市場混沌とするなか今晩のECB定例理事会に注目
[23/03/16]
提供元:株式会社フィスコ
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後場の投資戦略
[日経平均株価・TOPIX(表)]
日経平均;26974.39;-255.09TOPIX;1934.79;-25.33
[後場の投資戦略]
米国発の金融システム不安が波及するような形で、前日は欧州市場でも銀行株が軒並み急落。事の発端はスイスの銀行、クレディ・スイスを巡る混乱だ。同行は不祥事や経営破綻したアルケゴス・キャピタルとの取引で巨額損失を被った経緯があり、最近まで顧客の資金流出が続くなど問題を抱えていた。同行は14日、過去2年の財務報告と管理手順に「重大な弱点」があったことを発表し、市場への警戒感を高めていた中、昨日、クレディ・スイス・グループの筆頭株主であるサウジ・ナショナル・バンクが追加の資金注入に応じない意向を示したことが引き金となった。
ただ、混乱に対応して、スイス連邦金融市場監督機構(FINMA)とスイス国立銀行
(中央銀行)が同グループに対して必要に応じた流動性支援を行うと発表。また、FINMAと中銀は共同声明で「クレディ・スイスはシステム上重要な銀行に課される資本・流動性の要件を満たしている」と表明。さらに、同行がスイス国立銀行から500億フランを借り入れるとの報道もあり、目先の安心感にはつながっているようだ。
しかし、大幅下落で始まった日経平均は寄り付き直後から下げ幅を縮め、一時27000円を回復するも、その後再び同水準を割り込むなど戻りの弱さも見られている。先週末の米シリコンバレー銀行(SVB)の一件から連日で悪材料が相次いでいることもあり、市場の疑心暗鬼は簡単には止みそうにない。
米国で経営破綻したシリコンバレー銀行とシルバーゲート銀行については、顧客の性質や資金運用先に関して極端な偏りが見られ、リスク管理が甘かったという点でともに固有の問題が発端といえる。また、シグネチャー銀行も暗号資産(仮想通貨)関連の企業との取引が多く、業績の安定さに欠ける顧客先が多かったという特殊な事情がある。クレディ・スイスについても、金融システムの問題というよりは同行が以前から抱えていた経営に関する問題という様相が強い。また、米国では金融当局と政府が、債券などの担保を額面通りに評価して融資を行う、緊急対応策なども発表している。このため、システミックリスクにつながる可能性は低いと指摘されている。
しかし、依然として不安心理に駆られた預金者による取り付け騒ぎリスクがくすぶる。また、銀行間の取引システムにおいてドルの調達コストが上昇している兆候も見られており、影響の波及については慎重に見極める必要がありそうだ。さらに、仮に銀行の経営破綻などをこれ以上増やすことなく事態悪化に歯止めをかけることができても、市場関係者や企業経営者のセンチメントの悪化は大きい。今後は金融機関の貸し渋りや貸しはがしといった形で実体経済へ影響する可能性も想定しておく必要があろう。
金融政策を巡る市場の織り込みも急速に変化している。FF(フェデラルファンド)
金利先物市場は、先週後半までは3月21−22日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)で0.50ポイントへと利上げ幅が拡大されることを7割の確率で織り込んでいて、ターミナルレート(政策金利の最終到達点)も5.65%にまで引き上げられると予想していた。
しかし、現在は、0.50ポイントの利上げ確率はゼロ、一方で利上げを停止するとの確率が5割以上にまで上昇している。また、一度剥落した利下げ期待も再び高まっており、金利先物市場は今年の年末までに0.25ptの利下げが合計3〜4回行われることまで織り込んでいる。
他方、世界的に不安心理が増幅され、これ自体がインフレ抑制効果を持つと考えられることに加え、昨日発表された米2月卸売物価指数(PPI)が前月比で予想外にマイナスとなり、食品・エネルギーを除いたコア指数でも前月比横ばいにとどまったことで、インフレ懸念が和らいでいる。このため、米連邦準備制度理事会(FRB)がいったん利上げ停止を決める確率は高い。ただ、市場心理が落ち着けば、その後は再び経済データ次第で0.25ポイントの利上げを再開する可能性は十分にある。そのため、足元の利下げの織り込みはやや行き過ぎの印象が強い。来週のFOMCでは政策金利見通し
(ドットチャート)も公表されるため、FRBのタカ派スタンスにどれだけ変化が見られるかを見極めたい。
その前に、今晩は欧州中央銀行(ECB)の定例理事会が開催される。これまでFRBと同じようにタカ派な姿勢を見せていたECBが、今回の一連の問題を受けて、どのように姿勢を変化させるかに注目したい。
