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一尾仁司の「虎視眈々」:予想以上に冷え込む投資マインド

注目トピックス 経済総合

〇7−9月後遺症重く

14日発表の投信概況で、9月の運用損が4兆5571億円に達していることが明らかとなった。波乱の8月に5兆6718億円の運用損を出しており、2か月で10兆円を超えた。1か月で10兆円を超えた08年10月(リーマン・ショック)以来の厳しさに見舞われている。運用損の拡大は投資家心理を冷え込ませる。昨報のヘッジファンド清算では、ブルームバーグが「年初から160億ドルを上回る」規模で清算が相次ぐと伝えた。

UBSは中央銀行と政府系ファンドの運用資産が年末までに1兆2000億ドル(約143兆円、運用総額は14年末で合計18兆ドル)減少するとの試算を発表した。成長減速の中国、原油安によるロシア、サウジ、カタール、ノルウェーなどが中心と言う。13日付ロイターは9月に中国が日本国債を大量売却した可能性が浮上、と伝えた。財務省統計で9月下旬(21−30日)に海外投資家は円債を4兆6506億円処分(9月末は国債償還が集中し、ロールオーバーしなかった分を含む)。ドル転換で国内のドル調達コストが上昇したことと連動する。

足元の日本国債利回りは5か月半ぶりの低水準(一時0.305%)。売り圧力が既に一巡していると見られるとともに、円高圧力が強まってきたことがイメージ的に連動する。

海外で分散運用され、実態が把握し難い中国政府系ファンドの日本株運用は、売りに回っているとの観測が根強い。中国の外貨準備高は8月の939億ドルに続き、9月も433億ドル減少した。米債を処分しているとの噂は出ておらず、周辺から取り崩している可能性は十分考えられる。

〇個別銘柄狙い撃ち

来年度の減益見通し(17年1月期6-12%減益予想、アナリスト予想は4%増益だった)を発表した米ウォールマート株が27年ぶりとなる10%の急落。他の小売株にも波及し、好調なはずの個人消費に陰を落とすことになった。ディーリング収益が2割減の金融株も軟調。先月のVWやグレンコア以来、個別悪材料が狙い撃ちされるされる格好が目立つ。コアストックと言えども安心ができず、投資家の安全志向を強める結果となっている。

国内では、傾いたマンション(三井住友建設、三井不動産が販売)が旭化成建材に飛び火、三度目となる不正が明らかとなった東洋ゴムなど、個別企業の悪材料が後を絶たず、処分売りや空売りを招いていると思われる。

こうなると、来週から始まる3月決算企業の第2四半期決算にも厳しい目線が先行する恐れがある。通常、企業の前向きなニュースや政策シナリオとの綱引きに移行していく。政策が(世界的な政治混迷もあって)谷間的な局面にあることも影響していよう。強弱のバランス改善を注視したい。

出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(10/15号)



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