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ロレアルグループ、20年以上にわたって女性科学者の地位向上を推進

2019年「ロレアル-ユネスコ女性科学賞」に日本人女性科学者2名が受賞!




[画像1: https://prtimes.jp/i/4813/59/resize/d4813-59-835483-0.jpg ]



世界最大の化粧品会社ロレアルグループ(本社:フランス・パリ)とユネスコ(本部:フランス・パリ)は、物質科学、数学、コンピューターサイエンスの分野で目覚しい業績を挙げた世界の優れた女性科学者を表彰する2019年「ロレアル-ユネスコ女性科学賞」の受賞者5名ならびに、生命科学、物理科学、工学、数学などの分野の若手女性科学者を支援する2019年「ロレアル-ユネスコ女性科学賞―国際新人賞」の受賞者15名を発表しました。各賞から日本の女性科学者が受賞する快挙を遂げており、現地時間3月14日(木)にパリのユネスコ本部にて開催される授賞式において表彰されます。

●2019年「ロレアル-ユネスコ女性科学賞」
「ロレアル-ユネスコ女性科学賞」は、国際選考委員会により選ばれた物質科学、数学、コンピューターサイエンスの分野の発展に貢献した世界の優れた女性科学者5名にそれぞれ賞金10万ユーロ(約1,270万円)が授与されます。

今年は、日本を代表する化学者 川合眞紀氏(自然科学研究機構分子科学研究所所長、東京大学名誉教授、日本化学会会長)が受賞しました。原子レベルで分子の操作・制御および、化学反応を引き起こす手法を見出し、新しい化学、物理学的現象の発見へとつながるナノテクノロジーの基盤の確立に貢献しました。この卓越した研究成果は、化学物質の改善やエネルギー効率の高い革新的な素材の開発など環境問題の解決につながると期待されています。

受賞にあたり川合氏は「科学技術における世界的目標は、持続可能な地球を実現することにあります。私たちは、マイクロプラスチックのような環境に被害を与えることが実証された数多くの化学物質の改善に対応できる基礎研究を強化しなくてはなりません」と述べています。また、女性初の日本化学会会長として「物理学、数学、工学分野のように日本はまだ女性の進出が遅れた科学分野があります。このような科学分野にこそ、若い頃から女性が関わることで日本の科学のポテンシャルを上げることができます。」と語っています。

●2019年「ロレアル-ユネスコ女性科学賞―国際新人賞」
上記の「ロレアル-ユネスコ女性科学賞」とは別に、将来が期待される生命科学、物理科学、工学、数学などの分野の博士課程や博士研究員レベルの若手女性科学者を支援する「ロレアル-ユネスコ女性科学賞― 国際新人賞」を設けています。同賞は世界的に評価されるトップ15名の若手女性科学者の研究を支援することを目的に各受賞者に奨学金15,000ユーロ (約190万円)が贈呈されます。

この度受賞した野元美佳氏(名古屋大学 遺伝子実験施設 助教)は、日本ロレアルが推進する2018年「ロレアル‐ユネスコ女性科学者 日本奨励賞」の受賞に次いで、新たに国際新人賞を受賞しており、世界的に研究に対する高い評価を得ています。国際新人賞の日本からの受賞は4人目となります。

野元美佳氏は、試験管内で人工的にタンパク質を合成するシステムの開発をはじめ、世界で初めて同手法を用いた植物免疫応答の解析への貢献が高く評価されました。同研究成果により、病虫害に影響されない強力な作物の創出につながり、世界的な課題である作物被害の削減につながります。「学者になろうと決めた理由は、植物免疫のメカニズムを解明することによって、世界の人々のための食料の確保に貢献できると考えたからです。大学院で起業するなど、ユニークな経験を活かして次世代に多様な選択肢があることを発信していきたいと思います。」と受賞の喜びを語っています。


略歴
2019年「ロレアルーユネスコ女性科学賞」受賞
川合 眞紀(かわい まき)
自然科学研究機構分子科学研究所所長、東京大学名誉教授、日本化学会会長


[画像2: https://prtimes.jp/i/4813/59/resize/d4813-59-390685-1.jpg ]


1952年1月21日(67歳) 東京都出身
専門: 化学・表面科学

1970年東京学芸大学附属高等学校 卒業
1975年東京大学理学部化学科 卒業
1980 年東京大学大学院理学系研究科博士課程修了(東京大学理学博士)

1980年に理化学研究所特別研究生の後、研究機関や企業の研究員を経て1985年から理化学研究所研究員(触媒研究室)に就く。1988年には理化学研究所より出向し、東京工業大学工業材料研究所 客員教授、1991年に理化学研究所主任研究員(表面化学研究室)、2004年に東京大学大学院新領域創成科学研究科物質系専攻教授(2017年3月末まで)を務める。2010年に独立行政法人理化学研究所理事、2016年から自然科学研究機構分子科学研究所所長、2018年には女性として初めて日本化学会会長に就任、現在に至る。

民官学の研究所で博士研究員を経験し、若い頃から自立した環境のもとで研究を進めるユニークなキャリアを有する。現在、次世代の育成と働きやすい環境づくりに注力している。

