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BPO放送倫理検証委員会、東京メトロポリタンテレビジョン『ニュース女子』沖縄基地問題の特集に関する意見を公表、重大な放送倫理違反と判断

 放送倫理・番組向上機構[BPO] の放送倫理検証委員会(川端和治委員長)は、審議していた東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)『ニュース女子』沖縄基地問題の特集に関する意見(委員会決定 第27号)をまとめ、2017年12月14日、記者会見して公表した。委員会は、本件放送には複数の放送倫理上の問題が含まれており、そのような番組を適正な考査を行うことなく放送した点において、TOKYO MXには重大な放送倫理違反があったと判断した。




[画像1: https://prtimes.jp/i/4559/40/resize/d4559-40-868871-0.jpg ]



概 要

 東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)は、2017年1月2日に放送した『ニュース女子』で、「沖縄緊急調査 マスコミが報道しない真実」と題し、沖縄県の米軍北部訓練場内で進められた東村高江地区のヘリパッド(ヘリコプター離着陸帯)の建設に反対して抗議活動に参加する人々について、日当を得て活動している疑いがある、現場に出動した救急車を止めたなどと報じ、それを前提にコメンテーターたちが批判的な感想を述べ論評する番組を放送した。

 この番組に対して、放送直後から、事実に基づかない報道や論評である、批判対象である抗議活動側への取材を怠っている、差別的表現が含まれている、ネット上のデマがそのまま地上波に持ち込まれた、などといった批判がなされた。また、BPOにも多数の視聴者意見が寄せられた。

 『ニュース女子』は、TOKYO MXが放送しているが、制作しているのはTOKYO MXではない。この番組は、スポンサーが制作費を拠出して制作会社が番組制作を行い、放送局は、スポンサーから電波料の支払いを受け、納品された完成品(以下「完パケ」という)を放送するいわゆる“持ち込み番組”である。“持ち込み番組”では、放送局は番組の制作過程にほとんどかかわらない。

 しかし、電波法上の免許を得て公共の電波を使用しているのが放送局である以上、放送した番組についての責任は放送局にある。放送局は、放送法に従って番組基準を自主的に制定し、放送内容の制作・編集の基準を表明しており、この番組基準の中核は放送倫理の遵守である。

 この責任を果たすために、各放送局は、「考査」という手続きを設けている。放送局が制作にかかわっている番組の場合は、制作の過程においてプロデューサーやディレクターなどが番組内容の適正さをチェックするが、“持ち込み番組”の場合、放送局は番組の制作過程にほとんどかかわらないため、納品された番組に対する考査こそが、放送局がその放送責任を果たすために最も重要な手続きとなる。考査が適正に行われず、放送倫理上の問題点が見逃されたまま放送された場合、当該放送局には放送倫理違反があることになる。

 委員会は、TOKYO MXから当該番組について報告を受けたが、その結論は、「取材に基づいて制作、放送された内容は、放送法、放送基準に準じたものであり妥当と考えております」というものであった。

 委員会で当該番組を視聴したところ、放送内容の主要な部分についてその根拠が番組上明らかとは言えないなどの意見が出された。そのため委員会は、TOKYO MXが番組内容を適切に考査したのかどうかを審議することとし、その前提として、果たしてこの番組に放送倫理上の問題があったのかどうかを、必要な範囲で検討することとした。

 本件は、委員会が、“持ち込み番組”に対する放送局の考査が適正であったかどうかを検証する初めての事案である。

委員会の検証

 本件放送で「過激な反対運動」の実例とされている内容のうち、1.基地建設反対派が救急車を止めたという内容には裏付けとなりうる事実が認められない。2.名護警察署前でA氏が述べている「もう近づくとね、1人、2人と立ち上がって」「敵意をむき出しにしてきてかなり緊迫した感じになりますんで」という内容にも裏付けとなりうる事実が認められない。また、3.本件放送で提示された茶封筒のカラーコピーやチラシは、基地建設反対派は誰かの出す日当をもらって運動しているという疑惑の裏付けとなるものとは言いがたい。これらの内容は、他のマスコミが報道しない「過激な反対運動」の実像を伝えるという本件放送の核となるべきものであるにもかかわらず、それらに十分な裏付けがないままに放送された点で、本件放送には放送倫理上の問題が含まれていた。
 
 しかしながら、本件の検証でTOKYO MXに問われているのは、あくまでも、その考査が当時、適正に行われたといえるかどうかである。考査の適正さを判断するためには、考査という重要な仕事を担当する放送人であれば、視聴して疑問を抱き、意見をつけるなり、制作会社に問いただすなりすべき点や、そうすることが可能であったと考えられる点が、本件放送にあったのかどうかを検討しなければならない。この観点から検証した結果、委員会は、少なくとも以下の6点において、TOKYO MXの考査には問題があったと判断した。

委員会の判断

 本件放送に対するTOKYO MXの考査は、以下の6点から放送倫理に照らして適正に行われたとは言えない。1.抗議活動を行う側に対する取材の欠如を問題としなかった、2.「救急車を止めた」との放送内容の裏付けを制作会社に確認しなかった、3.「日当」という表現の裏付けの確認をしなかった、4.「基地の外の」とのスーパーを放置した、5.侮蔑的表現のチェックを怠った、6.完パケでの考査を行わなかった。
 本件放送には複数の放送倫理上の問題が含まれており、そのような番組を適正な考査を行うことなく放送した点において、TOKYO MXには重大な放送倫理違反があったと委員会は判断する。
[画像2: https://prtimes.jp/i/4559/40/resize/d4559-40-655794-1.jpg ]

■委員会決定の全文はこちら
https://www.bpo.gr.jp/?p=9335&meta_key=2017

<参考資料>
「放送倫理検証委員会」運営規則
http://www.bpo.gr.jp/?page_id=903

■ 放送倫理・番組向上機構 概要
名称:放送倫理・番組向上機構[BPO]
放送事業の公共性と社会的影響の重大性に鑑み、正確な放送と放送倫理の高揚に寄与することを目的とした非営利・非政府の団体。言論と表現の自由を確保しつつ、視聴者の基本的人権を擁護するため、放送への苦情や放送倫理上の問題に対応する独立した第三者機関で、民放連およびNHKによって設置され、以下の三委員会から構成される。

委員会:
放送倫理検証委員会
放送と人権等権利に関する委員会(放送人権委員会)
放送と青少年に関する委員会(青少年委員会)

住所:
東京都千代田区紀尾井町1-1 千代田放送会館

理事長:
濱田 純一

URL:
http://www.bpo.gr.jp/
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