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主要アパレルがコロナ禍3年目でようやく発注額2桁増加/2022年3~8月決算まとめ

フルカイテンが調査レポート公表

フルカイテン株式会社(本社・大阪市福島区、代表取締役・瀬川直寛)は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大が日本で始まってから3年目の上半期である2022年3~8月期における大手上場アパレル企業16社の決算を調べ、各社の在庫効率(在庫を効率よく利益に換える力)がコロナ前と比較してどう変化しているかを考察するレポートを作成しました。
PDFファイル版は下記リンクからダウンロードできます。
https://full-kaiten.com/news/report/6070




要約は次のとおりです。

売上高は全16社が前年を上回った。営業損益は13社が改善した(増益、黒字転換、赤字幅縮小のいずれか)
少ない在庫で多くの粗利益を稼ぐ力の指標であるGMROIは11社が前年より改善した。ただ、コロナ禍前の2019年を超えた会社は9社だった
14社が仕入れを前年同期よりも増やし、うち10社は2桁パーセントの割合で増やしている



仕入れ抑制と在庫削減という過去2年で普及した手法からの脱却が継続している。今後は在庫を効率よく利益に換える「販売力」の強化が急務


[画像1: https://prtimes.jp/i/25713/100/resize/d25713-100-fbaab816e2f3b2f1fec6-0.jpg ]



全16社が増収。13社で営業損益が改善

本稿の調査対象は主に2月期決算の主要アパレル企業16社の2022年3~8月における決算となる。決算短信を基に売上高、営業損益、当期純損益をまとめたのが表1だ。

[画像2: https://prtimes.jp/i/25713/100/resize/d25713-100-81930f916a7749037bfc-1.png ]

売上高は16社全てが前年同期を上回った。2022年の6~8月は3年ぶりに行動制限がない盛夏を迎えるなど、総じて実店舗の集客が大きく回復したことで売上増加につながった。

営業損益をみると13社が前年同期から改善しており、前年が黒字だった9社のうち6社が増益となった。前年に赤字だった7社のうち4社(オンワードホールディングス、ナルミヤ・インターナショナル、パレモ・ホールディングス、コックス)は黒字転換を果たし、残り3社も赤字幅が縮小した(下表)。

[画像3: https://prtimes.jp/i/25713/100/resize/d25713-100-d09a922521fb6ea9b275-3.png ]

各社とも2021年度までの2年間、減収を覚悟のうえで店舗の統廃合をはじめとした固定費の削減を進めてきた。今年度に入って売上高が回復し、販管費(主に固定費)を賄うだけの粗利益(売上総利益)を得られるようになったため、営業損益が改善している。


一方で、良品計画とTSIホールディングスは営業減益となり、TOKYO BASEは赤字に転落した。この3社の営業減益または赤字転落は、2022年3~5月期(TOKYO BASEは2~4月期)に続く動きとなった。
ただ、TSIホールディングスの減益は本社移転に関連する費用を前倒しで償却したことが主因となっている。良品計画とTOKYO BASEは販売不振が響いた。


大幅な仕入れ抑制を継続したのは1社だけ

表2は各社の仕入れ額増減率と8月末の在庫高増減率、粗利益率とその昨対比をまとめたものだ。
まず、期中仕入れ額(発注額)を前年同期から減らしたのは2社のみだった(バロックジャパンリミテッド、パレモ・ホールディングス)。
[画像4: https://prtimes.jp/i/25713/100/resize/d25713-100-711fecdcc605cddcb6e5-2.png ]

他の14社は、7.1~28.8%の割合で期中仕入れ額を増やしている。特にファーストリテイリング、良品計画、アダストリア、TSIホールディングス、ハニーズホールディングス、ライトオン、三陽商会、ナルミヤ・インターナショナル、コックスの9社は増加率が15%を超えている。

2020年、2021年の過去2年は仕入れを抑制する会社が多かったが、コロナ禍も3年目に入った2022年3~5月期には事業の縮小均衡を招く仕入れ抑制から脱却する会社が多数を占めた。2022年3~8月期は仕入れ抑制からの脱却がより鮮明となり、仕入れ拡大の動きが大勢を占めるようになったことが分かる。

次に8月末の在庫高を見ると、前年同期よりも減らした会社は6社、増やした会社は10社となった。

在庫高を増やした10社の中で、増加率が2桁に上るのがファーストリテイリング、良品計画、アダストリア、TSIホールディングス、ハニーズホールディングス、TOKYO BASEの6社だ(下表)。

[画像5: https://prtimes.jp/i/25713/100/resize/d25713-100-127cbff34f0f4986bfaa-4.png ]

このうち良品計画とTOKYO BASEを除く4社は期中仕入れも増やして在庫高を増やし、かつ粗利率が改善していることから、値引きを抑制して販売しつつ9月以降に売る秋冬物の在庫を十分に積んでいることが窺える。

