タワーズワトソン昇給率調査:アジア太平洋地域の2016年の昇給率が高インフレの影響で低下
[15/10/19]
提供元:@Press
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《2015年10月13日(火)に香港より発表されたプレスリリースの日本語版》
【香港】2015年10月13日(火)-- グローバルにコンサルティングサービスを展開するタワーズワトソン(NASDAQ:TW)が実施した昇給率調査によると、アジア太平洋地域のほとんどの市場で、平均昇給予算が2015年に比べ上昇するにもかかわらず、来年の従業員の昇給率はインフレ圧力の高まりにより実質ベースで低下する見込みであることが分かった。
2016年のアジア太平洋地域の給与予算は6.8%上昇する見込みで、2015年の6.6%と比べると若干高い。しかしインフレを考慮すると、今年の平均上昇率は4.1%であるのに対し来年のそれは3.4%となり、同地域の22の調査対象市場のうち17の市場で、来年の従業員の給与は低下することになる。2016年の平均インフレ率は、2015年の2.5%(※)から3.4%に上昇すると予測されている。
本調査は、工場などの現場労働者から役員レベルまで様々な階層を対象に実施したもので、企業が幅広い産業と市場での給与動向を理解し、自社従業員の年間給与を予測するための指針を提供している。調査対象となる産業には、自動車、化学、金融サービス、エネルギー・天然資源、メディア、プロフェッショナルサービス、小売、製薬・ヘルスサイエンス、日用消費財といった数々の主要産業を網羅している。
タワーズワトソン アジア太平洋地域 データ・サービス部門リーダーのSambhav Rakyanは、「最近の傾向として、前年の昇給率といった業界の動向データを翌年のためのベンチマークとして採用する企業が増えています。」と述べている。さらに「市場は流動性が高く人材が不足しているため、従業員はより給与が高い職へと転職を繰り返すようになりました。このような状況の中、企業は、限られた昇給予算をいかに効果的に使用するかが課題になっています。競争が熾烈化しているアジア太平洋地域の人材市場で報酬を決めるのは、動いている標的を撃つようなものです。今日支払っている報酬が明日もそれで十分であるとは限りません。市場の動きに注目していないと、貴重な人材を失ってしまうリスクもあるでしょう。」とも述べている。
■インフレと連動しない昇給
東アジアと東南アジアで2016年の平均昇給率が特に高いのは、インドネシア(9.4%)、ベトナム(10.4%)、中国本土(8%)で、いずれも昨年より高い数値を示している。しかしインフレを考慮に入れた実質ベースでは、昇給率は、それぞれ3.9%、5.6%、5.8%に低下する。平均昇給率が最も低いのは日本で、名目ベースで2.4%、実質ベースで0.9%と予測されている。
著しい対照を見せているのは香港とシンガポールだ。香港における長引くインフレ圧力が影響しているためで、来年のシンガポールのインフレ率(1.5%)は香港のそれ(2.7%)と比較すると非常に低く、それが実質ベースの給与に反映されている。平均給与予算で比較すると、シンガポールが4.4%、香港が4.5%とほとんど変わらないと見込まれている。
「特に流動性の高さがほとんど標準化しているアジアでは従来の施策は通用しないとも言えますが、でもいい面もあります。インフレとコストの高まりに直面した雇用者が、より創造的で柔軟なEVP(Employee Value Proposition:従業員に対して企業が提供する価値)を提供するなど、人材の繋ぎ止めに戦略的なアプローチを取るようになってきたことです。そうした価値提案としては、個々の従業員にもっと適した、価値のある福利厚生オプションなどが含まれますが、昇給に対する従業員の期待を認め、それに応えるといった単純なケースもあります。」(Sambhav Rakyan)
■景気の見通しについて楽観視していない雇用者
アジア太平洋地域の各市場の昇給率は上昇するという予想だが、実は第3四半期の雇用者による同地域の景気見通しは、第1四半期の頃と比べると著しく悪化している。見通しは明るいと答えた雇用者は、57%から33%に縮小した。
「現在の芳しくない市場データから雇用者は景気の見通しは明るくないと弱気になっているのかもしれません。ところが従業員は反対に、昇給に対して強気の期待を抱いています。この考え方のミスマッチは、景況感と従業員の期待は必ずしも正の相関を示すものではないことを表しています。雇用者は、協調性のある満足度の高いチームを作り上げようとするならば、もっと長期的に従業員の期待に慎重かつ主体的に答えていく必要があるでしょう。」(Sambhav Rakyan)
