嗅覚センサーの業界標準を目指す「MSSアライアンス」発足
[15/09/29]
提供元:@Press
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概要
1. 国立研究開発法人 物質・材料研究機構(以下NIMS)、京セラ株式会社(以下京セラ)、国立大学法人 大阪大学(以下大阪大学)、日本電気株式会社(以下NEC)、住友精化株式会社(以下住友精化)、NanoWorld AG(以下NanoWorld)の6機関は共同で、超小型センサー素子「MSS (Membrane-type Surface stress Sensor / 膜型表面応力センサー)」を用いたニオイ分析センサーシステムの実用化・普及を加速させるために業界標準(de facto standard)を目指す「MSS(エムエスエス)アライアンス」を9月25日に発足しました。
2. MSSとは、NIMSの吉川元起MANA独立研究者が、故ハインリッヒ・ローラー博士およびスイス連邦工科大学ローザンヌ校と共同で、2011年に開発したセンサー素子です。MSSは、ニオイの元となるガス分子から、DNA、たんぱく質など生体分子にいたるまで、多様な分子を大気中あるいは液体中で測定できる、汎用性の高い超小型・超高感度センサー素子です。従来のカンチレバー型センサーと違い、レーザー光が必要無いため小型化が可能となり、かつ従来型に比べて約100倍の感度を有するなど飛躍的に性能が向上しました。人々の生活、医療等を改善するための要因を把握し、人間や機械が理解できる情報に変換するセンサーシステムの開発に大きく貢献することが期待されています。
3. MSS技術の社会普及・実用化を加速するために、NIMSはこれまで、産業界にて重要な要素技術を持つ企業や大学等と技術確立に向けた体制作りの協議を重ねてきました。その結果、産官学共同で新たな共同研究体制「MSSアライアンス」を構築することになりました。今後は、MSSアライアンスを通じて、要素技術を最適化し、信頼性の高い計測システムの確立と業界標準化を目指します。
MSS(Membrane-type Surface stress Sensor / 膜型表面応力センサー)とは
大気中や液体中の様々な微量成分を高感度に検知し、モバイル機器等へ搭載可能な小型軽量の新型センサーの開発が渇望されています。近年、いくつかの研究論文発表、技術発表、商品化発表がなされていますが、未だ人工的嗅覚センサー技術は黎明期にあり、今後の本格的な社会実装に向けた、研究や開発は、不透明な状況に留まっているのが現状です。
そのような中、その高い汎用性により、医療・食品・環境・安全など様々な分野への応用が期待されていた「ナノメカニカルセンサー」において、NIMSの吉川元起MANA独立研究者らが、3年以上に及ぶ基礎科学的な実験と解析を積み重ね、超小型と超高感度を両立する画期的なセンサー素子MSSを開発しました。MSSは表面の感応膜に分子が吸着すると、表面応力が生じて電気抵抗が変化し、対象の分子を検知することができます(図1)。
このMSSは、以下のとおりモバイル用途で要求される各種性能を網羅したセンサー素子です。
・高感度 【感応膜次第で、ガス分子に対してppm以上、生体分子に対してnM以上の感度】
・超小型・集積化 【1チャンネルが1 mm2以下、つまり1 cm2に100チャンネル以上集積可能】
・低コスト 【シリコン製のため大量生産可能】
・高い多様性・汎用性 【有機・無機・バイオ系など様々な種類のガスに利用可能】
・低消費電力 【1 mW/ch以下、低消費電力化技術により更なる省電力化が可能】
・リアルタイム計測 【感応膜やサンプル流量次第で、1秒以下の応答時間】
・安定動作 【熱的・電気的・機械的に安定】
発足に至った背景
このMSSを「計測システム」として社会実装するためには、大量生産に向けたセンサーチップの最適化、アプリケーションに応じた感応膜の開発と設計指針の確立、高精度なシグナル解析方法の確立、標準ガスによる精密評価・校正、ポンプやフィルターなどを含むサンプル流路の最適化、そしてこれらを統合した標準モジュールの開発などが必要不可欠となります。そのため、これらの必須要素技術について最先端の技術を有する企業や大学とNIMSとの間で複数の個別共同研究が行われてきましたが、より効率よく迅速に開発を推進するため、このたび全体を統合・統括するMSSアライアンスを発足するに至りました。
