【中堅・中小企業の社長727名に訊いた事業承継に関する調査研究】後継者問題「相談相手なし」4割弱 〜事業承継成功の秘訣は“相談相手”にあり〜
[15/04/06]
提供元:@Press
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法政大学大学院 中小企業研究所(所長:坂本 光司、以下「法政大学」)とエヌエヌ生命保険株式会社(代表執行役社長:サティッシュ・バパット、以下「エヌエヌ生命」)は、2014年度、産学連携共同研究プロジェクト「中堅・中小企業の事業承継に関する調査研究」(プロジェクト主査:坂本 光司)を実施し、このたび研究結果の発表を行いました。
法政大学とエヌエヌ生命による産学連携共同研究プロジェクトは、中小企業研究において多数の著名な教授を擁する法政大学と、生命保険を通じて中小企業の経営課題に対するソリューションを提供・支援しているエヌエヌ生命が、中小企業の支援を目的に共同で研究を行っています。第6期目となる2014年度は「事業承継に関する調査研究」を実施しました。
経済産業省中小企業庁「平成25年度の中小企業の動向」の概要(※1)によると、近年休廃業や解散する中小企業の件数は増加しており、その主な要因に経営者の高齢化が挙げられています。帝国データバンク「2015年全国社長分析」によると、経営者の平均年齢は年々高齢化しており、過去最高の59.0歳になります。(※2)
経営者の高齢化に伴い、中小企業の事業承継が課題となっているようです。
(※1)「平成25年度の中小企業の動向」
http://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/140425hakusyo.html
(※2)帝国データバンク「2015年全国社長分析」
https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p150107.pdf
今回の調査では、事業承継において、後継者について考えている経営者は多い一方で、「相談相手がいない」という悩みを抱えている経営者が4割弱いることがわかりました。
■トピックス
(1) 後継者について「常に考えている」「時々考えている」中堅・中小企業の社長は7割強。
一方で後継者の人選を「まだ考えていない」社長は4割弱も。
(2) 後継者を意識するのは平均50歳。64歳で後継者にバトンタッチを予定。
後継者は「ふさわしい人物なら誰でもよい」が4割強で“脱親族トレンド”傾向に。
(3) 後継者バトンタッチに向けた課題 1位「後継者の経営能力向上」、2位「後継者の人間力向上」、3位「後継者が未定(有力者が不在)」。
(4) 事業承継成功のポイントは後継者が「明確な経営理念をもつ」約6割
(5) 事業承継の成功の鍵は「相談相手」に有り?
後継者問題、「相談相手がいない」経営者が4割弱。主流は「税理士や公認会計士」に相談。
後継者対策で求めているサービスは「的確なアドバイスをくれる機関」3割強。
(1) 後継者について「常に考えている」「時々考えている」中堅・中小企業の社長は7割強
一方で後継者の人選を「まだ考えていない」社長は4割弱も。
中堅・中小企業の社長に後継者の検討状況について聞いたところ、最も多かったのは「常に考えている」40.0%次いで「時々考えている」31.4%で、7割強の経営者が後継者について考えていることが分かった。
一方で、後継者の決定状況をみてみると、「まだ考えていない」が35.9%で最も多く、次いで「概ね絞り込んでいる」27.6%、「事業の継続を含め検討中のため決めていない」14.4%という結果になりました。後継者が「決定している」中小企業はわずか14.0%ということがわかりました。
(2) 後継者を意識するのは平均50歳。64歳で後継者にバトンタッチを予定。
後継者は「ふさわしい人物なら誰でもよい」43.7%で脱親族トレンド。
後継者を意識しはじめた年齢をみてみると、最も多かったのは「50歳〜59歳」44.5%で約半数を占めています。実際に後継者に経営権をバトンタッチする予定の社長年齢をみると、「60歳〜69歳」27.0%が最も多く、次いで「60〜64歳」23.2%となりました。
後継者の人選に関して、指名意向をみてみると、「ふさわしい人物なら誰でもよい」が43.7%で最も多く、次いで「子供」36.5%、「親族以外の役員・社員」21.0%という結果になりました。後継者の人選は親族に頼らない“脱親族トレンド”がうかがえます。
(3) 後継者バトンタッチに向けた三大課題
1位「後継者の経営能力向上」2位「後継者の人間力向上」3位「後継者が未定(有力者が不在)。
後継者バトンタッチに向けた課題について聞いたところ、最も多かったのは「経営者の経営能力向上」36.8%で、次いで「後継者の人間力向上」33.1%、「後継者が未定(有力者が不在)」32.9%という結果になりました。
また、後継者バトンタッチ時の重要事項に関しては、「従業員のために会社を存続させる」が64.6%で最も多く、次いで「身内(親族)に経営権を譲る」27.9%、「対外的な信用を維持する」27.0%となりました。
(4) 事業承継成功のポイントは後継者が「明確な経営理念をもつ」約6割
後継者バトンタッチの課題に対し、成功のポイントについて中小企業経営者にきいたところ、「後継者が明確な経営理念・戦略をもつ」が56.4%で最も多く、次いで「社内・社外の人間とよく交流を持つ」48.2%、「後継者に事業承継に強い意欲を持たせる」38.2%という結果になりました。
(5) 事業承継の成功の鍵は「相談相手」に有り?
