アジア各国のホワイトカラー人材紹介市場の動向 2018年4月〜6月
[18/07/30]
提供元:@Press
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世界10ヵ国で人材紹介事業を展開し、東南アジアでは最大級の規模(※1)を誇る株式会社ジェイ エイ シー リクルートメント(代表取締役社長:松園 健)は、この度、2018年第2四半期のアジア各国のホワイトカラー人材紹介市場の動向を纏めましたので、お知らせいたします。
※ 以下リンクより、より読みやすいPDF版のプレスリリースをご参照ください。
https://www.atpress.ne.jp/releases/162296/att_162296_1.pdf
【サマリー】
・第1四半期に全体的に増加した求人が、第2四半期になり一服した国々と好調な国々と、二分した結果に
・中国ではハイテク関連、半導体関連などの求人増により対前期比116%、対前年四半期比131%
・韓国では半導体の輸出により関連の求人依頼が増加し、対前年四半期比で121%
・ベトナムではFinTech、AI(人工知能)など、IT関連の求人依頼が増加し対前年四半期比で308%
■■マレーシア■■
前期比で増加した第1四半期の反動で第2四半期の求人は減少したものの、
高度人材やマネジメント人材のニーズは引き続き底堅い動きが続く
【求人数】
対前年四半期比 88%
対前四半期比 88%
JAC Recruitment マレーシア法人社長 大西 信彰
5月9日に実施されたマレーシア議会下院選挙(定数222)は、マハティール元首相が率いる野党連合が過半数を超える113議席を獲得し、1957年の独立以来初の政権交代が実現。政権発足後、GST(物品・サービス税)の撤廃、大型インフラ事業の計画見直しなど10の公約を着実に実行しています。6月にVistage-MIER(マレーシア経済研究所) が発表したCEO Confidence Index(経済動向信頼感指数-CEO回答数は614)によると、第2四半期は106.9ポイントとなり2017年第2四半期の89.6と較べ17.3ポイント増加と、楽観視していることが伺えます。(DI指数に100を加えた指数)
【企業の採用動向】
・第2四半期の企業求人状況は、前期比大幅に増加した第1四半期の反動もあり、12%減、前年同期比でも同じく12%減となりました。ただし、化学、電子、医療機器、EMS(電子機器受託製造)などの業界で、立ち上げや生産拡張に必要な人事・総務系、製造に関わる生産管理、品質保証、研究開発などの職種への需要は引き続き高い状態です。前年同期比で見ると日系は-27%、一方で外資は+19%、地場は-11%となっています。
・SSC/BPO業界の求人は引き続き活況で、SNSのコンテンツチェックや航空会社のチケット発行業務などの求人依頼も受けています。また従来の経理系人材に加え、臨床関係のアナリストといったスペシャリストの求人も出ています。また、通常通り、多言語人材のニーズは堅調に推移しています。
・製造業の求人は全体的に減少しましたが、最近ではデジタルマーケティング業界の求人が相次いでいるのは特徴的です。
・基本給7千リンギット以上のマネジャークラスの求人で見ると、前年同期比で10%増加しました。求人数に占める割合も前年同期の27.5%に対して第2四半期は34.4%となっており、企業側の高度人材、マネジメント人材への要求が増加していることが伺えます。
【求職者の動向】
登録者数でみると、第2四半期は前期比で横ばいながら、前年同期比では13%増加しました。2015年以降の同四半期と比較しても最も多くなっています。
日系企業を中心に日本人人材への要望は技術系・営業系共に底堅いものの、登録者数は前期比で-5%となりました。前年同期比では27%と大きく伸びてはいるものの、このところ当地で最終的に内定を出した段階で、日本の現職の企業から強い引き留め(カウンターオファー)を受け、成約に至らないケースが増えています。採用する企業はこれまで以上に弾力的な報酬の呈示、もしくは現地採用ではなく日本本社採用に切り替えるなどの措置が必要になっています。
■■シンガポール■■
シンガポールにおける実質経済成長率が増加
雇用は現地のローカル人材を優先する傾向に
【求人数】
対前年四半期比 99%
対前四半期比 91%
JAC Recruitment シンガポール法人社長 早瀬 恭
シンガポールの政労使の代表で構成される全国賃金評議会(National Wages Council)が5月末に発表され、シンガポールにおける実質経済成長率は2017年実績3.6%(予測1-3%)で2016年の2.4%よりも増加し、2018年予測は2.5%〜3.5%となりました。消費者物価指数(CPI)は2017年0.6%(予測:0.5-1.5%)と2016年まで2年続いたマイナスから脱却。2018年の予測は0%〜1%で実質賃金、生産性ともに増加しています。
賃金評議会のガイドラインでは、引き続き低賃金所得者へのベースアップ($1,200以下のスタッフへの賃上げ実施)、高齢者雇用促進(一定の条件を満たした採用を行った場合の補助金制度延長)をしつつ、今年から、仕事に復帰する女性への雇用促進(フレキシブルな労働条件の導入、家庭に優しい職場環境整備)を図る項目が追加されました。
【企業の採用動向】
例年シンガポールでは第2四半期が最も求人が多くなる時期ですが、昨年同様今年も第1四半期と比べ求人数に変化はなく、伸びは見られませんでした。日系企業では引き続き外国人就労ビザの厳格化の影響を受け現地のローカル人材を優先して採用する傾向があり、特に人事や経理などの管理業務領域において顕著でした。日本人向け求人に関しては求人数はやや減少したものの、スペシャリストや管理職の求人依頼は引き続き受けています。またシンガポールではアジア地域の統括拠点とする企業が多いため、シンガポール以外の地域への海外グローバル採用の依頼も増加しています。
【求職者の動向】
シンガポール人および就労ビザ取得の必要が無い永住権保持者、配偶者ビザ保持者への高い需要は続いており、これらの人材による売り手市場となっています。
就労ビザ発行の必要の無い人材の留保のため各企業が対策を講じる中、特にシンガポール人においては転職先企業から内定を受けた後、現職企業に退職交渉を行った際に現職企業から引き留め(カウンターオファー)を受け、現職にとどまる決断をしたというケースが増加しています。
