〜先行する欧州と試験的導入を控えた我が国の方向性は〜 医療経済評価を取り入れた医薬品開発の展望について調査結果を発表
[15/07/21]
提供元:DreamNews
提供元:DreamNews
メディカル・ライフサイエンス分野のリサーチ・コンサルティングを専門に行う株式会社BBブリッジ(東京都港区、代表取締役 番場聖)では、医療費の有効利用活用の手法として注目されている医療経済評価(医療技術評価)について、医薬品開発における医療経済評価利用の現状や課題、今後の方向性について調査・分析を行い、その結果を発表しました。調査結果のポイントは以下の通りです。
1.医療経済評価は各国で運用方法が大きく異なる
医療経済評価の運用方式は新薬の承認取得の場合とは状況が大きく異なります。新薬の承認取得は国が異なっても国際ハーモナイゼーションによって考え方が統一されているため、求められるデータはほとんど同じであり、評価結果(承認の可否)にも大きな違いはありません。一方、医療経済評価については各国の経済状況や保険医療の提供方法によって運用方式が大きく異なることに注意が必要です。特に医療経済評価が「保険者(医療費支払者)の立場」、もしく「社会の立場」のどちらで行われているかも非常に重要なポイントです。
例えば英国では医療財政に大きな影響を与える可能性がある医薬品のみをピックアップし、NHS(国民保険サービス)で利用できるようにすべきかについて医療経済評価を通じて判断しています。一方、ドイツではほぼすべての医薬品について医療経済評価を行い、製薬企業との保険償還価格交渉の際の材料として利用しています。
このように医療経済評価の運用は、対象となる医薬品や評価指標、経済的かどうかを判断する基準などの点などが国によって大きく異なります。医薬品の販売を検討している製薬企業は、各国の医療経済評価の特徴や課題を分析したうえで、各国に適した医療経済評価データを作成することが必要です。
2.高額な抗がん剤の開発・販売の際に医療経済評価は特に重要
現在、抗がん剤はバイオ医薬品や分子標的薬の登場によって薬剤費が急騰しています。一方、高齢化によってがん患者は増加しており、医療財政を圧迫する高額な抗がん剤の利用に厳しい判断を行う国も多くなっています。
例えば英国NICE(※1)によって2015年までに行われた医療経済評価によりNHSによる利用を「推奨しない」という結果になったものについて、「医薬品・医療技術全体」では15%ですが「抗がん剤」に限ると32%と2倍以上になっています。
また、近年では高額な抗がん剤を複数組み合わせた併用療法の開発が増加しています。抗がん剤は現在の製薬企業の大きな開発テーマである一方、開発・販売戦略において医療経済評価は切り離せない事項であることに注意が必要です。
3.日本は英国とドイツの医療経済評価をベースとした制度を導入する可能性
日本の経済状況や医療制度・国民性などを踏まえたうえで、日本において医療経済評価がどのように導入されるかは非常に重要です。日本の経済状況や中医協での議論、医薬品の承認制度を考慮すると、日本では医療経済評価をドイツのように薬価の決定のための要件の1つとして利用し、医療経済評価の対象となる医薬品は英国NICEのように医療財源に特に大きな影響を与えるもののみを取り上げる可能性が高いと考えられます。これに該当しない医薬品は従来の薬価制度で薬価が決定されることが予想されます。
このような医療経済評価制度になると予測した背景として、日本はドイツの医療制度を手本として導入しているという点があります。また、日本は財政赤字といっても消費税や医療費の自己負担引き上げなどの余地があります。さらに医療経済評価に対する運用経験がないため、最初からすべての医薬品の医療経済評価を行うことは非常に難しい状況です。
上記を踏まえるとドイツと英国の医療経済評価制度から良い部分を日本に合わせた形で試験的に導入することが最も現実的です。導入後、製薬企業内でのデータ作成や医療経済評価実施団体での運用が上手く進むようになれば、対象となる医薬品を増加させることが見込まれます。
なお、本調査は(株)BBブリッジが作成した技術・市場調査レポート「医療経済評価を取り入れた医薬品開発の最新動向と今後の方向性(2015年7月15日発刊)」において実施されたものです。詳細についてお知りになりたい方は以下のURLをご参照ください。
http://www.bb-bridge.co.jp/reports/260/
用語説明
※1 英国NICE(National Institute for Health and Care Excellence)
個人における医療を受ける公平性や医療資源の効率的利用を推進するため、ブレア内閣時代の1999年に設置された英国の医療経済評価機関。医療財政に大きな影響を与える医療技術や医薬品に対して医療経済評価を行い、NHS(国民保健サービス)で利用すべきかどうかを提言しています。
