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エイアンドティー Research Memo(3):技術面で高い参入障壁、すべての製品系列で安定した成績を確保

注目トピックス 日本株

■2014年12月期決算

(1)概要

業績の具体的な説明に入る前にエイアンドティー<6722>の特長を簡単に触れる。これを把握しておけば、業績や将来の見通しの分析がしやすくなるからである。

同社は医薬品と医療機器をすべて合わせた市場(約39兆円)のうちの血液検査という分野に絞って事業を展開している。足元では、同社の売上は約93%が国内であり、非常に安定した収益を確保できるビジネスモデルとなっている。その主な理由は以下のとおりである。

第1に市場規模が小さく、新規の参入余地が極めて狭い。血液検査機器システムは約4,500億円程度で、非常にニッチな市場である。また、新規事業に位置付けられる臨床検査情報システムも市場規模も150億円、検体検査自動化システムも35〜40億円の市場規模しかない。さらに、これら市場は人口減少でそれほど成長率が高くない半面、高齢化に伴い急激な縮小も起こらない。

第2に特殊な技術が必要であり、技術面での参入障壁も高い。一方、同社は親会社のトクヤマ<4043>から受け継いだセンサーで他社に特に秀でた技術を持つ。製品も付加価値の高い高機能品が中心で、その面でも差別化ができている。業界に必要不可欠な会社と言える。第3に参入障壁が高い市場で秀でた技術力を持っているため、ライバル他社との提携による製品の相互供給も行える。そのうち、ライバルからの製品調達は利益を出しにくいという問題はあるものの、OEMは大きな収益源となっており、ライバルを通じても収益を伸ばせる立場にある。第4に機器やシステムを納入すれば、試薬や消耗品の販売、メンテナンスサービスといったビジネスが継続して収益貢献する。加えて、システムや機器の更新の際も継続して受注できる可能性が高い。

以上の特長を踏まえたうえで、業績を見てみる。2014年12月期決算(非連結)は、売上高が2013年12月期比3.8%増の9,569百万円、営業利益が同15.3%増の856百万円、経常利益が同16.1%増の832百万円、当期純利益が同3.3%減の455百万円となった。売上高は6期連続、営業・経常利益は過去最高を更新した。これは、同社の安定したビジネスモデルを象徴するような業績と評価できよう。

(a)売上高の検証
まず、売上高に関しては、全体のおおよそ半分を占める「臨床検査機器システム」がほぼ横ばいで推移した一方、4分の1を占める「臨床検査薬」が微減となり、17%程度を占める「消耗品」と、7%程度を占める「その他」が伸びた。後の製品系列別の業績で具体的な数値について説明するが、すべての製品系列で安定した成績を確保できた。同社のビジネスモデルの安定性を証明する1つの証拠と考えてよい。

また、ここではさらに特筆すべき点が挙げられる。臨床検査機器システムの製品系列別の売上で臨床検査情報システムと検体検査自動化システムの両方が好調だったことである。臨床検査情報システムは過去最高の売上高となった。検体検査自動化システムは2013年12月期の国内の大型受注の反動や、技術者不足から受注を取り逃がすなどの理由により売上高こそ減少したものの、韓国向けに大型案件を獲得し、市場を拡大した。両事業とも2009年12月期ごろまでは収益の増減が激しかったが、2014年12月期の業績からは、同社のビジネス拡大を牽引する事業にまで成長したと考えてよかろう。

(b)利益の検証
一方、利益も堅調な伸びを示した。営業利益の増減要因は以下のとおりである。まず、売上高の増加と、臨床検査機器システム事業の案件の大型化や総合提案の増加で他社製品の販売が拡大したことによって、売上原価は2013年12月期比で4.8%増の5,256百万円となった。同社の特長で示したとおり、ライバル製品の売上の増加は利益があまり見込めないという点で、リスクになってしまったという面もある。しかし、一方で、自社製品やシステムの原価率は、内製化や販売価格の見直しにより改善した。これに関しては、付加価値の高い高機能品が中心である点が改善をやりやすくしたといえる。その結果、売上総利益は同2.6%増の4,313百万円となった。さらに、販売管理及び一般管理費はエンジニアや営業要員の採用拡大に伴う人件費の増加はあったものの、研究開発の業務委託を削減し、内製化を進められたことや、不要不急の支出の削減など通常のコスト削減により、同0.2%減の3,456百万円と抑えることができた。

なお、営業外損益に関しては、24百万円の赤字と赤字幅が約2百万円縮小した。営業外収益は他の事業者に賃貸していた旧日野事業所(東京都日野市)の土地建物を2013年12月期に売却したことにより賃貸料がなくなり、為替差益も減少した結果、2013年12月期比50.2%減の7百万円となった。一方で、営業外費用は長期借入金の短期への切り替えに伴う支払い利息の減少や旧日野事業所の維持管理費がなくなったことなどにより、同21.7%減の31百万円となった。この結果、同社が重視する売上高経常利益率は2013年12月期比0.9ポイント増の8.7%となった。

当期純利益は、中国の合弁会社である東軟安徳医療科技有限公司(本社:遼寧省瀋陽市)による試薬工場の建設の遅れに伴う投資損失引当金87百万円や、国内の保養所の売却損8百万円などを特別損失に計上した結果、減益となった。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柄澤 邦光)



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