■■タイ■■
第2四半期は景況感が改善。採用動向は横ばいだが堅調な状況
引き続き売り手市場が続く
【求人数】
対前年四半期比 85%
対前四半期比 93%
JAC Recruitment タイランド法人社長 山下 勝弘
新車の販売台数が直近のピークであった2012〜13年の水準に戻りつつあり、タイでは多くの日系企業が影響を受ける景況感の指標が概ね改善傾向で、近年の中では好調な景況感であると言えます。また、政治面では来年にクーデター後の再民主化を控え、さらなる景況感の改善が期待されるものの、一方で計画通りには物事が進まないことも多く先行きは不透明な状態です。
【企業の採用動向】
日系企業の進出の歴史が長いタイでは大手のみならず中小企業の進出も進んでいますが、タイ現地法人トップの後任候補が日本の本社在籍の社員から見つけられないという課題を抱える企業が少なくありません。
このため、中途採用での現地法人トップのポジションの依頼を受けるケースも徐々に増えており、転職者と企業の双方に駐在員と現地採用の差という固定観念が薄れつつあります。しかし、日系企業の現地法人のトップのポジションの大多数は日本人が占めており、完全な現地化という意味では現地ローカル人材を現地のトップに就任させる欧米系の企業とは異なる方向に進んでいます。
【求職者の動向】
経営トップ人材を求める企業の採用動向が増加傾向であることから、50代〜60代の経営経験を持つ人材の転職の機会が増えています。しかし、現地法人立ち上げの経験がなく、前任から現地法人社長のポジションを引き継いだ3年間程度の経験のみでは新規進出企業から評価されず採用には至らないことも現状であり、経営者ポジションの人材が採用されるケースはまだ十分多いとは言えません。転職可能年齢の上限が上がる一方、依然として転職者の中心が20代〜30代であるという状況はしばらく変わらないと考えられます。
■■インドネシア■■
レバラン(断食明け祭)などの影響で全体的に求人は減少したものの、
インフラ、建設業では採用に積極的
【求人数】
対前年四半期比 88%
対前四半期比 93%
JAC Recruitment インドネシア法人社長 小林 千絵
インドネシアのジョコ・ウィドド大統領の任期最後の年であり、実績を残すためにさまざまな改革が急ピッチで行われています。地方の開発も課題ですが、各地の空港で改良目的の整備が進められています。8月にジャカルタでアジア競技大会が開催されることもあり、ジャカルタ市内では道路や歩道の工事、競技会場の改築などの工事が行われています。インドネシアは4,000を超える法令があると言われ、外資系企業の進出や業務拡大にも各省庁への申請などのプロセスに時間を要していましたが、6月末にすべて手続きをオンライン化し簡素化するという新規定を出しました。書面で申請中の案件をすべて保留し、その準備に入ったことを早急すぎるという声もありますが、一方で評価する声もあがっています。
ルピア安が続き、企業やビジネスの現場ではさまざまな調整を迫られていますが、政府のスピーディな動きによる景気の回復が期待されています。
【企業の採用動向】
毎年6〜7月は国民の約90%の宗教であるイスラム教のラマダン(断食)、レラバン(断食明け祭)期間であり、毎年、求人と転職希望者は減少し採用・転職活動は鈍化します。今年は、レバラン期の政府発令の一斉休暇奨励日も長めで、例年より鈍化期間が長引きました。一方で、日系や外資系はインフラ関係、建設業、また人口2億6千万人の消費市場をターゲットにした消費者関連ビジネスを中心に、引き続き積極的な動きが見られました。
【求職者の動向】
インドネシアは国是である建国5原則の「パンチャシラ」により複数の宗教が認められていますが、国民の90%近くがムスリムであり、今年は6月に断食期間1か月、そのあとにレバランという断食明けの大祭があり、ムスリムは家族と過ごす休暇期間に入ります。インドネシアのホリデーシーズンと、休暇日数が長くなったことで第2四半期の求職者数も減少しました。全体感としては各業界は拡大基調にあり、市場では変わらず売り手市場が続いています。日系企業の市場においては日本国内での人材不足の影響もあり現地採用の日本人ポジション、また駐在員の代わりとなる優秀なローカル人材を求める声も目立ちます。
■■ベトナム■■
好調な経済成長にともない、労働市場も活況な状況に
【求人数】
対前年四半期比 308%
対前四半期比 78%
JAC Recruitment ベトナム法人 ディレクター Le Thuy Dieu Uyen(レー・トゥイ・ユー・ウィン)
ベトナム統計総局の発表によると、2018年上半期の国内総生産(GDP)実質成長率(推定値)は7.08%増となりました。第1四半期の成長率は7.45%増に比べ第2四半期は6.79%とやや鈍化したものの、上半期では2011年以降最高値を記録しました。産業別のGDPは、農林水産業が3.93%増加、鉱工業・建設業が9.07%増加、サービス業が6.9%増加しました。成長が著しかった鉱工業・建設業の中でも、製造業は13.0%増加し、過去7年間で最も高い伸びとなりました。サービス業も過去最高値となり、卸売業と小売業は8.21%増(昨年同期比)と成長に貢献しました。なお、財政関連の銀行や保険業は7.58%増、ホテルと飲食業は7.02%増、運送倉庫業は7.67%増、不動産業は4.12%増となりました。
【企業の採用動向】
第2四半期はIT業界の採用活動が活発でした。特にICTや金融業界はベトナムの最新トレンドで、金融ビジネスを変える「FinTech(フィンテック)」、人工知能(AI)やロボット技術、仮想通貨(ブロックチェーン)などのCOO、CPO、CTOといった経営幹部人材やエンジニアなど、IT開発関連の求人が増加しています。
また、ベトナムでFC展開を行っているローカルのブランド企業と、現地でマーケットの拡大を狙い投資を増加させている外資系ブランドとの競争が激化しており、双方とも経営規模の拡大を目指し積極的な事業展開を行っていることから、店舗の開設や運営など担える不動産関連人材向けの求人も増えています。さらに、高層ビル、高級マンション、住宅の建設を急速に展開している国内の大手都市開発会社から、建設・建築関連の求人も増えています。
