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皮膚バリア機能が低下傾向の敏感肌では、アトピー性皮膚炎の肌とセラミドプロファイルが類似していることを発見

花王株式会社(社長・長谷部佳宏)スキンケア研究所・解析科学研究所・生物科学研究所は、皮膚バリア機能が低下傾向の敏感肌では、セラミドプロファイル*1がアトピー性皮膚炎の肌と類似していることを発見し、そのプロファイルの変化が敏感肌特有の刺激感受性の高さに関係する可能性を明らかにしました。
今回の研究成果は、第89回SCCJ研究討論会(2022年12月1〜2日・東京都)にて発表し、最優秀発表賞を受賞しました。





[画像1: https://prtimes.jp/i/70897/256/resize/d70897-256-3fc1b0e0e658ff3ffab4-2.jpg ]


*1 セラミドとは皮膚の角質細胞間で保湿・バリアの機能に重要な役割を果たす脂質。セラミドには複数の分子構造グループがあり(図1)、これらの量的なバランスのことをいう

■背景
敏感肌は、通常では何ともない刺激に対しても、痛みやかゆみなどの不快な感覚が生じる刺激感受性が高い状態の肌で、主に皮膚バリア機能の低下や神経の過敏性が関連していると考えられています。これまでに花王では、敏感肌の皮膚バリア機能がセラミドケアクリーム*2の使用によって向上し、刺激感受性も改善することを確認しています。このことから、セラミドと刺激感受性には関係があると推察されますが、詳細はいまだ解明されていません。そこで今回は、敏感肌におけるセラミドの種類や存在比率などの詳細を解析するとともに、刺激感受性との関係性を調べました。
*2 合成疑似セラミドとセラミド産生促進効果のあるエキスを配合したクリーム

■対象者の選抜方法
敏感肌意識の有無を対象者に確認し、刺激感受性の評価*3を実施しました。その結果から、敏感肌意識を有し、刺激感受性が高い敏感肌者48名と、敏感肌意識を有さず、刺激感受性が低い非敏感肌者18名の2グループを選抜しました。
*3 対象者は20〜49歳の日本人女性、刺激感受性はスティンギングテストにて評価

■結果及び考察
1.敏感肌者グループの皮膚性状とセラミドプロファイルの特徴
皮膚バリア機能の指標である経皮水分蒸散量を2グループで比較した結果、敏感肌者グループでは経皮水分蒸散量が高い傾向を示しました。このことから、今回の敏感肌者グループの特徴として、皮膚バリア機能が低下傾向にあると考えられました。
また、敏感肌者グループでは、特定の種類のセラミド(NH, NP, EOS, EOH, EOP)の量が低下または低下傾向にあることがわかりました(図2)。これらのセラミドはいずれもアトピー性皮膚炎(AD)の肌でも低下していることを先行研究で確認しており、今回の敏感肌者グループのセラミドプロファイルはADの肌と類似していることが明らかになりました。
[画像2: https://prtimes.jp/i/70897/256/resize/d70897-256-0d024d778c2cf76bfce3-3.jpg ]



2.セラミドプロファイルと刺激感受性の関係性
セラミドプロファイルと刺激感受性の関係性を調べるため、セラミドNP/NS比*4に注目しました。先行研究において、NP/NS比が低いほど経皮水分蒸散量は高く、皮膚バリア機能が低下していることがわかっています。相関解析の結果、敏感肌者グループの方が NP/NS比が低く、その比の値が低いほど刺激感受性が高いことが認められました(図3)。このことから、セラミドプロファイルの違いが敏感肌特有の刺激感受性の高さに関係すると考えられました。
さらに、敏感肌者グループでセラミドプロファイルが異なっている原因を考察するため、角質細胞面積を調べた結果、敏感肌者グループでは面積が小さいことがわかりました*5。皮膚は周期的に生まれ変わるターンオーバーを繰り返していますが、角質細胞面積が小さいことはターンオーバーが加速していることを示唆します。敏感肌ではターンオーバーが加速し、未成熟な角層形成が進むことでセラミドの産生に影響を与え、そのプロファイルが変化していると推察されました。
*4 セラミドNSに対するセラミドNPの存在比率
*5 テープ剥離により採取した角層細胞の面積を計測
[画像3: https://prtimes.jp/i/70897/256/resize/d70897-256-5a74ce2cc9849b26156b-4.jpg ]


■まとめ
今回、刺激感受性が高く、皮膚バリア機能が低下傾向の敏感肌では、セラミドプロファイルがADの肌と類似していること、さらに、セラミドNP/NS比が低いほど刺激感受性が高いことを見出しました。これらの結果は、敏感肌に対して有用なスキンケア商品を開発していく上で基礎となる重要な知見です。今後もこうした知見を踏まえ、敏感肌の本質的な理解をより一層深めていきます。
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