カイオム Research Memo(8):ADLib(R)システムは従来比で大幅な種類の抗体作製が可能
[14/12/29]
提供元:株式会社フィスコ
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■会社概要
(1)ADLib(R)システムとは
カイオム・バイオサイエンス<4583>のコア技術であるADLib(R)システムとは、理研によって2002年に開発された抗体作製技術で、現在は同社と理研で特許を持っている(保有割合は50%ずつ)。ADLib(R)システムによる抗体作製法を簡単に説明すると、まずニワトリ由来の培養細胞株であるDT40細胞が持つ抗体遺伝子の組み換えを活性化することにより、抗体タンパクの多様性を増大させ、目的の抗原に結合する細胞のみを磁気ビーズに付着して回収し、その後1週間程度培養することによって所望の抗体を獲得する、といった手順となる。
現在、上市されている抗体医薬品は、既存の抗体作製技術であるマウスハイブリドーマ法やファージ・ディスプレイ法で作製された抗体によるもので、これら既存技術とADLib(R)システムとの違いは表のとおりとなっている。
このうち「困難抗原への対応」とは、従来法では抗体作製が困難であった病原毒素や生物種間で進化的に保存されたタンパク質などに対して、ADLib(R)システムで抗体作製を実現していることを指す。困難抗原の典型としては、医薬のターゲットとして最も注目されているGPCR(Gタンパク質関連受容体)がある。構造が複雑で、抗体作製は困難とされてきた分子群であり、現在はこうした分子群に対して効果を示す低分子医薬品が上市されている(例:抗潰瘍剤「ガスター」、抗ヒスタミン剤「クラリチン」等)。こうした困難抗原は数百種の存在が知られており、それらに対する抗体作製が可能となれば、抗体医薬品市場の裾野が広がることを意味し、ADLib(R)システムが従来法と比較して最も優位性を持つ点と言うことができる。
また、ADLib(R)システムでは、DT40細胞が持つ独自の多様化メカニズムや遺伝子の人工配列を導入することなどにより、従来法と比較して大幅な種類の抗体を作製することが可能となっており、理論上は無限の「多様性」を有する技術となっている。
医薬品開発では探索から上市までの期間が短いほど、患者に新薬を早く提供することができるとともに、売上高の増大に寄与する。特許の期限が20年と限られているためだが、抗体作製期間が短いほど、探索から上市までの期間を短縮できる可能性があり、ADLib(R)システムの長所と言えよう。
従来、課題とされてきた完全ヒト抗体の作製に関しては、2014年3月に実用化レベルでの技術が完成したことを発表しており、ヒトADLib(R)システムは本格的な事業化に向けためどが立ったと言えよう。なお、完全ヒト抗体ADLib(R)システムとは、DT40細胞の持つニワトリ抗体の遺伝子をヒト人工遺伝子に置換し、ヒト抗体として医薬候補抗体の取得を実現する技術となる。この完全ヒト抗体の実用化に関しては、既存法との比較で唯一遅れていた部分でもあるだけに、今後の事業展開に向けては意義の大きい進歩であったと言えよう。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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