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金融でも「共同演習」に乗り出した米中

注目トピックス 経済総合
世界銀行とアジアインフラ投資銀行(AIIB)は、世界各国のインフラ投資案件に共同融資していくことで基本合意しました。中国を中心に昨年設立されたAIIBが世界銀行や国際通貨基金(IMF)、つまり米国の国際金融覇権に対抗する組織であるのは明白です。米国は敵対する相手を仲間に組み入れることによって軍事衝突を回避する、という最近の安全保障の考え方を金融にも取り入れたのではないでしょうか。


世銀とAIIBは共同出資先として、アジア地域の交通、水道、エネルギー分野など10案件あまりを検討中です。詳細はまだ決まっていないようですが、今年中にAIIBが融資を承認する12億ドルのうち、この共同融資が相当な割合を占めるとの見通しです。世銀は貧困撲滅のためのインフラ整備を支援する組織で、AIIBと方向性は合致しているようです。世銀側はAIIBを「目標を共有する新しい仲間」とし、良好な関係をアピールしています。


国際政治・経済で対立関係にある両国のこうした動きは、さながら「米中共同軍事演習」のようです。安全保障は、古くは軍事的な意味での国家の平和と独立を意味していました。その後、冷戦時代の国家間の対立関係を前提とした「共通の安全保障」という概念から、対立関係にあっても協調主義的な外交や貿易によって危険や脅威を排除し、戦争を事前に回避することを目的とした「協調の安全保障」という考え方に変化してきました。


中国軍は2014年に世界最大規模の国際海上訓練、環太平洋合同軍事演習(リムパック)に参加しており、今や米中両国の軍隊は非常に高レベルな合同演習をする関係を構築しています。中国側は米国の戦術や技術などを参考にし、逆に米国側は中国の防衛能力を把握し、今後のパワーバランスの管理に生かす狙いがあると見られます。今回の金融に関する枠組みの決定も安全保障の一環と考えることができるでしょう。


ただし、こうした安全保障の概念は欧米社会を中心とした考え方に基づくものであり、中国がそこにピッタリと収まるようには思えません。今年に入ってからも、中国の南シナ海でのミサイル配備をめぐり米中間の緊張は高まっています。金融面でも、例えば20カ国財務相・中央銀行総裁会議(G20)で競争的な通貨安を回避するという米国の思惑を反映した共同声明が採択されても、中国は何事もなかったかのように相変わらず人民元安方向の政策を維持しています。


中国からみれば、例えば英国が欧州連合(EU)から離脱しても経済面での影響は軽微でしょうし、日本を除くアジア・太平洋地域の各国との関係も良好です。アフリカや南米でのプレゼンスも高まっており、米国との関係が多少悪化しても困らないという姿勢が見て取れます。逆に、米国は従来型の覇権システムを維持するため、国際社会で勢力を拡大する中国の協力が不可欠なのでしょう。また、AIIBに取り入って、隙があれば骨抜きにしてしまうことぐらいは考えていることでしょう。今回の金融面でのコラボレーションは、米国側のそうした焦燥感を表しているようでもあります。




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