ダイナック Research Memo(4):高付加価値業態の強化・シフト加速のもと新規店舗を出店
[15/03/10]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■事業戦略と中期経営計画における重点施策
ダイナック<2675>は2015年12月期を最終年度とする3ヶ年中期経営計画を遂行中である。今中期経営計画の目標として、「優良な事業ポートフォリオを活かし、付加価値の高い分野の業容拡大・店舗数拡大」と「スケールメリット、ブランド強化を実現し、高収益構造への変革」を掲げている。そしてこの実現のために以下の4つのポイントを具体的なアクションプランとして取り組んでいる。
ポイント1 『受託ビジネスの着実な受注』
受託ビジネスは、参入障壁が高く投資効率も良いため、同社が持つ高いブランド力とスケールメリットを活かせる分野と位置付けて強化拡大中である。前述のように、既にゴルフクラブレストランでは国内トップクラスの運営実績を誇るが、近年は文化施設や宗教関連施設、地方自治体関連など新たな領域にも展開している。
ポイント2 『高付加価値業態の強化・業態シフト加速』
同社の店舗は、元来、食事やサービスの質を若干高めた高付加価値型に位置してきた。今中期経営計画の中では、そうした高付加価値業態は従来どおり維持しながら、立地・物件の厳選、高付加価値小型業態の投入、他社とのブランド協業業態の開発などに取り組んでいる。
「立地・物件を厳選した確実な出店」の例では東京駅にリニューアルした「THE OLD STATION Tokyo Beer & Grill」がある。坪当たり月商が30万円(2014年12月実績)を超える超繁盛店となっている。
「戦略業態の出店加速」というテーマでは「魚盛」の例が挙げられる。「魚盛」は魚料理の店舗として好調な売上を続けており、同社にとっては新規エリアとなる堂島と浦和に2点続けて出店し、ともに坪当たり月商20万円(2014年12月実績)を超える繁盛店となっている。
「低投資の小型業態」というテーマでは「とりやき 源氣」や「HIGHBALL’S」が挙げられる。「とりやき 源氣」は2014年1月、2月に20坪未満の店舗を町田と大森に出店以来、じっくりと検証を重ねてきたが、満を持して2015年2月3日に3号店を綱島に出店した。「HIGHBALL’S」も2014年7月に上野駅構内に出店して以降、検証を重ねてきたが、2015年1月に2号店を浜松町に出店した。
上記以外にもコラボ業態の「ラ・メール・プラール」を岡山の大型商業施設「イオンモール岡山」に2号店を出店した。出店当初ということもあって、2014年12月は51坪で月商23百万円(2014年12月実績)を稼ぐ、超繁忙状態となった。また、大阪梅田にはこだわりのバーボンと熟成肉を売り物とするパブ「THE AGING HOUSE 1795大阪マルビル店」を出店した。こちらも24坪で月商7百万円(2014年12月実績)と好調が続いている。
ポイント3 『基盤となる機能・サービスの革新』
このポイントの要は会員組織「倶楽部ダイナック」を活用したブランディング強化とリピーター率の向上だ。倶楽部ダイナックの会員は、飲食代金の10%相当のポイントを獲得することができ、一定の数に達すれば飲食代金に充当できる。2014年12月末現在、会員数は23万人、2014年度の会員売上高は7,500百万円(レストラン・バー売上高の約4分の1)、夜間来店客の会計客の40%がメンバーという状況にまで成長してきている。
機能・サービスの強化の裏側で、コスト改善、収益性の向上は不可欠だ。しかし、外食でコスト改善ができる分野は限られている。すなわち、食材原価と労務費だ。食材原価はただ安くするだけだと商品の質の低下、顧客満足度の低下につながるリスクがある。重要なことは、どこまで当初の計画どおりにコントロールできるかである。同社は2014年に引き続き2015年も共同購入、共通食材拡大などの施策でコントロールできると自信を見せている。労務費は“パートナー”(パート・アルバイト)の人時売上高を指標にしたシフトコントロールを強化することで、これも計画どおりに管理可能とみている。
ポイント4 『強みの源泉のブラッシュアップ』
この分野では人材の研修・教育が最も基本的な施策となる。例えば同じビールでもグラスの温度管理や注ぎ方の違いで味が大きく変わる。また、お客とのコミュニケーション力の有無は、客単価やリピーター客獲得に大きな影響を及ぼす。そのため同社では2011年から「D1グランプリ」と称する社内コンペを開催して研鑽を図っているほか、適宜、サントリーグループの工場見学などを実施し、知識・技能及び接客技術の向上に努めている。また、現場労働の主力である“パートナー”(パート・アルバイト)に対しても新人研修の必須化やパートナー育成評価システム「ファイブスター制度」の導入で、質の向上を図っている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)
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