【求職者の動向】
第2四半期は年間決算の業務を終えた経理や監査、その他バックオフィス関連の経験を持つ転職希望者による登録が増加しました。また、上記の「企業の採用動向」で述べた動向に加え、期間限定のプロジェクトなどの求人増の影響で、IT関連、商品開発、マーケティング、企画、輸出入など専門性をアピールできる経歴を持つ方々が通常よりも高い給与や福利厚生などの好条件を求め活動を行っている傾向があります。引き続き企業も転職希望者も活発に活動を行うことが予想されるため、第3四半期の転職市場は活性化することが予想されます。
■■中国(上海・広州)■■
第1四半期に引き続き企業の採用意欲が高く、前年同期比、前期比共に増加
【求人数】
対前年四半期比 131%
対前四半期比 116%
JAC Recruitment 中国法人社長 蓮子 哲也
7月、中国国家統計局は中国の2018年4月〜6月の国内総生産(GDP)の実質成長率を6.7%とし、若干減速傾向にあると発表しました。アメリカとの貿易摩擦の影響や、スマートフォン向けの電子機器への設備投資が落ち着きをみせた中、IT、AI(人工知能)や半導体などのハイテク関連、自動車領域は依然好調です。昨年から広東省政府は外国人の就業関連の方針を頻繁に発表しており、高度な専門知識、技術を有する人材の就業支援を強化していく方針です。その反面、職能レベルが一般よりも低い外国人の就業許可の取得が困難になることが懸念されており、外国人への優遇面で差が出てくることが考えられます。
【企業の採用動向】
ハイテク関連、ITサービス、設備、ロボットや、自動車関連企業の採用意欲が依然高い状態が続いています。特に半導体関連の人材は40万人も不足しているともいわれており、新卒時から高額の初任給で優秀な学生を採用する企業が増えています。ZTE社が通信機器の不正輸出で米国から制裁を受けたケースもあり、中国政府は半導体IC、チップ領域への投資を加速させ国内開発を進めています。それに伴い、日系の関連企業からの求人も増加傾向です。この領域に限っては募集時の給与も高額になり、人材採用の競争が激しくなっています。
今年、広州市も「IAB(次世代IT、AI、バイオ医薬)」産業の発展を加速する目的で5カ年行動計画を発表。AIを活用したコネクテッドカーや社会インフラレベルまで世界レベルの技術を持つ企業が研究開発を加速させています。
【求職者の動向】
転職マーケットは中国人、日本人を問わず活況です。引き続き、優秀な人材には複数の企業からオファーが来る「売り手市場」が続いています。中国南方人材市場が発表した華南地区の就職活動動向調査リポートによると、金融業の就職がトップとなり、平均月収は1万1375元(約20万円)となりました。華南は製造のイメージが強いですが、今後は金融、ITサービスへのキャリアへの転換も進んでくることが予想されます。
■■香港■■
第2四半期は活況だった春節(旧正月)以降の活況な状態から落ち着きを見せる
【求人数】
対前年四半期比 99%
対前四半期比 117%
JAC Recruitment 香港法人社長 蓮子 哲也
現在、香港では広東省の9都市に香港とマカオを加えた11都市で構成される一大経済圏構想のビックベイエリア構想が注目されています。中国大陸と香港を結ぶ鉄道も整備が進み、香港〜マカオ〜珠海を結ぶ海上橋もかかり、開通が目前に迫っています。香港証券取引所に上場する6割の企業は中国企業で、引き続き高騰する不動産価格も中国大陸からの資金流入の影響が大きいと言われており、今後この構想が進むにつれてその影響度はますます高まると考えられており、香港経済が今後どのように変化していくのか動向が注目されています。
【企業の採用動向】
例年通り、春節明けに企業が活発だった状態から若干停滞し、日系企業の求人依頼は一定の落ち着きを見せました。各日系企業からの求人動向は業界や企業によってさまざまで、新規事業立ち上げにともなう採用目的、香港から海外マーケット拡大目的の現地マネージャークラスの採用や、現地化の促進目的に将来の幹部候補の採用、一定数の欠員補充での採用など、それぞれ状況に応じた判断に応じた採用が行われている状況です。
各金融機関では第2四半期にボーナスの支給を行った企業が多く、ボーナス支給後に退職した社員の欠員補充目的での採用が多く行われました。また、外資系IT企業による香港勤務や日系企業の現地立ち上げによる日本人の採用ニーズが増加しています。しかし、日本国内の採用市場の活況のあおりを受け、以前よりも高い給与のオファーを提示しないと採用ができない、もしくは予算の問題から採用を見直す事例も出ています。
【求職者の動向】
こちらも企業の動向と同様に、例年通り春節明けの第1四半期に積極的に転職活動を行っていた求職者が一巡して登録は前期比で若干減少しました。日系企業への転職希望者は若年層の方が多い状況に変わりありませんが、将来を見据えた転職を希望するミドル人材の転職希望者も増加傾向にあります。また、企業が部門の一部を中国本土へ移管する事になり、継続して香港で働くために転職を検討される方も増えています。また今年は例年に比べ、求職者が転職時に希望する給与上昇比率が昨年より高くなっている傾向にあります。
■■韓国■■
半導体関連企業が好調
日本企業が日本で勤務できる韓国人技術者を採用する動きも
【求人数】
対前年四半期比 121%
対前四半期比 90%
JAC Recruitment 韓国法人社長 土山 雄一郎
韓国では7月1日から週52時間労働制が開始されました。これは文在寅政権の雇用政策の柱の一つであり、雇用創出及びワークライフバランスの向上を目指す目的です。また、先月の「統一地方選と国会議員補欠・再選挙」は与党圧勝となり、議席数を伸ばしたことで今まで以上に国政基盤が安定する見込みです。ただし、統計庁によると5月失業率は4.0%と悪化しており、特に若年層の失業率は10.5%と非常に厳しい結果となり、国民(特に若い世代)から改善が求められています。
【企業の採用動向】
第2四半期の求人状況は対前期比で10%減となりましたが、対前年対比では21%増となりました。前四半期に比べ企業の採用活動は一段落しましたが、好調な半導体の輸出により装置メーカーや部品メーカーから一定の求人依頼を受けています。また昨今の日本国内の人手不足により、日本企業が日本の本社で勤務できる韓国人技術者の採用を検討する企業が見うけられます。但し、高い日本語力が必要とされるため、現時点では応募者は決して多くありません。これらの製造業に比べ、国内の消費者マーケットを意識した他業種の企業からの求人は引き続きあまり増えていない状況です。