後継者問題「相談相手がいない」経営者が4割弱。主流は「税理士や公認会計士」に相談。
後継者対策で求めているサービスは「的確なアドバイスをくれる機関」3割強。
後継者問題の相談相手に関して、2007年と2014年の調査結果を比較すると、「相談相手はいない」と回答した人が、2007年はわずか9.8%に対し、2014年は選択肢の中で最も多い36.5%という結果になりました。その他、「社内役員」を相談相手としていた人は、2007年では最も多い49.2%に対し、2014年はおよそ半数の26.7%という結果になりました。
後継者対策に関して、中小企業経営者が求めているサービスは、「的確なアドバイスをくれる機関」が32.2%で最も多く、次いで「経営者や後継者が集まる情報交換会の開催」28.1%、「後継者同士の情報交換会の開催」19.3%という結果になりました。
■法政大学大学院 中小企業研究所所長 坂本 光司教授コメント
毎年多くの中小企業が消滅しています。その大きな理由が事業承継、つまり後継者不在の問題です。
後継者がいないという理由で事業が消滅するのは大きな社会的損失です。地域のにぎわい、税収効果にマイナスだからです。一方で事業承継した途端に業績が悪化したり、内部抗争が起きたりするケースもあります。こうしたことは前経営者や後継者に問題があります。具体的には、事業承継の仕方や後継者の選択、さらには準備不足があるのです。
事業承継がスムーズに行った事例、失敗した事例を研究していますと、まずは、親族や社員以外にも、第三者や事業売却、M&Aといった多様な承継パターンがあることを認識することが大事です。そして計画的・段階的に承継を進めていくことです。後継者の育成には5〜10年かかりますので経営者の知力、気力、体力が衰えてからの承継は遅すぎます。バトンタッチのタイミングは重要なのです。
≪坂本 光司教授プロフィール≫
法政大学大学院 政策創造研究科 教授。同大学院静岡サテライトキャンパス長。NPO法人オールしずおかベストコミュニティ理事長。「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞審査 委員長。他に国・県・市町・産業支援機関の公職多数。専門は、中小企業経営論・地域経済論・福祉産業論。
【調査概要】
■調査名 :事業承継に関する調査
■調査主体 :法政大学大学院中小企業研究所・エヌエヌ生命保険株式会社
産学連携共同研究プロジェクト
■調査方法 :郵送/WEB方式
■調査実施期間:2014年7月15日〜2014年8月12日
■調査対象 :全国に所在する、従業員数が10名以上1,000名未満の中堅・
中小企業の代表取締役
【産学連携共同プロジェクト実施の背景】
法政大学は、中小企業研究において多数の著名な教授を擁しており、また、エヌエヌ生命は、生命保険を通じて中小企業の経営課題に対するソリューションを提供し支援していることから、両機関の中小企業を支援したいという思いが一致し、中小企業に関する共同研究を開始しました。
【共同研究の取組みについて】
本共同研究は、法政大学とエヌエヌ生命で構成される調査研究委員会(委員長:坂本 光司 法政大学大学院 中小企業研究 所長)を設置して運営しています。同委員会は、中小企業の様々な経営課題に対する改善提案や提言を行うため、これまでの文献等から得られる汎用的なデータに加え、中小企業への訪問調査を通じて収集したより実践的なデータをもとに研究成果を導き出しています。
法政大学とエヌエヌ生命による産学連携共同研究プロジェクトは、中小企業研究において多数の著名な教授を擁する法政大学と、生命保険を通じて中小企業の経営課題に対するソリューションを提供・支援しているエヌエヌ生命が、中小企業の支援を目的に共同で研究を行っています。第6期目となる2014年度は「事業承継に関する調査研究」を実施しました。
経済産業省中小企業庁「平成25年度の中小企業の動向」の概要(※1)によると、近年休廃業や解散する中小企業の件数は増加しており、その主な要因に経営者の高齢化が挙げられています。帝国データバンク「2015年全国社長分析」によると、経営者の平均年齢は年々高齢化しており、過去最高の59.0歳になります。(※2)