また、本調査では、業績の高い従業員の昇給率が特に高いという点では、第3四半期も第1四半期も共通していることが明らかになった。各層の従業員を比較してみると、業績の高い従業員の平均昇給率は7.7%で、「標準上」「標準」の従業員の6.9%、6.1%より高い。同様の傾向は、調査対象産業の中の3つの中核産業-金融サービス、ハイテク、ヘルスケア・製薬のいずれにおいても見られた。
「業績を基に従業員に報酬を与えることは、従業員にとって良いインセンティブとなります。また、そうした傾向は、市場の成熟度が増していることを反映しているとともに、人材の獲得競争が激しくなっていることを表しています。」(Sambhav Rakyan)
「従業員に対し組織における各人の価値を明瞭に示すには、優れた評価体制と透明性の高いコミュニケーションプランが不可欠です。組織は、報酬に関して従業員とオープンにコミュニケーションが取れる手段を準備する必要があります。また、報酬の根拠を従業員に理解してもらうために積極的な役割を果たすことも重要でしょう。」(Sambhav Rakyan)
■ハイテク業界の昇給率が最も高い
ハイテク業界の昇給率は、本調査の対象となった産業の中で最も高くなる見込みだ。この業界の2016年の平均昇給率は、2015年と同じ6.5%。特に昇給率が高い市場は、インフレ考慮前ではあるが、パキスタン(12%)、インド(10.7%)、ベトナム(10.6%)となっている。
アジア太平洋地域の2大国際ビジネス拠点、香港とシンガポールでは、ハイテク業界の昇給率はそれぞれ4.5%、4.3%と、2015年の4.4%、4%を上回るものと予想されている。中国本土のハイテク業界の昇給率は、2015年の7.7%に対し、来年は8%上昇するものと見込まれている。
「ウェアラブル・デバイス、クラウド・コンピューティング、企業アプリケーション・ソフトウェアといった新技術の人気は今後も高まっていくでしょう。この人気がハイテク業界の人材需要を生み、この業界の昇給率を最高にしている理由となっています。また、ハイテクは製薬業界や金融サービス業界の成長にも一役買っています。たとえば、ウェアラブル・デバイスがヘルスケア業界で活用され、インターネット・ファイナンスも急速な成長を見せています。」(Sambhav Rakyan)
アジア太平洋地域における2016年の製薬業界の昇給率は、今年の5.5%より高い5.8%と予想されている。しかし金融サービスでは、2016年の昇給率は6%と製薬業界より高いものの、2015年の6.1%と比べると若干数字を落としている。
(※) マクロ経済データの出所:エコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)-2015年8月時点の数字
本調査について:
2015年昇給率調査結果レポート アジア太平洋地域版(2015 Asia Pacific Salary Budget Planning Report)は、タワーズワトソンのデータ・サービス部門(TWDS)が年2回実施している調査です。今回の調査は、各企業が2016年の報酬計画を策定する時期に合わせて実施したもので、幅広い産業と、工場などの現場労働者から役員レベルまで様々な階層の従業員の給与配分や動向と給与審査について調査しました。
今回の調査は2015年7月に実施され、アジア太平洋地域の22ヵ国・地域の企業から約2,000件の回答が寄せられました。本調査および他の地域の最新の昇給率調査結果レポート アジア太平洋地域版はオンラインでご購入いただけます。アジア太平洋地域版の他、グローバル版、EMEA版もございます。
・アジア太平洋地域版
https://hrresource.towerswatson.com/report_details.asp?rptid=382&image=00header_asiapacific_regional.gif
・グローバル版
https://hrresource.towerswatson.com/report_details.asp?rptid=384&image=00header_globalreports.gif
・EMEA版
https://hrresource.towerswatson.com/report_details.asp?rptid=383&image=00header_emea_regional.gif
タワーズワトソンについて:
タワーズワトソン(NASDAQ:TW)は、人事・財務およびリスクマネジメントの領域において企業の業績向上を支援する、世界有数のプロフェッショナルファームです。全世界に約16,000人の社員を擁し、報酬制度、退職給付制度、福利厚生制度、タレントマネジメント、リスクおよび資本管理、資産運用の分野におけるソリューションとテクノロジーを提供しています。ウェブサイトのアドレスは以下の通りです:
http://www.towerswatson.com/ja-JP