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NEDO事業でルネサスが高効率で低コストのミリ波トランシーバー技術を開発

従来と同じアンテナ構成で従来比3倍となる最大18%の電力効率を達成




 NEDOの委託事業「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業」(以下、本事業)において、ルネサス エレクトロニクス株式会社(ルネサス)および同社の米国法人であるRenesas Electronics America Inc.(ルネサス エレクトロニクス・アメリカ)は、ポスト5G/6Gの無線機器(ワイヤレスインフラストラクチャ)向けに、高効率で低コストのミリ波トランシーバー技術(以下、本技術)を開発しました。
 本技術により、パワーアンプをフィールドプログラム可能な構成にすることでスキャン角度やVSWR(Voltage Standing Wave Ratio:電圧定在波比)条件によらず、安定した高い出力を実現しました。また、本技術を用いた試作チップによる実証試験において、従来と同じアンテナ構成で従来比3倍となる最大18%の電力効率を達成しました。
 今後、本技術を無線機器の中でキーデバイスとなるトランシーバーICに適用することにより、ミリ波帯における広い通信帯域幅(通信速度)と極めて少ない遅延時間(レイテンシー)を実現することが可能となります。これにより、システム設計が容易化され、人工知能(AI)やAIの発展にともなう、XR(VR、AR、MR)アプリケーション、V2X(V2V、V2I、V2P、V2N)テクノロジー、サイバーフィジカルインテグレーションなどの新しい技術の実現に貢献します。

[画像1: https://prtimes.jp/i/135644/46/resize/d135644-46-d398f62e59662dd3cdf5-0.png ]

1.背景
 ポスト5G/6G時代に高速・低遅延・高密度ネットワークの実現をもたらすミリ波は、デジタルビームフォーミング技術※1の導入により、MU-MIMO(Multi User MIMO)システム※2に究極の柔軟性を提供し、それにより用途を広げることが期待されています。しかしながら、その際、トランシーバーを含む無線ユニットを多数設置すると消費電力が増大するという大きな課題が生じます。また、トランシーバーが高価な化合物半導体で構成されている場合、コスト増加にも課題が生じます。本事業※3では、従来技術では実現が難しかった、高い電力効率のトランシーバーをシリコンベースのテクノロジーに集積し、アンテナとの協調設計により高効率(低消費電力)、かつ低コストのミリ波トランシーバーモジュールの実現性を検証しました。

2.今回の成果
(1)トランシーバーICの開発
 まず、トランシーバーに搭載するパワーアンプのアーキテクチャを見直し、効率とVSWR特性を両立するアンプを開発しました。同時に、消費電力やリークの低減、イメージ除去特性を改善し、使用周波数帯とパッケージング上の課題を解決し、最適なパッケージング技術を確立しました。これらにより、ミリ波として28GHz帯をターゲットに、高い電力効率のトランシーバーをシリコンベースのICに集積することに成功しました。さらに、アンテナとの協調設計により高効率(低消費電力)かつ低コストのトランシーバーモジュールの試作にも成功しました。

[画像2: https://prtimes.jp/i/135644/46/resize/d135644-46-0f8255e918287e53a9b1-1.png ]

[画像3: https://prtimes.jp/i/135644/46/resize/d135644-46-b1a5b1de8fc284434e9f-2.png ]

(2)トランシーバーICの特性ならびに電力効率の検証
 今回開発したトランシーバーICの特性を検証するため、シミュレーションならびに作成した試作ICの実証試験を行い、以下の目標値を達成しました。また、実使用の周波数帯域幅において、従来と同じアンテナ構成で従来比3倍となる最大18%の電力効率を達成しました。本技術を無線機器の中でキーデバイスとなるトランシーバーICに適用することにより、ミリ波帯における広い通信帯域幅(通信速度)と極めて少ない遅延時間(レイテンシー)の実現が可能です。

                  表 トランシーバーICの性能
[表: https://prtimes.jp/data/corp/135644/table/46_1_a766073ff2ce9baa2a2681cdb187ae2a.jpg ]


3.今後の予定
 ルネサスは、本技術を活用したトランシーバーICの製品化に向けて、市場のニーズを踏まえ、特性改善と最適化を行っていきます。また、市場の変化に応じて必要となる周波数のトランシーバーICの開発と製品化を目指して、関連機関とも連携していきます。これにより、ポスト5G/6Gのシステム設計の容易化と市場への早期展開を促進し、AIならびにAIの発展にともなう、XRアプリケーション、V2Xテクノロジー、サイバーフィジカルインテグレーションなどの新しい技術の実現に貢献します。
 また、NEDOは、本事業をはじめポスト5Gに対応した情報通信システムの中核となる技術の研究開発を今後も推進し、日本のポスト5G情報通信システムの構築・製造基盤強化に貢献します。


【注釈】
※1 ビームフォーミング技術
 アンテナの指向性を特定の方向にだけ強くする技術です。
※2 MU-MIMOシステム
 MUはMulti Userの略で、複数端末を同時に接続しても安定した通信が可能なことを意味します。MIMOはMulti-Input Multi-Outputの略で、複数のアンテナで同時にデータを送受信することで通信容量を増やす技術です。
※3 本事業
 事業名:ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発/先導研究(委託)/ポスト5Gのワイヤレスインフラストラクチャ向けの高効率で低コストのミリ波トランシーバーの研究開発
 事業期間:2020年度〜2023年度
 事業概要:ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発 https://www.nedo.go.jp/activities/ZZJP_100172.html
※4 P1dB
 入力/出力の関係性が直線的に比例しなくなり、理想的な出力特性に利得が1dB低下した点のレベルです。P1dBの値が大きいほど、直線性のよいアンプであることを示します。
※5 LO Leak
 送信機のミキサーにおいて発生する不要なエネルギーのことです。
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