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WareXが東大川崎研と共同研究 〜シェアリング倉庫サービスの活用により倉庫を分散して企業利益を増加〜

シェアリング倉庫サービス「WareX(ウェアエックス)」を運営するGaussy株式会社(東京都港区、代表取締役社長:中村遼太郎)は、物流システム・サプライチェーンマネジメント・バリューチェーンなどに関する研究を行う 東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻 川崎研究室 と共同で、「付加価値最大型物流ネットワークの設計」に関する共同研究を行いました。本研究は、シェアリング倉庫サービスの効果に関する初めての研究成果だと考えられます。




これまでの自社構築型の倉庫利用においては、倉庫拠点を集約して物流費用を最小化することが主流でしたが、研究の結果、特定の環境下ではシェアリング倉庫を活用して倉庫の数を増やし、分散型のサプライチェーンネットワーク(SCN)を構築することで企業利益が高まることが分かりました。

[画像1: https://prtimes.jp/i/103326/10/resize/d103326-10-492d0840f299b1e739e1-8.png ]

        図1. シェアリング倉庫が効果的に分散利用されている様子(研究内容から抜粋)


本研究の目的

海外のみならず、日本でもWareXをはじめとするシェアリング倉庫サービスの利用が拡大し、複数倉庫の活用が現実的な選択肢となっています。これまでの賃貸を含む自社構築型の倉庫利用においては、物流費用を最小化するために倉庫拠点を集約することが主流でした。
これに対して、シェアリング倉庫サービスには、費用を抑えながら利用する倉庫拠点数を増やせるというメリットがあります。この利点を活用すると、分散型のサプライチェーンネットワーク(SCN)を構築して、企業利益(利潤)を大きくできる可能性があります。

今回の共同研究では、シェアリング倉庫サービスを活用することで企業利益を最大化する分散型のサプライチェーンネットワーク(SCN)を構築し、それがどのような状況で有効に働くのかを数値計算で検証しました。


目的関数の説明

本研究では、企業が貨物を工場から仕入れ、小売店で市場に販売するまでに発生する年間の売上と費用の差分で得られる利潤関数を目的関数とし、混合整数非線形計画問題により倉庫数、倉庫配置などを求めました。

売上項目


製品の売り上げ


費用項目


倉庫の初期施設費用(施設費用)
利用する倉庫の検索、契約手続き(機会費用)
製品の購入(取引費用)
倉庫での貨物の発注及び積み下ろし(発注費用)
倉庫での在庫(在庫関連費用)
倉庫から小売店への輸送(輸送費用)
小売店での販売機会損失(販売機会損失費用)
小売店での貨物の発注および積み下ろし(発注費用)
小売店での在庫(在庫関連費用)



利用したデータ

モデルを用いた数値計算にあたり、2023年1月18日時点のWareXの登録データを使用しました。使用したのは、新宿を中心とする半径100km圏内に存在するシェアリング倉庫132件のデータです。また、工場は1個,小売店は日本の某小売メーカーが実際に利用している小売店より取得した36店舗を使用しました。

[画像2: https://prtimes.jp/i/103326/10/resize/d103326-10-dd61bdb4e850d3366312-9.png ]

        図2. シェアリング倉庫の場所(左)及び工場と小売店の場所(右)


計算結果

ベースケース

1. シェアリング倉庫でSCNを構築した場合
シェアリング倉庫を使ったシミュレーションを行った結果、使用する倉庫数が7のときに目的関数が最大値をとり、企業利益が最大となりました。
また、使用される倉庫の特徴として、必ずしも保管費用が低い倉庫ではなく、小売店への配送時間が短くなる倉庫が選ばれることもわかりました。

[画像3: https://prtimes.jp/i/103326/10/resize/d103326-10-afed38dda59519253bf9-10.png ]