【研究内容】原子レベルで分子を操作する画期的な研究成果によりナノテクノロジーの基盤の確立に貢献
現代社会はさまざまな触媒によって支えられています。単純な原料から有益な医薬品、肥料、先端素材などの開発をはじめ、有害なガスや液体を無害化するときに触媒は使われます。触媒の改良・開発には、なぜその表面が化学反応を触媒するのか、という根本的なメカニズムを理解することが極めて重要な課題です。

これまで走査トンネル顕微鏡は、固体表面に吸着した一つ一つの「分子」を観測することができましたが、それぞれの分子の内部状態の情報を得ることができませんでした。川合氏はいち早く走査トンネル顕微鏡を用いて、分子の振動状態やスピン状態などの内部状態を測定することに成功しました。触媒表面で分子を原子レベルで操作する、また、化学反応を引き起こす手法などナノサイエンスの基盤の確立に貢献しています。研究成果は、環境への被害を与える化学物質の改善やエネルギー効率の高い革新的な素材の開発など、深刻な環境問題の解決につながると期待されています。また、近い将来に実現が期待される単分子エレクトロニクスでは、分子と電極をつなぐ方法を発明することが重要な問題となると考えられています。この技術開発に向けて重要な基礎的知見を与えるものです。

【受賞歴】
猿橋賞(1996)、日本表面科学会賞(2006)、文部科学大臣表彰(2008)、日本化学会賞(2009)、The Gerhard Ertl Lecture Award(2015)、AVS Medard W. Welch Award (2016) 、Humboldt Research Award(2017)など国内外において数多くの賞を受賞。紫綬褒章(2017年)

【所属学会】
日本化学会(会長)、日本物理学会、日本応用物理学会、日本表面真空科学会、触媒学会、女性科学者に明るい未来をの会(評議員)、米国化学会、米国物理学会、米国真空学会など

略歴
2019年「ロレアル-ユネスコ女性科学賞―国際新人賞」受賞
野元 美佳(のもと みか)
名古屋大学 遺伝子実験施設 助教

[画像3: https://prtimes.jp/i/4813/59/resize/d4813-59-949609-2.jpg ]



出身地:   鹿児島県肝属郡
生年月日: 1988年7月25日 (30歳)
出身大学: 名古屋大学大学院 理学研究科 生命理学専攻
植物分子シグナル学
多田研究室 卒 (日本学術振興会特別研究員 DC1)
現所属:   2018年4月〜 名古屋大学 遺伝子実験施設 助教
研究分野: 分子生物学・植物病理学


【研究内容】試験管内で人工的にタンパク質を合成するシステムの開発と世界で初めて本法を用いた植物免疫応答の解明に貢献
世界的な人口増加に伴って食料の確保が問題視されていますが、実際には世界中で毎年約35%の主要作物が収穫前に病虫害により損失していることが分かっています。そのため、植物の病虫害に対する防御応答機構を理解することは、作物の安定供給のために重要です。
植物は、病原菌や昆虫などの環境ストレスに対応するために動物と類似した免疫応答を保有しています。病原菌を認識すると、サリチル酸という植物ホルモンを合成し、免疫を活性化することによって病原菌の感染を阻止します。一方、虫害に対しては、植物ホルモンであるジャスモン酸を合成し、被害の拡大を防ぎます。古くから病原菌に対する免疫が活性化すると、虫害の被害が増大することが知られていますが、この分子機構は明らかになっていませんでした。

本研究は、植物の免疫機能を解析するために必要なタンパク質を準備するにあたり、試験管の中でタンパク質を合成する無細胞タンパク質合成系の開発に成功しました。この手法により大規模な実験を行うことが可能となり、さらに遺伝子発現解析を行うことによって病原菌に対する免疫の主要制御因子NPR1タンパク質が虫害への防御応答を抑制することを世界で初めて明らかにしました。本成果は、NPR1タンパク質の機能を調節することによって、病原菌と虫害を防御できる強い植物の創出につながり、世界中の作物被害の軽減に貢献します。

【主な受賞歴・その他の活動】
第13回「ロレアル-ユネスコ女性科学者 日本奨励賞」(2018)、NEDO Technology Commercialization Program (2015)、The 1st International Symposium on Plant Environmental Sensing (2012)、2nd Circular for the 2nd Korea-Japan Joint Symposium and the 2012 Annual Meeting of Phytopathological Society of Japan (2012) 他5件

2016年に名古屋大学発のベンチャー企業NUProtein株式会社(http://nuprotein.jp/)を設立。学会発表の反響により、基礎研究や応用研究をサポートするために、タンパク質合成の受託サービスや研究用タンパク質の合成に使う試薬を販売。生体調節の根幹をなすタンパク質の機能の理解や研究に貢献することを目的としている。