なお、良品計画とTOKYO BASEは販売不振で営業損益が大きく悪化(表1参照)したことが在庫高の増加の主因になっている。
2022年3~5月期を対象にしたレポート(2022年7月25日公表※1)でも触れたが、コロナ禍が丸3年目に入って各社が仕入れ抑制から通常の発注規模へと方針転換していく中で、この3~8月期は仕入れ増加と在庫積み増しが鮮明になっている。在庫を効率よく利益に変える「儲ける力」が従前から変わらないままで仕入れを増やせば、売れ残りが生じて値引き販売の頻発と残在庫の評価減というコロナ禍前の惨状を招きかねない。各社とも難しい舵取りを迫られることになりそうだ。
※1:https://full-kaiten.com/news/report/5254
 

GMROIは16社のうち7社がコロナ前に届かず

次に、GMROIの2019年以降4年間の推移を示したのが次のグラフだ。

[画像6: https://prtimes.jp/i/25713/100/resize/d25713-100-e1a8dc0d081061264cba-5.png ]

※GMROI:小売業などの在庫ビジネスにおいて、保有する在庫を用いて効率的に粗利益(売上総利益)を上げる力を表す指標。(粗利益額) ÷ (期中平均在庫高)で求められる

しまむら、良品計画、西松屋チェーン、マックハウス、TOKYO BASE以外の11社のGMROIは2021年3~8月よりも改善している。
また、三陽商会、ナルミヤ・インターナショナル、オンワードホールディングス、西松屋チェーン、しまむら、マックハウス、ファーストリテイリング、TSIホールディングス、ハニーズホールディングスの9社はコロナ禍前の2019年を上回っている。

各社とも仕入れ拡大に動くなかでGMROIを改善していくには、一部の売れ筋商品に頼って売上を作るのではなく、売れ筋以外の“隠れた売れ筋商品”の活用によって効率よく在庫を利益に変える手法の浸透がカギを握る。


企業規模でキャッシュフローに明暗

この章では各社のキャッシュフローを見てみる。直近4年間の3~8月期におけるフリーキャッシュフローを比較したのが表3だ。

[画像7: https://prtimes.jp/i/25713/100/resize/d25713-100-25a94e929650f8cf0138-6.png ]

※フリーキャッシュフロー:企業の本業によって稼いだ現金である「営業活動によるキャッシュフロー」と、設備投資や将来への投資と資産売却による資金回収との差額を示す「投資活動によるキャッシュフロー」の和を指す。企業が事業活動全般で得た資金のうち自由に使えるお金を指す

フリーキャッシュフローがマイナスの企業は、自由に使える資金がないため投資余力に乏しく、事業活動を維持していくために銀行借り入れや資産の切り売りなどを余儀なくされる。
表3は上から売上高が大きい順に並んでいるが、売上規模の小さい会社のフリーキャッシュフローの回復が遅いことが窺える。


まとめ:一部の売れ筋商品に頼らないビジネスモデルへ

在庫を効率よく利益に変える「儲ける力」が従前から変わらないままで仕入れを増やせば、売れ残りが生じて値引き販売の頻発と残在庫の評価減の発生というコロナ禍前の状態に戻りかねない。

儲ける力が高ければ、同じ在庫消化を図るにしても、無駄な値引きをすることなく、より多くの利益とキャッシュフローが得られる。
示唆に富むデータがある。コロナ禍が始まって直後の2020年4~6月において、アパレル企業は平均で全SKUのわずか20%の商品で粗利益総額の8割を生み出していることがデータ解析で裏付けられたのだ。残りの下位80%のSKUは粗利益総額の2割分しか貢献していないことになる。
※詳細は右記を参照(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000087.000025713.htm

しかし、儲ける力が高ければ下位80%のSKUの商品からも利益を取れる売り方ができるようになる。そうすると、仕入れを増やしても値引き頻発や残在庫の償却といった事態を回避できる。
アパレル産業では従来、一部の売れ筋商品に売上と利益を依存し、前年踏襲で売上を確保するために仕入れありきで販売力を超えた量の発注を行い、計画通りに売れなければ値引きして消化を図るという手法が主流となっていた。この手法の下では、値下げが増えても利益が出るよう製品原価を下げることが経営の主眼となってきたが、原価低減は商品の同質化という弊害が出るほどまで既になされている。

コロナ下で、消費者は価値を見出した商品にはお金を使い、それ以外の商品には見向きもしないという傾向がますます強くなった。コロナ禍が長引いている今だからこそ、付加価値の高い製品(商品)を、値引きを押さえて高く売ることに挑戦することが求められていると言える。
付加価値を重視してロット(発注量)を減らすことで原価率が上がったとしても、過剰ロットを発注して何十%もの値引き販売と残在庫の評価減が発生するよりは利益・キャッシュフロー面でプラスがあるのは確実だ。限られた量の在庫でも、今ある在庫を効率よく利益と現金へ換えるビジネスモデルへの変革が求められている。

※本調査は、対象となった企業の経営成績や財政状態の優劣を評価するものではありません。

【本レポートの引用について】
本レポートの内容は自由に引用していただけますが、その際は下記へご連絡ください。
 フルカイテン株式会社
 戦略広報チーム 南昇平
 電話: 06-6131-9388
 Eメール: info@full-kaiten.com

【会社概要】
社名: フルカイテン株式会社
URL: https://full-kaiten.com
事業内容: 在庫を利益に変えるクラウドシステムの開発
本社: 大阪市福島区福島1-4-4 セントラル70 2階B
設立: 2012年5月7日
代表者: 代表取締役 瀬川直寛
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