メディシス Research Memo(3):2015年3月期第2四半期累計の連結業績、利益ベースで期初会社計画を上回る
[14/12/10]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■業績動向
(1)2015年3月期第2四半期累計業績
10月31日付で発表された2015年3月期第2四半期累計の連結業績は、売上高が前年同期比18.0%増の35,911百万円、営業利益が同26.4%減の888百万円、経常利益が同27.5%減の850百万円、四半期純利益が同46.7%減の230百万円となった。期初会社計画と比較すると、売上高は若干下回ったものの、利益ベースではいずれも上回る格好で着地した。
売上高の増収要因は、2013年11月に子会社化したTMSの売上高が上乗せされた効果が大きい。一方、営業利益の増減要因を事業別で見ると、調剤薬局事業の減益が262百万円と大半を占めており、医薬品等ネットワーク事業を除くすべての事業セグメントが減益要因となった。
調剤薬局事業に関しては、前期に実施したM&Aの収益貢献があったものの、今年は2年に1度の薬価、調剤報酬改定年に当たり、この影響で既存店舗の収益が落ち込んだことに加えて、本部費用の増加などが減益要因となった。なお、本部費用には子会社化したTMSの本部費用も含まれている。薬価の改定年度の4〜9月期は例年、収益性が落ち込む傾向にあり、今回もほぼ想定どおりの動きだったと言えよう。
売上原価率が前年同期の64.8%から62.3%に低下し、逆に販管費率が31.2%から35.2%へ上昇したが、これは主に調剤薬局事業において消費税率引き上げによる負担増(=販管費率上昇要因)を緩和するために、薬価差益が拡大(=原価率の低下要因)する方向で薬価改定率を調整した影響が大きい。(注)また、特別損益が約100百万円悪化したが、これは店舗資産などの減損損失(163百万円)が拡大したことによるものである。また、販管費率に関しては、M&Aによって人件費率が18.3%から19.9%へ上昇したことも要因の1つとなっている。
(注)薬局は医薬品の仕入れにおいては消費税を負担するが、販売時には消費税がかからないため、消費税率の上昇分がコストアップ要因(租税公課の増加)となる。このため、増税による薬局の負担を緩和するために、薬価差益(販売価格−仕入価格)が拡大する方向で薬価を改定した。
事業セグメント別の動向は以下のとおりとなる。
○医薬品等ネットワーク事業
医薬品等ネットワーク事業の売上高は前年同期比6.9%減の1,353百万円、営業利益は同2.9%増の737百万円となった。システム販売が減少した一方で、利益率の高い受発注手数料収入が増収となったことが増益要因となった。
2014年9月末の加盟店舗数は前年同期比で32店舗減の1,053店舗となったが、前述したように大口先1グループ(230店舗)が脱退した影響が大きい。この影響で医薬品の発注取扱高も前年同期比16.5%減の44,463百万円と大きく落ち込んだ。それでも、受発注手数料が増収となったのは、脱退した大口先の手数料率が低く、新規加盟先の手数料でカバーできたことが要因となっている。
一般加盟店の加盟件数について大口先を除いたベースで見れば、2013年9月末の573店舗から2014年3月末は612店舗、2014年9月末は722店舗となっており、直近半年間の増加数は110店舗と半期ベースで過去最高の加入ペースとなっている。
加盟件数が急増した要因としては、2点挙げられる。第1に、医薬品卸との仕入価格交渉の妥結期間に、薬価改定から9月30日までという一定の期限が新たに設けられたことが挙げられる。同期限までに50%以上の品目について妥結していない薬局に関しては、ペナルティとして診療報酬が引き下げられることになった。買い手側にペナルティが付せられることになったことで、仕入れ価格交渉では特に20〜30店舗を運営する中堅規模の薬局が厳しくなると言われている。従来は、こうした中堅規模の薬局でも価格交渉を引き延ばすことによって、大手チェーン店並みの仕入価格で妥結するところもあったためだ。
