持続グルコース測定の血糖マネジメント指標と動脈硬化の関連性が明らかに
[23/10/01]
提供元:PRTIMES
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― HbA1cによる血糖マネジメント評価の限界 ―
順天堂大学大学院医学研究科代謝内分泌内科学の三田 智也 准教授、綿田 裕孝 教授らの研究グループは、持続グルコース測定(*1)により評価した血糖変動(*2)と目標血糖値範囲の割合が頚動脈壁の組織性状(*3)の変化と関連することを明らかにした。今回の研究では、2型糖尿病の方を対象に、持続グルコース測定で得られた血糖マネジメント指標と頸動脈超音波検査で評価した動脈硬化の指標である頚動脈内膜中膜複合体肥厚度(*4)と頚動脈壁の組織性状の2年間における変化との関連性を検討しました。その結果、試験開始時での血糖変動の指標が小さい程あるいは目標血糖値範囲の割合が高い程、頚動脈壁の組織性状の改善が大きいことが明らかになりました。従って、持続グルコース測定により血糖変動や目標血糖値範囲の割合を評価することは、動脈硬化の変化を予測する上で重要であることがわかりました。本研究成果は、欧州糖尿病学会雑誌「Diabetologia」のオンライン版に2023年9月26日付で公開されました。
■本研究成果のポイント
持続グルコース測定による血糖マネジメント指標と動脈硬化の指標の変化の関連性を調査
血糖変動が小さい程・目標血糖値範囲の割合が高い程、頚動脈壁の組織性状の改善が大きい
持続グルコース測定にて血糖パターンを評価することは動脈硬化の変化の予測の一助に
■背景
糖尿病では血糖マネジメントにより動脈硬化性疾患などの合併症の発症や進展を阻止することが重要な課題です。日常の診療では過去1〜2か月間の血糖コントロールの状態を反映するHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)(*5)が使用されており、日本を含めた各国のガイドラインでは、合併症を抑制するための血糖マネジメントの目標としてHbA1c7%未満を達成することが推奨されています。一方で、HbA1c値では血糖変動を評価することができませんが、その血糖変動が大きい2型糖尿病の方では死亡率が高くなることが報告されています。このため、持続グルコース測定により血糖変動を評価することが重要であると考えられますが、血糖変動が動脈硬化の発症や進行と関連するのかは明らかになっていません。また、米国や欧州糖尿病学会のガイドラインでは、HbA1cに加えて、持続グルコース測定による目標血糖値範囲の割合の評価することが推奨されています。具体的には、一般的な2型糖尿病の方において目標血糖値範囲の割合を70%より大きくすることを治療目標としています。しかし、目標血糖値範囲の割合が高いことが2型糖尿病の方の予後や動脈硬化性疾患などの合併症に関連するかは十分に示されておらず、今後のデータの蓄積やエビデンスの構築が必要とされていました。そこで、今回、2型糖尿病の方を対象に、持続グルコース測定で得られた血糖変動の指標あるいは目標血糖値範囲の割合と頸動脈超音波検査で評価した動脈硬化の指標である頚動脈内膜中膜複合体肥厚度あるいは頚動脈壁の組織性状の2年間における変化の関連性を検討しました。
■内容
本研究では、順天堂医院などに通院中の2型糖尿病の方600名を対象に、試験開始時と試験開始2年後に持続グルコース測定と頸動脈超音波検査で頚動脈内膜中膜複合体肥厚度と頚動脈壁の組織性状の評価を行いました。持続グルコース測定で、血糖変動の指標として変動係数(*6)、その他の血糖マネジメント指標として目標血糖値範囲(70〜180mg/dl)を満たす治療域の割合を評価しました。また、治療域より低値である低血糖域の割合(70mg/dl未満、54mg/dl未満)、治療域より高値である高血糖域の割合(180mg/dlより大きい、250mg/dlより大きい)も評価しました。そして、変動係数あるいは目標血糖値範囲の割合と頸動脈内膜中膜複合体肥厚度あるいは頸動脈壁の組織性状の2年間の変化との関連性を調査しました。
その結果、年齢、性別やHbA1cなど一般的な動脈硬化のリスク因子を調整しても、試験開始時の変動係数が小さい程あるいは目標血糖値範囲の割合が高い程、2年間における頸動脈壁の組織性状の変化は改善を認めることが明らかになりました。しかし、日常の診察で使用されている血糖マネジメント指標であるHbA1cと2年間における頸動脈壁の組織性状の変化との関連性は認めませんでした。さらに、試験開始時に国際的なコンセンサスによって提唱された持続グルコース測定の目標値(目標血糖値範囲の割合、低血糖域の割合と高血糖域の割合の目標値のいずれも)を達成した対象者は、達成しなかった被験者と比較して、頸動脈壁の組織性状の2年間の変化は有意に大きいことがわかりました。一方で、試験開始時の変動係数あるいは目標血糖値範囲の割合と頚動脈内膜中膜複合体肥厚度の2年間における変化には有意な関連性は認められませんでした。
