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日米長期金利の上昇で配当落ち後もバリュー優位か

後場の投資戦略
[日経平均株価・TOPIX(表)]

日経平均;31813.01;-558.89TOPIX;2344.05;-35.48


[後場の投資戦略]

 前日の日経平均は配当落ち前の時点から32000円を割り込むなど大きく下落していたが、午後は配当再投資を意識した買い戻しでプラス圏に浮上した。本日も配当落ちの影響を除けば前日終値から小幅な下げにとどまって底堅さを見せていた。しかし、前引けにかけては急速に地合いが悪化し、日経平均は32000円を大幅に割り込んで前場を終えている。日経225先物の水準を見る限り、午後の日経平均は配当落ちを考慮しても32000円割れの推移が見込まれ、投資家心理の悪化が懸念される。

 長期金利の上昇に歯止めがかからない状況が気掛かりだ。米10年債利回りは27日、一時4.64%と2007年10月以来の高水準を記録した。在庫減少を背景にWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油先物価格(期近物)が一時94.17ドルと昨年8月下旬以来の高値まで上昇したことが影響した。また、米8月耐久財受注が予想を大幅に上回る伸びとなったことで、米連邦準備制度理事会(FRB)が高水準の政策金利を据え置く期間が長期化することも意識されたようだ。

 さらに、米政府機関の閉鎖リスクが依然としてくすぶっていることも信用リスクの上昇を通じて米長期金利の上昇に拍車をかけているもよう。米議会の予算交渉は引き続き難航しており、閉鎖リスクは日に日に高まっているようで予断を許さない状況だ。

 全米自動車労組(UAW)と米大手自動車メーカーとの労使交渉も引き続き懸念材料だ。UAWは交渉に大きな進展がなければ、29日にはストライキを拡大する計画と報じられている。政府閉鎖とともに米経済成長の下押しリスクとなりうるほか、米金融政策の先行き不透明感を強める可能性もあり、注意が必要だ。

 米長期金利のハイペースでの上昇基調を受け、国内の10年債利回りも28日、0.750%と直近の高値を更新してきている。日本銀行の金融政策を巡っては先週に金融政策決定会合を終えたばかりだが、こちらも先行き不透明感が強まっているといえる。

 WTI原油市況が昨年8月下旬以来の高値まで上昇したことに加え、日米の金融政策スタンスの違いを背景にした円売り・ドル買いが続いており、ドル円は遂に1ドル=149円台を突破、昨年10月以来の150円超えが目前に迫っている。輸入物価への反映には3カ月ほどのタイムラグがあるとされているが、原油高と円安により年末近くから国内で輸入インフレが再燃することは必至といえる。日銀は今後、物価上昇の趨勢はいったん落ち着いていくと予想しているが、こうした見通しとは乖離が生じる状況になっており、政策不透明感を高めることにつながりそうだ。

 個別に目を向けると、当面はバリュー(割安)・高配当利回り銘柄の物色が続きそうだ。本日の配当落ちに伴い、バリュー・高配当利回り銘柄の物色が一巡することが予想されたが、日米の長期金利の上昇基調を背景にグロース(成長)株対比で選好される状況が維持されそうだ。実際、本日配当落ちを迎えた鉄鋼や銀行セクターなどの主力銘柄の動きを見ると、総じて底堅い動きを見せている。

 また、27日の米国市場の引け後に発表された半導体メモリー大手のマイクロン・テクノロジーの決算は、9-11月期の損益見通しが市場予想以上の赤字幅となり、市況底入れ・株価回復を期待していた投資家を失望させる内容だった。同社株価は時間外取引で一時5%程下落した。こうした背景も日米長期金利の上昇とともにハイテク株を敬遠させることにつながり得ると考えられ、バリュー・高配当利回り銘柄の選好を長期化させることになりそうだ。
(仲村幸浩)


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