(仲村幸浩)
<AK>
日経平均;26974.39;-255.09TOPIX;1934.79;-25.33
[後場の投資戦略]
米国発の金融システム不安が波及するような形で、前日は欧州市場でも銀行株が軒並み急落。事の発端はスイスの銀行、クレディ・スイスを巡る混乱だ。同行は不祥事や経営破綻したアルケゴス・キャピタルとの取引で巨額損失を被った経緯があり、最近まで顧客の資金流出が続くなど問題を抱えていた。同行は14日、過去2年の財務報告と管理手順に「重大な弱点」があったことを発表し、市場への警戒感を高めていた中、昨日、クレディ・スイス・グループの筆頭株主であるサウジ・ナショナル・バンクが追加の資金注入に応じない意向を示したことが引き金となった。
ただ、混乱に対応して、スイス連邦金融市場監督機構(FINMA)とスイス国立銀行
(中央銀行)が同グループに対して必要に応じた流動性支援を行うと発表。また、FINMAと中銀は共同声明で「クレディ・スイスはシステム上重要な銀行に課される資本・流動性の要件を満たしている」と表明。さらに、同行がスイス国立銀行から500億フランを借り入れるとの報道もあり、目先の安心感にはつながっているようだ。
しかし、大幅下落で始まった日経平均は寄り付き直後から下げ幅を縮め、一時27000円を回復するも、その後再び同水準を割り込むなど戻りの弱さも見られている。先週末の米シリコンバレー銀行(SVB)の一件から連日で悪材料が相次いでいることもあり、市場の疑心暗鬼は簡単には止みそうにない。
米国で経営破綻したシリコンバレー銀行とシルバーゲート銀行については、顧客の性質や資金運用先に関して極端な偏りが見られ、リスク管理が甘かったという点でともに固有の問題が発端といえる。また、シグネチャー銀行も暗号資産(仮想通貨)関連の企業との取引が多く、業績の安定さに欠ける顧客先が多かったという特殊な事情がある。クレディ・スイスについても、金融システムの問題というよりは同行が以前から抱えていた経営に関する問題という様相が強い。また、米国では金融当局と政府が、債券などの担保を額面通りに評価して融資を行う、緊急対応策なども発表している。このため、システミックリスクにつながる可能性は低いと指摘されている。
しかし、依然として不安心理に駆られた預金者による取り付け騒ぎリスクがくすぶる。また、銀行間の取引システムにおいてドルの調達コストが上昇している兆候も見られており、影響の波及については慎重に見極める必要がありそうだ。さらに、仮に銀行の経営破綻などをこれ以上増やすことなく事態悪化に歯止めをかけることができても、市場関係者や企業経営者のセンチメントの悪化は大きい。今後は金融機関の貸し渋りや貸しはがしといった形で実体経済へ影響する可能性も想定しておく必要があろう。
金融政策を巡る市場の織り込みも急速に変化している。FF(フェデラルファンド)
金利先物市場は、先週後半までは3月21−22日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)で0.50ポイントへと利上げ幅が拡大されることを7割の確率で織り込んでいて、ターミナルレート(政策金利の最終到達点)も5.65%にまで引き上げられると予想していた。
しかし、現在は、0.50ポイントの利上げ確率はゼロ、一方で利上げを停止するとの確率が5割以上にまで上昇している。また、一度剥落した利下げ期待も再び高まっており、金利先物市場は今年の年末までに0.25ptの利下げが合計3〜4回行われることまで織り込んでいる。
他方、世界的に不安心理が増幅され、これ自体がインフレ抑制効果を持つと考えられることに加え、昨日発表された米2月卸売物価指数(PPI)が前月比で予想外にマイナスとなり、食品・エネルギーを除いたコア指数でも前月比横ばいにとどまったことで、インフレ懸念が和らいでいる。このため、米連邦準備制度理事会(FRB)がいったん利上げ停止を決める確率は高い。ただ、市場心理が落ち着けば、その後は再び経済データ次第で0.25ポイントの利上げを再開する可能性は十分にある。そのため、足元の利下げの織り込みはやや行き過ぎの印象が強い。来週のFOMCでは政策金利見通し
(ドットチャート)も公表されるため、FRBのタカ派スタンスにどれだけ変化が見られるかを見極めたい。
その前に、今晩は欧州中央銀行(ECB)の定例理事会が開催される。これまでFRBと同じようにタカ派な姿勢を見せていたECBが、今回の一連の問題を受けて、どのように姿勢を変化させるかに注目したい。
(仲村幸浩)
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