サンコーテクノ Research Memo(5):あと施工アンカーの需要は堅調、ドリル・カッター類も好調
[15/01/21]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■各事業の動向
(1)ファスニング事業
サンコーテクノ<3435>のファスニング事業の需要ドライバは建設需要だ。2015年第2四半期の新設住宅着工は前年比マイナス基調となっている。これは、消費増税の反動減でマンション建設が減少したためと弊社では推定している。こうした状況にもかかわらず、同社ファスニング事業部門の収益は堅調が続いている。この理由は、あと施工アンカーが使用されるのが、建築物の工期のなかで、半ばから後半にかけて使用されることが多いためだ。いま同社から出荷されているあと施工アンカーは、規模にもよるが3ヵ月〜1年前に着工された建築物であると考えられる。
足元の建築着工がマイナスで推移していることは、1年後の同社の業績が落ち込むことを示唆するのかというと、必ずしもそうではない。あと施工アンカーは、ビルの新築とリフォームとでは、リフォームの方が圧倒的に多く使用される。新築ビルにおいてはアンカーボルトを先に埋め込むことが可能であるのに対して、リフォームではビルの躯体はそのままに機器や設備だけを動かして固定することになるためである。東京オリンピックに向けて大型建設プロジェクトや再開発プロジェクトは絶え間なく進行しており、また、既存ビルのリフォーム工事なども加速してくると考えられるからである。
同社のあと施工アンカーに対する需要は堅調だ。巷では建設資材の値上がりや建設労働者の不足などが言われているが、同社のあと施工アンカーも例外ではない。しかし販売価格については値上げをしていない。現況における原料と製品の価格スプレッドはきちんと確保されているため、生産における量産効果で、利幅は拡大基調にある。利益の絶対額も数量増加で伸びている。2015年3月期の第2四半期のファスニング事業の売上高は6,568百万円(前年同期比9.9%増)、営業利益は552百万円(同33.7%増)となった。営業利益率は8.4%で、前年同期の6.9%から1.5%ポイント拡大している。
ファスニング事業で投資家が注目するポイントとして、建設と土木の比率や官公需と民需の比率というものがある。この点について同社では、詳細を把握していない。この回答は情報開示を拒んでいるのではなく正直な答えであると弊社では考えている。なぜなら、あと施工アンカーのような資材は、元請のゼネコンが発注するケースはほとんどなく、現場で施工する下請け業者からの発注が中心となるため、最終的にどこに使用されるか、同社では把握のしようがないためだ。弊社では建築向け需要が土木需要を圧倒的に上回っているということは間違いないとみている。
同社自体は自社の製品を建築用、土木用と限定しているわけではないが、土木工事で利用可能な製品のラインナップが少ないことは同社も認めるところだ。それは、土木工事特有の流通ルートや、製品認定などの仕組みが存在しているためである。これはJRやJHなど大型土木工事の発注主体となる企業で顕著である。同社も中期的にはこの市場を開拓して行く意向を強く有しており、他社との協業などを通じて新製品や新工法の開発と認定取得に注力している。実際の例では、JR東日本<9020>と共同で開発した「一面耐震補強工法」や、「ゆるみ止めナット」で強みを持つ(株)冨士精密と共同で新製品「メタルセーフアンカー」を開発し認証を取得した例などがある。また同社は、公益財団法人高速道路調査会主催の「ハイウェイテクノフェア2014」に出展し、「メタルセーフアンカー」など同社製品を高速道路工事において活用できることをアピールした。
ファスニング事業で最近注目されるのが、ドリルや電動油圧工具(カッター)類だ。ドリルはあと施工アンカーを埋め込むためにコンクリートに穴を開けるために使用されるが、穴あけが正確になされないと、所期の強度が実現されないリスクがある。また、カッターは鉄筋のせん断に利用され、作業効率向上には不可欠だ。足元の注目ポイントはこれらの機材の販売が内外ともに好調なことだ。特に輸出においては円安の恩恵で価格競争力が増したことで予想以上に伸びているものと弊社ではみている。海外販売の動向については後述する。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)
