【矢野経済研究所プレスリリース】生命保険領域における国内InsurTech市場に関する調査を実施(2021年)〜2021年度の国内InsurTech市場は前年度比145.7%の1,880億円の見込〜
[21/06/22]
提供元:DreamNews
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株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、生命保険領域における国内InsurTech(インシュアテック)市場を調査し、現況、領域別の動向、および将来展望を明らかにいたしました。
1.市場概況
2021年度の国内InsurTech(インシュアテック)市場規模は、参入事業者売上高ベースで前年度比145.7%の1,880億円の見込みである。特にコロナ禍に伴い、営業活動の高度化や非対面チャネルの強化に加え、契約手続や支払請求など事務手続きの電子化・自動化が急速に進んでいる。また、保険商品の開発においても医療ビッグデータを収集・活用し、個人向けの健康増進型保険※1や疾病管理プログラム※2が充実してきている。加えて、団体保険の分野でも2019年頃から徐々に健康増進から早期発見、介入に至るまでカバーした保険商品・サービスを手掛ける動きが出てきている。
法整備については、「新型コロナウイルス感染症等の影響による社会経済情勢の変化に対応して金融の機能の強化及び安定の確保を図るための銀行法等の一部を改正する法律案」が2021年5月に成立した。同法に対応して、保険会社においても「一定の高度化等業務」を営む会社の保有や出資規制の緩和をはじめ、影響を及ぼす部分が存在する。また、「規制のサンドボックス」※3や金融庁において創意工夫を促す各種仕組みの整備が進んでおり、こうした仕組みを積極的に活用する取組みが出てきている。
支援環境については、コロナ禍も相まってオンラインイベントに留まった点も影響し、昨年から大きくは進展していないのが実情である。従前の動きに加えて、民間事業者による新たなイベントや、スタートアップの事業を支援し成長を加速させるアクセラレーションプログラムが登場し始めている。ただし、今もっても支援は限定的であり、引き続き今後の積極的な支援環境の構築・拡大を期待する。
技術的な環境整備においては、まずクラウド化について、FISC(公益財団法人金融情報システムセンター)が定める金融機関の情報システムの安全対策基準においてクラウドサービスを反映するなど、クラウドサービス導入に向けた障壁が低くなってきている。また、金融庁も支援体制を整備するなどしており、大手生命保険会社を中心に従来のオンプレミスの情報システムを活かしつつ、クラウド化に向けて舵を切り始めている状況にある。
2.注目トピック〜健康増進型保険に広がり、エコシステムも大手を中心に勃興
国内外の生命保険会社において、従来の健康増進型保険や疾病管理プログラムに関する取組みが積極化しており、特に健康増進型保険はバリエーションが広がってきている。まず多彩な企業と協業し、スマートフォンアプリをはじめとした付帯サービスの提供を通じて健康増進活動を直接的にサポートする動きがある。
次に割引やキャッシュバックの形で、健康増進活動に対するモチベーションを維持するなどの間接的なサポートを行う動きもみられる。加えて、死亡保険やがん保険については、非喫煙者向けプランの提供を打ち出すなど、健康リスクの低い方向けの保険商品を提供する動きもある。
また、個人と法人の区分けでみても、個人向けの健康増進や疾病管理プログラムに留まらず、団体保険の分野でも2019年頃から徐々に健康経営に係るサポートや、従業員向けに健康維持の面での福利厚生の充実、経営者向けサービスなど、健康増進から早期発見、介入までカバーした保険商品・サービスを手掛ける動きが出てきつつある。
さらに、健康増進を中心としたエコシステムの構築に向けた動きが活発化してきている。従来よりエコシステムの構築に向けた動きは一部の事業者であったものの、大手の第一生命や日本生命においてもエコシステムの構築に向けた取組みが始まっている。今後も大手生命保険会社を中心に複数のエコシステムが登場し、ヘルスケア関連企業を中心として連携を積極化していくとみられ、引き続き注視していくべき動きの1つといえる。
3.将来展望
2023年度の国内InsurTech(インシュアテック)市場規模は、参入事業者売上高ベースで、2,800億円に達すると予測する。
クラウド化や外部連携に向けたFISCのシステム基準の整備、金融庁内における「基幹系システム・フロントランナー・サポートハブ」の設置などの支援環境が整うなかで、大手生命保険会社を中心にクラウド化が進んでおり、デジタルトランスフォーメーション(DX)に向けた基盤の構築が始まっている。それに伴って、より一層スタートアップなどとの協業が進むとみる。また、支払査定における不正検知や、アンダーライティング(引受査定)などの効率化・高度化を目的としたAIの導入が進んでいる。