【求職者の動向】
前四半期と比較して求職者の動向に大きな変化はありませんでした。韓国では継続して、日本語が堪能で特定の業界経歴を持つ人材の採用は難しい状況で、景気が低迷している影響か、転職を考える人材が減少している状況です。一方で、大学を卒業したばかりで、特定の経歴を持たない若年層は経歴を持つ人材に比べると相対的に多く、ポテンシャルで採用されるケースが増えています。また、転職希望者の多くは給与や福利厚生に加え会社の安定性を重視するため、従業員が少ない小規模の在韓日系企業は採用プロセスで会社の安定性を伝えることが必要です。
■■インド■■
高額紙幣廃止やGST(物品・サービス税)導入の影響が薄れ始める
【求人数】
対前年四半期比 140%
対前四半期比 83%
JAC Recruitment インド法人社長 筧 裕樹
2016年11月に実施された高額紙幣の廃止や、2017年7月のGST(物品・サービス税)の導入により経済の先行きに不透明感が増したことが影響し2017年にインド経済は一時停滞しましたが、その影響も徐々に薄れ、直近の2017年度第4四半期(2018年1〜3月)のGDPは7.7%成長と順調に回復しています。2018年においてはさらなる景気回復を見込んでおり、GDPは7.0〜7.5%と予測されており、2015年(7.6%)、2016年(7.1%)と同水準に戻る見込みです。
【企業の採用動向】
日本人向けの求人については増員目的での依頼は少なく、数年ほど勤務した人材の退職に伴う欠員補充により人材ニーズが増加し、特に5月〜6月では前四半期比で約3割ほど増加しました。
一方で、インド人向けの求人については毎年この時期は給与の改定を行うため、給与に納得いかなかった社員が退職することで、それに伴う欠員補充の採用ニーズが出ますが、今年はさほど企業は活発ではなくホワイトカラーの市場としては落ち着いている状況です。当社では通常インド人向けの求人の方が割合が多く、上記の通り第2四半期は日本人向けの求人は増加しましたがインド人向けの求人が減少したことにより、前期比では減少となりました。
【求職者の動向】
日本人候補者の登録は横ばいの状態で、引き続き他国での転職目的を含む併願が多いです。最近では女性の候補者が増えてきており、従来4:6で女性の方が多かった状況から直近では3:7まで上昇しています。これにより男性向けの営業ポジションなどで人材を紹介できる機会が少ないことから、男性の転職希望者が優位な状態となっています。
インド人候補者は案件次第で転職するため、通年の求人数は増加し高水準で安定しています。企業の採用動向で述べた通り、通常であれば給与改定に伴い転職を考える候補者が多い時期ですが、今年に関してはその影響はあまり大きくは出ておりません。
■■日本■■
足元の景気は堅調、高度な専門人材は獲得競争が一層熾烈に
【求人数】(日本企業の海外事業関連求人)
対前年四半期比 112%
対前四半期比 119%
JAC Recruitment(日本) 海外進出支援室 室長 佐原 賢治
厚労省が発表した5月の有効求人倍率(季節調整値)は1.60倍と、依然として1990年以降の最高水準で高止まりしています。株式市場は米中の貿易摩擦や新興国リスクを嫌気し弱含みですが、2018年3月期は最高益を更新した企業が相次ぐなど足元の景気は堅調です。特に、FA(Factory Automation、工場の生産工程の自動化を図るシステム)機器やロボットを中心とした機械、ASEANでの市場が回復基調にある自動車関連で好調な企業が目立ちます。一方、米中問題に加え、アップル社によるスマートフォンの減産や、中国における建機需要の減退などから、2019年3月期の業績見通しには保守的な企業も目立ちます。
【企業の採用動向】
海外事業要員採用の募集が最も伸びているのは化学、建設、物流などの業界です。また、製造業各社の積極的なIT投資にともない、IT系人材の募集も増加しています。化学業界においては、主にアジア新興国において開発営業を行うことができる理系人材がひっ迫しています。また建設業界では、メコン地域やインド、中東などで大規模なインフラ工事が増加していることなどから、各社の人材募集は難航しています。物流については、工場の増設や事業エリアの拡大に伴う製造物流の見直しに加え、消費市場の拡大に伴う商品物流の拡大を背景に、国際物流の即戦力人材が市場で枯渇しています。
【求職者の動向】
空前の“売り手市場”が続く中、新規登録数こそ増加しているものの、転職希望者の会社選びは一層慎重です。好業績に伴い今夏のボーナスに対する期待感も大きく、「年収ダウン」を伴う転職は敬遠されます。よって、大企業に比べて給与水準が低い中堅・中小企業や、都市部の優秀な人材の採用を希望する地方企業には不利な状況が続いています。
また、上述の化学・建設・物流・ITなどの業界で求められている人材は、元来中途採用市場に現れ難い人材であり、特定の人材に複数の企業の内定が集中する傾向にあることから、採用時給与条件も上昇傾向にあります。
(※1) 自社調べ (アジアで人材紹介事業を展開する同業他社の売上規模を比較)
※各国の求人数の増減については、その国々の景況感による変動や各国が講じた戦略(高額帯年収の求人やスペシャリスト層求人に特化など)により、意図的に減る場合もございます。そのため、求人数の増減は直接各国の業績に結び付くものではありません。
◆株式会社ジェイ エイ シー リクルートメントについて◆
1988年設立。人材紹介専業の東証一部上場企業であり、企業と人材を一人のコンサルタントが同時に担当する「両面型」スタイルの人材紹介会社としては国内最大の規模です。国際ビジネス経験をもつ人材の紹介を強みとしており、外資系企業、日系企業の海外事業を中心とするグローバル領域の売上が全体の50%以上を占めています。海外においては、2018年3月に英国およびアジア8ヵ国で人材紹介業を展開するJAC Recruitment Asia Ltdを統合し、現在世界10ヵ国、26拠点で人材紹介サービスを展開しています。