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(1)ファスニング事業
サンコーテクノ<3435>のファスニング事業の需要ドライバは建設需要だ。2015年第2四半期の新設住宅着工は前年比マイナス基調となっている。これは、消費増税の反動減でマンション建設が減少したためと弊社では推定している。こうした状況にもかかわらず、同社ファスニング事業部門の収益は堅調が続いている。この理由は、あと施工アンカーが使用されるのが、建築物の工期のなかで、半ばから後半にかけて使用されることが多いためだ。いま同社から出荷されているあと施工アンカーは、規模にもよるが3ヵ月〜1年前に着工された建築物であると考えられる。
足元の建築着工がマイナスで推移していることは、1年後の同社の業績が落ち込むことを示唆するのかというと、必ずしもそうではない。あと施工アンカーは、ビルの新築とリフォームとでは、リフォームの方が圧倒的に多く使用される。新築ビルにおいてはアンカーボルトを先に埋め込むことが可能であるのに対して、リフォームではビルの躯体はそのままに機器や設備だけを動かして固定することになるためである。東京オリンピックに向けて大型建設プロジェクトや再開発プロジェクトは絶え間なく進行しており、また、既存ビルのリフォーム工事なども加速してくると考えられるからである。
同社のあと施工アンカーに対する需要は堅調だ。巷では建設資材の値上がりや建設労働者の不足などが言われているが、同社のあと施工アンカーも例外ではない。しかし販売価格については値上げをしていない。現況における原料と製品の価格スプレッドはきちんと確保されているため、生産における量産効果で、利幅は拡大基調にある。利益の絶対額も数量増加で伸びている。2015年3月期の第2四半期のファスニング事業の売上高は6,568百万円(前年同期比9.9%増)、営業利益は552百万円(同33.7%増)となった。営業利益率は8.4%で、前年同期の6.9%から1.5%ポイント拡大している。
ファスニング事業で投資家が注目するポイントとして、建設と土木の比率や官公需と民需の比率というものがある。この点について同社では、詳細を把握していない。この回答は情報開示を拒んでいるのではなく正直な答えであると弊社では考えている。なぜなら、あと施工アンカーのような資材は、元請のゼネコンが発注するケースはほとんどなく、現場で施工する下請け業者からの発注が中心となるため、最終的にどこに使用されるか、同社では把握のしようがないためだ。弊社では建築向け需要が土木需要を圧倒的に上回っているということは間違いないとみている。
同社自体は自社の製品を建築用、土木用と限定しているわけではないが、土木工事で利用可能な製品のラインナップが少ないことは同社も認めるところだ。それは、土木工事特有の流通ルートや、製品認定などの仕組みが存在しているためである。これはJRやJHなど大型土木工事の発注主体となる企業で顕著である。同社も中期的にはこの市場を開拓して行く意向を強く有しており、他社との協業などを通じて新製品や新工法の開発と認定取得に注力している。実際の例では、JR東日本<9020>と共同で開発した「一面耐震補強工法」や、「ゆるみ止めナット」で強みを持つ(株)冨士精密と共同で新製品「メタルセーフアンカー」を開発し認証を取得した例などがある。また同社は、公益財団法人高速道路調査会主催の「ハイウェイテクノフェア2014」に出展し、「メタルセーフアンカー」など同社製品を高速道路工事において活用できることをアピールした。
ファスニング事業で最近注目されるのが、ドリルや電動油圧工具(カッター)類だ。ドリルはあと施工アンカーを埋め込むためにコンクリートに穴を開けるために使用されるが、穴あけが正確になされないと、所期の強度が実現されないリスクがある。また、カッターは鉄筋のせん断に利用され、作業効率向上には不可欠だ。足元の注目ポイントはこれらの機材の販売が内外ともに好調なことだ。特に輸出においては円安の恩恵で価格競争力が増したことで予想以上に伸びているものと弊社ではみている。海外販売の動向については後述する。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)
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