今後、クラウド化の浸透により、生命保険業界においてもAPI の公開に向けた議論が高まる見込みである。特に生命保険会社にとってAPIの公開に伴う外部企業との協業はタッチポイント(顧客との接点)が増えることに繋がるため、推進していく必要があると考えられる。保険商品については健康増進から疾病管理に至るまでをサポートする動きが、これまで同様広がり続けている。こうしたことから、生命保険領域における国内InsurTech(インシュアテック)市場全体は、引き続き拡大していく見通しである。
※1. 健康増進型保険とは、従来の実年齢によって保険料が決定する手法とは異なり、健康診断結果やライフログデータを基に、保険加入者の健康状態や健康増進に向けた取組み度合いに応じて、保険料が変動する保険商品
※2. 疾病管理プログラムとは、啓蒙活動から実際の行動変容、そして異常が見つかった際の最適な医療アクセスの提供、さらに給付金の支払いまで一貫してサポートしていく取組み
※3. サンドボックスとは、革新的な事業やサービスを育成する上で、現行法の規制を一時的に停止する仕組みで、 所管官庁に届け出て、相談の上、試験的に事業を進める手法
※4. 重症化予防プログラムとは脳梗塞や心筋梗塞など再発率の高い疾患に罹患した際、手術等で一旦治癒、回復後の2回目以降の再発予防に向けたプログラムをさす
※掲載されている情報は、発表日現在の情報です。その後予告なしに変更されることがございますので、あらかじめご了承ください。
https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/2734
調査要綱
1.調査期間: 2020年11月〜2021年5月
2.調査対象: 国内の生命保険会社、少額短期保険事業者、SIer(システムインテグレーター)、InsurTechベンチャー企業等
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談、電話・e-mailによるヒアリング、ならびに文献調査併用
4.発刊日:2021年05月31日
お問い合わせ
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株式会社矢野経済研究所 マーケティング本部 広報チーム
https://www.yano.co.jp/contact/contact.php/press
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配信元企業:株式会社矢野経済研究所
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1.市場概況
2021年度の国内InsurTech(インシュアテック)市場規模は、参入事業者売上高ベースで前年度比145.7%の1,880億円の見込みである。特にコロナ禍に伴い、営業活動の高度化や非対面チャネルの強化に加え、契約手続や支払請求など事務手続きの電子化・自動化が急速に進んでいる。また、保険商品の開発においても医療ビッグデータを収集・活用し、個人向けの健康増進型保険※1や疾病管理プログラム※2が充実してきている。加えて、団体保険の分野でも2019年頃から徐々に健康増進から早期発見、介入に至るまでカバーした保険商品・サービスを手掛ける動きが出てきている。
法整備については、「新型コロナウイルス感染症等の影響による社会経済情勢の変化に対応して金融の機能の強化及び安定の確保を図るための銀行法等の一部を改正する法律案」が2021年5月に成立した。同法に対応して、保険会社においても「一定の高度化等業務」を営む会社の保有や出資規制の緩和をはじめ、影響を及ぼす部分が存在する。また、「規制のサンドボックス」※3や金融庁において創意工夫を促す各種仕組みの整備が進んでおり、こうした仕組みを積極的に活用する取組みが出てきている。
支援環境については、コロナ禍も相まってオンラインイベントに留まった点も影響し、昨年から大きくは進展していないのが実情である。従前の動きに加えて、民間事業者による新たなイベントや、スタートアップの事業を支援し成長を加速させるアクセラレーションプログラムが登場し始めている。ただし、今もっても支援は限定的であり、引き続き今後の積極的な支援環境の構築・拡大を期待する。
