ルネサスイーストン Research Memo(8):自動車・産業向けデザイン−イン活動強化でルネサスと協業
[14/06/25]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■同社の強みと特徴
ルネサスイーストン<9995>の強み、特徴として、同社自身は以下のような点を挙げている。これらの各ポイントは、同社の1つの大きな特徴と強みをわかりやすいように小口に分けて説明したもの、というのが弊社の理解だ。同社の日々の業務においてはそれぞれが密接につながっており、相乗効果を生み出しやすい構造になっていると弊社では考えている。
1.それぞれの業界でトップクラスの強みを持つ有力企業を顧客として掴んでいる営業力
2.ルネサス エレクトロニクス、日立製作所との強固なパイプ
3.成長が期待できる自動車分野、産業分野向けに強い
4.国内外での顧客に密着した拠点展開
5.ソフト開発力・LSI開発力を有する技術商社
6.仕入専門部隊をもち、全社一元在庫管理を実施している
・「デザイン−イン」活動でルネサス エレクトロニクス製品を積極的にプッシュ
同社はルネサス エレクトロニクスの直下の16社の販売代理店のなかで、トップクラスの取扱量・販売実績を有する販売代理店として、ルネサス エレクトロニクス製品の拡販に注力している。顧客が新製品を設計する段階で顧客ニーズを満たすソリューション提案を行い、同社の扱う製品を新製品の仕様に組み込む営業活動を、「デザイン−イン」活動と呼称し、その強化を図っている。特に、自動車分野と産業分野に注力して、このデザイン−イン活動を行っている。
2014年3月期の「自動車」と「産業」の2つの分野向けデザイン−イン活動の実績値は72,200百万円だった。その内訳は、マイコンが50,200百万円、汎用品が22,000百万円で、付加価値の高いマイコンの構成比が圧倒的に高い状況となっている。2015年3月期はこの値を75,700百万円 (前期比4.8%増)に増大させる計画だ。なお、デザイン−イン活動の実績値は、その年に契約がまとまった金額であって、売上計上は複数年にまたがるケースが多い。したがって、単年のデザイン−イン実績値はルネサス エレクトロニクス製品売上高を大きく上回ることも珍しくない。デザイン−イン実績値は将来の売上動向を占う上での重要指標ともとらえることができる。
・ルネサス エレクトロニクスと軌を一にする事業戦略
同社のこうした事業戦略や強化ポイントが、ルネサス エレクトロニクスの方針と軌を一にしているという点は重要なポイントだと弊社では考えている。同社の立場を考えれば当然という見方をする向きもあろうが、必ずしもそうとは言い切れないのが事業の難しいところだ。しかし、同社とルネサス エレクトロニクスは、「自動車」と「産業」が自分たちの事業にとっての成長分野であり、収益成長ドライバの中核の役割を担っていると考えて、製品開発、競争力強化に努めている。すなわち、製品供給元が注力分野として競争力ある製品を開発し、それを販売会社の自社の注力分野・注力製商品として販売するという流れが確立している。この結果、例えば、同社の顧客向け営業活動において、ルネサス エレクトロニクスのエンジニアが開発者の立場から説明・プレゼンを行う、といった協業が自然にできており、営業面でのシナジー効果を生み出している状況だ。
・日立グループとの強固な関係は製品仕入れのみならず販売先としても貢献
同社にとってのもう1つの強固な関係先である日立製作所グループは、商品仕入先としての関係はもちろんであるが、商品販売先としても非常に大きな位置を占めている。同社にとっての最大の単一顧客は日立オートモティブシステムズとなっている。
日立オートモティブシステムズは日立製作所内の自動車向け事業を担っていたオートモティブシステムグループが2009年に分社化して設立された新しい企業である。しかし、事業の始まりは1930年にまで遡り、今日までエンジン制御システム、エレクトリックパワートレインシステム(電気自動車関連のシステム)、走行制御システム、車載情報システムなどの分野で実績を積み重ねてきている。2013年3月期の売上高は806,847百万円と公表されている(製品のエリアが異なるため、単純な比較は難しいが、業界最大手のデンソー<6902>の同年度売上高は3,580,923百万円)。
日立オートモティブシステムズの顧客ベースは日産自動車<7201>以外にもホンダ<7267>や米GMなどにも拡大しており、自動車のエレクトロニクス化の進展の流れの中で一段の成長が期待されている。その最重要パーツ(半導体チップ)の供給者として同社が存在している。
・コンセプト−イン活動で日立オートモティブシステムズの営業を間接的にサポートしシナジーを追及
同社は「コンセプト−イン」活動に注力している。これは同社の技術系営業部隊約140名がLSI開発やソフト開発、技術サポートなどの強みを生かしながら、顧客の企画・設計段階から入り込んでサポートし、最適の商品を提案するというデザイン−イン活動の一つの営業形態だ。
日立オートモティブシステムズを例にとると、コンセプト−イン活動は、直接的には同社の商品を日立オートモティブシステムズに採用を働きかける活動である。一方、日立オートモティブシステムズの活動は、いかにして完成車メーカーに自社製品を受け入れてもらえるかの商品作りであり、そこに同社が企画・設計段階から関わってベストな商品(半導体集積回路やソフトウエアなど)を提案することは、日立オートモティブシステムズの製品の魅力を高めることに貢献し、同社製品の売り込みにも貢献していることになる。
また、日立オートモティブシステムズは完成車メーカーの企画・開発段階から関わって製品開発を進めている(いわば、日立オートモティブシステムズによる「コンセプト−イン」活動)はずであり、同社は間接的にせよ、完成車メーカーの意向を感じながら製品開発をルネサス エレクトロニクスにフィードバックすることが可能になる。
以上のように、同社はルネサス エレクトロニクスや日立製作所との強固な関係や優良顧客を有するということに安住することなく、自社を中心として仕入先と直接販売先を1つの大きなまとまりとし、全体として収益拡大が実現できるように、その集団にとってのいわば潤滑油あるいは触媒のような働きをしている。こうしたことを意図してできるところに、大手企業グループと関係の近い同社の真の価値があると弊社ではみている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)
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