今回、対象とした集団は明らかな心血管イベントの既往のない2型糖尿病の方であったため、頸動脈内膜中膜複合体肥厚度はあまり高値ではありませんでした。すなわち、頸動脈の動脈硬化はあまり進行しておりませんでした。一般的には、血管壁の組織性状の変化が進行した後に、血管壁の肥厚が起きるため、早期の動脈硬化を評価する方法としては、頸動脈壁の組織性状の測定が優れているとされています。そのため、今回は、試験開始時の変動係数あるいは目標血糖値範囲の割合と頸動脈壁の組織性状の変化のみ有意な関連性を認めたのではないかと考えています。
以上より、日常の診察で血糖マネジメント指標として使用しているHbA1cではなく、持続グルコース測定により評価した血糖変動や目標血糖値範囲の指標が頸動脈壁の組織性状の変化に関連していることが明らかになりました。従って、将来の動脈硬化の進行を予測するためには、HbA1cでは評価できない血糖変動や目標血糖値範囲の割合を持続グルコース測定により評価することが大切だと言えます。それゆえ、HbA1cの評価のみならず持続グルコース測定の指標を日常の臨床に取り入れることは、動脈硬化性疾患などの合併症の発症や進行を阻止するための最適化治療を実現する上で非常に重要であると考えられます。
■今後の展開
今回の研究では、持続グルコース測定により評価した血糖変動や目標血糖値範囲の指標が頸動脈壁の組織性状の変化に関連していることを明らかにしました。今後は、これらの指標が心血管イベントや細小血管障害や予後と関連するのかを明らかにしたいと考えています。さらに、それらの指標を改善させることが、動脈硬化や心血管イベントの抑制に繋がるかを検証する予定です。
[画像: https://prtimes.jp/i/21495/578/resize/d21495-578-64460889147e82902a47-0.png ]
■用語解説
*1 持続グルコース測定: センサーを上腕の背部などに貼り付け、皮下の間質液中のグルコース濃度を持続的に測定し、1日の血糖値の変化を観察すること。インスリン治療中の糖尿病の方のみが保険適応の範囲で測定が可能。
*2 血糖変動: 糖尿病では、インスリンの分泌が低下、あるいはインスリンの効きが悪くなることで、食後の血糖がより増加しやすくなるなど、1日の血糖の変動が大きくなる。
*3 頚動脈壁の組織性状: 超音波で撮影した画像をコンピューターで処理して血管壁の画素の濃淡の度数分布であるGSM(Gray-Scale median)を計算する。GSM値が低い血管壁は、不安定な動脈硬化性病変を有することを示す。GSM値が低い血管壁を有する方では、将来の心血管イベントの発症が増加する。
*4 頸動脈内膜中膜複合体肥厚度: 動脈壁は、内膜、中膜および外膜の3層で構成されている。動脈硬化が進行すると内膜と中膜の部分が肥厚する。超音波により頸動脈を観察し、頸動脈内膜中膜複合体肥厚を測定することで動脈硬化の進行具合がわかる。
*5 HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー): HbA1cは、体内に酸素を運ぶ赤血球内のタンパク質のひとつであるヘモグロビンとブドウ糖が結合した糖化ヘモグロビンのひとつ。血糖値が高いほど、結合しやすくなり、HbA1cは高値となる。過去1〜2カ月の血糖の平均的な状態を表し、正常範囲は、4.6%〜6.2%とされる。
*6 変動係数: 基本的なばらつきを表す標準偏差を平均値で補正した値(標準偏差/平均値×100)であり、血糖変動の指数として使用されている。
■研究者のコメント
現在、日本では持続グルコース測定の保険適応はインスリン療法中の糖尿病の方に限定されています。今後、当研究で持続グルコース測定により血糖マネジメント指標を評価する意義がさらに示されれば、保険適応への変更により診療の現場で必要な患者に持続グルコースの測定が行えるようになり、最適な個別化医療に繋がる可能性があると考えております。
■原著論文
本研究はDiabetologia誌のオンライン版で(2023年9月26日付)公開されました。
タイトル: Continuous glucose monitoring-derived time in range and CV are associated with altered tissue characteristics of the carotid artery wall in people with type 2 diabetes.
