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【フィスコ・コラム】米共和党政権下で極端な円高は回避

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米大統領選の開票作業を見守るトランプ氏の、勝利間近の表情をとらえた画像に付けられた「やべえよ、(本当に当選したら)どうすんだよ」というキャプションがツイッター上で話題になりました。さすがに政治経験のない不動産王の大統領就任には政策や人事に関して大きな不安があります。ですが、共和党主流派と歩調を合わせた政権運営になるなら、日本にとって悪いことばかりでもありません。


大統領選から1週間あまり。民主党のクリントン氏優勢という選挙前のメディア報道と異なる結果に金融市場は一時的に荒れ模様となりましたが、今年6月の「ブレグジット」ほどの混乱はみられませんでした。それどころか「トランプ・リスク」はいつの間にか「次期政権への期待」に変わり、米金利上昇や株高を背景にドル・円は110円超のご祝儀相場となっています。政策には多分に不透明なところがあるものの、日本にとっては実はクリントン氏よりも「マシ」との話も聞かれます。


トランプ氏が大統領選を制したことは大金星といえますが、得票数ではクリントン氏がかなり上回っており、政権の求心力は決して強くありません。また、政治色に染まっていないことを売りに選挙戦を戦ったとはいえ、実際に共和党主流派との融和的なスタンスが不可欠であることを本人も認識していると推測できます。共和党内の有力者に近い同党全国委員長のラインス・プリーバス氏を主席大統領補佐官に起用する人事にそれがよく表れています。選挙期間中の過激な発言は支持層に向けたアピールであり、次第に封印されていくでしょう。

長期的にドル・円相場を決める要因となる日米関係については、環太平洋経済連携協定(TPP)や沖縄の基地問題といった懸案を抱えており、メディアで日米関係の将来を案じるコメントも散見されます。ただ、戦後70年以上の日米関係を振り返ると、共和党政権は日本に対し割合好意的に接してきた経緯があります。レーガン・中曽根時代、ブッシュ・小泉時代はいずれも共和党政権でした。激しい円高の後に凄まじい円安に振り回されたビル・クリントン時代の民主党政権は、日本にとってはビターな経験です。


先進国では米共和党、英保守党、豪自由党など保守系の政党間での交流があり、日本の自民党もそのグループに所属しています。その意味では、トランプ政権はアジア政策において中国よりも日本を重視する可能性が高いと思われます。巷間言われるトランプ政権の保護主義も、自由主義に置き換えられるのではないでしょうか。要は、日米両国が相互の重要性を確認できれば、金融政策などはそれに付随する問題として処理されるはずで、極端な円高や円安に振れるとは考えにくいということです。


大統領選を振り返ってみると、民主党から共和党への単なる政権交代だったとも言えます。既成政治を否定する側にあった共和党に有利な結果が出たということです。民主党が今回の敗北を糧に4年後、または8年後に党勢を回復できれば、それはそれで米国が健全な国である証明でしょう。

「吉池 威」



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