセプトデータを患者ベースで一意に紐づけたデータセットを構築し、費用対効果分析を推進しています。
この度、その成果として免疫チェックポイント阻害薬(以下、ICI)を含むレジメンの費用対効果を分析した研究結果を2024年5月31日〜6月4日に開催される2024 ASCO※1 Annual Meeting においてポスター発表いたします。
■ 学会発表について
タイトル:
Cost-effectiveness study of atezolizumab (ATZ) vs. durvalumab (DUR) in extensive disease small-cell lung cancer (ED-SCLC) patients (pts): Real-world data (RWD) on first-line chemotherapy combined with immune-checkpoint inhibitors (Chemo-ICIs)
著者名:
Katsuya Hirano; Akito Hata; Yuta Yamanaka; Toshiyuki Sumi; Motohiro Tamiya; Yuki Sato; Yuko Oya; Kosuke Hamai; Nobuyuki Katakami; Katsuhiko Iwasaki; Tatsuhiro Uenishi; Kinya Kokubo; Ataru Igarashi
学会名:
2024 ASCO Annual Meeting
開催期間(場所):
2024年5月31日〜6月4日(アメリカ合衆国シカゴ及びOnline)
■ 研究の背景・意義
日本は、少子高齢化社会を迎え、年々医療費が高まっており、医療費の高騰は大きな社会問題の1つに位置づけられます。40歳代から80歳代の死亡要因として、悪性新生物が最上位に挙がっており1)、治療効果である有効性と、その有効性を得るために要する費用との間にある効率性(すなわち、費用対効果)は、医療費高騰という社会問題の重要な論点の1つであると考えられます。
肺癌診療ガイドライン2022年度版では進展型小細胞肺がん治療(PS0-1※2)においてはプラチナ製剤+エトポシド+PD-L1阻害薬の併用治療を行うよう推奨されています2)。2023年4月の時点において、進展型小細胞肺がんで保険収載されているレジメンとしては、アテゾリズマブ併用療法(CBDCA+ETP+アテゾリズマブ)※3, ※4とデュルバルマブ併用療法(CDDP/CBDCA+ETP+デュルバルマブ)※5があり、いずれも従来の化学療法のみの治療と比較して全生存期間(OS)の有意な延長を認めています3-6)。本研究の開始時点で、アテゾリズマブ併用療法とデュルバルマブ併用療法の治療効果を直接比較した試験は存在しませんが、ともに化学療法にICIを加えた療法であることを鑑みると、両者の治療効果は概ね同等であることが推察されます。一方で、両者の薬価は、令和6年度薬価改定に伴い差が以前に比べて小さくなったものの依然として大きく異なり7)、アテゾリズマブは1回投与分1200mgあたり563,917円、デュルバルマブは1回投与分1500mgあたり930,462円です。投与間隔を始めとするその他の条件を考慮しても、経済性については両者で差が生じると推察されます。このような背景から、進展型小細肺胞がん治療において、有効性と経済性からなる費用対効果に関するエビデンスを創出することは、今後さらに高騰すると予想される我が国の医療費を考える上で重要です。
費用対効果を検証する際には、有効性・安全性等の治療成績と医療費の両側面を考慮する必要があります。前者は電子カルテなどの診療記録から抽出可能である一方、後者は電子カルテとは通常切り離されて管理されるレセプトデータなどの請求記録から抽出が可能です。診療記録と請求記録が紐づいた状態で保存されたデータは限られており、これまでの費用対効果分析の多くが、それぞれ異なる情報源から治療成績と経済性を独立に求める形で行われています。それぞれ異なるデータソースとして切り離されているこれらの情報を患者単位で紐づけてシングルソース化することができれば、医療資源の利用とそれによって生じる治療成績の関係性の一貫性を担保した状態での費用対効果の分析が可能となります。
■ 研究の概要
目的:
本研究は、進展型小細胞肺がんのICIを含むレジメンでの治療において、治療効果である有効性と、その有効性を得るために要する費用の費用対効果について検証することを目的に実施しました。
方法:
本研究は、神戸低侵襲がん医療センター及び試験参加機関(大阪国際がんセンター、函館五稜郭病院、宝塚市立病院、神戸市立医療センター中央市民病院、関西医科大学病院、JA尾道病院、藤田医科大学病院)の合計8施設から得られる実臨床のリアルワールドデータを解析する後ろ向き研究です。
小細胞肺がんと診断された患者のうち、2022年12月末までにPD-L1阻害薬併用化学療法(CDBCA+ETP+アテゾリズマブ、あるいは、CDDP/CBDCA+ETP+デュルバルマブ)を開始された症例を解析の対象としました。
有効性の指標として、全生存期間(OS)などを評価しました。また、経済性の指標として、ICIの治療期間における1か月あたりの医療費を評価しました。
患者背景、及び、有効性や安全性などの治療成績に関するデータは各施設の電子カルテデータより取得しました。また、医療費に関するデータは各施設のレセプトデータより取得しました。これらを患者単位で一意に紐づけたデータセットを作成し解析に用いました。
アテゾリズマブ併用療法群(ATZ-G)とデュルバルマブ併用療法群(DUR-G)の2群に分け、治療開始前の情報に基づき傾向スコアマッチングを実行し、両群の背景を同等とした集団を再抽出し、比較を行いました。
結果:
2018年8月から2022年12月までに8施設から274例(ATZ-G / DUR-G = 176 / 98)が抽出されました。傾向スコアのマッチングで背景が同等となった患者集団として128例(ATZ-G / DUR-G = 64 / 64)が抽出されました。
ICI治療期間中の1か月あたりの総医療費(平均値±標準偏差)は、ATZ-Gでは1,003,922±310,192円、DUR-Gでは1,596,511±371,405円でした(Wilcoxon順位和検定: P<0.001)。
