ウィルグループ Research Memo(4):業種特化と「ハイブリッド派遣」で急成長
[14/06/25]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■会社概要
(3)事業の特長
(a)ハイブリッド派遣
ハイブリッド派遣、ウィルグループ<6089>の最も特徴的な仕組である。派遣の際に同社の正社員が派遣スタッフと一緒に派遣現場に就業する。割合は原則として派遣スタッフ30人に正社員ひとりとなっている。正社員は「フィールドサポーター」と呼ばれ、派遣現場でスタッフ同様の仕事をするほか、スタッフのマネジメントも行う。同社の事業全体に占める「ハイブリッド派遣」の割合は、連結売上高の割合で40.4%(2014年3月期)を占める。
同社は人材派遣で後発といえるが、「ハイブリッド派遣」の持つメリットによって、他社のシェアを奪って成長を続けている。
そのメリットは、大きく3つある。第一は、派遣スタッフのスキルと士気の向上である。正社員が一緒に仕事をすることで、スタッフの士気が上がる効果が得られる。また、正社員が現場で指導することによって、スキル向上も期待できる。
第二は、派遣先の増員要請に素早く対応できることである。大企業の場合、派遣に関係する部署は概ね2か所ある。一つは現場である。現場の稼働率などを見極めながら、現場責任者が派遣人員の調整を決断する。もう一つは、労務・人事部門の担当者である。こちらは現場責任者からの要請を受けて、派遣会社に派遣人員の発注をする。
通常、派遣会社は、労務・人事担当者と商談を行う。しかし、「ハイブリッド派遣」の場合、派遣先の現場に正社員が常駐しているので、派遣人員の増員などの情報が現場責任者からいち早く把握することができる。そのため、労務・人事担当者からの正式なオファーが来る前に先行して人材を確保しておくことができ、人材大手の人材動員力に対抗することができる。さらに、正社員が実際に現場で働くことで現場責任者との信頼関係も築くことができ、実際の受注もしやすくなる。場合によっては、現場責任者から労務・人事担当者に推薦してもらうこともある。
第三は、派遣を業務請負に移行させる事例が拡大できることである。事業戦略の説明で改めて説明するが、派遣よりも業務請負のほうが利益率は高い。同社としては、派遣先の派遣スタッフ数を増やしていくことによって、やがては業務全体を丸ごと請負うことを目指している。ハイブリッド派遣によって、現場責任者との信頼関係を育むことによって、請負への移行もスムーズに行える。
3つの大きなメリットのほかにもメリットがある。たとえば、ハイブリッド派遣は営業力の強さにも結び付く。同社では営業を行う正社員もフィールドサポーターとして現場での作業経験を積んでいる。このため、現場の事情に精通しており、これを営業に活かして受注に結び付けやすい面がある。
なお、ハイブリッド派遣が他社でも容易に行えるかといえば、そうでないことは想像に難くない。他の人材会社では営業との機能分化が進んでおり、派遣の現場仕事をできる体制になっていない。同社のような理念や環境が整っていなければ、現場社員の退職という形でうまく機能しないと想定し得る。
ただ、ハイブリッド派遣は、メリットだけではない。派遣スタッフが少数の場合には、採算割れとなるリスクもある。スタッフと一緒に現場に就業する正社員の人件費は当然、派遣先からは出ない。そのため、派遣スタッフの規模が小さすぎると、正社員の人件費をカバーできない。
同社は派遣スタッフ30人にフィールドサポーターひとりを原則としていると説明したが、それは、単に現場でマネジメントしやすい人数という意味だけではない。スタッフが30人以下になると、採算割れの恐れがあるためである。
ハイブリッド派遣を業務請負に移行させる重要性は、利益率の向上という意味もあるが、一方で、業務請負ならば、フィールドサポーターの人件費も請負先から出してもらえるという意味もある。
しかし、このような不採算案件の割合は新規案件の一部や製造ラインの変更、製造品目の変更といった例でわずかに起こる程度であり、全体の2〜3%にとどまる。また、これらも着実に業務をこなしていくことによって、そう遅くない時期に派遣スタッフの増員につながり、採算割れが解消される。
(b)業種特化型ビジネスモデル
業種特化型にすることによって、総合的なサービスを提供している大手企業に比べて、手厚い対応ができるメリットがある。たとえば、コールセンターアウトソーシング事業では、特化型のメリットを享受しやすい。
大手人材会社の場合、コールセンターのオペレーターの派遣は、オフィス系業務の派遣のなかの一部として扱っているのが一般的である。また、コールセンターのオペレーターの派遣については、人材育成の難しさやオペレーターの定着率の低さなどから、大手人材会社の場合はあまり積極的には展開していない。つまり、コールセンターのオペレーター派遣は、ある意味でニッチ市場であるといえ、そこに特化することで、大手との競合が避け、顧客からの受注率が高まる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柄澤邦光)
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