            図3. シェアリング倉庫が効果的に分散利用されている様子

2. 自社構築型の倉庫でSCNを構築した場合
比較のため、シェアリング倉庫の代わりに、某小売メーカーが実際に用いている倉庫群より自社構築型倉庫のデータを取得し、倉庫以外の入力値は変化させずに計算を行いました。
その結果、自社構築型の倉庫でSCNを構築した際は倉庫を集約させた方が利潤は上昇するという結果になりました。これは、物流費用を最小化するためには倉庫拠点を集約するのが有効という従来の研究結果を支持するものです。
シェアリング倉庫と自社構築型倉庫で用いた入力値は、物流企業などへのインタビュー調査を踏まえ、それぞれ以下の通りに設定しました。シェアリング倉庫は重量課金制であることから初期施設費用はゼロ、契約手続が非常に簡便であることから機会費用は自社構築型倉庫の1/5程度に設定しました。

表1. シェアリング倉庫と自社構築型倉庫で用いた入力値
[表1: https://prtimes.jp/data/corp/103326/table/10_1_89ab26fa2ae72393ffaf5e1ff1cdcf15.jpg ]



シナリオ分析

次に、開発したモデルを用いてシナリオ分析を行いました。倉庫の集約分散に関わると考えられる各要素を以下の3パターンで変化させ、最適な倉庫配置がどのように変化するか分析を行いました。

I. 小売店の位置と密度を変化させる
II. 貨物の時間価値を変化させる
III. 需要の季節性を織り込む

I. 小売店の位置と密度を変化させた場合

仮説
小売店の位置と密度を変化させると倉庫からの平均配送時間が変化するため、倉庫の最適配置が変化することが推測されます。そのためベースケースとは位置と密度が異なる小売店集合を新たに4種類用意して計算を行いました。また、ここでは各小売店の密度の度合いを測る指標として点間平均距離という指標を導入しました。


[画像4: https://prtimes.jp/i/103326/10/resize/d103326-10-82de493bb19861173cb2-11.png ]

                 図4. シナリオで使用した小売店の位置

検証結果
検証の結果、小売店の集合が密であるほど集約型の倉庫利用が適しており、反対に疎であるほど倉庫を分散させて利用する方が、費用は増加しますが売り上げが増加することにより、企業利益を最大化できることがわかりました。
今回のシナリオでは、点間平均距離が37kmの場合は12拠点、点間平均距離が55kmの場合は15拠点で企業利益が最大となりました。なお、ベースケースでの最適倉庫数である7箇所のまま運営するよりも、点間平均距離が37kmの場合は特に粗利益が0.75%増加し倉庫と小売店間の輸送費用が8.5%減少することで年間利潤を1.2%増加させることが分かりました。このように倉庫を分散して利用して企業利益を増加させられるのは、シェアリング倉庫サービスの特徴といえます。

[画像5: https://prtimes.jp/i/103326/10/resize/d103326-10-a3f46a43cafe194fe543-12.png ]

          図5. 点間平均距離が37kmの時の利用倉庫数7に対しての利潤の変化率

[画像6: https://prtimes.jp/i/103326/10/resize/d103326-10-c99ac1851ff6c30649c9-13.png ]

     図6. 点間平均距離が37kmの時の利用倉庫の様子(左が倉庫数7、右が最適である12の時)

表2. 点間平均距離と企業利益を最大化する倉庫数
[表2: https://prtimes.jp/data/corp/103326/table/10_2_dc44049878e17a529bc53e242b466e9a.jpg ]


                              ※点間平均距離20kmをベースケースとする


II. 貨物の時間価値を変化させた場合

仮説
2番目のシナリオでは、商品が持つ時間価値(ここでは貨物の時間価値を“貨物の荷受人が貨物の輸送時間を短縮することに対して支払ってもよいと考える金額”とします)を変化させました。貨物の時間価値が増加すれば、商品を小売店に素早く送り届けることの意義がより強くなるため、倉庫の分散利用が促進されると期待されます。