タイトル(日本語訳): 2型糖尿病の方あるにおいて持続グルコース測定で評価した目標血糖値範囲と変動係数は頸動脈の血管壁の組織性状の変化と関連する
著者: Tomoya Mita 1), Naoto Katakami 2), Yosuke Okada 3), Hidenori Yoshii 4), Takeshi Osonoi 5), Keiko Nishida 6), Toshihiko Shiraiwa 7), Akira Kurozumi 3), Naohiro Taya 2), Satomi Wakasugi 1), Fumiya Sato 1) , Ryota Ishii 8) Masahiko Gosho 8), Iichiro Shimomura 2), and Hirotaka Watada 1)
著者(日本語): 三田 智也 1)、片上 直人 2)、岡田 洋右 3)、吉井 秀徳 4)、遅野井 健 5)、西田 啓子 6)、 白岩 俊彦 7) 黒住 旭 3)、田矢 直大 2)、若杉 理美 1)、佐藤 文哉 1)、石井 亮太 8)、五所 正彦 8)、下村 伊一郎 2)、綿田 裕孝 1)
著者所属: 1)順天堂大学 2)大阪大学 3)産業医科大学 4)順天堂東京江東高齢者医療センター 5)那珂記念クリニック 6)西田啓子内科・糖尿病内科クリニック 7)白岩内科医院 8)筑波大学
DOI: 10.1007/s00125-023-06013-3
本研究は、日本医療研究開発機構(AMED) 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策実用化研究事業「血糖変動と心血管イベント発症の関連性を検討する前向き観察研究」、鈴木万平糖尿病財団、藤井節郎記念大阪基礎医学研究奨励会からの研究助成を受けて行われました。なお、本研究にご協力いただいた皆様には深謝いたします。
順天堂大学大学院医学研究科代謝内分泌内科学の三田 智也 准教授、綿田 裕孝 教授らの研究グループは、持続グルコース測定(*1)により評価した血糖変動(*2)と目標血糖値範囲の割合が頚動脈壁の組織性状(*3)の変化と関連することを明らかにした。今回の研究では、2型糖尿病の方を対象に、持続グルコース測定で得られた血糖マネジメント指標と頸動脈超音波検査で評価した動脈硬化の指標である頚動脈内膜中膜複合体肥厚度(*4)と頚動脈壁の組織性状の2年間における変化との関連性を検討しました。その結果、試験開始時での血糖変動の指標が小さい程あるいは目標血糖値範囲の割合が高い程、頚動脈壁の組織性状の改善が大きいことが明らかになりました。従って、持続グルコース測定により血糖変動や目標血糖値範囲の割合を評価することは、動脈硬化の変化を予測する上で重要であることがわかりました。本研究成果は、欧州糖尿病学会雑誌「Diabetologia」のオンライン版に2023年9月26日付で公開されました。
■本研究成果のポイント
持続グルコース測定による血糖マネジメント指標と動脈硬化の指標の変化の関連性を調査
血糖変動が小さい程・目標血糖値範囲の割合が高い程、頚動脈壁の組織性状の改善が大きい
持続グルコース測定にて血糖パターンを評価することは動脈硬化の変化の予測の一助に
■背景
糖尿病では血糖マネジメントにより動脈硬化性疾患などの合併症の発症や進展を阻止することが重要な課題です。日常の診療では過去1〜2か月間の血糖コントロールの状態を反映するHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)(*5)が使用されており、日本を含めた各国のガイドラインでは、合併症を抑制するための血糖マネジメントの目標としてHbA1c7%未満を達成することが推奨されています。一方で、HbA1c値では血糖変動を評価することができませんが、その血糖変動が大きい2型糖尿病の方では死亡率が高くなることが報告されています。このため、持続グルコース測定により血糖変動を評価することが重要であると考えられますが、血糖変動が動脈硬化の発症や進行と関連するのかは明らかになっていません。また、米国や欧州糖尿病学会のガイドラインでは、HbA1cに加えて、持続グルコース測定による目標血糖値範囲の割合の評価することが推奨されています。具体的には、一般的な2型糖尿病の方において目標血糖値範囲の割合を70%より大きくすることを治療目標としています。しかし、目標血糖値範囲の割合が高いことが2型糖尿病の方の予後や動脈硬化性疾患などの合併症に関連するかは十分に示されておらず、今後のデータの蓄積やエビデンスの構築が必要とされていました。そこで、今回、2型糖尿病の方を対象に、持続グルコース測定で得られた血糖変動の指標あるいは目標血糖値範囲の割合と頸動脈超音波検査で評価した動脈硬化の指標である頚動脈内膜中膜複合体肥厚度あるいは頚動脈壁の組織性状の2年間における変化の関連性を検討しました。