日本 :[URL] http://corp.jac-recruitment.jp (コーポレートサイト)
http://www.jac-recruitment.jp (転職サイト)
アジア:[URL] http://www.jac-recruitmentasia.com/
※ 以下リンクより、より読みやすいPDF版のプレスリリースをご参照ください。
https://www.atpress.ne.jp/releases/162296/att_162296_1.pdf
【サマリー】
・第1四半期に全体的に増加した求人が、第2四半期になり一服した国々と好調な国々と、二分した結果に
・中国ではハイテク関連、半導体関連などの求人増により対前期比116%、対前年四半期比131%
・韓国では半導体の輸出により関連の求人依頼が増加し、対前年四半期比で121%
・ベトナムではFinTech、AI(人工知能)など、IT関連の求人依頼が増加し対前年四半期比で308%
■■マレーシア■■
前期比で増加した第1四半期の反動で第2四半期の求人は減少したものの、
高度人材やマネジメント人材のニーズは引き続き底堅い動きが続く
【求人数】
対前年四半期比 88%
対前四半期比 88%
JAC Recruitment マレーシア法人社長 大西 信彰
5月9日に実施されたマレーシア議会下院選挙(定数222)は、マハティール元首相が率いる野党連合が過半数を超える113議席を獲得し、1957年の独立以来初の政権交代が実現。政権発足後、GST(物品・サービス税)の撤廃、大型インフラ事業の計画見直しなど10の公約を着実に実行しています。6月にVistage-MIER(マレーシア経済研究所) が発表したCEO Confidence Index(経済動向信頼感指数-CEO回答数は614)によると、第2四半期は106.9ポイントとなり2017年第2四半期の89.6と較べ17.3ポイント増加と、楽観視していることが伺えます。(DI指数に100を加えた指数)
【企業の採用動向】
・第2四半期の企業求人状況は、前期比大幅に増加した第1四半期の反動もあり、12%減、前年同期比でも同じく12%減となりました。ただし、化学、電子、医療機器、EMS(電子機器受託製造)などの業界で、立ち上げや生産拡張に必要な人事・総務系、製造に関わる生産管理、品質保証、研究開発などの職種への需要は引き続き高い状態です。前年同期比で見ると日系は-27%、一方で外資は+19%、地場は-11%となっています。
・SSC/BPO業界の求人は引き続き活況で、SNSのコンテンツチェックや航空会社のチケット発行業務などの求人依頼も受けています。また従来の経理系人材に加え、臨床関係のアナリストといったスペシャリストの求人も出ています。また、通常通り、多言語人材のニーズは堅調に推移しています。
・製造業の求人は全体的に減少しましたが、最近ではデジタルマーケティング業界の求人が相次いでいるのは特徴的です。
・基本給7千リンギット以上のマネジャークラスの求人で見ると、前年同期比で10%増加しました。求人数に占める割合も前年同期の27.5%に対して第2四半期は34.4%となっており、企業側の高度人材、マネジメント人材への要求が増加していることが伺えます。
【求職者の動向】
登録者数でみると、第2四半期は前期比で横ばいながら、前年同期比では13%増加しました。2015年以降の同四半期と比較しても最も多くなっています。
日系企業を中心に日本人人材への要望は技術系・営業系共に底堅いものの、登録者数は前期比で-5%となりました。前年同期比では27%と大きく伸びてはいるものの、このところ当地で最終的に内定を出した段階で、日本の現職の企業から強い引き留め(カウンターオファー)を受け、成約に至らないケースが増えています。採用する企業はこれまで以上に弾力的な報酬の呈示、もしくは現地採用ではなく日本本社採用に切り替えるなどの措置が必要になっています。
■■シンガポール■■
シンガポールにおける実質経済成長率が増加
雇用は現地のローカル人材を優先する傾向に
【求人数】
対前年四半期比 99%
対前四半期比 91%
JAC Recruitment シンガポール法人社長 早瀬 恭
シンガポールの政労使の代表で構成される全国賃金評議会(National Wages Council)が5月末に発表され、シンガポールにおける実質経済成長率は2017年実績3.6%(予測1-3%)で2016年の2.4%よりも増加し、2018年予測は2.5%〜3.5%となりました。消費者物価指数(CPI)は2017年0.6%(予測:0.5-1.5%)と2016年まで2年続いたマイナスから脱却。2018年の予測は0%〜1%で実質賃金、生産性ともに増加しています。
賃金評議会のガイドラインでは、引き続き低賃金所得者へのベースアップ($1,200以下のスタッフへの賃上げ実施)、高齢者雇用促進(一定の条件を満たした採用を行った場合の補助金制度延長)をしつつ、今年から、仕事に復帰する女性への雇用促進(フレキシブルな労働条件の導入、家庭に優しい職場環境整備)を図る項目が追加されました。
【企業の採用動向】
例年シンガポールでは第2四半期が最も求人が多くなる時期ですが、昨年同様今年も第1四半期と比べ求人数に変化はなく、伸びは見られませんでした。日系企業では引き続き外国人就労ビザの厳格化の影響を受け現地のローカル人材を優先して採用する傾向があり、特に人事や経理などの管理業務領域において顕著でした。日本人向け求人に関しては求人数はやや減少したものの、スペシャリストや管理職の求人依頼は引き続き受けています。またシンガポールではアジア地域の統括拠点とする企業が多いため、シンガポール以外の地域への海外グローバル採用の依頼も増加しています。
【求職者の動向】
シンガポール人および就労ビザ取得の必要が無い永住権保持者、配偶者ビザ保持者への高い需要は続いており、これらの人材による売り手市場となっています。
就労ビザ発行の必要の無い人材の留保のため各企業が対策を講じる中、特にシンガポール人においては転職先企業から内定を受けた後、現職企業に退職交渉を行った際に現職企業から引き留め(カウンターオファー)を受け、現職にとどまる決断をしたというケースが増加しています。
■■タイ■■
第2四半期は景況感が改善。採用動向は横ばいだが堅調な状況
引き続き売り手市場が続く
【求人数】
