エレマテック Research Memo(3):安定した黒字体質、着実な右肩上がりの業績を実現
[15/06/23]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■エレマテックの長期業績推移
(2)エレマテックの強み
エレマテック<2715>の最大の特長は「業績の安定成長性」にある。経済変動や需要先の製品サイクルなど業績変動要因は数多くあるはずだが、単に黒字を確保するにとどまらず、(リーマン・ショックの時期は例外として)着実に右肩上がりの成長を続けていることが、同社の最も評価されるべきポイントであると弊社では考えている。以下では、安定した黒字体質となっていることと、安定した成長を実現できていることの2つに分けて考察する。
(i)安定した黒字体質のカギ
同社にまつわる興味深い数字がある。それは販売先で5,800社以上、仕入先で6,000社以上の企業とそれぞれ取引しているということだ。この数字は同社の規模の会社として圧倒的に多いのではないかと思われる。こうした取引の多様性もしくは分散が、同社に収益の安定性をもたらす大きな要因となっていると弊社では分析している。
では、同社がこのように多数の取引先を獲得できているのはなぜか。弊社では、同社が持つ以下の3つの要素を挙げたい。すなわち、
1.商材
2.オペレーション
3.独立系
の3点だ。
1.商材
同社の商材の中心は電子材料や電子部品であるが、この商材には需要と価格が安定的であるという特長がある。需要が安定していることは、電子材料や電子部品の需要のすそ野が広いということに立脚している。価格が安定していることは、最終製品(例えば液晶テレビ)の製造コストに占める電子材料や電子部品などの価格構成比が小さいことと供給メーカーが寡占傾向にあることなどが理由として挙げられる。主要商材の需要と価格の安定性は、同社の業績安定成長性に大きく貢献している。
商品特性以上に重要なポイントは、同社が、仕入品をそのまま販売するのではなく、顧客仕様に合わせたカスタマイズ品や、モジュール化した加工品の形での販売に注力していることだ。これは2のオペレーションに密接に関連するが、顧客のためにカスタマイズすることで、顧客のグリップ力が確実に高まる。同社が5,800社もの顧客を獲得できた理由はここに大きな理由があると弊社では考えている。
同社は商社であり製造拠点は有しないが、中国の大連と無錫に子会社2社を擁して、加工品受託の対応能力は保持している。
2.オペレーション
ここで言うオペレーションとは、顧客の業務を肩代わりして、顧客に業務効率化やコスト削減、情報提供といったメリットを提供し、同社の付加価値・存在価値を認識してもらう活動のことである。カスタマイズ品といえども価格競争に陥るリスクは常にある。価格以外の価値をいかに顧客に提供して、継続的な信頼関係を築くかが重要だ。同社はそれを実現するポイントとして、「現場力」「海外ネットワーク」「調達代行サービス」の3点を挙げている。
3.独立系
2011年度に豊田通商グループ入りするまで、同社は独立系であった。独立系であることは、同社に活動の自由度を与えて、仕入先や顧客の獲得に多くのメリットをもたらしたと考えられる。また、「迅速で柔軟な経営判断」や「風通しの良い社内風土」、「持たざる経営の追求」という同社を特徴付ける企業文化の形成も、同社が独立系であったことに根差していると弊社ではみている。
豊田通商グループ入りした現在は厳密には独立系ではなくなったが、企業文化としての「独立系」の精神は維持されているほか、商取引においてもこれまで培ってきた既存の関係はそのまま維持される方針だ。
以上の「商材」、「オペレーション」、「独立系」の3要素が密接に絡み合って、同社は、顧客や仕入先との間で、「商取引→高い満足度の提供→顧客から信頼を獲得→リピートの商取引と新たな顧客獲得」といった正のスパイラルの中で顧客を獲得し、業容を拡大させてきた。この循環の継続が安定した黒字体質の実現へとつながっていると弊社では考えている。
(ii)安定した収益成長のカギ
同社が安定的に収益成長を実現できている理由は、その時々の成長市場の変化の波にうまく乗ってきたことにある。主要得意先には、ミネベア、ジャパンディスプレイ、オムロンなど液晶関連の企業が目立つが、過去の主要得意先と比較してみると、その裏側では最終需要においてガラケー、テレビからスマホへという変化が起こっている。また、東芝、キヤノン、ノーリツ、NECなど家電、OA機器、重電やガス・石油機器がなどの分野の安定的な得意先を有している点も見逃せない。
成長市場の変化をうまく捉えてその波に乗り続けるためには、「技術力」が必要だが同社にはそれがある。前述のように、同社は仕入品をそのまま販売するのではなく、顧客ニーズに応じて、カスタマイズ加工したりモジュール化したりと同社独自の企画・提案という付加価値を付けて販売する努力を重ねてきた。技術系商社として人材とノウハウ・経験を蓄積してきたことが同社の技術力の源泉となっている。
それに加えて、仕入先と販売先双方において約6,000社の取引先を抱える同社には情報が集まる。情報収集力と技術力が組み合わさることで、顧客ニーズや市場の変化の先取りが可能になっており、ここに同社が成長市場の変化にうまく対応できてきた理由があると弊社では考えている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)
