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新型コロナウイルス治療、既承認薬の現状

Miniトピック
新型コロナウイルス感染症の拡大により、世界213の国や地域において感染者は294万7,000人、死亡者は20万5,000人(WHO、4月27日)にのぼっている。新型コロナウイルスに対する有効な治療薬を見出すため、国内外の多数の医療機関や研究所において既に承認されており、他の病気の治療に投与されている薬剤の中から、新型コロナウイルスに有効性がある薬剤を探すという研究が進められている。
通常、新薬の開発には、基礎研究、非臨床試験、臨床試験(第1〜3相試験)、承認申請、製造販売という手順を踏まなければならず、10〜18年の開発期間と莫大な予算が必要である(日本SMO協会)。一方、既承認薬の場合には、第2相の臨床試験から開始できるため、薬事申請までの期間を大幅に短縮できるという利点を有している。現在、医療現場で治験が進みつつある既承認薬の状況を概観してみる。

2015年、ノーベル医学生理学賞を受賞した大村智氏が発見した「アベルメクチン」を元に、開発された「イベルメクチン」(オーストラリア感染研究所)が注目されている。同研究所は、「イベルメクチンは、細胞質のたんぱく質を核内に移動させるインポーチン分子と結合し、核内移行を阻害し、増殖が阻止される」という研究内容をまとめている。イベルメクチンは、毒性が低く抗寄生虫薬として人に投与された実績が多数あり、新型コロナウイルス患者への投与で臨床状況の改善やウイルス量の減少などが確認されると、治療薬として評価が一段上がる。

国立感染症研究所や東京理科大学など、国内を中心に25の研究機関の専門家が、新型コロナウイルスの治療薬を開発するため、緊急の共同研究を開始した。共同研究では、既に承認されている300種類あまりの薬の中から新型コロナウイルスの増殖を妨げる作用のある候補を調査したところ、エイズ治療薬「ネルフィナビル」(米KEGG DRUG)と白血球減少防止薬「セファランチン」(米KEGG DRUG)を発見したとのことである。「ネルフィナビル」はウイルスが増殖する際に働く酵素を阻害し、「セファランチン」はウイルスが細胞に侵入するのを防ぐことがシミュレーションで推定されている。そして、発症の半日後にこの2つの物質を同時に投与した場合には、ウイルスが体内からなくなるまでおよそ10日間と、何も投与しない場合より5日程度早める可能性が示された(NHK4月22日)。「治療薬開発は、いくつか臨床研究が進んでいるが、この2種類の実験レベルでの効果が高く、新たな治療薬の候補として提案したい」(国立感染症研究所渡士幸一主任研究官)と有望性に言及されており、開発状況が注目される。

「アビガン」(富士フィルム富山化学)は、4月7日の「緊急事態宣言」後、安倍首相が「観察研究の枠組みの中で希望する患者への「アビガン」の使用をできる限り拡大する」と発表し、さらに200万人分の備蓄方針が示された。また、4月7日の閣議において、急性膵炎治療薬「フサン」(日医工)の観察研究投与を進めることも了承されている(総理記者会見4月7日)。「アビガン」は、細胞内でウイルスの増殖を抑えるとみられ、「フサン」は細胞の中にウイルスが侵入するのを妨げる作用があると考えられている。
その他エイズ治療薬「カレトラ」(米アッヴィ)やぜんそく治療薬「オベルコス」
(帝人ファーマ)についても有効性の確認研究が行われている。

今後、さらなる治験、症例の収集・分析、治療薬の投与量の算定、投与対象の選定、副作用の確認など多くの研究により、早い段階での実用化とその後の新型コロナ禍の収束を期待したい。

(サンタフェ総合研究所)


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