■内容
本研究では、順天堂医院などに通院中の2型糖尿病の方600名を対象に、試験開始時と試験開始2年後に持続グルコース測定と頸動脈超音波検査で頚動脈内膜中膜複合体肥厚度と頚動脈壁の組織性状の評価を行いました。持続グルコース測定で、血糖変動の指標として変動係数(*6)、その他の血糖マネジメント指標として目標血糖値範囲(70〜180mg/dl)を満たす治療域の割合を評価しました。また、治療域より低値である低血糖域の割合(70mg/dl未満、54mg/dl未満)、治療域より高値である高血糖域の割合(180mg/dlより大きい、250mg/dlより大きい)も評価しました。そして、変動係数あるいは目標血糖値範囲の割合と頸動脈内膜中膜複合体肥厚度あるいは頸動脈壁の組織性状の2年間の変化との関連性を調査しました。
その結果、年齢、性別やHbA1cなど一般的な動脈硬化のリスク因子を調整しても、試験開始時の変動係数が小さい程あるいは目標血糖値範囲の割合が高い程、2年間における頸動脈壁の組織性状の変化は改善を認めることが明らかになりました。しかし、日常の診察で使用されている血糖マネジメント指標であるHbA1cと2年間における頸動脈壁の組織性状の変化との関連性は認めませんでした。さらに、試験開始時に国際的なコンセンサスによって提唱された持続グルコース測定の目標値(目標血糖値範囲の割合、低血糖域の割合と高血糖域の割合の目標値のいずれも)を達成した対象者は、達成しなかった被験者と比較して、頸動脈壁の組織性状の2年間の変化は有意に大きいことがわかりました。一方で、試験開始時の変動係数あるいは目標血糖値範囲の割合と頚動脈内膜中膜複合体肥厚度の2年間における変化には有意な関連性は認められませんでした。
今回、対象とした集団は明らかな心血管イベントの既往のない2型糖尿病の方であったため、頸動脈内膜中膜複合体肥厚度はあまり高値ではありませんでした。すなわち、頸動脈の動脈硬化はあまり進行しておりませんでした。一般的には、血管壁の組織性状の変化が進行した後に、血管壁の肥厚が起きるため、早期の動脈硬化を評価する方法としては、頸動脈壁の組織性状の測定が優れているとされています。そのため、今回は、試験開始時の変動係数あるいは目標血糖値範囲の割合と頸動脈壁の組織性状の変化のみ有意な関連性を認めたのではないかと考えています。
以上より、日常の診察で血糖マネジメント指標として使用しているHbA1cではなく、持続グルコース測定により評価した血糖変動や目標血糖値範囲の指標が頸動脈壁の組織性状の変化に関連していることが明らかになりました。従って、将来の動脈硬化の進行を予測するためには、HbA1cでは評価できない血糖変動や目標血糖値範囲の割合を持続グルコース測定により評価することが大切だと言えます。それゆえ、HbA1cの評価のみならず持続グルコース測定の指標を日常の臨床に取り入れることは、動脈硬化性疾患などの合併症の発症や進行を阻止するための最適化治療を実現する上で非常に重要であると考えられます。
■今後の展開
今回の研究では、持続グルコース測定により評価した血糖変動や目標血糖値範囲の指標が頸動脈壁の組織性状の変化に関連していることを明らかにしました。今後は、これらの指標が心血管イベントや細小血管障害や予後と関連するのかを明らかにしたいと考えています。さらに、それらの指標を改善させることが、動脈硬化や心血管イベントの抑制に繋がるかを検証する予定です。
[画像: https://prtimes.jp/i/21495/578/resize/d21495-578-64460889147e82902a47-0.png ]
■用語解説
*1 持続グルコース測定: センサーを上腕の背部などに貼り付け、皮下の間質液中のグルコース濃度を持続的に測定し、1日の血糖値の変化を観察すること。インスリン治療中の糖尿病の方のみが保険適応の範囲で測定が可能。