経営者の高齢化に伴い、中小企業の事業承継が課題となっているようです。
(※1)「平成25年度の中小企業の動向」
http://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/140425hakusyo.html
(※2)帝国データバンク「2015年全国社長分析」
https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p150107.pdf
今回の調査では、事業承継において、後継者について考えている経営者は多い一方で、「相談相手がいない」という悩みを抱えている経営者が4割弱いることがわかりました。
■トピックス
(1) 後継者について「常に考えている」「時々考えている」中堅・中小企業の社長は7割強。
一方で後継者の人選を「まだ考えていない」社長は4割弱も。
(2) 後継者を意識するのは平均50歳。64歳で後継者にバトンタッチを予定。
後継者は「ふさわしい人物なら誰でもよい」が4割強で“脱親族トレンド”傾向に。
(3) 後継者バトンタッチに向けた課題 1位「後継者の経営能力向上」、2位「後継者の人間力向上」、3位「後継者が未定(有力者が不在)」。
(4) 事業承継成功のポイントは後継者が「明確な経営理念をもつ」約6割
(5) 事業承継の成功の鍵は「相談相手」に有り?
後継者問題、「相談相手がいない」経営者が4割弱。主流は「税理士や公認会計士」に相談。
後継者対策で求めているサービスは「的確なアドバイスをくれる機関」3割強。
(1) 後継者について「常に考えている」「時々考えている」中堅・中小企業の社長は7割強
一方で後継者の人選を「まだ考えていない」社長は4割弱も。
中堅・中小企業の社長に後継者の検討状況について聞いたところ、最も多かったのは「常に考えている」40.0%次いで「時々考えている」31.4%で、7割強の経営者が後継者について考えていることが分かった。
一方で、後継者の決定状況をみてみると、「まだ考えていない」が35.9%で最も多く、次いで「概ね絞り込んでいる」27.6%、「事業の継続を含め検討中のため決めていない」14.4%という結果になりました。後継者が「決定している」中小企業はわずか14.0%ということがわかりました。
(2) 後継者を意識するのは平均50歳。64歳で後継者にバトンタッチを予定。
後継者は「ふさわしい人物なら誰でもよい」43.7%で脱親族トレンド。
後継者を意識しはじめた年齢をみてみると、最も多かったのは「50歳〜59歳」44.5%で約半数を占めています。実際に後継者に経営権をバトンタッチする予定の社長年齢をみると、「60歳〜69歳」27.0%が最も多く、次いで「60〜64歳」23.2%となりました。
後継者の人選に関して、指名意向をみてみると、「ふさわしい人物なら誰でもよい」が43.7%で最も多く、次いで「子供」36.5%、「親族以外の役員・社員」21.0%という結果になりました。後継者の人選は親族に頼らない“脱親族トレンド”がうかがえます。
(3) 後継者バトンタッチに向けた三大課題
1位「後継者の経営能力向上」2位「後継者の人間力向上」3位「後継者が未定(有力者が不在)。
後継者バトンタッチに向けた課題について聞いたところ、最も多かったのは「経営者の経営能力向上」36.8%で、次いで「後継者の人間力向上」33.1%、「後継者が未定(有力者が不在)」32.9%という結果になりました。
また、後継者バトンタッチ時の重要事項に関しては、「従業員のために会社を存続させる」が64.6%で最も多く、次いで「身内(親族)に経営権を譲る」27.9%、「対外的な信用を維持する」27.0%となりました。
(4) 事業承継成功のポイントは後継者が「明確な経営理念をもつ」約6割
後継者バトンタッチの課題に対し、成功のポイントについて中小企業経営者にきいたところ、「後継者が明確な経営理念・戦略をもつ」が56.4%で最も多く、次いで「社内・社外の人間とよく交流を持つ」48.2%、「後継者に事業承継に強い意欲を持たせる」38.2%という結果になりました。
(5) 事業承継の成功の鍵は「相談相手」に有り?