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(2)エレマテックの強み
エレマテック<2715>の最大の特長は「業績の安定成長性」にある。経済変動や需要先の製品サイクルなど業績変動要因は数多くあるはずだが、単に黒字を確保するにとどまらず、(リーマン・ショックの時期は例外として)着実に右肩上がりの成長を続けていることが、同社の最も評価されるべきポイントであると弊社では考えている。以下では、安定した黒字体質となっていることと、安定した成長を実現できていることの2つに分けて考察する。
(i)安定した黒字体質のカギ
同社にまつわる興味深い数字がある。それは販売先で5,800社以上、仕入先で6,000社以上の企業とそれぞれ取引しているということだ。この数字は同社の規模の会社として圧倒的に多いのではないかと思われる。こうした取引の多様性もしくは分散が、同社に収益の安定性をもたらす大きな要因となっていると弊社では分析している。
では、同社がこのように多数の取引先を獲得できているのはなぜか。弊社では、同社が持つ以下の3つの要素を挙げたい。すなわち、
1.商材
2.オペレーション
3.独立系
の3点だ。
1.商材
同社の商材の中心は電子材料や電子部品であるが、この商材には需要と価格が安定的であるという特長がある。需要が安定していることは、電子材料や電子部品の需要のすそ野が広いということに立脚している。価格が安定していることは、最終製品(例えば液晶テレビ)の製造コストに占める電子材料や電子部品などの価格構成比が小さいことと供給メーカーが寡占傾向にあることなどが理由として挙げられる。主要商材の需要と価格の安定性は、同社の業績安定成長性に大きく貢献している。
商品特性以上に重要なポイントは、同社が、仕入品をそのまま販売するのではなく、顧客仕様に合わせたカスタマイズ品や、モジュール化した加工品の形での販売に注力していることだ。これは2のオペレーションに密接に関連するが、顧客のためにカスタマイズすることで、顧客のグリップ力が確実に高まる。同社が5,800社もの顧客を獲得できた理由はここに大きな理由があると弊社では考えている。
同社は商社であり製造拠点は有しないが、中国の大連と無錫に子会社2社を擁して、加工品受託の対応能力は保持している。
2.オペレーション
ここで言うオペレーションとは、顧客の業務を肩代わりして、顧客に業務効率化やコスト削減、情報提供といったメリットを提供し、同社の付加価値・存在価値を認識してもらう活動のことである。カスタマイズ品といえども価格競争に陥るリスクは常にある。価格以外の価値をいかに顧客に提供して、継続的な信頼関係を築くかが重要だ。同社はそれを実現するポイントとして、「現場力」「海外ネットワーク」「調達代行サービス」の3点を挙げている。
3.独立系
2011年度に豊田通商グループ入りするまで、同社は独立系であった。独立系であることは、同社に活動の自由度を与えて、仕入先や顧客の獲得に多くのメリットをもたらしたと考えられる。また、「迅速で柔軟な経営判断」や「風通しの良い社内風土」、「持たざる経営の追求」という同社を特徴付ける企業文化の形成も、同社が独立系であったことに根差していると弊社ではみている。
豊田通商グループ入りした現在は厳密には独立系ではなくなったが、企業文化としての「独立系」の精神は維持されているほか、商取引においてもこれまで培ってきた既存の関係はそのまま維持される方針だ。
以上の「商材」、「オペレーション」、「独立系」の3要素が密接に絡み合って、同社は、顧客や仕入先との間で、「商取引→高い満足度の提供→顧客から信頼を獲得→リピートの商取引と新たな顧客獲得」といった正のスパイラルの中で顧客を獲得し、業容を拡大させてきた。この循環の継続が安定した黒字体質の実現へとつながっていると弊社では考えている。
(ii)安定した収益成長のカギ
同社が安定的に収益成長を実現できている理由は、その時々の成長市場の変化の波にうまく乗ってきたことにある。主要得意先には、ミネベア、ジャパンディスプレイ、オムロンなど液晶関連の企業が目立つが、過去の主要得意先と比較してみると、その裏側では最終需要においてガラケー、テレビからスマホへという変化が起こっている。また、東芝、キヤノン、ノーリツ、NECなど家電、OA機器、重電やガス・石油機器がなどの分野の安定的な得意先を有している点も見逃せない。
成長市場の変化をうまく捉えてその波に乗り続けるためには、「技術力」が必要だが同社にはそれがある。前述のように、同社は仕入品をそのまま販売するのではなく、顧客ニーズに応じて、カスタマイズ加工したりモジュール化したりと同社独自の企画・提案という付加価値を付けて販売する努力を重ねてきた。技術系商社として人材とノウハウ・経験を蓄積してきたことが同社の技術力の源泉となっている。
それに加えて、仕入先と販売先双方において約6,000社の取引先を抱える同社には情報が集まる。情報収集力と技術力が組み合わさることで、顧客ニーズや市場の変化の先取りが可能になっており、ここに同社が成長市場の変化にうまく対応できてきた理由があると弊社では考えている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)
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