対前年四半期比 85%
対前四半期比 93%
JAC Recruitment タイランド法人社長 山下 勝弘
新車の販売台数が直近のピークであった2012〜13年の水準に戻りつつあり、タイでは多くの日系企業が影響を受ける景況感の指標が概ね改善傾向で、近年の中では好調な景況感であると言えます。また、政治面では来年にクーデター後の再民主化を控え、さらなる景況感の改善が期待されるものの、一方で計画通りには物事が進まないことも多く先行きは不透明な状態です。
【企業の採用動向】
日系企業の進出の歴史が長いタイでは大手のみならず中小企業の進出も進んでいますが、タイ現地法人トップの後任候補が日本の本社在籍の社員から見つけられないという課題を抱える企業が少なくありません。
このため、中途採用での現地法人トップのポジションの依頼を受けるケースも徐々に増えており、転職者と企業の双方に駐在員と現地採用の差という固定観念が薄れつつあります。しかし、日系企業の現地法人のトップのポジションの大多数は日本人が占めており、完全な現地化という意味では現地ローカル人材を現地のトップに就任させる欧米系の企業とは異なる方向に進んでいます。
【求職者の動向】
経営トップ人材を求める企業の採用動向が増加傾向であることから、50代〜60代の経営経験を持つ人材の転職の機会が増えています。しかし、現地法人立ち上げの経験がなく、前任から現地法人社長のポジションを引き継いだ3年間程度の経験のみでは新規進出企業から評価されず採用には至らないことも現状であり、経営者ポジションの人材が採用されるケースはまだ十分多いとは言えません。転職可能年齢の上限が上がる一方、依然として転職者の中心が20代〜30代であるという状況はしばらく変わらないと考えられます。
■■インドネシア■■
レバラン(断食明け祭)などの影響で全体的に求人は減少したものの、
インフラ、建設業では採用に積極的
【求人数】
対前年四半期比 88%
対前四半期比 93%
JAC Recruitment インドネシア法人社長 小林 千絵
インドネシアのジョコ・ウィドド大統領の任期最後の年であり、実績を残すためにさまざまな改革が急ピッチで行われています。地方の開発も課題ですが、各地の空港で改良目的の整備が進められています。8月にジャカルタでアジア競技大会が開催されることもあり、ジャカルタ市内では道路や歩道の工事、競技会場の改築などの工事が行われています。インドネシアは4,000を超える法令があると言われ、外資系企業の進出や業務拡大にも各省庁への申請などのプロセスに時間を要していましたが、6月末にすべて手続きをオンライン化し簡素化するという新規定を出しました。書面で申請中の案件をすべて保留し、その準備に入ったことを早急すぎるという声もありますが、一方で評価する声もあがっています。
ルピア安が続き、企業やビジネスの現場ではさまざまな調整を迫られていますが、政府のスピーディな動きによる景気の回復が期待されています。
【企業の採用動向】
毎年6〜7月は国民の約90%の宗教であるイスラム教のラマダン(断食)、レラバン(断食明け祭)期間であり、毎年、求人と転職希望者は減少し採用・転職活動は鈍化します。今年は、レバラン期の政府発令の一斉休暇奨励日も長めで、例年より鈍化期間が長引きました。一方で、日系や外資系はインフラ関係、建設業、また人口2億6千万人の消費市場をターゲットにした消費者関連ビジネスを中心に、引き続き積極的な動きが見られました。
【求職者の動向】
インドネシアは国是である建国5原則の「パンチャシラ」により複数の宗教が認められていますが、国民の90%近くがムスリムであり、今年は6月に断食期間1か月、そのあとにレバランという断食明けの大祭があり、ムスリムは家族と過ごす休暇期間に入ります。インドネシアのホリデーシーズンと、休暇日数が長くなったことで第2四半期の求職者数も減少しました。全体感としては各業界は拡大基調にあり、市場では変わらず売り手市場が続いています。日系企業の市場においては日本国内での人材不足の影響もあり現地採用の日本人ポジション、また駐在員の代わりとなる優秀なローカル人材を求める声も目立ちます。
■■ベトナム■■
好調な経済成長にともない、労働市場も活況な状況に
【求人数】
対前年四半期比 308%
対前四半期比 78%
JAC Recruitment ベトナム法人 ディレクター Le Thuy Dieu Uyen(レー・トゥイ・ユー・ウィン)
ベトナム統計総局の発表によると、2018年上半期の国内総生産(GDP)実質成長率(推定値)は7.08%増となりました。第1四半期の成長率は7.45%増に比べ第2四半期は6.79%とやや鈍化したものの、上半期では2011年以降最高値を記録しました。産業別のGDPは、農林水産業が3.93%増加、鉱工業・建設業が9.07%増加、サービス業が6.9%増加しました。成長が著しかった鉱工業・建設業の中でも、製造業は13.0%増加し、過去7年間で最も高い伸びとなりました。サービス業も過去最高値となり、卸売業と小売業は8.21%増(昨年同期比)と成長に貢献しました。なお、財政関連の銀行や保険業は7.58%増、ホテルと飲食業は7.02%増、運送倉庫業は7.67%増、不動産業は4.12%増となりました。
【企業の採用動向】
第2四半期はIT業界の採用活動が活発でした。特にICTや金融業界はベトナムの最新トレンドで、金融ビジネスを変える「FinTech(フィンテック)」、人工知能(AI)やロボット技術、仮想通貨(ブロックチェーン)などのCOO、CPO、CTOといった経営幹部人材やエンジニアなど、IT開発関連の求人が増加しています。
また、ベトナムでFC展開を行っているローカルのブランド企業と、現地でマーケットの拡大を狙い投資を増加させている外資系ブランドとの競争が激化しており、双方とも経営規模の拡大を目指し積極的な事業展開を行っていることから、店舗の開設や運営など担える不動産関連人材向けの求人も増えています。さらに、高層ビル、高級マンション、住宅の建設を急速に展開している国内の大手都市開発会社から、建設・建築関連の求人も増えています。
【求職者の動向】