技術的な環境整備においては、まずクラウド化について、FISC(公益財団法人金融情報システムセンター)が定める金融機関の情報システムの安全対策基準においてクラウドサービスを反映するなど、クラウドサービス導入に向けた障壁が低くなってきている。また、金融庁も支援体制を整備するなどしており、大手生命保険会社を中心に従来のオンプレミスの情報システムを活かしつつ、クラウド化に向けて舵を切り始めている状況にある。
2.注目トピック〜健康増進型保険に広がり、エコシステムも大手を中心に勃興
国内外の生命保険会社において、従来の健康増進型保険や疾病管理プログラムに関する取組みが積極化しており、特に健康増進型保険はバリエーションが広がってきている。まず多彩な企業と協業し、スマートフォンアプリをはじめとした付帯サービスの提供を通じて健康増進活動を直接的にサポートする動きがある。
次に割引やキャッシュバックの形で、健康増進活動に対するモチベーションを維持するなどの間接的なサポートを行う動きもみられる。加えて、死亡保険やがん保険については、非喫煙者向けプランの提供を打ち出すなど、健康リスクの低い方向けの保険商品を提供する動きもある。
また、個人と法人の区分けでみても、個人向けの健康増進や疾病管理プログラムに留まらず、団体保険の分野でも2019年頃から徐々に健康経営に係るサポートや、従業員向けに健康維持の面での福利厚生の充実、経営者向けサービスなど、健康増進から早期発見、介入までカバーした保険商品・サービスを手掛ける動きが出てきつつある。
さらに、健康増進を中心としたエコシステムの構築に向けた動きが活発化してきている。従来よりエコシステムの構築に向けた動きは一部の事業者であったものの、大手の第一生命や日本生命においてもエコシステムの構築に向けた取組みが始まっている。今後も大手生命保険会社を中心に複数のエコシステムが登場し、ヘルスケア関連企業を中心として連携を積極化していくとみられ、引き続き注視していくべき動きの1つといえる。
3.将来展望
2023年度の国内InsurTech(インシュアテック)市場規模は、参入事業者売上高ベースで、2,800億円に達すると予測する。
クラウド化や外部連携に向けたFISCのシステム基準の整備、金融庁内における「基幹系システム・フロントランナー・サポートハブ」の設置などの支援環境が整うなかで、大手生命保険会社を中心にクラウド化が進んでおり、デジタルトランスフォーメーション(DX)に向けた基盤の構築が始まっている。それに伴って、より一層スタートアップなどとの協業が進むとみる。また、支払査定における不正検知や、アンダーライティング(引受査定)などの効率化・高度化を目的としたAIの導入が進んでいる。
今後、クラウド化の浸透により、生命保険業界においてもAPI の公開に向けた議論が高まる見込みである。特に生命保険会社にとってAPIの公開に伴う外部企業との協業はタッチポイント(顧客との接点)が増えることに繋がるため、推進していく必要があると考えられる。保険商品については健康増進から疾病管理に至るまでをサポートする動きが、これまで同様広がり続けている。こうしたことから、生命保険領域における国内InsurTech(インシュアテック)市場全体は、引き続き拡大していく見通しである。
※1. 健康増進型保険とは、従来の実年齢によって保険料が決定する手法とは異なり、健康診断結果やライフログデータを基に、保険加入者の健康状態や健康増進に向けた取組み度合いに応じて、保険料が変動する保険商品
※2. 疾病管理プログラムとは、啓蒙活動から実際の行動変容、そして異常が見つかった際の最適な医療アクセスの提供、さらに給付金の支払いまで一貫してサポートしていく取組み
※3. サンドボックスとは、革新的な事業やサービスを育成する上で、現行法の規制を一時的に停止する仕組みで、 所管官庁に届け出て、相談の上、試験的に事業を進める手法
※4. 重症化予防プログラムとは脳梗塞や心筋梗塞など再発率の高い疾患に罹患した際、手術等で一旦治癒、回復後の2回目以降の再発予防に向けたプログラムをさす
※掲載されている情報は、発表日現在の情報です。その後予告なしに変更されることがございますので、あらかじめご了承ください。
https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/2734
調査要綱
1.調査期間: 2020年11月〜2021年5月
2.調査対象: 国内の生命保険会社、少額短期保険事業者、SIer(システムインテグレーター)、InsurTechベンチャー企業等
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談、電話・e-mailによるヒアリング、ならびに文献調査併用
4.発刊日:2021年05月31日
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