なお、本プレスリリースの内容について無断利用・転載は禁止します。
―本件の問い合わせ先―
株式会社BBブリッジ
〒105-0001 東京都港区虎ノ門5丁目11-15
TEL:03-6721-5529
担当:番場(ばんば)
info@bb-bridge.co.jp
1.医療経済評価は各国で運用方法が大きく異なる
医療経済評価の運用方式は新薬の承認取得の場合とは状況が大きく異なります。新薬の承認取得は国が異なっても国際ハーモナイゼーションによって考え方が統一されているため、求められるデータはほとんど同じであり、評価結果(承認の可否)にも大きな違いはありません。一方、医療経済評価については各国の経済状況や保険医療の提供方法によって運用方式が大きく異なることに注意が必要です。特に医療経済評価が「保険者(医療費支払者)の立場」、もしく「社会の立場」のどちらで行われているかも非常に重要なポイントです。
例えば英国では医療財政に大きな影響を与える可能性がある医薬品のみをピックアップし、NHS(国民保険サービス)で利用できるようにすべきかについて医療経済評価を通じて判断しています。一方、ドイツではほぼすべての医薬品について医療経済評価を行い、製薬企業との保険償還価格交渉の際の材料として利用しています。
このように医療経済評価の運用は、対象となる医薬品や評価指標、経済的かどうかを判断する基準などの点などが国によって大きく異なります。医薬品の販売を検討している製薬企業は、各国の医療経済評価の特徴や課題を分析したうえで、各国に適した医療経済評価データを作成することが必要です。
2.高額な抗がん剤の開発・販売の際に医療経済評価は特に重要
現在、抗がん剤はバイオ医薬品や分子標的薬の登場によって薬剤費が急騰しています。一方、高齢化によってがん患者は増加しており、医療財政を圧迫する高額な抗がん剤の利用に厳しい判断を行う国も多くなっています。
例えば英国NICE(※1)によって2015年までに行われた医療経済評価によりNHSによる利用を「推奨しない」という結果になったものについて、「医薬品・医療技術全体」では15%ですが「抗がん剤」に限ると32%と2倍以上になっています。
また、近年では高額な抗がん剤を複数組み合わせた併用療法の開発が増加しています。抗がん剤は現在の製薬企業の大きな開発テーマである一方、開発・販売戦略において医療経済評価は切り離せない事項であることに注意が必要です。
3.日本は英国とドイツの医療経済評価をベースとした制度を導入する可能性
日本の経済状況や医療制度・国民性などを踏まえたうえで、日本において医療経済評価がどのように導入されるかは非常に重要です。日本の経済状況や中医協での議論、医薬品の承認制度を考慮すると、日本では医療経済評価をドイツのように薬価の決定のための要件の1つとして利用し、医療経済評価の対象となる医薬品は英国NICEのように医療財源に特に大きな影響を与えるもののみを取り上げる可能性が高いと考えられます。これに該当しない医薬品は従来の薬価制度で薬価が決定されることが予想されます。
このような医療経済評価制度になると予測した背景として、日本はドイツの医療制度を手本として導入しているという点があります。また、日本は財政赤字といっても消費税や医療費の自己負担引き上げなどの余地があります。さらに医療経済評価に対する運用経験がないため、最初からすべての医薬品の医療経済評価を行うことは非常に難しい状況です。
上記を踏まえるとドイツと英国の医療経済評価制度から良い部分を日本に合わせた形で試験的に導入することが最も現実的です。導入後、製薬企業内でのデータ作成や医療経済評価実施団体での運用が上手く進むようになれば、対象となる医薬品を増加させることが見込まれます。
なお、本調査は(株)BBブリッジが作成した技術・市場調査レポート「医療経済評価を取り入れた医薬品開発の最新動向と今後の方向性(2015年7月15日発刊)」において実施されたものです。詳細についてお知りになりたい方は以下のURLをご参照ください。
http://www.bb-bridge.co.jp/reports/260/
用語説明
※1 英国NICE(National Institute for Health and Care Excellence)
個人における医療を受ける公平性や医療資源の効率的利用を推進するため、ブレア内閣時代の1999年に設置された英国の医療経済評価機関。医療財政に大きな影響を与える医療技術や医薬品に対して医療経済評価を行い、NHS(国民保健サービス)で利用すべきかどうかを提言しています。
なお、本プレスリリースの内容について無断利用・転載は禁止します。
―本件の問い合わせ先―
株式会社BBブリッジ
〒105-0001 東京都港区虎ノ門5丁目11-15
TEL:03-6721-5529
担当:番場(ばんば)
info@bb-bridge.co.jp