NIMSは、2011年に発表したMSSセンシングデバイス技術の実用化及び社会普及を目指し、センサーシステムの確立と商用化に向けた高い信頼性を実現するために、要素技術を有する最先端パートナー企業・大学と共にMSS アライアンスという共同研究体制を組んで活動します。
名称
- 共同研究体制名称:MSSアライアンス
- 発足日:2015年9月25日
- 活動事務局所在地:国立研究開発法人 物質・材料研究機構(つくば市千現)
活動内容と各パートナーの果たす役割
MSSアライアンスにおいて業界標準を目指して研究開発を行う対象は、一般家庭や職場環境などにおける様々なガス成分を超高感度で検出・識別する一連の技術です。普段の生活環境における日用生活用品、食品等に関わる香り成分、ヘルスケアの視点で人体から発する生体ガス成分等を計測・分析・識別することで、日々の生活クオリティー向上に寄与し、ニオイを客観的に評価するという新しい産業・文化を確立することを目的としています。
研究開発役割分担:
・各種ガス成分検知、各種用途に向けた新規受容体の開発と最適化:NIMS
・MSSセンサー素子と新規受容体との組み合わせによる用途別設計指針の確立:NIMS
・標準ガス供給及び各種受容体による標準ガス計測データベース構築:住友精化
・定量的計測を可能とする高信頼性計測電子回路モジュールの設計・開発:京セラ
・検知対象ガス成分に応じた計測データ解析モデルの研究開発:大阪大学
・MSS計測データの自動解析アルゴリズムおよび用途別最適化の研究開発:NEC
・オンライン検索可能なMSS/受容体/ガス組み合わせ計測データベース構築:NIMS、京セラ、NEC
・MSSチップ特許実施許諾企業、MSSチップ量産化技術研究:NanoWorld、京セラ
今後の活動概要
MSSアライアンスは、MSS計測システム技術確立に不可欠な要素技術を有する企業と研究機関によって構成された今回の体制から活動を始めます。今後は、世界中の多くの企業・研究機関にMSS技術を応用した様々なアプリケーション用途開発に取り組んでいただけるよう、しかるべき時期に他の様々な企業も参加可能とするオープンな体制へ発展させていきます。
1. 国立研究開発法人 物質・材料研究機構(以下NIMS)、京セラ株式会社(以下京セラ)、国立大学法人 大阪大学(以下大阪大学)、日本電気株式会社(以下NEC)、住友精化株式会社(以下住友精化)、NanoWorld AG(以下NanoWorld)の6機関は共同で、超小型センサー素子「MSS (Membrane-type Surface stress Sensor / 膜型表面応力センサー)」を用いたニオイ分析センサーシステムの実用化・普及を加速させるために業界標準(de facto standard)を目指す「MSS(エムエスエス)アライアンス」を9月25日に発足しました。
2. MSSとは、NIMSの吉川元起MANA独立研究者が、故ハインリッヒ・ローラー博士およびスイス連邦工科大学ローザンヌ校と共同で、2011年に開発したセンサー素子です。MSSは、ニオイの元となるガス分子から、DNA、たんぱく質など生体分子にいたるまで、多様な分子を大気中あるいは液体中で測定できる、汎用性の高い超小型・超高感度センサー素子です。従来のカンチレバー型センサーと違い、レーザー光が必要無いため小型化が可能となり、かつ従来型に比べて約100倍の感度を有するなど飛躍的に性能が向上しました。人々の生活、医療等を改善するための要因を把握し、人間や機械が理解できる情報に変換するセンサーシステムの開発に大きく貢献することが期待されています。
3. MSS技術の社会普及・実用化を加速するために、NIMSはこれまで、産業界にて重要な要素技術を持つ企業や大学等と技術確立に向けた体制作りの協議を重ねてきました。その結果、産官学共同で新たな共同研究体制「MSSアライアンス」を構築することになりました。今後は、MSSアライアンスを通じて、要素技術を最適化し、信頼性の高い計測システムの確立と業界標準化を目指します。
MSS(Membrane-type Surface stress Sensor / 膜型表面応力センサー)とは