第2四半期は年間決算の業務を終えた経理や監査、その他バックオフィス関連の経験を持つ転職希望者による登録が増加しました。また、上記の「企業の採用動向」で述べた動向に加え、期間限定のプロジェクトなどの求人増の影響で、IT関連、商品開発、マーケティング、企画、輸出入など専門性をアピールできる経歴を持つ方々が通常よりも高い給与や福利厚生などの好条件を求め活動を行っている傾向があります。引き続き企業も転職希望者も活発に活動を行うことが予想されるため、第3四半期の転職市場は活性化することが予想されます。
■■中国(上海・広州)■■
第1四半期に引き続き企業の採用意欲が高く、前年同期比、前期比共に増加
【求人数】
対前年四半期比 131%
対前四半期比 116%
JAC Recruitment 中国法人社長 蓮子 哲也
7月、中国国家統計局は中国の2018年4月〜6月の国内総生産(GDP)の実質成長率を6.7%とし、若干減速傾向にあると発表しました。アメリカとの貿易摩擦の影響や、スマートフォン向けの電子機器への設備投資が落ち着きをみせた中、IT、AI(人工知能)や半導体などのハイテク関連、自動車領域は依然好調です。昨年から広東省政府は外国人の就業関連の方針を頻繁に発表しており、高度な専門知識、技術を有する人材の就業支援を強化していく方針です。その反面、職能レベルが一般よりも低い外国人の就業許可の取得が困難になることが懸念されており、外国人への優遇面で差が出てくることが考えられます。
【企業の採用動向】
ハイテク関連、ITサービス、設備、ロボットや、自動車関連企業の採用意欲が依然高い状態が続いています。特に半導体関連の人材は40万人も不足しているともいわれており、新卒時から高額の初任給で優秀な学生を採用する企業が増えています。ZTE社が通信機器の不正輸出で米国から制裁を受けたケースもあり、中国政府は半導体IC、チップ領域への投資を加速させ国内開発を進めています。それに伴い、日系の関連企業からの求人も増加傾向です。この領域に限っては募集時の給与も高額になり、人材採用の競争が激しくなっています。
今年、広州市も「IAB(次世代IT、AI、バイオ医薬)」産業の発展を加速する目的で5カ年行動計画を発表。AIを活用したコネクテッドカーや社会インフラレベルまで世界レベルの技術を持つ企業が研究開発を加速させています。
【求職者の動向】
転職マーケットは中国人、日本人を問わず活況です。引き続き、優秀な人材には複数の企業からオファーが来る「売り手市場」が続いています。中国南方人材市場が発表した華南地区の就職活動動向調査リポートによると、金融業の就職がトップとなり、平均月収は1万1375元(約20万円)となりました。華南は製造のイメージが強いですが、今後は金融、ITサービスへのキャリアへの転換も進んでくることが予想されます。
■■香港■■
第2四半期は活況だった春節(旧正月)以降の活況な状態から落ち着きを見せる
【求人数】
対前年四半期比 99%
対前四半期比 117%
JAC Recruitment 香港法人社長 蓮子 哲也
現在、香港では広東省の9都市に香港とマカオを加えた11都市で構成される一大経済圏構想のビックベイエリア構想が注目されています。中国大陸と香港を結ぶ鉄道も整備が進み、香港〜マカオ〜珠海を結ぶ海上橋もかかり、開通が目前に迫っています。香港証券取引所に上場する6割の企業は中国企業で、引き続き高騰する不動産価格も中国大陸からの資金流入の影響が大きいと言われており、今後この構想が進むにつれてその影響度はますます高まると考えられており、香港経済が今後どのように変化していくのか動向が注目されています。
【企業の採用動向】
例年通り、春節明けに企業が活発だった状態から若干停滞し、日系企業の求人依頼は一定の落ち着きを見せました。各日系企業からの求人動向は業界や企業によってさまざまで、新規事業立ち上げにともなう採用目的、香港から海外マーケット拡大目的の現地マネージャークラスの採用や、現地化の促進目的に将来の幹部候補の採用、一定数の欠員補充での採用など、それぞれ状況に応じた判断に応じた採用が行われている状況です。
各金融機関では第2四半期にボーナスの支給を行った企業が多く、ボーナス支給後に退職した社員の欠員補充目的での採用が多く行われました。また、外資系IT企業による香港勤務や日系企業の現地立ち上げによる日本人の採用ニーズが増加しています。しかし、日本国内の採用市場の活況のあおりを受け、以前よりも高い給与のオファーを提示しないと採用ができない、もしくは予算の問題から採用を見直す事例も出ています。
【求職者の動向】
こちらも企業の動向と同様に、例年通り春節明けの第1四半期に積極的に転職活動を行っていた求職者が一巡して登録は前期比で若干減少しました。日系企業への転職希望者は若年層の方が多い状況に変わりありませんが、将来を見据えた転職を希望するミドル人材の転職希望者も増加傾向にあります。また、企業が部門の一部を中国本土へ移管する事になり、継続して香港で働くために転職を検討される方も増えています。また今年は例年に比べ、求職者が転職時に希望する給与上昇比率が昨年より高くなっている傾向にあります。
■■韓国■■
半導体関連企業が好調
日本企業が日本で勤務できる韓国人技術者を採用する動きも
【求人数】
対前年四半期比 121%
対前四半期比 90%
JAC Recruitment 韓国法人社長 土山 雄一郎
韓国では7月1日から週52時間労働制が開始されました。これは文在寅政権の雇用政策の柱の一つであり、雇用創出及びワークライフバランスの向上を目指す目的です。また、先月の「統一地方選と国会議員補欠・再選挙」は与党圧勝となり、議席数を伸ばしたことで今まで以上に国政基盤が安定する見込みです。ただし、統計庁によると5月失業率は4.0%と悪化しており、特に若年層の失業率は10.5%と非常に厳しい結果となり、国民(特に若い世代)から改善が求められています。
【企業の採用動向】
第2四半期の求人状況は対前期比で10%減となりましたが、対前年対比では21%増となりました。前四半期に比べ企業の採用活動は一段落しましたが、好調な半導体の輸出により装置メーカーや部品メーカーから一定の求人依頼を受けています。また昨今の日本国内の人手不足により、日本企業が日本の本社で勤務できる韓国人技術者の採用を検討する企業が見うけられます。但し、高い日本語力が必要とされるため、現時点では応募者は決して多くありません。これらの製造業に比べ、国内の消費者マーケットを意識した他業種の企業からの求人は引き続きあまり増えていない状況です。