*2 血糖変動: 糖尿病では、インスリンの分泌が低下、あるいはインスリンの効きが悪くなることで、食後の血糖がより増加しやすくなるなど、1日の血糖の変動が大きくなる。
*3 頚動脈壁の組織性状: 超音波で撮影した画像をコンピューターで処理して血管壁の画素の濃淡の度数分布であるGSM(Gray-Scale median)を計算する。GSM値が低い血管壁は、不安定な動脈硬化性病変を有することを示す。GSM値が低い血管壁を有する方では、将来の心血管イベントの発症が増加する。
*4 頸動脈内膜中膜複合体肥厚度: 動脈壁は、内膜、中膜および外膜の3層で構成されている。動脈硬化が進行すると内膜と中膜の部分が肥厚する。超音波により頸動脈を観察し、頸動脈内膜中膜複合体肥厚を測定することで動脈硬化の進行具合がわかる。
*5 HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー): HbA1cは、体内に酸素を運ぶ赤血球内のタンパク質のひとつであるヘモグロビンとブドウ糖が結合した糖化ヘモグロビンのひとつ。血糖値が高いほど、結合しやすくなり、HbA1cは高値となる。過去1〜2カ月の血糖の平均的な状態を表し、正常範囲は、4.6%〜6.2%とされる。
*6 変動係数: 基本的なばらつきを表す標準偏差を平均値で補正した値(標準偏差/平均値×100)であり、血糖変動の指数として使用されている。
■研究者のコメント
現在、日本では持続グルコース測定の保険適応はインスリン療法中の糖尿病の方に限定されています。今後、当研究で持続グルコース測定により血糖マネジメント指標を評価する意義がさらに示されれば、保険適応への変更により診療の現場で必要な患者に持続グルコースの測定が行えるようになり、最適な個別化医療に繋がる可能性があると考えております。
■原著論文
本研究はDiabetologia誌のオンライン版で(2023年9月26日付)公開されました。
タイトル: Continuous glucose monitoring-derived time in range and CV are associated with altered tissue characteristics of the carotid artery wall in people with type 2 diabetes.
タイトル(日本語訳): 2型糖尿病の方あるにおいて持続グルコース測定で評価した目標血糖値範囲と変動係数は頸動脈の血管壁の組織性状の変化と関連する
著者: Tomoya Mita 1), Naoto Katakami 2), Yosuke Okada 3), Hidenori Yoshii 4), Takeshi Osonoi 5), Keiko Nishida 6), Toshihiko Shiraiwa 7), Akira Kurozumi 3), Naohiro Taya 2), Satomi Wakasugi 1), Fumiya Sato 1) , Ryota Ishii 8) Masahiko Gosho 8), Iichiro Shimomura 2), and Hirotaka Watada 1)
著者(日本語): 三田 智也 1)、片上 直人 2)、岡田 洋右 3)、吉井 秀徳 4)、遅野井 健 5)、西田 啓子 6)、 白岩 俊彦 7) 黒住 旭 3)、田矢 直大 2)、若杉 理美 1)、佐藤 文哉 1)、石井 亮太 8)、五所 正彦 8)、下村 伊一郎 2)、綿田 裕孝 1)
著者所属: 1)順天堂大学 2)大阪大学 3)産業医科大学 4)順天堂東京江東高齢者医療センター 5)那珂記念クリニック 6)西田啓子内科・糖尿病内科クリニック 7)白岩内科医院 8)筑波大学
DOI: 10.1007/s00125-023-06013-3
本研究は、日本医療研究開発機構(AMED) 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策実用化研究事業「血糖変動と心血管イベント発症の関連性を検討する前向き観察研究」、鈴木万平糖尿病財団、藤井節郎記念大阪基礎医学研究奨励会からの研究助成を受けて行われました。なお、本研究にご協力いただいた皆様には深謝いたします。