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エボラ出血熱:症例数減少も終息には課題――報告書で世界の対応を批判

エボラ出血熱患者が減少し、3月末から4月初旬にかけては西アフリカ全域で合計30人にとどまった。各地の国境なき医師団(MSF)エボラ治療センターには現在、合計14人の感染確定患者・感染の疑われる患者が入院中だが、たとえ1人でも患者がいれば、エボラの流行は続く。現地では今も感染リスクを伴う埋葬が行われ、感染者と接触した人の追跡率もギニアで48%、シエラレオネで56%と低い。これらの指標は、既存症例の半数の感染経路が判明しておらず、流行は未だ制御されていないということを意味している。




[画像: http://prtimes.jp/i/4782/261/resize/d4782-261-156964-0.jpg ]



雨期による状況悪化の懸念も

4月10日現在のリベリアには新規症例はなく、終息宣言に向けた42日のカウントダウンも始まっているが、隣国の状況をみると、リスクは免れない。流行3ヵ国いずれにとっても、厳重な疫学的監視体制の維持が引き続き肝要で、感染の連鎖を一刻も早く断つことが求められる。しかし、間もなく訪れる雨期が悪路と各地の孤立を招き、医療へのアクセスと疫学的監視の障害となることが予想される。エボラ流行のさなかにあっては、極めて対応の難しいコレラなどの水系感染症も発生しかねない。雨期の間に、農作物の端境期の食糧危機「ハンガーギャップ」もやって来るため、栄養失調の増加も懸念される。

流行発生1年――自己と国際社会の対応に関する批判的分析を発表

MSFは、西アフリカにおける過去1年のエボラ流行に関する報告書の日本語版「極限まで、そしてその先へ」を公開した。エボラ対応に携わったスタッフ数十人への取材を基に構成され、1年前ギニアで流行が拡大していた早期のMSFの指摘、初期における流行国政府の否認、集団感染が周辺国を巻き込む一方で国際社会の無反応に直面し、MSFがやむを得ず踏み切った異例の措置を伝える。エボラ危機に臨む国際社会の対応の不備を明らかにしつつ、症例数が減少する中でも、流行は依然終息していないと警鐘を鳴らす。

レポートURL
http://www.msf.or.jp/library/pressreport/pdf/MSF1YearEbolaReport_23031.pdf

MSFインターナショナル会長のジョアンヌ・リュー医師は同報告書を「史上最悪のエボラ流行を振り返り、MSF自らの対応と、国際社会の対応に批判的な視線を投げかけるもの」と表し、「公衆衛生と援助体制が、緊急事態にどれほど効果がなく時間を要するものかという現実を突き付けた」と指摘する。

MSF自身の課題

報告書はほかにも、この1年間にMSFが直面してきた課題と、特定の治療法や十分な資源のない中で踏み切った困難な決断に関しても詳しく伝える。リュー医師は「MSFは流行が最も深刻だった時期に、患者の受入を拡大し、最善の援助を提供することができませんでした。これは有志の医療従事者の団体として痛恨の極みであり、MSF内でも白熱した議論と緊張を呼びました」と述べている。

MSFは引き続き省察を進め、今後の流行発生の際に活かせる教訓を得る考えである。同時に患者のデータを記録・分析し、エボラの致命性に寄与するさまざまな要素を検討していく。エボラのワクチン、治療薬、診断技術の継続的な研究開発に向けた、世界的な戦略の確立も不可欠だ。

終息に向けて残る課題

今回のエボラによる傷は、人びとに保健医療施設への不信を、医療従事者に士気の低下と医療サービス再開への不安を、そして、地域社会には人命の喪失と衰退と疑念をもたらした。流行3ヵ国では、過去1年の間に計500人近くの保健医療従事者が命を落とし、エボラ危機以前から深刻だった人手不足に猛烈な追い風となってしまった。西アフリカ地域の公衆衛生システム再建の第一歩として、保健医療サービスを利用できる環境の復旧が急務だ。

報告書は「今回の流行では国際社会の過ちが露呈し、その代償として大勢の人が命を失った。開発途上国の保健医療体制が抱える弱点にはじまり、国際援助活動の行き詰まりや停滞まで、この流行から得た教訓は、あらゆる人たちの役に立つはずだ」と総括する。
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