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【休日に読む】一尾仁司の虎視眈々(1):◆日中協調は是か非か◆

注目トピックス 経済総合
〇後追いの日本株調整、行き過ぎ感も〇
株価指標の前月比下落率を見ると、19日現在はNYダウ-3.64%、ナスダック-6.30%に対し、TOPIXは-2.07%だった。一週間後の26日現在は、NYダウ-6.43%、ナスダック-10.30%に対し、TOPIXは-12.42%となった。比較対象の9月後半に日本株上昇ピッチが強まっていたとは言え、日本株の景色が一週間で変わった。円ショートの手仕舞いに連動してか、とも思ったが、IMM先物建玉の買戻しピッチはそれ程加速しておらず、ドル円は110〜115円ゾーン内の動きにある(円の売り越しは10/9の11万5201枚から10/23現在は9万2804枚に減少)。

考えられる要素の一つは、安倍訪中に伴う日中「協調」路線への懸念。表面上の「友好策」を見ると、ここで中国に深入りすると中国経済の傾き加速時に巻き込まれるとか、米国の反発を招くとか、警戒論が目立つ。一方、少数派だが「日米役割分担」説もある。中国経済の破滅的解体はリーマンを超える衝撃を世界経済に与えると見られ、20年大統領選を目指すトランプ大統領も何らかの寛解策を中間選挙後に取って来るだろうとの見方だ。高関税貿易戦争が始まった頃にも、そういう見方があり、最初は楽観的だった。

劇的転換は対北朝鮮の先例があるが、メンツに拘る習主席は取り難く、米国の「軟」カードが乏しく、日本に役割が回ってきていると見る。傍証として挙げられるのは、安倍首相の「対話」相手は李克強首相で、習主席は形式的だったこと、日中為替スワップは既に基本合意されている「人民元決済銀行(クリアリングバンク)」への布石で、日本企業の資金出し入れを自由にする狙いがあると見られること、東シナ海での中国の暴発を防ぐ必要があること、インド太平洋戦略の基本路線不変は帰国後のインド・モディ首相歓待で示したこと、など。

米国ではボルトン大統領補佐官訪露の内容が徐々に明らかになって来ている。来年のプーチン露大統領のワシントン訪問を招請し、米ロで「戦略的安定に関する新たな条約」締結を目指す。いわゆるロシア疑惑で大幅に遅れたが、米ロで対中国への軍事的包囲圧力を増す方向性が中間選挙後に加速する可能性がある。

その部分を考慮すると、先週の悲観論は行き過ぎに思われる。26日の東証一部値下がり銘柄数は1500に達し、その半分以上の772銘柄が新安値更新。また、27日付ブルームバーグは「トレンド追随コンピュータ主導型ヘッジファンド、市場混乱で『惨敗』」と報じた。「唯一の出口は撤退で、今や全員がそうしようとしている」、「1-9月の成績が−1.6%、月初から19日までの下げ幅が4%弱〜9%強に達し、年初来の下げが二ケタに上った」などの内容。実は理由なく、機械的な調整(投げ)だった可能性もあるが、市場心理を冷やしたのは事実であろう。

今週は週末に米雇用統計と米貿易収支、その前に中国PMI発表などがある。来週の中間選挙を前に、売り方のポジション調整(買戻し)や行き過ぎた悲観論の修正が焦点になると考えられる。



出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(18/10/29号)



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