【求職者の動向】
前四半期と比較して求職者の動向に大きな変化はありませんでした。韓国では継続して、日本語が堪能で特定の業界経歴を持つ人材の採用は難しい状況で、景気が低迷している影響か、転職を考える人材が減少している状況です。一方で、大学を卒業したばかりで、特定の経歴を持たない若年層は経歴を持つ人材に比べると相対的に多く、ポテンシャルで採用されるケースが増えています。また、転職希望者の多くは給与や福利厚生に加え会社の安定性を重視するため、従業員が少ない小規模の在韓日系企業は採用プロセスで会社の安定性を伝えることが必要です。
■■インド■■
高額紙幣廃止やGST(物品・サービス税)導入の影響が薄れ始める
【求人数】
対前年四半期比 140%
対前四半期比 83%
JAC Recruitment インド法人社長 筧 裕樹
2016年11月に実施された高額紙幣の廃止や、2017年7月のGST(物品・サービス税)の導入により経済の先行きに不透明感が増したことが影響し2017年にインド経済は一時停滞しましたが、その影響も徐々に薄れ、直近の2017年度第4四半期(2018年1〜3月)のGDPは7.7%成長と順調に回復しています。2018年においてはさらなる景気回復を見込んでおり、GDPは7.0〜7.5%と予測されており、2015年(7.6%)、2016年(7.1%)と同水準に戻る見込みです。
【企業の採用動向】
日本人向けの求人については増員目的での依頼は少なく、数年ほど勤務した人材の退職に伴う欠員補充により人材ニーズが増加し、特に5月〜6月では前四半期比で約3割ほど増加しました。
一方で、インド人向けの求人については毎年この時期は給与の改定を行うため、給与に納得いかなかった社員が退職することで、それに伴う欠員補充の採用ニーズが出ますが、今年はさほど企業は活発ではなくホワイトカラーの市場としては落ち着いている状況です。当社では通常インド人向けの求人の方が割合が多く、上記の通り第2四半期は日本人向けの求人は増加しましたがインド人向けの求人が減少したことにより、前期比では減少となりました。
【求職者の動向】
日本人候補者の登録は横ばいの状態で、引き続き他国での転職目的を含む併願が多いです。最近では女性の候補者が増えてきており、従来4:6で女性の方が多かった状況から直近では3:7まで上昇しています。これにより男性向けの営業ポジションなどで人材を紹介できる機会が少ないことから、男性の転職希望者が優位な状態となっています。
インド人候補者は案件次第で転職するため、通年の求人数は増加し高水準で安定しています。企業の採用動向で述べた通り、通常であれば給与改定に伴い転職を考える候補者が多い時期ですが、今年に関してはその影響はあまり大きくは出ておりません。
■■日本■■
足元の景気は堅調、高度な専門人材は獲得競争が一層熾烈に
【求人数】(日本企業の海外事業関連求人)
対前年四半期比 112%
対前四半期比 119%
JAC Recruitment(日本) 海外進出支援室 室長 佐原 賢治
厚労省が発表した5月の有効求人倍率(季節調整値)は1.60倍と、依然として1990年以降の最高水準で高止まりしています。株式市場は米中の貿易摩擦や新興国リスクを嫌気し弱含みですが、2018年3月期は最高益を更新した企業が相次ぐなど足元の景気は堅調です。特に、FA(Factory Automation、工場の生産工程の自動化を図るシステム)機器やロボットを中心とした機械、ASEANでの市場が回復基調にある自動車関連で好調な企業が目立ちます。一方、米中問題に加え、アップル社によるスマートフォンの減産や、中国における建機需要の減退などから、2019年3月期の業績見通しには保守的な企業も目立ちます。
【企業の採用動向】
海外事業要員採用の募集が最も伸びているのは化学、建設、物流などの業界です。また、製造業各社の積極的なIT投資にともない、IT系人材の募集も増加しています。化学業界においては、主にアジア新興国において開発営業を行うことができる理系人材がひっ迫しています。また建設業界では、メコン地域やインド、中東などで大規模なインフラ工事が増加していることなどから、各社の人材募集は難航しています。物流については、工場の増設や事業エリアの拡大に伴う製造物流の見直しに加え、消費市場の拡大に伴う商品物流の拡大を背景に、国際物流の即戦力人材が市場で枯渇しています。
【求職者の動向】
空前の“売り手市場”が続く中、新規登録数こそ増加しているものの、転職希望者の会社選びは一層慎重です。好業績に伴い今夏のボーナスに対する期待感も大きく、「年収ダウン」を伴う転職は敬遠されます。よって、大企業に比べて給与水準が低い中堅・中小企業や、都市部の優秀な人材の採用を希望する地方企業には不利な状況が続いています。
また、上述の化学・建設・物流・ITなどの業界で求められている人材は、元来中途採用市場に現れ難い人材であり、特定の人材に複数の企業の内定が集中する傾向にあることから、採用時給与条件も上昇傾向にあります。
(※1) 自社調べ (アジアで人材紹介事業を展開する同業他社の売上規模を比較)
※各国の求人数の増減については、その国々の景況感による変動や各国が講じた戦略(高額帯年収の求人やスペシャリスト層求人に特化など)により、意図的に減る場合もございます。そのため、求人数の増減は直接各国の業績に結び付くものではありません。
◆株式会社ジェイ エイ シー リクルートメントについて◆
1988年設立。人材紹介専業の東証一部上場企業であり、企業と人材を一人のコンサルタントが同時に担当する「両面型」スタイルの人材紹介会社としては国内最大の規模です。国際ビジネス経験をもつ人材の紹介を強みとしており、外資系企業、日系企業の海外事業を中心とするグローバル領域の売上が全体の50%以上を占めています。海外においては、2018年3月に英国およびアジア8ヵ国で人材紹介業を展開するJAC Recruitment Asia Ltdを統合し、現在世界10ヵ国、26拠点で人材紹介サービスを展開しています。
日本 :[URL] http://corp.jac-recruitment.jp (コーポレートサイト)
http://www.jac-recruitment.jp (転職サイト)
アジア:[URL] http://www.jac-recruitmentasia.com/