大気中や液体中の様々な微量成分を高感度に検知し、モバイル機器等へ搭載可能な小型軽量の新型センサーの開発が渇望されています。近年、いくつかの研究論文発表、技術発表、商品化発表がなされていますが、未だ人工的嗅覚センサー技術は黎明期にあり、今後の本格的な社会実装に向けた、研究や開発は、不透明な状況に留まっているのが現状です。
そのような中、その高い汎用性により、医療・食品・環境・安全など様々な分野への応用が期待されていた「ナノメカニカルセンサー」において、NIMSの吉川元起MANA独立研究者らが、3年以上に及ぶ基礎科学的な実験と解析を積み重ね、超小型と超高感度を両立する画期的なセンサー素子MSSを開発しました。MSSは表面の感応膜に分子が吸着すると、表面応力が生じて電気抵抗が変化し、対象の分子を検知することができます(図1)。
このMSSは、以下のとおりモバイル用途で要求される各種性能を網羅したセンサー素子です。
・高感度 【感応膜次第で、ガス分子に対してppm以上、生体分子に対してnM以上の感度】
・超小型・集積化 【1チャンネルが1 mm2以下、つまり1 cm2に100チャンネル以上集積可能】
・低コスト 【シリコン製のため大量生産可能】
・高い多様性・汎用性 【有機・無機・バイオ系など様々な種類のガスに利用可能】
・低消費電力 【1 mW/ch以下、低消費電力化技術により更なる省電力化が可能】
・リアルタイム計測 【感応膜やサンプル流量次第で、1秒以下の応答時間】
・安定動作 【熱的・電気的・機械的に安定】
発足に至った背景
このMSSを「計測システム」として社会実装するためには、大量生産に向けたセンサーチップの最適化、アプリケーションに応じた感応膜の開発と設計指針の確立、高精度なシグナル解析方法の確立、標準ガスによる精密評価・校正、ポンプやフィルターなどを含むサンプル流路の最適化、そしてこれらを統合した標準モジュールの開発などが必要不可欠となります。そのため、これらの必須要素技術について最先端の技術を有する企業や大学とNIMSとの間で複数の個別共同研究が行われてきましたが、より効率よく迅速に開発を推進するため、このたび全体を統合・統括するMSSアライアンスを発足するに至りました。
NIMSは、2011年に発表したMSSセンシングデバイス技術の実用化及び社会普及を目指し、センサーシステムの確立と商用化に向けた高い信頼性を実現するために、要素技術を有する最先端パートナー企業・大学と共にMSS アライアンスという共同研究体制を組んで活動します。
名称
- 共同研究体制名称:MSSアライアンス
- 発足日:2015年9月25日
- 活動事務局所在地:国立研究開発法人 物質・材料研究機構(つくば市千現)
活動内容と各パートナーの果たす役割
MSSアライアンスにおいて業界標準を目指して研究開発を行う対象は、一般家庭や職場環境などにおける様々なガス成分を超高感度で検出・識別する一連の技術です。普段の生活環境における日用生活用品、食品等に関わる香り成分、ヘルスケアの視点で人体から発する生体ガス成分等を計測・分析・識別することで、日々の生活クオリティー向上に寄与し、ニオイを客観的に評価するという新しい産業・文化を確立することを目的としています。
研究開発役割分担:
・各種ガス成分検知、各種用途に向けた新規受容体の開発と最適化:NIMS
・MSSセンサー素子と新規受容体との組み合わせによる用途別設計指針の確立:NIMS
・標準ガス供給及び各種受容体による標準ガス計測データベース構築:住友精化
・定量的計測を可能とする高信頼性計測電子回路モジュールの設計・開発:京セラ
・検知対象ガス成分に応じた計測データ解析モデルの研究開発:大阪大学
・MSS計測データの自動解析アルゴリズムおよび用途別最適化の研究開発:NEC
・オンライン検索可能なMSS/受容体/ガス組み合わせ計測データベース構築:NIMS、京セラ、NEC
・MSSチップ特許実施許諾企業、MSSチップ量産化技術研究:NanoWorld、京セラ
今後の活動概要
MSSアライアンスは、MSS計測システム技術確立に不可欠な要素技術を有する企業と研究機関によって構成された今回の体制から活動を始めます。今後は、世界中の多くの企業・研究機関にMSS技術を応用した様々なアプリケーション用途開発に取り組んでいただけるよう、しかるべき時期に他の様々な企業も参加可能とするオープンな体制へ発展させていきます。