検証結果
貨物が持つ時間価値を2倍にした結果、倉庫数を7から8に増加させることにより販売機会損失費用を4.0%減少させることから、企業の利潤を0.22%増加させる効果がありました。素早く届けることで荷受人に価値を付与できる製品では、倉庫を分散させて利用するのが利益的であることがわかりました。

[画像7: https://prtimes.jp/i/103326/10/resize/d103326-10-0154e5bca7e7e13ff740-14.png ]

       図7. 時間価値を2倍にした場合の計算結果(左)及び倉庫数が8のときの様子


III. 需要の季節性を織り込んだ場合

仮説
これまでの計算では小売店で発生する需要が一年を通して一定であると仮定していましたが、実社会では例えばクリスマスなど特定の期間だけ需要が増加する状況が想定されます。そこで最後のシナリオではそのような需要の季節性を考慮し、各小売店の需要が1年のうち30日間2倍になる状況を想定してどの倉庫を何個借りれば企業利益を最も増やすことができるかを検証しました。なお、計算では倉庫容量を考慮しているため、既存倉庫への入荷数は増やせない前提で計算を行っています。

[画像8: https://prtimes.jp/i/103326/10/resize/d103326-10-062958e7662ccf4e2964-15.png ]

               図8. SCN上の小売店で需要が増加するイメージ

検証結果
シェアリング倉庫サービス、もしくは自社構築型倉庫のみでSCNを構築している場合は、倉庫数を増やさない方が良いという結果になりました。
一方で、平常時は自社構築型の倉庫を利用し,急な需要の増加が発生したときにシェアリング倉庫サービスを利用する計算では、倉庫を4つ増やした場合に主に粗利益が3.2%増加し倉庫小売店間の輸送費用を3.4%抑えられたことから企業利益が9.81%増加し、最大となりました。シェアリグ倉庫サービスは従量課金制で初期施設費用がかからないため、このように需要変動がある貨物に向いているといえます。

[画像9: https://prtimes.jp/i/103326/10/resize/d103326-10-6a39266365185ec17301-16.png ]

     図9. 自社構築型倉庫とシェアリング倉庫を組み合わせて利用した場合の計算結果(左)
            及び追加した倉庫数が4のときの倉庫利用の様子(右)


研究結果のまとめ

以上の研究により、以下のような特定の環境下では、シェアリング倉庫を活用して倉庫の数を増やし、分散型のSCNを構築した方が企業利益を高めることが分かりました。


貨物の届け先が地理的に広がっているような場合
生鮮食品などの荷受人がより早く受け取りたいと考える貨物の場合
需要変動が大きくなる貨物特性を持つ場合

特に、需要変動が大きくなる貨物特性をもつ場合は、既存の自社構築型倉庫と組み合わせてシェアリング倉庫サービスを活用することが有効と示唆されました。


論文へのリンク
今回の論文は、以下よりダウンロード可能です。

研究論文: https://onl.tw/85fUEyf
説明資料: https://onl.tw/Vhibkdt


本研究に関する無料セミナー
本研究の発表セミナーを以下の日程で開催しますので、ご参加いただけますと幸いです。
[表3: https://prtimes.jp/data/corp/103326/table/10_3_8c6e0b9887f936cbc67ae6a8786b7531.jpg ]



川崎研究室について
川崎研究室(東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻)は2020年8月に立ち上がり、交通工学・交通科学・交通経済学・統計学の手法を用いて物流システム・サプライチェーンマネジメント・バリューチェーンなどに関する研究を行っています。特に、サプライチェーンネットワークシミュレーションモデルの構築、グローバルバリューチェーン、新技術導入による物流システムへの影響評価、衛星データなどを用いた貨物OD表作成、などをテーマの中心としています。

東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻 川崎研究室
https://www.logistics.sys.t.u-tokyo.ac.jp/


シェアリング倉庫サービスWareX(ウェアエックス)について
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