後継者問題「相談相手がいない」経営者が4割弱。主流は「税理士や公認会計士」に相談。
後継者対策で求めているサービスは「的確なアドバイスをくれる機関」3割強。
後継者問題の相談相手に関して、2007年と2014年の調査結果を比較すると、「相談相手はいない」と回答した人が、2007年はわずか9.8%に対し、2014年は選択肢の中で最も多い36.5%という結果になりました。その他、「社内役員」を相談相手としていた人は、2007年では最も多い49.2%に対し、2014年はおよそ半数の26.7%という結果になりました。
後継者対策に関して、中小企業経営者が求めているサービスは、「的確なアドバイスをくれる機関」が32.2%で最も多く、次いで「経営者や後継者が集まる情報交換会の開催」28.1%、「後継者同士の情報交換会の開催」19.3%という結果になりました。
■法政大学大学院 中小企業研究所所長 坂本 光司教授コメント
毎年多くの中小企業が消滅しています。その大きな理由が事業承継、つまり後継者不在の問題です。
後継者がいないという理由で事業が消滅するのは大きな社会的損失です。地域のにぎわい、税収効果にマイナスだからです。一方で事業承継した途端に業績が悪化したり、内部抗争が起きたりするケースもあります。こうしたことは前経営者や後継者に問題があります。具体的には、事業承継の仕方や後継者の選択、さらには準備不足があるのです。
事業承継がスムーズに行った事例、失敗した事例を研究していますと、まずは、親族や社員以外にも、第三者や事業売却、M&Aといった多様な承継パターンがあることを認識することが大事です。そして計画的・段階的に承継を進めていくことです。後継者の育成には5〜10年かかりますので経営者の知力、気力、体力が衰えてからの承継は遅すぎます。バトンタッチのタイミングは重要なのです。
≪坂本 光司教授プロフィール≫
法政大学大学院 政策創造研究科 教授。同大学院静岡サテライトキャンパス長。NPO法人オールしずおかベストコミュニティ理事長。「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞審査 委員長。他に国・県・市町・産業支援機関の公職多数。専門は、中小企業経営論・地域経済論・福祉産業論。
【調査概要】
■調査名 :事業承継に関する調査
■調査主体 :法政大学大学院中小企業研究所・エヌエヌ生命保険株式会社
産学連携共同研究プロジェクト
■調査方法 :郵送/WEB方式
■調査実施期間:2014年7月15日〜2014年8月12日
■調査対象 :全国に所在する、従業員数が10名以上1,000名未満の中堅・
中小企業の代表取締役
【産学連携共同プロジェクト実施の背景】
法政大学は、中小企業研究において多数の著名な教授を擁しており、また、エヌエヌ生命は、生命保険を通じて中小企業の経営課題に対するソリューションを提供し支援していることから、両機関の中小企業を支援したいという思いが一致し、中小企業に関する共同研究を開始しました。
【共同研究の取組みについて】
本共同研究は、法政大学とエヌエヌ生命で構成される調査研究委員会(委員長:坂本 光司 法政大学大学院 中小企業研究 所長)を設置して運営しています。同委員会は、中小企業の様々な経営課題に対する改善提案や提言を行うため、これまでの文献等から得られる汎用的なデータに加え、中小企業への訪問調査を通じて収集したより実践的なデータをもとに研究成果を導き出しています。