[画像1: https://prtimes.jp/i/96320/6/resize/d96320-6-72880191a75908cd93ca-4.png ]
ATZ-G対DUR-GのOS中央値は、それぞれ13.9か月(95%信頼区間[CI]: 11.7-17.5)対13.6か月(95%CI: 11.0-20.0)でした(P=0.919)。COX比例ハザードモデルでは、PSの低下(ハザード比[HR]: 5.5、P<0.001)と骨転移(HR: 1.8、P=0.029)がOS短縮の重要な要因として特定されましたが、ATZとDURのICIの違いは要因として特定されませんでした。
[画像2: https://prtimes.jp/i/96320/6/resize/d96320-6-856d760e7af420541c13-2.png ]
ATZ-Gは、DUR-Gよりもグレード2以上の免疫関連有害事象(irAE)(10.9%対31.3%、正確検定: P=0.009)、及び、間質性肺疾患(ILD)(3.1%対20.3%、正確検定: P=0.004)の発生率が低いという結果となりました。ATZ-Gの入院数(中央値=1回、範囲=0〜6回)は、DUR-Gの入院数(中央値=2回、範囲=0〜7回)よりも低いという結果となりました(Wilcoxon順位和検定: P=0.005)。
結論:
本研究では、DURよりもATZの費用対効果が優れていることを明らかにしました。有効性はどちらのICIも総じて同等でしたが、irAE及びILDなどの安全性はアテゾリズマブの方が良好でした。
■ 今後の展開
HCCとKMCCは、本研究結果を2024 ASCO Annual Meetingで発表の後、論文化を予定しております。また、本研究結果は、全体集団による主解析の結果となりますが、今後、高齢者集団での解析、また、転移の有無を始めとする特定の患者背景に着目した部分集団解析も実施し公表していく予定です。これらの研究活動を通して、小細胞肺がんにおける患者に応じた適切な治療選択に貢献して参ります。
本研究では、電子カルテデータとレセプトデータを患者単位で一意に紐づけ、有効性と経済性の両面から小細胞肺がんの治療における費用対効果を検証しました。HCCでは、本研究の手法をモデルケースとして、非小細胞肺がんを始めとする他のがん種や、さらにはがん以外の疾患での検証も目指し、様々な医療機関との連携を目指していきたいと考えております。これまで多種多様なデータを解析し、エビデンス創出に取り組んできた経験を活かし、健康寿命の延伸と持続可能な社会の実現に貢献して参ります。
■ 株式会社ヘルスケアコンサルティングについて
本社: 東京都千代田区富士見一丁目8番19号住友不動産千代田富士見ビル
事業開始: 2021年11月
代表取締役: 小久保 欣哉
事業概要: ヘルスケア領域のコンサルティング、医療関連情報のデータサイエンス、エビデンスによるマーケティングとROI検証等
公式ホームページ: https://www.hc-c.co.jp/
■ 用語解説
※1 ASCO: American Society of Clinical Oncology アメリカ臨床腫瘍学会
※2 PS: Performance status
※3 CDDP: シスプラチン
※4 ETP: エトポシド
※5 CBDCA: カルボプラチン
■ 引用文献
1) 厚生労働省 人口動態統計年報 主要統計表 第8表 死因順位
2) 肺癌診療ガイドライン―悪性胸膜中皮腫・胸腺腫瘍含む― 2022年版(第7版)日本肺癌学会編.金原出版2022年12月
3) Horn L,Manfield AS, Szczęsna A, et al. First-line atezolizumab plus chemotherapy in extensive-stage small-cell lung cancer. N Engl J Med. 2018;379(23):2220-9.
4) Liu SV, Reck M, Mansfield AS, et al. Updated overall survival and PD-L1 subgroup analysis of patients with extensive-stage small-cell lung cancer treated with atezolizumab, carboplatin, and etoposide (IMpower133). J Clin Oncol.2021;39(6):619-30.
5) Paz-Ares L, Dvorkin M, Chen Y, et al. Durvalumab plus platinum-etoposide versus platinum-etoposide in first-line treatment of extensive-stage small-cell lung cancer(CASPIAN): a randomised,controlled,open-label,phase3 trial. Lancet. 2019:394(10212):1929-39.
6) Goldman JW, Dvorkin M, Chen Y, et al. Durvalumab with or without tremeli- mumab plus platinum-etoposide versus platinum-etoposide alone in first-line treatment of extensive-stage small-cell lung cancer (CASPIAN): updated results from a randomized, controlled open-labeled phase 3 trial. Lancet Oncol.2021;22(1):51-65
7) 厚生労働省ホームページ 薬価基準収載品目リスト及び後発医薬品に関する情報について(令和6年5月22日適用)(https://www.mhlw.go.jp/topics/2024/04/tp20240401-01.html)
以上