【論文掲載】
Nomoto and Tada, Genes Cells 23, 46-53, 2018 他20件

【所属学会】
日本植物生理学会、日本植物学会、日本植物病理学会、日本分子生物学会、日本農芸化学会、日本遺伝学会

2019年「ロレアル-ユネスコ女性科学賞」: 受賞分野を数学とコンピューターサイエンスにも拡大
数学は多くの領域においてイノベーションの源となっている一方で、トップレベルで活躍する女性科学者がもっとも少ない分野でもあります。数学の権威ある世界的な3つの賞である「フィールズ賞」、「ウォルフ賞」、「アベル賞」ではこれまでに141人が受賞しましたが、うち女性の受賞者は一名のみとなります。ロレアル財団とユネスコは、今年から物質科学の分野を数学とコンピューターサイエンスにも広げ、女性科学者の地位向上をさらに強化していきます。今年は2名の数学者が受賞しています。

川合氏の受賞は、2000年岡崎恒子氏(名古屋大学名誉教授)、2005年米沢富美子氏(慶応大学名誉教授)、2009年小林昭子氏(日本大学文理学部化学科教授、東京大学名誉教授)、2013年黒田玲子氏(東京理科大学総合研究機構教授、東京大学名誉教授)、2014年稲葉カヨ氏(京都大学副学長(男女共同参画担当)、京都大学女性研究者支援センター長、京都大学大学院生命科学研究科教授)に続いて6人目となります。
※日本人受賞者の所属は受賞時


アジア太平洋地域(日本): 川合眞紀 自然科学研究機構分子科学研究所所長、東京大学名誉教授、 日本化学会会長
受賞理由: 原子レベルで分子を操作する画期的な研究成果によりナノテクノロジーの基盤の確立に貢献
欧州: クレア・ヴォワザン(Claire VOISIN) コレージュ・ド ・フランス教授、元CNRS(フランス国立科学研究センター)研究者
*CNRS金賞を贈られた5人の女性のうちの一人であり、権威あるコレージュ・ ド・フランスメンバー初の女性数学者
受賞理由: 代数幾何学の分野における先駆的発見により、トポロジーや複雑な代数多様体のホッジ構造の解明に貢献
北米: イングリッド・ドーベシ(Ingrid DAUBECHIES) デューク大学 数学・電気工学・コンピューター工学教授
*女性科学者として初めて国際数学連合のプレジデントに就任
受賞理由: 画像やシグナルプロセシングの数値的処理の開発により、データ圧縮のスタンダードアルゴリズムとフレキシブルアルゴリズムの提供に貢献
アフリカ・アラブ諸国: ナジャ・アウン・サリバ(Najat Aoun SALIBA) アメリカン大学自然保護センター   教授兼ディレクター
受賞理由: 中東における発癌因子をはじめとする毒性を持つ大気汚染物質や、たばこ、水ギセルなど現代のニコチン放出物の特定に貢献
ラテンアメリカ: カレン・ハルバーグ(Karen HALLBERG) バルセイロ大学院教授、原子力委員会(CNEA)/科学技術研究委員会(CONICET)バリローチェ原子力センター リサーチディレクター
受賞理由: 科学者の量子物理学の理解をサポートする最先端計算論的アプローチの開発を評価

女性科学者を支援:20年以上の取り組み
科学の分野では「ガラスの天井」が依然として存在しており、研究者のうち女性の割合はわずか29%、アカデミックな機関で上席の職位に就いている女性は11%に留まり、女性ノーベル賞受賞者は3%にすぎません。1998年以来、ロレアル財団はユネスコとともに「世界は科学を必要としており、科学は女性を必要としている」という確固たる信念のもと、女性科学者の地位向上に注力してきました。これまでに世界から107人の女性科学者を称え、3,000人以上の才能豊かな若手女性科学者(博士課程または博士研究員)の研究を奨励すべく奨学金を贈呈してきました。

***

ロレアルグループについて (https://www.loreal.com/)
1909年にパリで化学者ウージェンヌ・シュエレールによって設立され、世界150 カ国・地域で事業を展開し、82,600人の従業員を有する世界最大の化粧品会社です。「ランコム」「シュウ ウエムラ」「キールズ」「イヴ・サンローラン」「ロレアル パリ」「ロレアル プロフェッショナル」「メイベリン ニューヨーク」など、34ブランドをグローバル規模で展開しています。創立当初から研究活動を最重要視し、化粧品科学を一つの独立した科学分野へと育て上げてきました。また、女性研究者を積極的に登用しており、3,870名の研究者のうち、女性が占める割合は70%に上ります。

日本ロレアルについて (http://www.nihon-loreal.jp/)
1963年から事業を開始し、1996年に日本法人である日本ロレアル株式会社が設立されました。2,500人の従業員を有し、化粧品の輸入、製造、販売、マーケティングを行っています。現在、上記のブランドを含め18のブランドを取り扱っています。1983年に日本に研究開発拠点を置き、現在、日本ロレアルリサーチ&イノベーションセンター(川崎市・溝の口)として、日本をはじめ、アジアの研究開発の中心的な役割を担っています。200名以上の研究者を有し、うち女性研究者は56%を占めています。2005年から生命・物質科学分野における博士後期課程在籍または進学予定の若手女性科学者を支援する奨学金「ロレアル-ユネスコ女性科学者 日本奨励賞」を推進しています。2018年を含め、51名の若手女性科学者が受賞しています。
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