原油価格が右肩上がりになっている理由〜もっと知りたい商品先物取引(高井ひろえ)
[19/04/26]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 市況・概況
みなさんこんにちは!フィスコマーケットレポーターの高井ひろえです。足元で原油価格が右肩上がりで上昇しています。東京商品取引所(TOCOM)プラッツドバイ原油の先物価格は昨年12月の安値32890円を起点に上昇トレンドを描いており、4月24日時点では48000円近辺となっています。ちょうど昨年10月に下落する前の水準(58000円近辺)の半値を超えている状態です。相場の格言に「半値もどしは全値もどし」とありますが、この価格推移になっている理由に迫ります。
■イランの原油生産が減る
まず上昇している理由として、イランの原油生産が減るという見方があるからだと想定されています。報道によると、トランプ政権が22日、イラン産原油の全面禁輸に踏み切る方針を示したとのこと。「全面禁輸」とは、イランから原油を輸入している国に、米国が輸入の停止を全面的に求めるということです。米国がなぜこんなことをするのかというと、イランの外貨による収入源を断ち、ミサイル開発などを封じるためです。そもそも米国は、2018年11月にイラン産原油の輸入禁止を求めていましたが、日本など一部の国や地域には180日間の期限付きで適用の除外を認めていました。これに対して今回は例外を認めないと表明したのです。このためイラン産原油の供給が減るという見通しから原油価格が上昇しているとみられます。
■OPECの減産がそのまま原油価格上昇につながるわけではない
またOPEC(石油輸出国機構)が減産していることも原油価格の上昇につながっているといわれています。ただ、一方で非OPEC(石油輸出国機構に属していない主要産油国で構成)のリーダーであるロシアはOPECとの協調減産に取り組んではいるものの、その継続には消極的で、協調減産からの離脱もあり得るとの報道がされています。ロシアは2018年の産油国ランキングで3位と高い生産水準を維持しています。そんなロシアは非OPECの中でも重要な位置を占めるので、ロシアの離脱は今後の原油価格に大きな影響を及ぼすと考えられます。原油輸出国にとって減産は大きな決断になります。なぜなら減産は原油価格の維持に寄与する一方で、本来得られるはずの外貨を「いりません」ということになるからです。また、米国は原油の生産量を増やしているので、自国の生産量を減らせば米国へシェアを渡すことになります。ちなみに米国は2018年の産油国ランキングで45年ぶりに1位になりました。
■減産国はこれ以上減産できるのか?
それでは、減産に参加しているOPEC加盟11か国全体の原油生産量について見てみましょう。足元の生産量は、協調減産を開始した2017年1月以降の最低水準まで減ってきています。これ以上減らすことはできるのでしょうか?実は今まで、世界最大級の産油国であるサウジアラビアが減産をしていたので、11か国全体の生産量の水準も下がっていました。しかし、今後ともサウジアラビアが減産幅を広げられるかは難しいところなのかもしれません。先述の通り、生産量を減らせばその分だけ米国にシェアを奪われてしまいますし、外貨獲得の機会を逃すことになるからです。
■連休明けのイベントに注目
すでに説明したように、イランの原油減産への思惑など価格上昇要因だけでなく、ロシアの減産に対する消極的な態度といった下押し圧力もあり、これらを踏まえた結果、足元の価格は上昇しているということがわかりました。今後の注目イベントとしては、5月19日の減産監視委員会(減産に参加しているOPECプラスの一部の国で構成する組織)や6月25、26日のOPEC定時総会があります。産油国にとって減産をするかどうかは悩みどころだとお伝えしましたが、まさにその決断をするべきタイミングが上記のイベントになります。また5月初めには米国雇用統計や中国PMIも公表されるので、連休明けは価格が大きく動く可能性があります。注目してまいりましょう。
フィスコマーケットレポーター 高井ひろえ
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■イランの原油生産が減る
まず上昇している理由として、イランの原油生産が減るという見方があるからだと想定されています。報道によると、トランプ政権が22日、イラン産原油の全面禁輸に踏み切る方針を示したとのこと。「全面禁輸」とは、イランから原油を輸入している国に、米国が輸入の停止を全面的に求めるということです。米国がなぜこんなことをするのかというと、イランの外貨による収入源を断ち、ミサイル開発などを封じるためです。そもそも米国は、2018年11月にイラン産原油の輸入禁止を求めていましたが、日本など一部の国や地域には180日間の期限付きで適用の除外を認めていました。これに対して今回は例外を認めないと表明したのです。このためイラン産原油の供給が減るという見通しから原油価格が上昇しているとみられます。
■OPECの減産がそのまま原油価格上昇につながるわけではない
またOPEC(石油輸出国機構)が減産していることも原油価格の上昇につながっているといわれています。ただ、一方で非OPEC(石油輸出国機構に属していない主要産油国で構成)のリーダーであるロシアはOPECとの協調減産に取り組んではいるものの、その継続には消極的で、協調減産からの離脱もあり得るとの報道がされています。ロシアは2018年の産油国ランキングで3位と高い生産水準を維持しています。そんなロシアは非OPECの中でも重要な位置を占めるので、ロシアの離脱は今後の原油価格に大きな影響を及ぼすと考えられます。原油輸出国にとって減産は大きな決断になります。なぜなら減産は原油価格の維持に寄与する一方で、本来得られるはずの外貨を「いりません」ということになるからです。また、米国は原油の生産量を増やしているので、自国の生産量を減らせば米国へシェアを渡すことになります。ちなみに米国は2018年の産油国ランキングで45年ぶりに1位になりました。
■減産国はこれ以上減産できるのか?
それでは、減産に参加しているOPEC加盟11か国全体の原油生産量について見てみましょう。足元の生産量は、協調減産を開始した2017年1月以降の最低水準まで減ってきています。これ以上減らすことはできるのでしょうか?実は今まで、世界最大級の産油国であるサウジアラビアが減産をしていたので、11か国全体の生産量の水準も下がっていました。しかし、今後ともサウジアラビアが減産幅を広げられるかは難しいところなのかもしれません。先述の通り、生産量を減らせばその分だけ米国にシェアを奪われてしまいますし、外貨獲得の機会を逃すことになるからです。
■連休明けのイベントに注目
すでに説明したように、イランの原油減産への思惑など価格上昇要因だけでなく、ロシアの減産に対する消極的な態度といった下押し圧力もあり、これらを踏まえた結果、足元の価格は上昇しているということがわかりました。今後の注目イベントとしては、5月19日の減産監視委員会(減産に参加しているOPECプラスの一部の国で構成する組織)や6月25、26日のOPEC定時総会があります。産油国にとって減産をするかどうかは悩みどころだとお伝えしましたが、まさにその決断をするべきタイミングが上記のイベントになります。また5月初めには米国雇用統計や中国PMIも公表されるので、連休明けは価格が大きく動く可能性があります。注目してまいりましょう。
フィスコマーケットレポーター 高井ひろえ
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