価格交渉期限が設けられたことで中堅規模の薬局は仕入価格交渉が厳しくなり、大手企業のグループに入ることや、メディカルシステムネットワーク<4350>のネットワークに加盟することが生き残りを図るための有力な選択肢となってきたことが、加盟件数の増加要因になったと見ることができる。実際、同社のネットワークに加盟する企業も従来は、3〜5店舗程度の薬局を運営する企業が多かったが、ここ最近では10〜20店舗を運営する中堅規模の会社が増加し始めている。
2つ目の要因として考えられることは、2014年4月の薬価改定の結果を待って、加盟するかどうかを決める薬局が一定数あったことが考えられる。実際、2014年3月期の一般加盟店の増加件数は年間で78件と前年の133件からペースダウンしている。このため、10月以降の増加ペースが注目されるところだが、同社では引き続き同じペースで加盟件数が増加するものと見ている。
○調剤薬局事業
調剤薬局事業の売上高は前年同期比16.6%増の34,061百万円、営業利益は同24.4%減の813百万円となった。前述したように売上高はTMS等のM&Aによる店舗数拡大効果によるところが大きく、利益面では薬価改定及び調剤報酬改定等の影響が減益要因となった。
当第2四半期累計期間における出店状況は、新規出店が6店舗、株式取得で3社(9店舗)、事業譲受で1店舗を取得した一方で、不採算店舗を6店舗閉鎖した。9月末時点の店舗数は調剤薬局が331店舗(休止中の1店舗を除く)となり、前年9月末比で49店舗の増加となっている。今回、M&Aで取得した企業のうち、7月にグループ入りした滋賀県を地盤とする(有)メディカルブレーンは全7店舗で在宅に積極的に取り組んでいるほか、介護事業所や介護用品のレンタル事業なども展開するなど、地域医療に根差した事業運営を行っている会社であり、同社が今後目指す方向となっている。
売上高のうち既存店の状況を見ると、調剤報酬が前年同期比0.9%増と会社計画の0.6%減を上回る格好となった。内訳は処方箋枚数が0.3%増、処方箋単価が0.7%増となっている。処方箋単価は技術料単価で0.6%、薬剤料単価で0.7%それぞれ上昇している。技術料単価に関しては、加算要因となる後発医薬品調剤体制加算取得店舗数や、基準調剤加算取得店舗数が順調に増加したことが要因となっている。
その他、間接コストの削減を図るため、エリア子会社の集約化を進めた。4月に(株)サンメディック(存続会社)と(株)富岡調剤薬局(消滅会社)を合併したほか、7月には(株)シー・アール・メディカル(存続会社)と(有)エムシーエス(消滅会社)、TMS(存続会社)と(株)九州ファーマシー(消滅会社)をそれぞれ合併している。
○賃貸・設備関連事業
賃貸・設備関連事業の売上高は前年同期比15.0%増の715百万円、営業損失が21百万円(前期は6百万円の損失)となった。不動産賃貸収入が増加する一方で、平成25年5月に開業したサ高住「ウィステリア清田」(札幌市清田区)にかかる減価償却費の先行及び今後の「サ高住」新設のため、人員体制強化を図ったことによる人件費増が減益要因となった(9月末の従業員数は前年同月比19名増の67名)。
2件目の「サ高住」物件である「ウィステリア清田」の入居状況は、9月末時点で全75戸中55戸と、おおむね順調に推移ししており、採算ラインの60戸まであと一歩のところまできている。
○給食事業、その他事業
TMSの子会社化で新たに追加された給食事業は、売上高が967百万円、営業損失が6百万円となった。TMSを子会社化する際の条件として、給食事業に関しては、2015年3月期、2016年3月期のいずれかにおいて営業利益ベースで赤字となった場合、TMSの代表取締役社長である大野繁樹(おおのしげき)氏に400百万円+ネットキャッシュ(現預金−有利子負債)で売却できる旨の条件を付している。四半期ベースで見ると子会社化以降、10百万円前後の営業損失が続いていたが、第2四半期は初めて3百万円の黒字に転じている。
また、その他事業は、子会社の(株)エスエムオーメディシスで展開する治験施設支援業務となるが、売上高は前年同期比24.9%減の92百万円、営業損失が37百万円(前年同期は6百万円の営業利益)となった。北海道で事業展開しているが、治験内容の変化により新規案件の組入が遅延したこともあり、低調に推移した。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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